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FRI コンサルティング最前線(本文)Vol.05 2012

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特集:企業・社会の新たな価値創造と持続的発展

マーケットの成熟化に伴い、価格が安いという価値で人を動かせるインパクトは弱まってきています。企業業績を見ていても、少し前までは商品やサービスの価格面での訴求が功を奏した企業やコストダウンにより利益を創出した企業の好調が目につきましたが、最近では、例えば“省エネ・創エネ”を提案する住宅メーカーや、ライフスタイルの変化に着目し、日常生活における趣味・嗜好をきめ細かく提案する小売業のように、新たな価値を提供することで業績を伸ばす企業へと顔ぶれが変わってきました。

今村 健(いまむら たけし)


企業変革事例

昨今、BigDataというキーワードが大変な注目を集めている。一部には、すでにバズワード化しているとの声も上がってきているが、これを機に、データの活用や分析に注目が集まっているのは確かである。構造化データや非構造データなど、様々なデータを収集・蓄積し、分析することで何かしら新しいビジネスや価値が創出されるといった論調が聞かれるが、その一方で、ユーザー企業の多くがBigDataの活用に失敗するとも言われている。そこで、本稿では、BigDataのビジネス動向から見えるデータ活用・分析の成功のポイントと適用すべき業務領域、そして、BigData活用におけるユーザー企業のIS部門の方々に向けたBigData活用の心構えについて述べる。

柴田 香代子(しばた かよこ)


ビジネスでICTが欠かせないものとなってきた。コマツのKOMTRAXは建機にICTを組み込むことで新興市場における競争優位を確立した。日産自動車は中期経営計画と情報化計画を連動させることで、ICTのビジネス貢献を目指している。企業におけるICTの重要性が高まる反面、IS(情報システム)部門への期待が低下しているとの声がある。クラウドなどによりICTがコモディティ化したため、現場部門でも容易にICTが活用できるためである。本稿では、企業のICT活用を振り返り、今までのAutomation、Informationから、ビジネスを変革するTransformation、そして顧客との関係性を変革する、新たな段階のHarmonaizationへと進化していることを示す。さらに、ICT活用先進企業におけるIS部門の関わり方を分析し、今までとは開発や投資の考え方が異なるHarmonaizationにおいてIS部門が取り組むべきことを明らかにする。

田中 秀樹(たなか ひでき)、鯉田 愛子(こいだ あいこ)


東日本大震災を踏まえ、富士通総研では、被災地の政府機関・自治体・民間企業の情報システムの被害状況調査を実施した。本稿では、地震・津波・計画停電それぞれを原因とした被害と復旧対応の具体事例を紹介する。また、調査を通し明らかになった事実・教訓を踏まえ、今後企業や団体のIT部門が真の危機対応能力を獲得するために、災害対策の実施に際し考慮すべきポイントを論じる。本稿では、特に行動手順検討によるルールの整備、訓練実施によるスキルの強化等のソフト面の対策に着目し、その重要性について述べる。

寺西 孝裕(てらにし たかひろ)


国内市場の成熟化やグローバルな競争環境の変化、顧客の価値の多様化を背景に、多くの企業が未来へ向けた新たな価値の創出やビジネスモデルの変革を模索している。しかし、市場やお客様の未来を予測することは難しく、「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」と言われている。一方、大きな市場を創る大発明はそうあるものでなく、既知の技術やアイデア、知見の組み合わせから新たな価値を創ることが重要と言われている。本論では、日々お客様と接して新たな提案を模索している営業現場の知見や、事業や商品の企画部門、その他様々な関係者の知見と、富士通総研の知見を組み合わせ、未来のシナリオや新規事業などの新たな価値を創るプログラムをご紹介する。また、富士通総研では本プログラムを中核に、新規事業のみならず、お客様の様々な部門と未来を考える場をつくってきた。その実践を通して蓄積してきた方法論や推進の留意点を述べる。

池田 義幸(いけだ よしゆき)、佐々木 哲也(ささき てつや)


