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FRI コンサルティング最前線(本文)Vol.02 2009

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特集:エンタープライズ・リスク・マネジメント(ERM)

法制度の改正、M&Aなど成長戦略の多様化、技術の急速な進歩など、企業経営を取り巻く環境の変化は非常に激しい。このような中、経営者は、経営資源を集めて事業活動に投資し回収するという活動を、適切に統治(ガバナンス)すると共に、的確な情報開示を行う「説明責任」をより強く求められるようになってきている。

藤原寛文(ふじわら ひろふみ)、小村 元(おむら はじめ)


〔内部統制〕

2008年6月に成立した金融商品取引法、いわゆるJ-SOX法は、全上場企業に対して短期間での制度対応を求めたため、全社統制、業務プロセス/ITアプリケーション統制、IT全般統制等多岐にわたる構築作業、監査法人との調整等の対応は、企業側に労力・コスト面で相当な負担が強いられていた。本稿では、『財務情報の信頼性確保』の一義的、短期的な達成をゴールと捉えがちな企業が多い中、こうした環境変化への対応を好機ととらえ、内部統制構築から会計システム見直しにとどまらず、継続的に経営改革へ取り組むプロセスそのものを組織風土にまで昇華していこうとする中堅企業の取り組みを支援したコンサルティング事例について紹介する。

内本夏郎(うちもと なつお)、大原宏之(おおはら ひろゆき)、下山卓克(しもやま たかかつ)、菅野 智(すがの さとし)

2008年4月より適用が開始された内部統制報告制度が2年目を迎えた。適用対象企業は、初年度の「『重要な欠陥がない』状況に持ち込む」という取り組みを終えて、現在は「内部統制を一層強化し、さらに効率化する」という方向に移行している。法制度対応への取り組みから、強化・効率化へのシフトを図る上で最大の効果を得るためのポイントは、2年目以降の法制度対応をリスクマネジメント高度化の過程と捉え、財務報告の信頼性を担保する以外の目的にも積極的に活用することにある。またその実現には、リスクマネジメントを全社横断的に見渡す部門の整備と被評価部門のスキル強化が不可欠である。本稿では法対応の初年度の取り組み状況を振り返り、2年目以降の取り組みをどのように構築していくべきかについて、富士通総研(FRI)がご支援をしている複数企業の状況を踏まえてご紹介する。

菊池貴文(きくち たかふみ)

XBRL(eXtensible Business Reporting Language)は、資本市場における企業情報開示の透明性・信頼性・即時性確保のための新しいコンピュータ言語としてグローバルに公的機関での採用が進んでおり、国内では2008年から企業開示システムである金融庁EDINETシステムや東京証券取引所TDnetシステム等で採用されている。一般企業においてもXBRLへの関心は高く、将来の国際財務報告基準(以下IFRS)適用と同様、各企業においては同技術に関する情報収集を行っていると考えている。富士通総研(FRI)では、XBRLに関連する国内外のコンソーシアムに参加し、数々のXBRL業務適合性検証を行っており、その成果をお客様にXBRL適用コンサルティング・サービスとして提供している。本稿では、XBRL適用においてプロジェクト成否の鍵を握る「タクソノミ」の開発のために当社が開発した方法論「タクソノミ開発フレームワーク」について、東京証券取引所グループ様の適時開示システムであるTDnet(Timely Disclosure network)タクソノミ開発事例を交えて紹介する。また、将来の一般企業へのXBRL適用の可能性についても展望する。

小泉 誠(こいずみ まこと)


〔事業継続マネジメント〕

世の中で安心・安全への関心が高まる中、トラブル発生を未然に防ぐための分析・対策立案といった予防的なアプローチが注目されている。情報システム分野においても障害を発生させた根本原因を探り出し、予防につなぐ取り組みが始まっている。本稿は、大手製造業A社様システム部門の事例を通じて、システム障害の分析、および対策立案に有効な障害ナレッジ構築を紹介する。これは、根本原因掘り下げガイドの作成、対策優先度見える化のためのツリー分析の実施からなり、ヒューマンエラーへの着目に特色を持っている。障害の未然防止・再発防止を実現支援する予防型障害管理の取り組みとして、システム部門に留まらず様々な領域で、障害管理・品質管理の質の向上に有効と考えられる。

新堀恭裕(しんぼり やすひろ)

