富士通株式会社 プラットフォーム技術本部
エグゼクティブプロダクトエンジニア
葛西 康人
富士通の葛西です。入社以来、永年に渡り、富士通オフコンに従事してきました。主にSEへの技術支援を担当しています。
オープン化が叫ばれて久しいですが、継続してオフコンをご利用いただいているお客様もたくさんいらっしゃいます。それは オープンのほうが適している業務 もありますが、「オフコンが担うべき業務も厳然として存在する」証拠だと思っています。
お客様にとっての最適解は、オフコンとPC/PCサーバとを、あるいは最近ではスマートデバイスとを、適材適所で活用し、相互をうまく連携させることではないでしょうか。
ここでは、オフコンに対する富士通のこだわりをご紹介します。
【参考】
その課題、情くんにおまかせ! - マンガで解決、ITあるある - 第16話
オフコンのデータを活用出来ていないし、スマデバも使いたい!もうオープン化するしかないかな??
富士通のオフコンは、お客様のビジネスを支えて約50年、半世紀になります。1960年代のFACOM230に始まり、NEC、三菱、東芝という当時のオフコン御三家に対して、後発ながら果敢にチャレンジしてきました。
お蔭様で、Kシリーズのときにベストセラーの座を奪取しました。その後も、その座に甘んじることなく、Intelプロセッサの採用、Web環境の搭載、仮想化技術の取り込みと、先駆的に取り組んで現在に至っています。
そしてこの間、中堅企業のお客様のビジネスを支え続けています。主に、販売、生産、物流など、お客様の中核となる業務を担っています。
技術は変遷しましたが、徹底的にこだわってきたことがあります。それはCOBOLプログラムの“資産の互換性”です。
30年以上前に開発した資産が、今でもお使いいただける、また、何事も無く元気に稼働しているのは、このこだわりの結果です。
“資産の互換性”が何故必要なのか、-- 推計ですが、現在でも約500万本のCOBOLアプリケーションが、オフコンで稼働しています。その多くは、パッケージを適用できない、お客様固有の業務です。
競争力の源泉は、製品の優位性(プロダクト・イノベーション戦略)、業務の卓越性(オペレーショナル・エクセレンス戦略)、顧客との緊密性(カスタマー・インティマシー戦略)と言われていますが、この「卓越した業務」をシステム化したのが、オフコンのアプリケーション資産なのです。
財務や給与とは違い、販売、生産、物流、すなわち売り方や作り方や運び方など、競合他社と異なる業務のやり方こそがお客様の競争優位となっているのです。安易にパッケージを適用したら、他社と同じになって競争優位を失うことになり、パッケージをカスタマイズして競争優位をシステム化しようとしたら、多大な費用がかかります。
オフコンのお客様は、下表にあるような本数のプログラムを保有されています。
このプログラムをWindowsに移行するにしても、プログラム1本を10万円とし、最低でも3,000万円の費用が必要となります。3,000万円かけて同じことしかできないとしたら、その投資に価値はありません。
全体で500万本のアプリケーションが稼働しているとしたら、総額で5,000億円もの資産になります。この5,000億円というお客様の投資の結果を大切にすることが、富士通の使命なのです。
そのために、富士通は“資産の互換性”にはこだわっていますが、“資産の互換性”に無関係なものにはこだわらず、“資産の互換性” を確保した上で、新技術を採用して“利便性を向上” させることにこだわっています。
これまでも、専用のCPUよりもコストパフォーマンスや性能という点で利便性が優れていると判断し、Intelプロセッサを採用しました。これはその後の新技術の採用にも役立ちました。パソコンを端末として利用できるように専用のエミュレータも開発しましたが、パソコンのブラウザでいろんな入出力形態を可能とする利便性を実現するため、Web環境を搭載しました。専用のハードウェアでなくても使えるようにするために、仮想化技術を取り込み、複数のオフコンを一台に集約して共用できるようにしました。
このように、“資産の互換性”に無関係であるものは大胆に切り捨て、“資産の互換性”を徹底しつつ、“利便性を向上” させてきました。
もうひとつのこだわりが、“新技術と連携” させることです。
新しい技術がどんどん出てくる中で、PC/PCサーバやスマートデバイスを活用したいとの要望をお客様からいただきます。お客様の業務は、基幹業務以外もありますし、事業所の外での業務もあります。オフコンの業務を中心に、ICTの活用領域を拡げられるようにすることにも、こだわって取り組んでいます。
そして今も、“資産の互換性”を徹底しつつ、“利便性を向上” させ続けています。仮想化技術をベースに、クラウド環境に発展させました。
ハードウェアを所有しなくてもよくなり、煩わしいハードウエアの管理などから解放され、業務に集中できるようになります。
「FUJITSU Cloud オフコンサービス」は2018年6月22日に「FUJITSU Cloud Service for オフコン」に改名しました。
「FUJITSU Cloud Service for オフコン」においては、“資産の互換性”を実現するために、業務運用の観点からも互換性にこだわりました。業務の見直しは、資産の見直しに繋がるからです。
代表的な3点をご紹介します。
WAN回線、ラインプリンタ、コンソール等にもこだわることにより、“資産の互換性”を徹底して実現しました。
「FUJITSU Cloud Service for オフコン」は、“資産の互換性”に加えて、クラウドならではの“利便性を向上”させています。
東日本大震災にも耐えた堅牢性を備え、人的なセキュリティも徹底したデータセンターで運用しています。現地を見学した方々には、事業継続対策に最適と、ご納得いただいています。価格面では、同等性能のハードウェアを所有するときと、月額換算でほぼ同等となります。
“資産の互換性”と“利便性を向上”させた「FUJITSU Cloud Service for オフコン」を是非一度ご検討ください。
ハードウェアを所有すると、運用/保守のための人件費や、電力/スペースの費用など、目に見えにくい費用がかかっています。これらの費用は、ハウジングサービスを利用しようとすると明確になりますが、一般的には、初期費用で約60万円、月額費用で約20万円がかかるようです。
クラウドサービスであればそれらの費用も含み、なおかつ事業継続対策というメリットも享受できますので、TCO削減につながります。
拘束期間がなく、長短に関わらず、月額で利用できます。マイナンバー対応など、開発時にだけ利用することも可能です。
業務量や処理量の変化に応じて、必要なリソースを増減させることができます。年末商戦の1カ月だけリソースを増強するなど、最適な投資が可能です。
富士通オフコンは、これからも、こだわり続けます。
お客様のこれまでの投資の結果である資産が支える既存のICT領域を、その周辺の新たなICT領域と連携して利用できるようにし、お客様のビジネスを支え続けてまいります。
“資産の互換性”では、COBOLプログラムに注目した互換性にこだわってきましたが、究極的には、COBOLプログラムそのものよりも「そこに記述されている業務ロジック」が、お客様の仕事のやり方だからこそ、最も重要であると考えています。
業務ロジックの継承性という究極を実現するために、これから具現化すると想定される様々な技術を活かして、“利便性を向上”させつつ取り組んでまいります。
また、“新技術と連携”させる上で注目されているものに、クラウドで提供される多様なサービス、ソーシャルに溢れる情報、全てのものが繋がるIoTなどがあります。
最先端だから飛びつくのではなく、お客様と会話させていただきながら、お客様目線での現実解を探り当て、連携できるようにしてまいります。
これからも、お客様のために、お客様のビジネスに役立つICT環境を提供し続けてまいりますので、よろしくお願いいたします。
⇒FUJITSU Cloud Service for オフコン