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FRI コンサルティング最前線(本文)Vol.04 2011

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特集1:今、そこにあるグローバル化 —“異質との共存能力”を考える—

昔は「海外」とか「国際」と言っていたのに、いつの頃からか「グローバル」という言葉が 頻繁に使われるようになりました。あたかも「グローバル」という言葉が「海外」や「国際」 より高級で洗練されているような印象を受けますが、実はこの3つの言葉にはきちんとした意味 付けがあります。「海外」とは、自国を中心に捉え、自国以外を考える時の概念であり、「海外旅行」や「海外勤務」 という使い方があります。「国際」とは、自国と特定の国との間を考える時の概念であり、「国際線」 や「国際結婚」等の言葉があります。例えば、「海外旅行」に使うのは「国際線」です。「グロー バル」とは、地球(グローブ)を1つの土台と捉え、その上で情報や資源の配分や共有を考える 時の概念であり、「GPS(Global Positioning System)」や「グローバルカンパニー」という言葉 があります。

徳丸嘉彦(とくまる よしひこ)


地方銀行業界を中心に、金融機関のおこなうコンサルティング機能が注目を浴び ている。当社は従来から、地域金融機関の地域密着型金融(リレーションシップ・バ ンキング)の重要性を認識し、IT面を中心に支援ビジネスをおこなってきた。コンサ ルティング機能の概念は地域密着型金融の延長線上にあり、その実践と位置付けら れる。 本稿では、金融機関のコンサルティング機能を「コンサルティング・バンキング」 と称し、その内容や推進における課題等について論じている。 最後に、コンサルティング機能におけるソリューションの一例として、グローバ ル化により海外進出する中小企業等の財務部門に対して、地域金融機関が提供でき る金融ITソリューションであるGTMSの例を示す。

金高 篤(かねたか あつし)


グローバル化が進展し、販売拠点や生産拠点の多拠点化と複雑化が進む中で、利 益最大化と在庫最適化のために、拠点間のオペレーションを見直し、需要変動に即 応した需給調整機能の強化、グローバルでのPSI情報の見える化による意思決定基盤 構築、マネジメント体制の構築等が必要となっている。本論では、PSIマネジメント改革の考え方と共に、これまで実施したコンサルティ ング事例を2件ご紹介する。事例1ではグローバルオペレーション改革と、グローバ ルにおける連結会計の見える化、事例2では需給調整機能体制の確立と、それに合わ せた業務標準化について実施した事例である。

赤荻健仁(あかおぎ けんじ)、齋木雅弘(さいき まさひろ)、東 健志(ひがし たけし)


グループ子会社から本社への経営管理・法定報告用情報を収集・集計/分析するいわゆる「グループ経営情報管理業務」は、部門毎に各々の業務目的に応じ個別に作成 したExcelを各拠点・子会社に配布・収集するという部分最適の集合となっており、内容の正確性を担保しえないなどの課題が散見される。事業再編の増加や法令開示強化の動きに対応するためにも、グループ全体で情報を管理・共有する基盤を構築し、情報の正確性、データ利用までのリードタイム短縮、重複調査の抑止による効率性 の向上が求められている。本稿では、グループ経営情報管理業務の改革を実現する富士通総研のコンサルティ ングサービスの内容を、富士通株式会社と共同実施したプロジェクトを例として紹 介する。また、報告内容の統合・標準化のためのグローバル標準技術であるXBRL(Extensible Business Reporting Language)の活用についても紹介する。

小泉 誠(こいずみ まこと)、菊本 徹(きくもと とおる)


最近の経営課題として、「海外事業の拡大」が上位に上げられている。近年はグロー バルの各拠点が対等の立場で、各拠点の強みを活かして商品開発等を行うことが進 展しており、そのためには、各拠点間のナレッジ共有が必要であり、それを支えるグローバルで情報共有を行う基盤が不可欠である。海外におけるビジネス環境には、日本とは異なるリスク(競争法やIPやPLに関する訴訟、eディスカバリー等)が存在する。これらのリスク対策として共通するのは、社内の情報を適切に管理しておくことである。従って、情報共有基盤を構築する際には、海外展開におけるリスクを抽出し、リ スクに応じた文書管理ルール・運用手順を策定することが重要である。今回、実プロジェクトでの検討支援を通じて得たノウハウを、構築における留意点として紹介 する。

児玉弘樹(こだま ひろき)