企業を取り巻く脅威として、地震等の自然災害だけではなく、新型インフルエンザが大きくクローズアップされている。新型インフルエンザの脅威はすでに現実のものとなり、2009年4月末にメキシコにて低病原性のインフルエンザA(H1N1)が発生し、感染者は世界中に拡大し、同年6月には世界保健機関(WHO)では警戒水準をフェーズ6に引き上げた。日本国内でも感染者が多数発生しており、企業はその対応に追われている。行動計画を策定していない企業は場当たり的な対応しか行うことができず、策定していた企業では高病原性の新型インフルエンザ(H5N1)を想定した行動計画を策定していたので、そのままでは使用できない状況であった。富士通グループとしてもインフルエンザA(H1N1)に対し対策を講じる必要があった。本稿では富士通グループの行動計画策定ならびに対応状況をベースに、今後の新型インフルエンザ対策に向けて企業として取り組むべき事項を述べる。

二階堂 洋(にかいどう ひろし)

事業継続マネジメント(BCM)は、企業を取り巻くリスク環境の厳しさの増大や国際標準化の進展等から、企業が取り組むべき重要な経営課題である。BCMにおける現状の課題は、対象脅威に対するリスク軽減対策と費用のトレードオフの関係、不測の脅威が発生した場合の不確実性への対応である。企業は、不確実性への対応の課題に対処するためには、BCMを企業における危機管理と位置づけることで、経営戦略レベルで対応を行う必要がある。企業は、危機管理モデルを構築したうえで、危機対応能力の向上を行う必要がある。危機対応能力は、BCMで構築した行動計画・訓練などの実践ノウハウを応用することで向上させることが可能である。富士通総研(FRI)は、BCMコンサルティングで培った経験、ノウハウを活用し、企業の危機管理モデルの構築、および危機への対応能力向上に貢献をしていく。

吉田哲也(よしだ てつや)

近年高まりつつある地震やテロ、新型インフルエンザなど増大するリスク環境を背景に、不測の事態においても重要な事業を継続するため、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定する企業は年々増加している。BCPの実効性を確保するためには、PDCAサイクルとしての事業継続マネジメント(BCM:Business Continuity Management)を適切に運用することが不可欠であるが、参考となる事例がいまだ少ない状況である。富士通総研(FRI)では、BCPの構造化や、教育訓練の体系的実施、などの運用手法を確立し富士通社内で実践している。本稿では、社内実践によりBCPの実用性とメンテナンス性、教育訓練の実効性について良好な結果が得られ、BCMを適切に運用することができたことについて述べる。なおこの一環でBCMの英国規格であるBS25999について国内で初めて認証取得したことについても紹介する。

丹羽敏晴(にわ としはる)


〔情報セキュリティ〕

機密情報保護の重要性が叫ばれて久しいが、情報漏えい事故が後を絶たない。情報セキュリティ事故を完全にゼロにはできない現代社会では、情報セキュリティ対策の取り組みに合理性が求められる。その合理的取り組みを具体的に実現するのが情報セキュリティガバナンスである。情報セキュリティガバナンスの構築は、「リスクを評価する」というリスク認識から始まる。まず「何が重要か」を定義し、守るべき情報資産を特定し、ガードを固めるのが一般的な手順である。この一連の手順を考える上で、情報資産に関わるリスク分析が有効である。本稿では、某独立行政法人様における情報セキュリティ強化支援コンサルティングでの取り組み事例を紹介し、「情報資産に関わるリスク分析」を効果的・効率的に実施する方法論について述べる。

廣田昌寿(ひろた まさとし)


経営革新(ビジネス・トランスフォーメーション)

日本は、京都議定書において2012年までに1990年比で温室効果ガスを6%削減することを国際公約している。しかし、2006年時点で1990年比7.7%増となるなど、産業部門・家庭部門共に更なる削減努力が求められている。日本のCO2排出量の19.1%を占める運輸部門においても、環境にやさしいグリーン物流への取り組みが2004年より官民連携で行われてきた。このグリーン物流への取り組みは、物流事業者だけから、荷主とのパートナーシップ、都市内物流効率化のように地域と連携、エコポイントのように消費者と連携するなど、スキームが変化してきている。富士通総研(FRI)では、運輸部門におけるCO2排出量削減に向けた調査を様々なスキームで行っており、その事例を紹介するとともに、グリーン物流の今後の方向性とFRIの果たす役割について述べる。

