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ゲノム・創薬によるオーダーメイド医療の発展に向けて
―医療ビッグデータとAIが生み出す新領域―

掲載日:2018年7月3日

概要

昨今、ゲノムやDNA、遺伝子といった言葉を日常的に耳にするようになりました。がんを始めとした疾患の診断や治療薬の開発、生命の進化過程の研究など、実用研究・基礎研究を問わずゲノムは欠かせない存在になっています。
 ゲノム科学は約半世紀前に誕生した若い分野ですが、短期間で急激に成長しました。その結果、1990年代では医師が10年以上かけて疾患の原因遺伝子を特定していたものが、現在では早ければ1~2年で完了します。創薬でも、疾患の原因となる遺伝子に働きかけて治療する分子標的薬が盛んに開発されています。臨床現場では、遺伝子検査による最適な薬の処方がすでに行われており、一部のがんについては2018年度内にゲノム検査の保険適用の開始が見込まれています。
 こうした状況の中、オーダーメイド医療の実現に向けて、人工知能技術などの高度なIT技術の重要性は以前にも増して高まっています。本稿では、私たちのコンサルティング経験に基づき、今後の医療・創薬といったライフサイエンス分野への高度IT技術の適用における課題や解決の方向性について論じます。

課題

ゲノムは先端医療のまさに主役と言える存在ですが、ゲノム科学は元々基礎生物学の学問であり、医療や創薬とは隣接しながらも、それぞれ独自に発展してきた分野です。例えば、医学研究は患者の症例を中心にしていますが、ゲノムの研究では試験管内での細胞実験が多く行われます。これらの分野の融合を推進することは、IT技術に課せられた使命の1つです。ゲノム研究と医療・創薬分野の融合に向けた課題を説明します。

ゲノムと医療情報の統合

1つめの課題は、ゲノムと患者の健康情報など複数の情報を統合した知見を得ることです。これまでにゲノム医療は主にがんや難治性疾患の領域で大きく前進していますが、これらはゲノムの影響が非常に強いという特徴があります。
 一方で、ウィルスへの感染のしやすさ、生活習慣病や認知症のリスクといった問題では、ゲノムと環境要因との相互作用が重要であると考えられています。また、日本人と欧米人のゲノムの傾向の違いといった問題もあります。これらの仕組みを踏まえ、効果的な治療法を確立するには、ゲノムと他の要因の関係性まで視野に入れた理解が必要になります。

複数の情報を統合したデータ基盤の整備

ゲノムの情報から疾患や薬の働きを直接予測するのはまだ困難であるため、医療や創薬の現場では、エビデンスとして臨床研究、動物実験、試験管レベルでの実験、コンピューターシミュレーションの結果といった様々な種類の情報をもとに専門家が総合的に判断する必要があります。
 現状ではそうしたエビデンスの収集に大きなコストがかかっており、データ基盤の整備は今後の医療・創薬の発展において欠かせない課題となっています。アメリカではNIH (National Institutes of Health) が主導して各種データベースの整備が行われており、日本でも同様の取り組みが進んでいます。

図1:「ゲノム・創薬によるオーダーメイド医療の発展に向けて―医療ビッグデータとAIが生み出す新領域―」
【図1】ゲノム研究がもたらす医療・創薬への影響

解決策

富士通総研によるライフサイエンスと高度なIT技術の融合

富士通では、人工知能技術やデータサイエンスを始めとした高度なIT技術を駆使して、ライフサイエンス分野における課題解決に向けた取り組みを推進しています。ライフサイエンスと人工知能技術は互いに専門性が高いため、専門家同士の相互理解が重要なカギとなります。
 富士通総研では、ライフサイエンス領域とIT領域の両方の専門知識を併せ持つコンサルタント、データサイエンティストが両分野の専門家をつなぎ、設計から実装まで一貫した支援を行っています。以下では、ライフサイエンス分野における富士通総研の取り組みを紹介します。

医療系知識ベース構築の支援

富士通研究所では医療・創薬研究に向けたデータ基盤の整備を目的とし、Linked Open Data (LOD)(注1)、自然言語処理技術、人工知能技術を活用した医療系知識ベースの開発を進めており、富士通総研はその支援を行っています (図2)。

図2:「ゲノム・創薬によるオーダーメイド医療の発展に向けて―医療ビッグデータとAIが生み出す新領域―」
【図2】オーダーメイド医療に向けて医療知識ベースがもたらす価値