近年、日本企業の海外拠点が急増するに伴い、本社と海外拠点間、現地拠点間で情報を共有しつつ統合的に、各国での法令を遵守し、競争優位的に海外活動を行うことが求められている。本稿は、その支援のためのグローバルITガバナンスを発揮する上での問題点、課題、解決策につき、日本の素材産業の主要企業を対象にしたヒアリング調査をベースにまとめたものである。調査では、グローバルなITガバナンスに関して、ガバナンスそのもの、及び特にその中のインフラや運用面での問題、そして人材面の問題が指摘されることが多く、これらの分野ごとにとりまとめている。各社とも幾つかの解決策を見出しながらも模索が続いている。このような解決策は確定したものではなく、絶えず状況変化に応じて変え続けてゆく必要がある。富士通総研でも今後顧客企業へのアンケート調査を実施し、より新しい実態を把握しつつお客様と一緒に解決策を考え続け、支援させていただく予定である。

安部忠彦(あべ ただひこ)、倉重佳代子(くらしげ かよこ)


特集2:みんな、つながる —しなやかな強さを持つ社会の実現に向けて—

東日本大震災、原発事故による放射能被害、風評被害の拡大、電力問題などかつて経験したことのない危機に直面した。「失われた20年」と言われるほど長期にわたる低迷、少子高齢化の急速な進展に伴う社会福祉や成長力への不安、不安定な政治情勢や世界経済、グローバル化や新興国の目覚しい発展に対する相対的な地位の低下、といった話題が日々ネガティブに喧伝され閉塞感や疲弊感が蔓延する中で、今回の大地震により引き起こされた新たな危機の影響は極めて大きい。今回の事態から、我々は日本の社会経済構造の脆弱性を思い知らされた。効率化や競争力強化のために「集中」させた経営資源は大きな打撃を受け、その影響は世界に及んだ。電力問題も、需要拡大に対し安定供給を一義とする「集中」に拠るものという指摘は多い。医療・介護を含む公共部門においても、平常時前提の地域に依存した旧態然な制度や制約に基づく仕組みにより、広域にわたる甚大な災禍に対して機能不全も生じ、住民生活の安心安全は大変な危機にさらされることになった。

小村 元(おむら はじめ)


厳しさを増す競争環境の中で、製造業は収益性と効率性を高める必要に迫られており、中でもコストと在庫管理を含む安定供給に責任を持つ購買部門に対する期待が高まっている。また、東日本大震災時の復旧プロセスからは、複雑化したサプライチェーンの管理や復旧に向けた初動の迅速さも重要視されるようになっている。これらの期待に応えるためには、設計部門と連携したコストの作り込みといった部門の壁を越えた活動が必要となり、購買部門は「受動的なオペレーター」から「能動的な先導者」に進化せねばならない。本稿ではProactive Purchasingと富士通総研(FRI)が提唱する「より早い段階から部門の壁を越え能動的に先手を打ち、関係者を先導する購買業務」の実現に向けたアプローチを紹介する。それはFRIが「自律進化アプローチ」と呼んでいるもので、既存の暗黙知共有による底上げを狙う「既存手法共有」と新規ノウハウを作り出す「新手法開発」から構成されるものである。

大谷茂男(おおたに しげお)、磯野 亨(いその とおる)


製造業を中心とした多くの企業において、企業活動のグローバル化に合わせ、攻めの経営を行えるビジネスプロセスの最適化が求められている。しかし日本経済の停滞により、企業経営者は業務改革および情報システムの投資判断に苦慮されている。このような状況の中、情報システム部門には適正な投資判断を行うための情報システム投資計画の策定が求められている。情報システム投資計画を策定する上で多くの経営者が期待・要望されている点は、会社として取り組むべき課題を明確にすること、他社事例を踏まえたあるべき姿を明確にすること、投資の優先順位を明確にすることである。本稿では、自動車部品メーカーのお客様における情報システム投資計画策定事例を取り上げ、お客様が本来取り組むべき課題やあるべき姿をどのように明確にしたか、情報システム投資計画策定を進める上でのポイントについて紹介する。

小松志大(こまつ もとお)、菊地洋祐(きくち ようすけ)


九州電力では、地震や台風などによって大規模な配電線事故が発生した際に、被害状況の把握から復旧対応者の動向管理、復旧計画策定までを一元管理できる配電非常災害対応システムを開発し、2011年6月13日に運用開始した。本稿では、配電線事故の早期復旧完了を目的に効率的な復旧計画を算出する「復旧計画策定支援機能」について紹介する。「復旧計画策定支援機能」導入によって、復旧計画の精度が向上すると共に、復旧作業の進捗状況や複雑な作業条件の指定が復旧完了に与える影響を評価し、更なる復旧対策にフィードバックすることが可能となる。また、計画結果は全ての関係者で共有できる仕組みとし、情報伝達の時間的なロスを削減し、九州電力管轄エリア全体での計画調整が効率化される。

