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アクションリサーチ手法による公民連携の災害時福祉支援体制の構築

掲載日:2018年3月28日

概要

日本は世界でも有数の自然災害の多い国です。超高齢社会の日本が安全・安心な社会として認められるには、何が求められるのでしょうか? その答えの1つが、災害時の福祉支援体制の構築です。

東日本大震災、熊本地震では、避難生活の中で命を落とす災害関連死や体調の悪化・重度化が大きな問題となりました。災害から助かった命を、どうすれば守り続けられるのか?すなわち、二次被害をどう防ぐのか?この命題に取り組むべく、全国で災害時の福祉支援体制(以下、「災害福祉広域支援ネットワーク」)の構築が、自治体・事業者・市民の公民連携体制で進んでいます。構築に取り組む都道府県は約8割に広がり、活動に従事する人材の育成も進められています。しかし、災害時の医療や保健と異なり、災害時の福祉に対する議論は始まったばかりです。

富士通総研では、平成23年度の東日本大震災での被災3県における高齢者支援の実態調査と研究(注1)を皮切りに災害福祉広域支援ネットワークの調査研究を開始し、先駆的・試行的な取り組みであるとの評価を頂き、厚生労働省の助成を受けながら都道府県および広域で実施される災害福祉広域支援ネットワークの調査研究を行っています。一方、災害時の福祉の有用性が明確となってきた現在、調査研究の目的は単にその内容を明らかにすることにあるのではなく、災害福祉広域支援ネットワークの体制構築の推進策を明らかにし、取り組みを促すことにあります。そのため、本調査研究は、得られた知見を現場に還元して現状を改善することを目的とした実践的研究であるアクションリサーチの方法で進められています。アクションリサーチは、研究者と実践者の協力~実践的な問題の解決~実践の変化~理論の構築、に至る研究方法であり、研究者が現場にも介入し、ステークホルダーと共に取り組み、課題解決を図る実践的な研究方法です。本稿では、こうした実践的研究による体制構築へのアプローチと、それによって全国で進む体制構築の状況をご紹介します。

課題

(1)要配慮者の増加への対策

平成25年6月の災害対策基本法の一部改正により、高齢者、障害者、乳幼児等の防災施策において特に配慮を必要とする「要配慮者」の対策が強化されました。要配慮者は平時の生活でも支援等の課題を有していると考えられ、緊急期の避難行動等だけでなく、それ以降の避難生活でも支援が必要です。よって、たとえ救命活動や避難行動で命が助かっても、避難生活で適切な場所と支援が得られなければ、状態が悪化・重度化し、最悪の場合は死に至ります。

現在の日本では、少子高齢化で高齢者人口が増加し、要介護高齢者や障害者の在宅生活が促進される一方で、核家族化や地域コミュニティの衰退が進んでいます。すなわち、平時より「要配慮者」と認識される人々が地域に増えているだけでなく、平時はどうにか自立していても、災害で従前からの課題が顕在化し、避難生活の中で新たに「要配慮者」となる可能性が高い人々も増えていると考えられます。要配慮者となるような人々は、復興に向けた生活再建の力・復元力も弱いため、多くの支援を必要とします。よって、被災自治体が復興を図る際に要配慮者対策は大きな影響を与えるため、その増加を防ぐことは課題ですが、自治体で具体的な対策は進んでいません。

(2)支援体制構築には公民が連携して取り組む必要がある

東日本大震災、熊本地震での経験、また、災害対策基本法の改正等でも示された要配慮者対策や一般の避難所での体制整備等の重要性等から、災害時にも福祉支援体制が必要であるという認識は自治体、社会福祉施設等の事業者、市民のそれぞれで進みました。そして、各都道府県では自団体内における災害時の福祉支援体制の構築を進めるべく、都道府県や市町村、社会福祉施設等の各種団体、福祉専門職の職能団体等の民間事業者が参加する協議体の設立と、活動する人材の育成を図りました。一方、立場が異なる公民の主体が参加し、連携するには、課題の理解、目標の共有、各主体の役割分担の理解等が必要です。一方、一括りに「民間の事業者」といっても、高齢者・障害者、乳児等の支援対象で事業者は異なり、たとえ高齢者のように同じ対象でも施設等の種別で団体が分かれていることから、同じ福祉分野であっても縦割りで、各事業者が交わる機会は極めて少ない状況です。しかし、支援の対象となる地域は縦割りではありません。よって、今まで交わる機会がなかった民間事業者が一堂に会し、1つの目的のもとで体制をつくっていくためには、構築の推進者である自治体が背景や理由、目標等を明快に説明し、理解や協力を求めて働きかけることができることが重要です。さらに「なぜ災害時に福祉が必要なのか」、「医療や保健の体制があれば大丈夫ではないか」といった根源にかかわる問いを投げかけられても、きちんと説明・議論できることが必要です。しかし、新しい分野である災害時の福祉については、「わかっていてもうまく説明できない」、「どう説明すればよいかわからない」と訴える自治体担当者も多く見られました。しかし、これらの人々は体制構築の推進・内容を深化させるための要であり、それらの人々が他者に対して働きかけることができるよう支援をすることが、体制構築のために重要であることが見えてきました。

