技術動向:アダプティブアレーアンテナ

アダプティブアレーアンテナ(AAA : Adaptive Array Antenna)は、複数のアンテナ素子を配列したアレーアンテナ(Array Antenna)を設け、各アンテナ素子の重み付けを伝搬環境に応じてアダプティブ制御して、電気的に指向性を変えるようにしたアンテナのこと言う。

アダプティブアレーアンテナでは、目的の希望波にアンテナ指向性のメインローブを向け、また不要な干渉波の方向にヌル点(アンテナの指向性パターンの落ち込んだ点)を向けて干渉波を除去することができる。SIR(Signal to Interference power Ratio : 希望波電力対干渉波電力比)の特性を改善することによって、周波数利用効率の向上を図ることができ、結果的にシステムの容量を増大できるようになる。

       

ここでは、アダプティブアレーアンテナの基本的な原理について説明する。

アレーアンテナのモデル

       

アンテナモデル


このアレーアンテナのモデルでは、到来波をM個のアンテナ素子で受け、各アンテナ素子の出力に重み付け(重み係数)を掛けて、それら重み付けされた受信信号を合成することによってアレー出力信号が生成される様子を示している。

重み付け(重み係数)の意味

       

重み付け(重み係数)の意味


上図で示すように、重み係数は複素関数で表現できるので、振幅ファクタと位相ファクタに分けられる。アンテナ指向性パターンの点からみると、振幅ファクタはビームサイドローブレベルを定め、位相ファクタはビーム主軸方向を定めることになる。

アダプティブアレーアンテナの基本構成

先に示したアレーアンテナのモデルに、重み係数を制御するためのアダプティブ制御(Adaptive Processor)を追加した構成となっている。アダプティブ制御には、制御アルゴリズムが組み込まれている。一般にM個のアンテナ素子でアダプティブアレーアンテナを構成すると、M-1個の方向にヌル点を形成することができる。

       

アダプティブアレーアンテナの基本構成


アダプティブアレーアンテナのアダプティブ制御では、ある制御アルゴリズムの基準に基づいて、環境の変化に応じて最適な重み付けを決める。この制御アルゴリズムの基準として代表的な例を2つ示す。

1. 最小二乗誤差(MMSE : Minimum Mean Square Error)基準

希望波のレプリカ(参照信号)と、実際のアレー出力信号との差(誤差信号)が最小となるように、最適な重み付けを決定し、干渉波の到来方向にヌル点を形成する。

2. 定包絡線(CMA : Constant Modulus Algorithm)基準

希望波に関する予備知識を必要とせず、アレー出力信号の包絡線を一定とするように重み付けを制御し、干渉波を抑圧する。

おすすめコンテンツ

ページの先頭へ