新たに事業を計画する際、その収益性や採算性、優先順位などを事前に評価する「事業性評価」は重要な課題である。事業性評価には、スプレッドシートによる計算や、ロジックツリー等の図解による定性的な事業構造のモデル化がよく利用されているが、事業構造の視認性や柔軟性と事業評価の定量評価を両立したものはない。本稿では、これらを両立した事業性評価ツールを活用し、エネルギーマネジメント分野の有識者や関係者と議論しながら、当該分野の事業性評価を実現するシミュレーションモデルを開発した事例をご紹介する。この手法は当該分野に限らず、新規性や不確実性を有する事業、先行事例が乏しい事業において、その事業性を定量的に評価することに活用できる。

石川 恵太郎(いしかわ けいたろう)


グローバル化の進展と共に高齢化率が上昇を続ける我が国のモノづくりは、産業構造の大きな転換点に立っており、従来の「モノづくり」から新しい付加価値を作り出す「モノ創り」へと体質改善を迫られている。その一つが、競争力の源泉であるコア技術・技能を次世代に伝え、如何にして新しい価値を生み出していくかである。そこで、技術・技能伝承を取り巻く環境を整理し、新しい価値を生み出す「モノ創り」の方向性について提言を行う。① 少子高齢化で就業構造が変化し若年労働者が減少するため、次世代に伝承し強化する技術・技能を見極める必要性が増している。② また、先送りされていた技術・技能伝承の「5つの誤解」の早期解決が必要である。③ さらに、新しい付加価値を生み出す「モノ創り」へと転換していくために、ICTを活用し、また応用力を生み出すためのコア技術・技能の強化が重要となる。

野中帝二(のなか ていじ)、安部純一(あべ じゅんいち)


世界的な金融危機の発生以降、先進国の景気低迷や新興国経済の成長鈍化が懸念される中、国内市場から海外市場にビジネスの重点が移っている。海外事業の重要性が高まるにつれ、スピード経営実現に向けた全社ICT統合の重要性が認識されグローバルでの「見える化」「ガバナンス」「全体最適化」を実現するためのICT見直しが急務である。本稿で述べるグローバル展開企画は、グローバル規模でのICT展開の道筋を示すための新たなサービスであり、実施することで全社ICT基盤統一のための方針が明確となり具体的な展開計画を導くことが可能となる。本論では、グローバル展開企画の概要と共に金属加工メーカーのA社様における展開企画事例を取り上げる。グループ全社を範囲としたシステム統合に向けた分析アプローチと展開方針策定のポイントについて紹介する。

松山 正樹(まつやま まさき)


近年、ICTの進化により、これまで手に入れることができなかった情報を収集できるようなってきた。新たに手に入れた情報を、商品として取り扱うビジネスを開発しようとする企業は増えているが、上手くいかない企業も多い。その原因は、「狙うべきターゲット」と「注目すべきインサイト」の検討プロセスに問題があると考える。新たな市場を創造するためには、既存のユーザー層ではなく、強い知覚リスクを持っているために、情報活用にネガティブになっている層に注目した方が良い。そして彼らが持つ「既存サービスと理想の状態とのギャップ」と「知覚リスク」をICTで解消することにより、ビジネスの成功を目指す。 本論文では、「ICTをインサイトに適合」させて、情報に新たな価値を付けることで、新たな市場を創造するためのアプローチ方法を説明する。

川崎 健(かわさき たけし)、安藤 美紀(あんどう みき)


本研究は、日本国債業者間市場を運営している日本相互証券株式会社が算出したBB国債価格を用いて、期間40年までのゼロ・クーポン・イールドカーブの推定を試みるものである。利付債の価格をもとに金利の期間構造を推定する手法は数多く提案されており、本邦の国債を扱った先行研究も数多く存在している。しかしながら、そのどれもが期間20年程度までのイールドカーブしか推定していない。今日においては30年国債、40年国債が発行されており、Non-JGB債においても残存期間が超長期にわたるものが起債されている。このような状況下において、期間40年までカバーするイールドカーブを算出する意義は大きいと考えられる。本稿では、安道 et al.(1)の非線形回帰モデリングをベースにしたノンパラメトリック手法を提案し、短期から超長期までのイールドカーブ推定を試みた。また、川崎 and 安道(2)の方法との比較も行った。その結果、2007~2012年の期間の多くの場合において、我々の提案する手法がより安定的にイールドカーブを推定できることが示された。

