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Japan

FRIコンサルティング最前線(本文)

創刊号 Vol.01 Nov.2008

 

日本経済は、グローバル競争の中で、厳しい環境下に置かれている。したがって、企業、行政には、成長を持続することが求められている。一方、人々は、利便性が高く安心・安全な生活を過ごすことができる豊かな社会を求めている。このような大きな課題を克服していくためには、企業の経営や公共の行政面で継続的に革新を推し進め、着実に実行していくことが必要である。そのサポート役として「コンサルティング」が重要な存在になっている。富士通グループ全体として、このコンサルティングを強化するために、富士通総研(FRI)にコンサルティング機能を集約するとともに、従来からの経済研究所、研究開発機能との連携を強化することで競合他社との差別化を図っている。本稿では、FRIの全体を鳥瞰(かん)して、その特徴と機能、および主なコンサルティングサービス内容などについて紹介する。

株式会社富士通総研 代表取締役社長
長谷川 展久(はせがわ のぶひさ)


経営革新を効果的に推進していくためには、構想を明確にして、社内コンセンサスを得て、全社・関係部門の協力体制を確立することが重要となる。お客様の経営革新遂行を強力に支援するために、富士通グループでは、コンサルティング実施に必要な一連の知識を体系化し、コンサルティング品質の安定化と効率化、そして高付加価値化の実現に取り組んでいる。本稿では、富士通グループが実施するコンサルティング活動を長年支えてきた独自のコンサルティング技法に、数多くの実践ノウハウを取り込み、拡充・発展させた「富士通コンサルティング知識体系CONPAM※/BT(The FUJITSU CONsulting knowledge、Procedure And Methodology/Business Transformation)」について、歴史的経緯やお客様にとっての意義などを含めて紹介する。
※CONPAMは、富士通グループのコンサルティング知識体系の名称である。

金子 勝(かねこ まさる)


2007年3月末から施行された「新しい自己資本比率規制(通称バーゼルⅡ)」により、銀行はオペレーショナル・リスクの量に見合った自己資本を持つことが要求されるようになった。ある銀行は、そのリスク量の算出方法として先進的計測手法を用いることを目指されたが、その具体的な実現方法についてさまざまな課題があった。富士通総研は、これらの課題の解決を支援するために、計量化モデルの構築およびその妥当性を検証するコンサルティングを実施し、高度なリスク管理体制の確立に貢献した。富士通総研には、金融工学、データ解析などの技術を駆使し、金融機関の多様なリスクの計量化に取り組んできた実績がある。オペレーショナル・リスク、金融機関に限らず、重要性を増しているリスクの計量化にご活用いただければ幸いである。

広瀬 淳一(ひろせ じゅんいち)


安定的な収益を確保する経営体質の確立に不可欠となるのが、企業統制・経営マネジメントに資する経営管理情報の整備である。金融機関に関しては、2004年12月に金融庁が発表した「金融改革プログラム」において、金融機関の経営管理の向上は具体的主要施策として挙げられており、経営状況のモニタリングに対する報告においても、データに基づく活動報告が求められている。「事務量」は、IE(インダストリアルエンジニアリング=生産管理工学)手法を活用し、事務を定量化し、事務に係わる仕事量を「時間」で捉え、事務の仕事量とそれを処理する人やシステムを合理的に把握できる。「事務量」の導入は、経営管理情報構築における基盤をなすものと位置付けられる。FRIでは、これまで、都市銀行・地方銀行・生命保険会社などへの「事務量」の導入を支援してきた。本稿では、「事務量」や、金融機関における「事務量」の導入について紹介する。

平岩 淳子(ひらいわ あつこ)

経営に寄与する情報活用ニーズが増大する一方、外部環境の変化が激しい昨今、真に経営者が経営の舵取りに必要なのは、グループ経営を可視化し強化するグループ経営統合情報基盤である。しかし、可視化要件が定まらないことや、お客様ニーズを整理するシステム構築側のスキル不足などから、データ統合は“企画倒れ”となりがちであり、経営者は思うままに経営の舵取りができないでいる。こうした中、富士通総研ではお客様の経営可視化ニーズを経営、業務、ITの3つの観点から実現していくコンサルティングを継続して実践してきた。本稿では、そのコンサルティング技法について紹介するとともに、当技法適用事例について、業界を跨いだ事例を2件ご紹介する。