亀廼井千鶴子(かめのい ちづこ)、高田和実(たかだ かずみ)、池田佳代子(いけだ かよこ)

国や独立行政法人等においては、昨今の厳しい財政状況の中、コスト削減を実現することが喫緊の課題である。もちろん、その事業運営を支えるシステムについても、システムコストに対する説明責任に加えて、システムコストの適正化や一層の削減が求められている。しかし、複雑化したシステムの実態を把握し、説明責任を果たすことやコスト削減の方策を立案することは、極めて難しい状況にある。富士通総研(FRI)では、このような課題に対し、コスト削減に向けた提言・提案を行う「システム可視化診断コンサルティング」のサービス化に取り組んでいる。このサービスは、パケットデータの可視化技術を適用することで、短期間で、客観的に、お客様のシステム全体を俯瞰し、課題解決の改善提言・提案を行うことを目指している。本論文では、FRIが取り組む「システム可視化診断コンサルティング」の概要と、お客様に適用した事例を紹介する。

小泉 裕(こいずみ ゆたか)

近年、コミュニケーションに問題を抱えている組織が多く見られる。A社の法人向け営業の現場では、チームにおける各メンバーのシナジーが十分に発揮されていないという課題認識を持たれていた。しかし、チーム構成の見直しとなると、業務上の役割分担と、メンバー個人のタイプを踏まえた検討が必要となる。富士通総研(FRI)では、こうした課題に対応するため、個人のタイプに焦点をあてたコンサルティングを提供している。本論文では、営業の現場におけるチーム改善の事例を通じ、個人のタイプまで踏込んだチーム分析の有効性を示す。なお、本論文で紹介している手法は、営業現場のみならず、チームで成果をあげようとしている現場全般に適用できると考える。

松本泰明(まつもと やすあき)

業務改善(プロセス・イノベーション)

不透明な経済環境下、効率的、効果的な業務運営は銀行経営の重点課題である。従来、銀行マーケティング部門は、その歴史的背景からマネジメントの必要性が薄く、依然として多くの非効率性が温存されている。このような課題に対し、富士通総研(FRI)では、マーケティング施策の①評価モデル構築、②評価指標(KPI)設定、③結果評価/要因分析に取り組み、施策マネジメントの強化に向けたマーケティング施策の評価手法を確立した。この評価手法では、FRI独自のコンサルティングノウハウとシミュレーション技術を駆使することで、これまで技術面、データ収集面の制約により明らかにできなかったマーケティング施策の真の効果を明らかにし、施策費用の削減と効果的な施策立案につながる新たな知見を提供する。この手法を活用したコンサルティングは、銀行マーケティング業務をはじめ、他業務/他業種への展開も可能と考えられる。

隈本正寛(くまもと まさひろ)

富士通総研(FRI)は金融機関において営業店改革コンサルティングを多数実施してきた。FRIの営業店改革コンサルティングは、長年の経験により確立された「実態把握手法」を基に、現場の実態を把握し、解決の方向性を導き出す。実態把握の特徴は、お客様の目的に応じて豊富な手法を組み合わせ「調査設計」を行う。また、多数の金融機関への実績から、ベンチマークするデータを多数保有しており、加えて、お客様自身が継続的に調査を行い「PDCA」を回し、改革推進を支援している点も特徴である。A地方銀行様向け営業店改革コンサルティングにおいて、お客様の目的であった2011年3月迄に営業店事務量を30%削減の目処を立てることに成功した。本稿では、この事例によりFRIの営業店改革コンサルティング(実態把握フェーズを中心に)の進め方を紹介する。

小澤宏文(おざわ ひろふみ)

経営の見える化の必要性がますます高まっている。以前は情報共有や効率化に重点が置かれていたが、最近では迅速にアクションを起こし成果を確実に享受することに重点が置かれている。また、昨今の環境変化に対応するために導入を検討している企業が多く、短期間で実現することを要件に挙げる企業が増えている。しかし、見える化はその対象を決定する段階でさえ合意を形成することが難しく、検討期間が長引くことが多い。そこで、富士通総研(FRI)では短期間かつ成果につながる見える化の検討方法として2つの手法を導入した。1つはビジネスの成果と業務・IT施策のつながりを明確にしながら検討するリザルトチェーンを使った手法であり、もう1つは業務改善にテンプレートを適用する手法である。本稿では、まず「見える化」の問題点を明らかにし、次に製販ともにグローバルに展開している企業での実施事例と問題点解決のために適用した2つの手法とその効果を紹介する。