日本相互証券(株)市場企画部
阿部 卓哉(あべ たくや)

(株)富士通研究所 ITシステム研究所
松岡 英俊(まつおか ひでとし)

(株)富士通研究所 デザインイノベーション研究部
池田 弘(いけだ ひろし)

佐々木 正信(ささき まさのぶ)


地域・社会への貢献事例

スマートシティでは、エネルギー・交通等の各分野におけるCO2の排出を、ICTを利活用して抑制しながら、Quality of Life(生活の質)の向上を目指している。これにより住民は、優れた住民サービスを介して、情報通信ネットワークやエネルギーの利便性の向上と低炭素社会の実現を享受する。そこでは、需要側自らがエネルギーを創出し、自らがエネルギーの使い方を決めて需給を管理する、エネルギーのプロシューマーに変わらなければならない。スマートシティ実現に向けて、需要家自身が、①エネルギーマネジメントの主体的意識の醸成、②エネルギー消費機器の効率の最大化、③無駄・ムラのないエネルギーの賢い利用方法の普及・浸透に、今から取り組むことが重要である。本稿では、需要家がプロシューマーに変わるためのエネルギーマネジメントとそのPDCAサイクルの実行、それを活用したコンサルティング事例を紹介する。

上野 伸一(うえの しんいち)


一般家庭向けの消費電力見える化サービスが注目されている。しかし、その普及・浸透にはいくつかの課題がある。本稿では中野区のなかのエコポイントを事例として、同サービスの利用や省エネ行動継続に対する阻害要因を大きく5つに整理し、それぞれを打破するためのポイントをまとめた。直接および間接のインセンティブをどう活用するかがキーとなる。単に見える化サービスを提供するに留まらず、事業性を意識し、自律的・継続的な省エネ行動をフォローアップする仕組みづくりが重要となる。

山田 顕諭(やまだ あきつぐ)


近年、情報通信技術(ICT)や交通手段の発展により、社会のあらゆる領域で新しい知識・情報・技術の重要性が増し、知識基盤の社会化、グローバル化が飛躍的に進展している。初等・中等教育においても情報化の重要性が高まっているものの、我が国は他の先進国と比べ、その取り組みは進んでいるとはいえない状況にある。このような背景のもと、政府は新成長戦略において、2020年までに「21世紀にふさわしい学校教育を実現する」との目標を掲げ、モデル事業の実施をはじめとした施策を展開している。筆者は、2010年度に開始した総務省「フューチャースクール推進事業」の西日本地域のプロジェクトを推進している。本稿では、本事業を通じて明らかになった初等教育のICT基盤に求められる基本理念と要件を「学び」と「学びの場」の観点から整理するとともに、学びの質を高めるためにICT基盤がどのような役割を果たす可能性があるのか、実践を交え考察する。

蛯子 准吏(えびこ ひとし)


地域経済の停滞や少子高齢化などを背景に、地域金融機関を取り巻く経営環境は厳しい状況が続いているなか、地域金融機関は従来から取り組んでいる与信判断の高度化や事務効率化などによるコスト削減に加えて、法人顧客への経営改善支援やビジネスマッチング、個人顧客への相談業務の強化などによる顧客あたりの収益拡大に取り組んでいます。また、一部の地域金融機関は中心市街地活性化など、まちづくり・地域活性化へ取り組み始めており、 その仕組み作りを支援するコンサルティングが求められ始めています。一方、地域住民や企業などが主体的にまちづくり・地域活性化に取り組む「自助・共助のまちづくり」においては、①持続的な推進体制を確立すること、②運営資金を捻出することが課題となっており、地域金融機関の果たす役割に期待が高まっています。このような状況を踏まえて、地域金融機関の強みである顧客網を生かして、金融機関がすでに提供している商品・サービスを、まちづくり・地域活性化の観点から活用する方向性について弊社の考え方を述べます。

山尾 一人(やまお かずと)、服部 隆幸(はっとり たかゆき)