新井 三奈(あらい みな)

近年日本企業の多くが、売上拡大・新規市場開拓を目指しグローバル市場への進出を果たしている。しかし、多くの日系企業においてヘッドクォーターから見て海外現地会社の実態が把握されておらず、また現地会社においてもプロセスの標準化や各部門共通の指標の定義がされていない。そのため、海外現地会社のマネジメントが困難で期待通りのグローバル展開の成果が得られていない企業も多い。そこで本稿では、日系グローバル企業の現地会社に対し、現地実態の可視化からアプローチし、海外現地会社の経営管理メカニズム構築から定着化までをワンストップでサポートする富士通総研(FRI)のコンサルティングのポイントを述べ、大手家電メーカや自動車メーカなどにおける具体的なコンサルティング事例を紹介する。

中谷 仁久(なかたに ひろひさ)、清水 義之(しみず よしゆき)、山口 真人(やまぐち まこと)

現在、日本の製造業を中心に、企業としての顧客リレーション強化をアフターサービスから実現するといった考え方の変革が起こっている。その背景には、アフターサービスの高付加価値化による製品差別化、アフターサービス有償化による収益改善への期待が存在する。アフターサービスには、製品問合せ/修理受付、訪問修理・メンテナンス、修理部品調達・発送などが存在するが、お客様に付加価値を提供し、満足度向上を図るためには、それらの業務連携が必須と認識する企業も多い。本稿では「アフターサービス業務の連携を強化し、お客様リレーションの司令塔的役割を担うコールセンター」を構築したコニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社様の事例を通じ、その背景・問題意識・狙い・効果、そしてプロジェクトを支援させて頂いた富士通グループの様々な業務プロセスと連携するコールセンター構築ノウハウを活用したコンサルティングへの取組みを紹介する。

竹本 将和(たけもと まさかず)


アジア地域におけるインフラ整備をPPP(Public Private Partnership)の枠組みで進めることを目指したアジアPPP推進協議会が2006年度に設立され、富士通総研は2007年度から全体事務局を務めるとともに、インドネシアやインドにおけるPPP案件発掘調査を行っている。本論文では、案件発掘調査の進め方を概観した上で、我々が実際に2007年度に行なったインドネシアにおける案件発掘調査(インドネシアの災害情報提供サービス 案件)の概要について述べる。最後に、PPPの枠組みで行う場合の事業性の問題(Viability Gap)に触れ、この問題解決のための財政制度面での仕組み作りの必要性について述べる。

合田 俊文(ごうだ としぶみ)

市場環境が激変している昨今、不確実性の高い未来に対していかに柔軟かつ迅速に対処していくかということが課題となっている。企業が永続的に発展するために目指すのは、広く社外に未来に対する自社のビジョンを指し示した上で、独創的な市場を創造し続けることである。我々はこれまでのコンサルティングノウハウを集約し、非線形の未来を洞察するための方法論を確立した。これは業界を跨る様々なデータや事例とニーズを踏まえて「変化の予兆」を捉え、そこから各プレーヤの役割の変化や価値提供の新たな流れを示した「未来洞察像」を導く方法論である。本論文では、その方法論の概要と適用事例、活用方法について述べる。

佐々木 哲也(ささき てつや)


熟練ノウハウをもつ団塊世代の大量退職により、製造業の競争力の源泉である「ものづくり力」に陰りがでてきている。これは大企業ばかりでなく、熟練者に大きく依存している中堅・中小企業も同様であり、各企業が本格的に技術・技能伝承に取り組まないと、企業の存続そのものを揺るがしかねない事態になることが予想される。特に、技術伝承は標準化や自動化により比較的簡単であるが、技能伝承は人材育成を通じて伝承を行うため、成果を出すのに数年を要し、早急なる対応が必要となる。富士通総研では、製造業への技術・技能伝承コンサルティング実績を元に熟練ノウハウの形式知化を技術・技能伝承サイクルとして体系化している。本稿では、製造業を中心とする企業が、どのように熟練ノウハウを伝承すべきかについて、技能伝承の観点からその取組みを紹介する。

