プライムアースEVエナジー株式会社 様

設計者の解析・評価スキル向上を理論ベースから支援 ~「CAE技術力向上と運用支援」+「生産設備のロス軽減化支援」~

ハイブリッド自動車や電気自動車の車載用バッテリーシステムを開発製造するプライムアースEVエナジー株式会社 様は、それら次世代型自動車の普及とともに急成長しているメーカーです。特にハイブリッド車向け電池では世界シェアNo.1を誇ります。その高い技術力を支えている設計者の解析スキル向上を図るため、富士通九州システムズ(以下、FJQS)のスタッフが設計現場に密着して、設計解析技術(CAE※)の立ち上げと運用支援を行いました。一方、解析技術を応用して生産設備の改善にも取り組み、工場のコスト削減に貢献しました。
※ CAE:Computer Aided Engineering

課題
効果
課題
  • 自社内に解析実務のできる人材が不足
  • 解析業務を外部に委託していたため、設計者の評価技術・問題解決能力を伸ばす機会が不足
  • 生産現場のコスト削減
効果
  • 自社内CAE立ち上げと専用マニュアルの作成。解析技術に精通したFJQSスタッフの常駐により、高度な解析実務も設計現場で行える体制に
  • 常駐スタッフによる研修・サポートにより、基本的な解析業務は自社の設計者で対応可能に。設計機能品質が向上し、納期も大幅に短縮
  • 新規取引先開拓の戦略的体制が整う。生産設備の温度解析などを通じて設備の改善や省電力化を実現
導入の背景

理論から包括的にサポートできる専門家が必要

車載用電池を収める電池パックの設計に欠かせないのが、内部の熱流体解析や強度解析です。プライムアースEVエナジー株式会社(以下、PEVE) 様では従来、その解析実務を外部協力会社に委託していました。「以前は委託先から解析結果が出てきても、社内に結果の見方がわかる者がいなかったため、そのジャッジは外部任せになっていました」(第2技術部 評価グループ 忠内 宏記 様)。さらに、委託先は解析の専門家だったため、どうすればより良い設計になるかといった設計者的観点から解析を行うことは困難でした。そのため設計に直結する評価の局面でも設計者の職人的な経験や勘に頼らざるを得ず、自前のCAE確立は喫緊の課題となっていました。

この問題を解決するべく赴任した岡 部長の陣頭指揮により、2011年から技術導入がスタートしました。とは言え、単に設計者が解析システムの使い方を習得すれば良いというものではありません。「解析とは、ある前提条件を入力してシミュレーションの結果を求めるものですから、解析の原理や計算方法を知らなければ、めざす結果を得るためにどんな前提条件を設定すれば良いか判断できないのです」(第2技術部 部長 岡 龍祐 様)。そのため、理論に裏打ちされた包括的なサポートができる専門家が必要と、岡 部長が白羽の矢を立てたのが、FJQSでした。「今まで多くのソフトウェア会社さんと関わってきましたが、理論にまで精通した高いスキルをもっているのは富士通さんしかないと思います」(岡 部長)

プライムアースEVエナジー
株式会社
第2技術部 部長
岡 龍祐 様
プライムアースEVエナジー
株式会社
第2技術部 評価グループ
忠内 宏記 様
導入の効果

設計者自身が解析を行うことで、設計機能品質が向上

岡 部長よりご相談をいただいたFJQSでは、プロジェクトリーダー吉野 英夫を中心に技術導入までのストーリーを組み立てるとともに、解析実務を担当。常駐スタッフ2名と非常勤スタッフ3名を現場に配備し、理論教育を進める一方、PEVE 様専用の解析マニュアルを作成しました。

約1カ月の設計者研修は、熱流体・強度・振動・衝突の各テーマに分かれて実施されました。「最初から設計者全員が研修を受けるのではなく、テーマごとにキーマンを立てて学んでいただくことで、効率の良い研修ができました」(FJQS常駐スタッフ 播磨 俊二)。この研修により、忠内 様ほか受講メンバーは、委託先から出てきた解析結果をご自身で評価するスキルを習得。「やはり自分で解析実務を体験してみなければ結果の判断もできないと実感しました」(忠内 様)。

導入開始から丸3年経った現在では解析スキルをもつ設計者が10名に増え、基本的な解析は社内で行えるようになりました。社内で対応できない高度な解析などはFJQSスタッフが行い、設計者とディスカッションしながら進めています。「3次元の画面も常駐スタッフの方と一緒に見ながら説明できるので、見落としのない解析ができます。何か相談すると、自分の業務を後回しにしてまで教えてもらえるので助かっています」(忠内 様)。「何か質問した時、富士通さんほど理論に立脚した答えをくれる会社はないですよ」(岡 部長)。

設計者自身のスキルアップによって、より良い設計がしやすくなり、設計不備が格段に減少。大幅に工数を削減でき、約20%の納期短縮を実現しました。「これと並行して実験設備の運用も始め、ものづくりに必要な設計・解析・実験の3体制が整いました。この3体制を当社の戦略として、新規取引先にもアピールしていくつもりです」(岡 部長)

株式会社富士通九州システムズ
プロジェクトリーダー/博士(工学)(九州大学)
吉野 英夫
エンジニアリングソリューション本部
テクニカルコンピューティングソリューション部
プロジェクト課長
株式会社富士通九州システムズ
CAEコンサルタント/常駐スタッフ
播磨 俊二
エンジニアリングソリューション本部
テクニカルコンピューティングソリューション部
今後の展望

CAE導入により、社内の他部署にも波及効果が

岡 部長がもう一つ課題として考えていたのが、工場にも解析技術を活用することでした。「換気や温度を解析して環境改善を図れば、生産性が向上し、省電力にもつながります。富士通さんに解析をお願いしたことで、億単位の損失削減効果につながったと考えています」(岡 部長)。

思わぬ嬉しい効果もありました。「社内の他の開発部門でも、『なぜこうなるのかシミュレーションしてみよう』という考え方が生まれ、こんなことができないかと相談を受けるようになりました。若い世代を中心に解析技術の習得を進めてきたので、今後は職人的な経験と勘で仕事をしてきた中堅・熟練世代にもスキルアップを広げていきたいですね」と岡 部長。さらに工場を預かる製造部門への教育研修も視野に入れ、技術改革を力強く進めています。

ものづくりの質を追求するPEVE 様を直接的に支援できる機会をいただき、FJQSスタッフにとってもやりがいのあるプロジェクトとなりました。

プライムアースEVエナジー株式会社第2技術部のお二人を囲んで
(左から、FJQS 播磨・PEVE 忠内 様・PEVE 岡 部長・FJQS 吉野)

プライムアースEVエナジー株式会社 様

事業内容PEV・HEV用ニッケル水素蓄電池、リチウムイオン電池、BMSの開発・製造・販売
設立1996年12月11日
所在地静岡県湖西市岡崎20番地
代表者代表取締役社長 鈴木 茂樹
従業員数約3,300名(2015年4月時点)
ホームページhttp://www.peve.jp/
概要ハイブリッド車がまだ市場に登場していなかった1996年に「パナソニックEVエナジー株式会社」の社名で設立し、トヨタ「プリウス」「レクサス」などのバッテリーシステムを一手に製造。電気自動車(EV)・ハイブリッド自動車(HV)の電源システムを広く世界に提供することを通じて環境対応型社会に貢献することを企業理念に掲げ、現在では国内3工場のほか、中国に関連会社2社を展開しています。

[ 2015年10月7日掲載 ]


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