株式会社 大谷機械製作所 様

鍛造業界に革命の波を起こす解析モデルを構築 ~熟練の職人技も「答え合わせ」で未来へ継承~

金属組織を切らずに叩いて延ばす「鍛造」は、自動車から建築、機械・工具まで、世界のものづくりシーンになくてはならない技術です。創業から70年余、鍛造機械の専門メーカーとして、国内シェア9割以上を誇る株式会社大谷機械製作所様(以下、大谷機械様)は今回、株式会社富士通九州システムズ(以下、FJQS)が提供するCAEソリューション、非線形構造解析ソフトウェア「LS-DYNA」を新たに導入されました。鍛造マシンの強度解析を内製化し、新製品の設計開発や修理・補強の工程プロセスに、「お客様の納得」と「自社技術資産の蓄積」を可能にする仕組みを確立。鍛造業界が「これまでにないものづくり」を実現する一歩を踏み出しました。

課題
効果
課題
  • 協業メーカーに強度解析を委託してきたが、鍛造機械メーカーとして満足できる解析データが得られない。
  • ハイスペックな動的非線形構造解析ソフトウェアを導入しても、専門の解析担当者がいないため、解析手法を確立しその手順を自社ノウハウ化する必要がある。
  • 鍛造業界に従来、解析データを活用するシーンがなく、参考にすべきモデルがない。その先駆者にもなっていきたい。
効果
  • 世界的に実績と信頼がある「LS-DYNA」を導入し、鍛造業界に先がけて解析データのシミュレーションによるものづくりを導入。
  • 有償支援を活用し、「お客様の高い納得性」を生む解析モデルを構築し、「使いこなす」ノウハウも確立。
  • 熟練の職人技が培ってきた経験と勘どころを、解析データで検証して「見える化」し、自社の技術資産として未来へ継承することが可能に。
導入の背景

専門メーカーとしての「想い」を製品に込める強度解析の実現へ

ドゥオーン、ドーン。工場に響き渡るのは、数十トンの重厚なハンマーが鉄を叩き打つ一撃の音だ。熟練した職人集団の大谷機械様は「壊れない鍛造マシン」との高評価を確立してきました。一方で、その「壊れない」を裏付ける強度解析は、アンビル(固定台)やフレーム(支柱)の協業メーカーに、外部委託してきました。

「輸送・設置時の制約や費用負担が多い大型のアンビルは、お客様の負担を軽減しようと、分割型で設計します。ただ、解析コストが嵩み、しかも委託先の作りやすさを重視した解析で、私たちが満足する結果がなかなか出てこない。鍛造機械の専門メーカーとして、想いの丈を込めたアンビルを作りたいし、壊れる原因を究明し、従来品からの改善内容も定量的にわかりやすく目に見えるカタチで提案したい。それなら、解析も自前でやってみよう、と思ったのがスタートラインです」。

そう語るのは、LS-DYNAの導入プロジェクトを推進した技術部の赤井寛和氏です。3次元CADのオプション的な解析機能では、ハンマーの一瞬の動的現象を扱うことは難しく、解析専門ソフトウェアが不可欠でした。
「実績は十分過ぎるほどですし、3次元CADのPCを使えばハード面の新たな投資も不要です。鍛造業界で、これほどのハイスペックな解析ソフトを導入しているところはない。だからこそ、これしかない、と決め打ちでしたね」。

FJQSの吉本周平は、解析の専門家がいない現状を踏まえ、一歩ずつステップアップを図る導入フローを提案しました。鍛造マシンのようにスケールの大きなものづくりの解析も、お客様のユースシーンにふさわしく「使いこなす」を支援できるのは、豊富な実績があるFJQSの強みです。「いきなり『何でもできますよ』ではなく、着実にスキルや手順の専門性を深め、ノウハウも蓄積できる。そんな道筋を示そうと考えました」。

株式会社 大谷機械製作所
技術部 設計グループ
赤井 寛和 氏
株式会社
富士通九州システムズ
エンジニアリング
ソリューション本部
大阪事業所
吉本 周平
導入の効果

「近道」を進む支援を得て、業界の「パンドラの箱」を開ける解析モデルを確立

導入PJは、検討開始から1カ月というスピードで実現しました。「本当に、スムーズでしたね。導入トレーニングに加え、有償支援もお願いして、キャッチボールをしながらやりたいことの近道を教えてもらった感じです。解析手法から手順書の作成、報告書のレビューまで、鍛造解析の一つのロールモデルを実現できました」(赤井氏)。