野中 帝二(のなか ていじ)、安部 純一(あべ じゅんいち)、白石 一洋(しらいし いちよう)

近年、コーポレートガバナンスやCSRの一環として事業継続性を高める要求が強まっている。BCM事業部では、富士通主要事業部門を対象に事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定に取り組んでおり、その一環で、パーソナルコンピュータ事業のBCP策定を実施した。当該事業は、製・販・技一体の構造を成しており、業態が広く、事業継続分析の対象となるリソースが多く複雑であることから、新たに開発したビジネスリソース構造の可視化技術を適用してビジネスリソー ス構造の現状分析を行った。大量のリソースが複雑な依存関係で結ばれている構造を図式により可視化させたことにより、BCPに関する多角的な検討ができ、効果の高い的確な事業継続対策立案に結びつけることができた。リソース構造の正確な表現を効率良く記述できる手法は、策定期間の短縮化も実現でき、BCP策定のスピー ドアップにも貢献できている。

橘 博隆(たちばな ひろたか)

近年、多くの国で会計・監査制度、コンプライアンス、リスクマネジメントにかかわる法制化が進んでいる。本稿では、内部統制に取り組むことの本質的な意義、グローバルプロジェクト特有の課題を整理した上で、米国SOX法の対応を推進され た三井物産株式会社様の事例を通じ、グローバルな内部統制プロジェクトにおける成功要因とは何かを明らかにする。また、2005年度からプロジェクトを支援した富士通グループにおいて、このプロジェクトの成功に寄与するために、内部統制という専門性の高い分野のコンサルティングを、どのようなアプローチでグローバル展開したのかを述べた上で、この実績から生まれ体系化された内部統制ナレッジや、富士通グループ海外拠点(米、欧、豪)との連携のあり方についても論じる。本事例による示唆は、今後J-SOX法対応を推進する企業にとって重要な意味合いを持つと思われる。

根本 高広(ねもと たかひろ)、Bonnie Miller

2008年4月より、全上場企業に内部統制制度の適用が開始された。中部電力株式会社様では、この制度対応に当たり、全32部門が参画し約300名の担当者が関係するプロジェクトを構築した。大規模な体制で短期間に全社業務の可視化・評価を実施するにあたり、まず複雑に連関した全社規模の業務を財務報告に果たす役割という尺度で整理して統制の対象範囲を明確化し、各担当者の役割分担を明確にすること、および段階的に範囲を拡大することで現場部門へのノウハウの浸透と手戻りの最小化を実現した。本稿ではこのような全社規模での取組みの具体的内容と、プロジェクト実施において顕在化した内部統制評価に当たっての課題や、富士通総研が提供した様々なノウハウなどを紹介する。また、全社共通ルールにより可視化された成果物の活用可能性について、中部電力株式会社様の評価も併せて提示する。

菊池 貴文(きくち たかふみ)

BCM(Business Continuity Management)は、BCP(Business Continuity Planning)策定・教育訓練・評価検証・改善見直しというPDCAサイクルで表現される。昨今、地震に加え新型インフルエンザ対策に対する関心も高く、BCP策定企業が年々増大している。それらの企業は、現場の作業負荷を省力化し適正なBCM運用を展開しつつ、いかに事業継続性を向上させるか、という運用視点に関心を移しつつある。その中心的な役割として期待されているのが教育訓練である。本稿では、BCMにおける教育訓練の目標と課題を明らかにし、それを解決するためのプロセスとして標準化した教育訓練企画運営手法(ABCEM:Advanced Business Continuity Exercise Methodology)について論述する。そのなかで事業継続対応レベルや訓練目標に応じた教育訓練手法の適用と評価方法を紹介する。さらに事業継続対応力の向上に伴う教育訓練の高度化と今後の課題について記述する。

星 多利良(ほし たりよし)