亀岡朋徳(かめおか とものり)

近年、あらゆる企業のグローバル化が進み、企業を取り巻く環境は海外経済情勢の影響を不可測に受け激しく変化している。現在のような経済危機状況において、意思決定の遅れは致命傷となる一方、意思決定のスピードアップは強力な競争力となる。環境が激変する今、変化に耐えうる迅速かつ柔軟な意思決定環境を構築することは、企業において喫緊の課題といえる。企業の意思決定に長い時間を要する背景には、意思決定に多くの階層・部門が関連していることが挙げられる。それぞれの階層・部門によって異なる目的・条件を持つ場合、トレードオフの関係が成立ち、問題は複雑化し瞬時に意思決定できなくなる。本稿では、複雑なトレードオフを迅速かつ定量的に解決する手法として数理計画法適用の有用性を示し、数理計画法を実務に適用する上でのノウハウ・方法論とその適用効果を、化学メーカーA社様の数理計画法を用いた計画調整業務効率化の事例を通して紹介する。

茂木美恵子(もき みえこ)、宮崎知明(みやざき ともあき)

企業グループ全体の競争力向上が求められる中、本業から間接業務を徹底的に無くし、本業に専念させる間接業務のシェアードサービス※が注目されている。このシェアードサービスの目的は、間接業務を一つの集約した組織として、「本業へ最大限の価値を提供する」ことと「企業グループ全体での価値向上をサポートする」ことである。富士通総研(FRI)は、過去の様々な間接業務における企業変革のコンサルティング経験を踏まえて、従来の業務改革手法を発展させ、企業価値訴求型の間接業務改革手法を確立した。本稿では、FRIが推進した数多くの実績からノウハウを蓄積し、独自技法として加え発展させた間接業務改革手法とその適用の実践事例を紹介する。

※シェアードサービスとは、一般的には、人事や経理などの間接業務を企業グループ内で集約することである。また、集約することにより、コスト低減を図り、サービスの質の向上を狙うものである。

金子 勝(かねこ まさる)

小売業の多くは、顧客の生涯価値(LTV:Life Time Value)の向上を経営課題に掲げている。LTV向上とは顧客一人当りの生涯売上高を増やし、同時に新規顧客の獲得や既存顧客の維持にかかるコストを、できるだけ抑えて収益を拡大させる取り組みである。LTV向上のために多くの企業が積極的に顧客分析の活用に取り組んでいるが、再来店を促す施策に活用されているに過ぎないのが現状であろう。今回開発した同日買回り分析手法は、消費者の「同日の買回り」に着目し、来店した際に「ついで買い(関連購買)」を促す売場・ショップの組み合わせを導き出し、施策に活用するものである。この手法を活用することで、再来店だけではなく、買回り増加による売上増を期待できる。この手法をジェイアール東海髙島屋様に適用したところ、多くの関連購買の組み合わせを発見し、LTV向上施策の立案に結びつけることができた。この新手法と適用事例について紹介する。

安藤美紀(あんどう みき)

BPR(Business Process Reengineering)は、新たに導入されるITの活用も含め、改革された業務が定着化し、目標とした成果が得られて成功となる。システム導入の成功もさることながら、そもそもBPR企画自体に無理がある場合や、新しい業務へ変革する準備や新業務定着活動が実行できなければ、目的は達成できない。様々なビジネス形態を抱え、事業環境変化に即座に対応を求められる商社業界では、画一的な標準化が非常に難しく、またビジネスの前線で活躍し多種多彩な業務をこなしている営業現場部門への新業務定着化も容易ではない。本稿では、商社業務の特徴や富士通総研(FRI)での実施事例を踏まえ、全社共通方針に基づく業務活動のルール化を実現しながらも、業務の多様性を許容し、各ビジネスで選択可能な業務の類型化を図る新たなBPR企画の推進方法と、新業務を確実に実行するための定着化活動の取り組み方法をご紹介する。

清水健介(しみず けんすけ)