報告書は専門用語をなるべく使わず、応力部をカラーでサーモグラフ的に示すなど、理解しやすい見せ方に工夫を凝らしました。営業部の山下洋平氏は「導入後、お客様に解析報告書を持参したら、『こんなこと、できるんだ!』と。鍛造業界は解析に縁遠い世界でしたが、そうじゃないんだという革命の波を起こし、パンドラの箱を開けた。そんなイメージですね」と笑顔で語ります。

アンビルやフレームの補強は従来、肉厚にして重量を増すか、材質を向上させるかの二者択一でしたが、詳細な強度解析により、むしろ重量を減らすことで強度が高まるケースも判明しました。右に倣えだった「業界の常識」を、解析データとの相対比較で検証し一目瞭然にすることで、新たな受注にもつながっています。さらに、2017年8月には次なるステージへの挑戦を開始しました。

「アンビルとフレームが一体型になった小型スタンプハンマを導入検討するお客様から、現在使用している少し大きな従来形のスタンプハンマ(アンビルとフレームが分割)と同等の大きさで一体型が作れないか、と相談を受けました。従来は、作ってみてダメ、というリスクがありましたが、いまは解析で、作る前にわかる。チャンスが一つ、生まれました」と赤井氏。新たな解析を二人三脚で実現したのは、導入時から技術支援を続けるFJQSの堀田貴史です。

「一体型の方が剛性は高くなる、との仮説に立って解析しました。すると、鍛造時に2本のフレームが揺れて内側へ変形するため、根元部に力がかかりやすい。分割型の方が、うまく力を逃がし、根元部に加わる応力が低いことや、一体型では、思いがけない箇所に高い応力が発生していることがわかりました」。

「一体型は強い!」という思い込みを検証した解析データが、お客様にとってより良い選択肢の追究と提案に結びつき、貢献を果たしています。

株式会社 大谷機械製作所
営業部
山下 洋平 氏
株式会社
富士通九州システムズ
エンジニアリング
ソリューション本部
CAEソリューション部
堀田 貴史
今後の展望

職人の経験と勘を「答え合わせ」で見える化し、技術資産に変えていく

現在進行形でノウハウの蓄積が進むLS-DYNAの活用は、手仕事で職人が培ってきたものづくりの経験や勘を「見える化」し、自社の確かな技術資産に変えています。

「この部位は、細くした方が強い。曲げてしならせたら、壊れにくい…。現場の職人の助言を一つずつ、答え合わせができるんですよ。大型のアンビル・フレーム一体型の解析も、実は職人が『フレームが動くから、根元にクラックが入りやすい』と言っていた通りの結果でした」(赤井氏)

今後は材料自体の強度解析にも対象を広げ、形状や重量、大きさの違いを超えて、金属組織が本来もっているポテンシャルを定量的に評価していくことを目指しています。「『壊れない鍛造マシン』へ、よりリアルに近づいていきたいですね」と赤井氏。山下氏も「証拠として説得力が増す解析データは、間違いなく営業提案に有効なツールです」と、期待を寄せます。

常識という名の「右へ倣え」から脱却する、誰もやったことのないものづくり変革への挑戦を、FJQSは実現力のあるパートナーとして、これからも充実したサポートを続けて参ります。

(左から、FJQS吉本・株式会社 大谷機械製作所 赤井 氏・同社 山下 氏・FJQS堀田)

株式会社 大谷機械製作所 様

事業内容鍛造機械(エアハンマー・エアスタンプハンマー・油圧ハンマーなど)、鍛圧機械の自動化装置・制御装置の製造・販売・アフターサービス、鍛造機械の防振設計・施工
設立1946年9月
所在地大阪市淀川区田川北3-5-16
代表者代表取締役社長 板見 吉博
社員数50名
ホームページhttp://www.otani-machinery.com
概要鍛造機械の専門メーカーであり、鍛造のスペシャリスト集団として、設計、加工・組立、品質検査まで、自社一貫体制のトータル生産システムとアフターサービスで、最先端・高品質の「鍛造機械のスタンダード」を創出している。独自のハンマー力学の技術開発の成果である「Newtonシリーズ」をはじめ、あらゆる産業フィールドに不可欠な鍛造製品のマザーマシンのリーディングカンパニーとして、日本のものづくりを支え続け、その活躍フィールドはアジアをはじめとして、グローバルに広がっている。

[ 2018年1月16日掲載 ]


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