セキュリティマイスターコラム 第11回

増える若者のサイバー犯罪、犯罪防止のキーとなる地域の場づくり

2018年5月24日より3日間南紀白浜にて「サイバー犯罪に関する白浜シンポジウム(以降、白浜シンポジウム)」が開催されました。テーマは「若者とサイバー犯罪:被害者・加害者・傍観者」。近年サイバー犯罪に占める若者の割合が増加しているというトピックが大きな議題となりました。今回のコラムでは、この事態に対し、企業としてなにができるのかを考えます。

進むサイバー犯罪加害者の若年化

2018年3月22日に公表された「不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発の状況」によると、不正アクセス禁止法違反の検挙者数が増えており、特に14~19歳のレンジが増加傾向であるという事実が白浜シンポジウムでも、神戸大 森井先生や岡村弁護士といった著名な先生方を中心に議論されていました。

[図]図1 平成29年における年代別被疑者数
(出典:国家公安委員会、総務大臣、経済産業大臣
「不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発の状況」、平成30年3月22日
http://www.meti.go.jp/press/2017/03/20180322004/20180322004.html

[図]図2 過去5年の年代別被疑者数の推移 (出典:国家公安委員会、総務大臣、経済産業大臣
「不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発の状況」、平成30年3月22日)

必要とされたい気持ちが犯罪へと誘う

特に印象的だったのは、朝日新聞社の須藤記者が6年間密着取材を通して感じられた、加害者に関する以下の見解です。

「陽の当たらない世界に潜む若い子達はたくさんいる」
「必要とされている感がすごいらしく、いい方向へグリップしてあげる存在が重要」

記者目線のこのコメントから、理解されたい、必要とされたいという気持ちがサイバー犯罪の動機となりうるということを知り、改めて考えさせられました。

ネット独学に潜む危険性

サイバー犯罪者となった若者が、その知識を「独学」で得たという事実からも、独学に潜む危険性に関しても考える必要があると感じました。

*参考ニュース記事

「佐賀県教育委員会の情報システム「SEI-Net」などに侵入したなどとして、不正アクセス禁止法容疑で佐賀市の17歳の無職少年が再逮捕された事件。少年は独自開発した攻撃用プログラムでシステムの脆弱性をつくなどして個人情報を入手していたという。」
(出典:17歳が教育システムに不正アクセス 攻撃用プログラムで脆弱性つく 「能力にちょっと驚く」と馳文科相 (ITmedia)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1606/30/news092.html

ウイルス作成容疑、高3摘発 宮崎県警、独学で技術習得(47NEWS)
https://www.47news.jp/106028.html

16歳少年が不正アクセス…多発する少年サイバー事件の背景(YOMIURI ONLINE)
https://www.yomiuri.co.jp/science/goshinjyutsu/20160205-OYT8T50088.html

上記のニュースからも、独学で技術を身につけているということが読み取れます。これらの事案から私が課題と考えることの一つが、ネット独学に潜む危険性です。

ネットの情報から独学で技術のみを習得し、法規制に関する知識や、モラルを具えることなく、技術に対するリスペクトもないまま技術者となっていないか?結果としてサイバー犯罪予備軍になってはいないだろうか?

この仮説を元に、本課題の解決に貢献しうる取り組みとして始めたことの一つが「明るい地域の場づくり」です。

若年層犯罪を減らしたい!明るい地域の場づくり

① 育む場作り 〜生涯学習モデル〜

富士通は、愛媛県警・愛媛大学と共同でハンズオンセミナー(主催:サイバーセキュリティシンポジウム道後実行委員会、以降道後ハンズオンセミナー)を2017年から始めました。また、セキュリティマイスター道場など、地域の場づくりのお役に立つ場作りに協力しています。

愛媛CATVコンテンツ
たうんニュース2018年2月「セキュリティハンズオンセミナー」
https://www.youtube.com/watch?v=bEqNFz7WdxE

力のありあまった子供たちが警察署の柔道・剣道で汗を流し力と心を研鑽し成長するように、コンピュータ技術のありあまった若者がその年代に合わせ、地域の道場でコンピュータ汗を流し技術と心を研鑽し成長できるような場が必要です。

[図]図3 生涯学習モデル

そこでは、学校でマイノリティになっているかもしれない子供が仲間づくりをする、困ったことを相談するといった機会もあるでしょう。このような場が楽しいと感じる成功体験を重ねることで、技術に対するリスペクトを持てるようになれば、若者たちを犯罪から遠ざけることができるのではないでしょうか。

② 育むエコサイクル 〜つなげるモデル〜

場づくりが一時的にうまくいったとしても、継続的な活動でないと意味が薄れます。地域で継続する活動にするためには、お金を極力かけず、育った人が次の世代を育てるサイクルを作ることが重要です。
地域が次の世代を育てる機会を与え、さらに何かに貢献する機会を与え、技術がつながり、何かに貢献するというサイクルが、つなげるモデルです。

このような活動で承認欲求を満たしながら、たとえば地域の警察官に就職したいといった夢を持てるような若者が生まれるようになれば嬉しいです。

育った人材が地域を次世代を育成。ナレッジを共有する図4 つなげるモデル

[写真]

若手セキュリティマイスターである堀も、白浜シンポジウムで以下のような発表をしました。

楽しい、またやりたい、自分が作りたい、場を繋げたい、広げたいと、自身を振り返って、若い世代の目線で考え実践しながら彼ら自身が次世代につなげます。

明るい場の連鎖図5 堀のスライド一部抜粋

講演資料ダウンロード

さいごに

図6,7のように、2017年から始めた道後ハンズオンセミナーでのアンケートの結果からも、仮設課題を裏付けるような地域の場づくりを求める声が少しだけ垣間見えます。

地域でセキュリティに触れることができる環境は十分だと思いますか。十分47%、十分ではない51% 図6 2017年道後ハンズオンセミナーアンケート結果
地域でセキュリティに触れることができる環境は十分だと思いますか。十分38%、十分ではない62% 図7 2018年道後ハンズオンセミナーアンケート結果

図8,9のように、セキュリティに触れられる場を求める声に対して、場づくりが一定の効果を出していることも読み取れます。
また、2018年からは、2017年の修了生が教えるというサイクルにも初チャレンジしました。

今回のイベントがセキュリティに触れられる環境になりましか。そう思う89% 図8 道後ハンズオンセミナーアンケート結果
今回のイベントがセキュリティに触れられる環境になりましか。そう思う68% 図9 2018年道後ハンズオンセミナーアンケート結果

技術で社会に貢献することを目指す企業として、地域の場づくりを通して、若者たちにも技術で社会に貢献できることを伝えたいと思います。
この活動によって、若年層がテクノロジーを悪用し加害者になるというケースの減少につなげるべく、我々企業が貢献できることを増やしていきたいと考えています。

地域の教育と地域の安心安全にこれまで貢献されてこられた多くの方々の目線を大切にしながら、様々な方と協力しながら進めていきます。

2018年7月9日

富士通株式会社
佳山こうせつ
[ハイマスター領域] シニアセキュリティコーディネーター

セキュリティマイスター紹介ページ

[写真]

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