国際会計基準(IFRS)への対応方針が定まり、2011年6月までに現行の会計基準との差異を解消する取り組みが進められることを受け、企業会計基準が大きく見直されつつある。見直される内容の中には、経理・財務部門のみならず、各事業部門の業務へも影響を与えるケースもあり、変更内容へのスポット的な対応では、現場の業務に過大な負荷を与えてしまうことも考えられる。そのため、会計要件の変更に伴い見直しが必要となる業務・システムについて十分に検証した上で、全体最適化の観点から業務設計を行うことが重要である。本稿では、新リース会計基準への対応を行ったA社様の事例を踏まえ、会計基準変更を受けてどのように業務最適化を実現するのか、重要となるポイント/進め方について紹介する。

佐藤寿彦(さとう としひこ)、阿部謙司(あべ けんじ)

全国の自治体は、行財政改革の一環として行ってきた職員定数の削減と、その結果として若手職員数の減少による職員構成の変化に対応し、職員の生産性の向上などの体質改善を迫られている。しかし自治体の多くは、職員が行っている業務について、その内容や作業量を正しく把握できていないため、業務効率の向上が困難なものとなっていると考えられる。富士通総研(FRI)では、自治体の生産性向上を図るにあたり、まず現状の業務と人的リソースのギャップを可視化することで、簡易な方法でアセスメントを行うツールを開発し、適用を行ってきた。ここでは、ツールの概要と適用事例、および実際の適用事例から得られた生産性改善の可能性についての紹介を行う。

植村 篤(うえむら あつし)

現在、多くの地方公共団体では、税収の減少傾向に歯止めがかからない一方、少子高齢化の進展等に伴い財政需要が膨れ上がり、かつて経験したことのない極めて厳しい財政運営を強いられている。このような状況下、「総合窓口」の構築は、多種多様な窓口サービスに係る業務のプロセスを抜本的に改革し、住民満足度の向上と高度化・効率化した事務処理を同時に実現できる具体策として、その普及促進が大いに期待される取り組みと考えられる。本稿では、全国モデルとなり得る総合窓口の構築に取り組んでいる地方公共団体を対象としたコンサルティング業務の事例紹介を通じ、最適な総合窓口を構築する上で必要不可欠な視点や、これを実現するために取り組むべき主要課題について述べるものである。

長谷川一樹(はせがわ かずき)


新規事業(ビジネス・クリエーション)

昨今、上限金利付き住宅ローンなど、複雑なデリバティブが組み込まれた金融商品が増加している。金融機関においては、このような商品の取引から安定した収益を上げるために、マーケットの変化に対応してデリバティブの価格を適切に算出することが課題となっている。富士通総研(FRI)は、デリバティブの価格算出を含めて、数学やITを駆使して金融工学のモデルを開発し、システムとして実装するための一連のモデル構築支援サービスを提供している。このサービスを利用するメリットは、FRIは数学だけでなく、富士通グループの一員としてITにも強みを有しているため、モデル構築のプロセスを円滑に推進しながら、レスポンスタイムが速く、正確な結果を導くシステムを効率的に開発できる点にある。本稿では、A銀行様における事例を交えて、このサービスについて紹介する。

福島真太朗(ふくしま しんたろう)

今、「農業」が熱い注目を集めている。その背景として、消費者の食に対する意識の高まりにより、身近で安心・安全な国産の農産物へのニーズが拡大していることや、先進国の中で最低レベルの自給率(約40%、農産物カロリーベース)が問題視されていることがあげられる。一方、産業としての農業の生産性は、担い手の大部分が小規模農家で占められており、他の産業と比較するとその低さが顕著である。最近では、農家の中でも規模拡大を目指し「農業法人」化する動きが注目を集めているが、まだまだ生産性が低く経営レベルが未熟な法人が多い。生産性の高い農業法人となるためには、マーケットのニーズを捉え、ニーズへの対応に向けて改善を重ねられる体質を備える必要がある。しかし、現在は卸市場との取引が中心であるため、市場価格に右往左往するばかりだ。マーケットニーズを把握するためにも、農業法人は、食品メーカーや外食産業などと直接取引をする必要がある。ニーズを把握し改善活動を回すことは、競争力をつけることにつながる。こういった力をつけることは、とりもなおさず農業法人の価値を向上させることであり、市場価格に左右されず安定的に収益を上げていくベースになる。本稿では農業法人が顧客を機軸とした経営をベースとして、各々の農業法人の実態に合った評価の枠組みとその活用ポイントについて述べる。

麻生陽一郎(あそお よういちろう)、徳丸嘉彦(とくまる よしひこ)、古門勝也(ふるかど かつや)