支援の概要としては、私たちの医療系の専門知識と人工知能技術の実装経験に基づき、医療分野の専門家のニーズの具体化や専門家とのコミュニケーションのサポートといった上流部分から、プロトタイプの設計や実装、評価といったシステム面についてもサポートしています。
 私たちの専門知識が特に活きた場面としては、富士通の新技術である「説明可能なAI」(注2)の医療分野における検証が挙げられます。一般に人工知能技術は推定根拠が不明なブラックボックスであり、それが実用上の大きな課題になっています。富士通研究所の「説明可能なAI技術」は、医療系知識ベースの情報を富士通独自の人工知能技術であるDeep Tensorの推定結果に連結することで、人工知能による推定の理由や根拠を提示するホワイトボックス化の技術です。
 この技術の開発にあたっては、AIから出力された判定理由について、医療の専門家の観点から見ても妥当であるかといった検証が必要となりますが、医療系と人工知能技術の両方の知識が必要になる点が課題でした。そこで私たちは、出力された根拠に対して、研究論文の内容やその他の医療系知識と矛盾がないかといった検証や、推定精度に関するデータ分析など、医療と人工知能の両方向の観点から技術検証を行うことで「説明可能なAI」の有効性を示すことができました。

化合物活性予測モデル開発

化合物の生理学的な活性の予測は、創薬、化学、食品など様々な領域で重要なテーマです。 化合物の性質は実験により測定するのが信頼度の高い方法ですが、実験はコストが高く時間もかかるため、コンピュータ予測による研究の効率化が期待されています。
 富士通総研では人工知能技術を用いて、化合物活性の予測モデルを開発してきた経験があります。ただし、一口に化合物と言っても、ビジネス上の目的によって人工知能を適用する観点は様々です。例えば、薬の副作用と一般の化学製品では人体に与える影響は大きく異なり、学習に適したデータやアルゴリズムも異なってきますが、医療や創薬の知見が不足しているために、こうした点を見落とし、望むような成果が得られないケースが見られます。そうした失敗を避けるため、私たちは医療と人工知能の双方の観点を踏まえつつ、適切なデータセットやアルゴリズムの選定といった初期の段階からお客様と一緒になって検討し、1つ1つ納得していただきながら進めることで、お客様に満足していただける成果をあげることができました。

リアルワールドデータ分析

医療現場のデータを活用するために、罹患履歴や処方履歴、検査情報などの臨床行為に基づくデータ(リアルワールドデータ:RWD)を収集・活用しようとする取り組みが国家を挙げて推進されています。収集したデータは、一次的には臨床研究や疫学研究への利用が考えられますが、製薬あるいは医療機器メーカーにおけるマーケティング、研究開発などへ利用の幅が拡大しています。これらの企業では、疾患の市場調査や上市後医薬品の副作用実態把握あるいは適応拡大の取り組みに購入したRWDを活用しています。
 富士通総研では、RWDを用いた数値解析サービスを実施しており、分析の課題設定から設計への落とし込み、分析実装、結果評価を提供しています。製薬企業や医療機器メーカーの業務部門のお客様はRWD分析の重要性は感じているものの、具体的に何ができて、それが業務にどう活きるのかを実感できていないなど、分析を実装することに大きな壁を感じています。そこでIT技術によって、どのような解析ができるかというイメージを共有しながら、分析の実装と結果のフィードバックを素早く繰り返すことで、効果的な分析につなげることができました。

成果

ゲノム・医療に関する今後の展望

本年、次世代医療基盤法が施行されました。近い将来、事例で紹介してきたようなデータが、ゲノムから罹患履歴までを横串で利用できる基盤として整備されます。医療データ基盤を誰もが利用できる時代が来たときに、解析技術によってどれほど付加価値を与えることができるかが1つの争点になることが予想されます。特にヘルスケア産業では、グローバル競争が激化しており、このような取り組みが日本企業のプレゼンスを高めるための一助となることを期待されています。
 私たちは病院、製薬・医療機器メーカー、大学・研究機関などの医療データ活用の主体となるプレーヤーに対して、データ活用コンサルティングを提供してきました。分子レベルから実臨床まで、様々なレイヤーのデータを扱ってきた経験・ノウハウと保有する人工知能技術・解析技術(自然言語処理、画像認識、数値解析)を用いて、来たるべき医療ビッグデータ利活用の時代に貢献します。

注釈

(注1)Linked Open Data (LOD) :
   Web上でコンピュータ処理に適したデータを公開・共有するための技術の総称。

(注2)説明可能なAI :
   富士通研究所2017年9月20日【プレスリリース】
   「AIの推定理由や根拠を説明する技術を開発「Deep Tensor」とナレッジグラフを融合」
   http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/09/20-1.html
   富士通研究所2017年12月21日「当社先端技術「説明可能なAI」が英Nature誌に掲載」
   http://www.fujitsu.com/jp/group/labs/resources/news/topics/2017/topics-20171221.html

(ビジネスサイエンスグループ コンサルタント 府川 直矢、柴田 紘孝)

関連サービス

【AI活用・ビジネスアナリティクス】

【ヘルスケア】

関連リンク

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