九州電力(株) お客様本部 配電システム開発グループ 所属
船越正博(ふなこし まさひろ)

九州電力(株) お客様本部 配電システム開発グループ 所属
石井弘信(いしい ひろのぶ)

柏木哲也(かしわぎ てつや)、茂木美恵子(もき みえこ)


災害時に情報が重要な役割を果たすことは言うまでもない。東日本大震災では、インターネットを介した様々なメディアが融合した新たなサービスが提供され、個人間の安否確認や被災者支援に重要な役割を果たすなど、従来にはない新たな情報利活用モデルが提示されている。一方、防災行政無線が破壊され、地域住民への連絡が途絶えるなど従来は想定しなかった大災害時特有の新たな課題も明らかとなった。本稿では、災害時における自助、共助、公助の諸活動を強化する新たな情報利活用モデルの構築に向け、活動主体と情報の観点から現状課題を整理する。課題を踏まえ、新たな災害情報基盤に求められる基本理念、機能、役割を整理し、クラウドをはじめとした新たな情報通信技術の活用可能性を踏まえ、災害情報基盤のあるべき姿を考察する。併せて災害時に主な防災拠点として活用される小学校等における利活用可能性を教育の情報化と合わせ考察する。

蛯子准吏(えびこ ひとし)


首都圏では主要ターミナル駅の周辺事業者や防災組織により構成される協議会組織を中心として帰宅困難者・滞留者対策を検討してきたが、各協議会組織はこうした取り組みの実効性を問われる形で2011年3月11日に発生した東日本大震災を迎えることとなった。災害当日はメディアで報じられている通り、首都圏各地で徒歩帰宅者による長い行列や宿泊場所を求め避難所に集まった帰宅困難者等の混乱が発生している。既存の取り組みではこうした被害は想定されていたものの、首都圏各地の混乱は避けられなかったのが実情であり、今まで協議会組織が議論を重ねてきたルールや対策について、実効性の観点からの見直しが必要な状況である。富士通総研は今般の災害事例を踏まえ、帰宅困難者・滞留者対策を見直し、改めて対策の構造を設計すること(グランドデザインの作成)が重要と考えており、本稿ではこの紹介を行うとともに、今後、帰宅困難者・滞留者対策を進める上でのポイントや留意事項を示す。

砂原健利(すなはら たけとし)


近年の厳しいビジネス環境下では、従来のようなコストも時間もかかる大規模な改革ではなく、短期間に効果創出が可能な業務改革が求められている。その中でも、新たな業務改革領域として、組織コミュニケーションを対象とした改革のニーズが高まっている。特に、VC(ビジュアルコミュニケーション)と呼ばれるICTツールを活用した改革のニーズは増大しており、3.11の東日本大震災をきっかけとして、災害時のコミュニケーション手段の確保や、在宅勤務での活用などで、注目を浴びている。しかしながら、VCツールを活用した組織コミュニケーション改革には様々な課題があり、業務に定着化できている企業は少ない。富士通総研(FRI)では、組織コミュニケーションのあり方を策定し、新たな業務とVCツールを定着化させ、効果創出するまでの一連のコンサルティングサービスを提供している。本論文では、組織コミュニケーション改革における成功のポイントを小売専門店B社様での導入事例と合わせて紹介する。

塩田好伸(しおた よしのぶ)、石川康久(いしかわ やすひさ)


企業は省エネ、CO2削減、エネルギーコスト削減の推進のため、エネルギーマネジメントに体系的に取り組み、PDCAサイクルを回していかなければならない。その中でキーとなるのが、エネルギーデータの見える化と、それに対する適正な分析である。本稿では、企業の主要エネルギー源である電力に焦点をあて、PDCAサイクルを回すトリガーとなる電力分析ナレッジとそれを活用するコンサルティングを紹介する。電力分析ナレッジは、企業・行政等延べ9業界約100社で取り組まれている電力分析手法の調査結果から抽出された知見・ノウハウを体系化したものである。コンサルティングはナレッジを活用して、主要分析手法を網羅的に把握し、お客様毎の適正な分析手法を洗い出し、いま取り組むべき最善の施策を抽出する。社会からの様々な要求に応え、環境経営に取り組む企業にとって、エネルギーマネジメントのPDCAサイクルの構築は環境経営の基本である。

上野伸一(うえの しんいち)