【図1】都道府県内での体制構築状況
都道府県内での体制構築状況
(株)富士通総研(平成24年度~平成28年度) 厚生労働省社会福祉推進事業

解決策

―アクションリサーチの実践 構築支援とその段階に応じた調査研究の深耕―
(1)共通認識を得るための汎用性のある説明資料の作成と提供

災害福祉広域支援ネットワークについては、平成24年には厚生労働省より都道府県に対して構築の依頼が出ていますが、本分野の調査研究は東日本大震災以降に本格化した状況があり、情報や資料は多くありませんでした。そのため、弊社では、厚生労働省からの助成を受けて調査研究を行うことで、各都道府県が体制構築・推進に取り組むための方法も探ることとなりました。体制は、都道府県・市町村だけではなく事業者団体や住民等の公民協働でつくられるものであり、多くのステークホルダーとの協議と取りまとめを行いながら推進するものであるため、安易なものではありません。また、一義的には都道府県内での体制構築であっても、広域災害では他の都道府県へ支援に入ることも十分に想定されるため、各都道府県間で支援が接続可能となるように基本的な考えや行動も共通化されている必要があります。

そのため、富士通総研の調査研究では、先行して取り組みを進めている岩手県や京都府等の自治体、各種団体の協力、厚生労働省からの助言を得つつ、災害時の福祉支援体制の必要性と構築すべき体制、そのステップを整理し、都道府県の協議会等での説明や検討、プレゼンテーションに使えるように汎用性のある説明資料等の資材の開発を行い、自治体の担当者等への提供を開始し、併せて適宜その現場に赴き、実際に協議の支援を開始し、その中で得られた情報を調査研究にフィードバックすることで理論構築と現場での展開を行っています。また、提供する資料についても、熊本地震・台風10号被害等での活動から新たに得られた内容や、実際に使用したセミナー等での意見を反映してバージョンアップや内容の拡充を図っています。

公民の異なる主体で体制を共に構築していくためには、合意形成のプロセスが重要であり、理念や方向性は明確にして共有しておく必要があります。しかし、具体的な活動や訓練のマニュアル等はあるものの、災害時の福祉については、共通認識を得るために必要となる背景や理念等を明快にまとめた資料は少ない状況です。そのため、弊社の資料は、自治体・事業者等団体等が参加する都道府県の協議会等だけでなく、災害時に活動する災害派遣福祉チームの研修、市民等の啓発セミナー等で利用されています。(【図2】)

【図2】汎用性のある説明資料の例
汎用性のある説明資料の例

(2)活動の標準化・共通化のための全国セミナーの開催

現在は全国の約8割にのぼる都道府県が体制構築に取り組み、その多くでは災害派遣福祉チームの人員登録が進んでいます。しかし、1県あたりの登録人員も数百名にのぼる等、関心は非常に高まっているものの、昨年度の弊社調査では、実施体制や活動人員の確保・育成方法に苦労し、試行錯誤している状況が見られました。さらに、災害では都道府県を超えた支援が行われる可能性も高く、圏域や広域での活動内容の標準化・共通化の取り組みや情報交換の場も求められていましたが、そうした取り組みは行われていませんでした。

そのため、平成29年11月に構築に取り組む都道府県および都道府県と共に取り組む団体等を対象に「災害福祉広域支援ネットワーク構築セミナー~災害時の福祉支援体制構築のための人材育成」と題したセミナーを開催したところ、29府県の担当者、事務局等として都道府県と一緒に取り組む団体の計78名に参加いただきました。本セミナーでは、懸案となっている災害派遣福祉チームに対する研修プログラムを、体制構築に先進的に取り組む岩手県・京都府の協力を得て開発しました。出席者には、講義やグループワーク、デモンストレーションを通じて体験的に学んでいただき、資料も都道府県での研修用資材として提供することで、体制構築に取り組む都道府県等への直接的な支援を進めましたが、活動の標準化と共通化、各都道府県間の情報交換も並行して行いました。本セミナー終了後のアンケートでは、9割以上の方から参考になったとの高評価を頂き、次に取り組むべき具体的な課題を認識できた等の意見が見られ、さらにもう一段階進めるための役割を果たすことができました。

【図3】全国セミナーでの状況
全国セミナーでの状況
「災害福祉広域支援ネットワーク構築セミナー ~災害時の福祉支援体制構築のための人材育成~」
2017年11月14日開催 (株)富士通総研

成果

7年にわたる私達の調査研究では、体制構築に取り組む都道府県と情報交換を通じて関係性をつくり、熊本地震での都道府県による初の災害派遣福祉チームの派遣同行(注2)等の実地調査も含み、現場に調査研究の知見等を提供していくことで体制構築を側面より支援し、その取り組み成果を調査研究の中で取りまとめて啓発を図ることで、全国的な体制構築へとつなげてきました。また、国の助成によって調査研究を進めてきた者の責務として、あらゆる場面を利用して情報を発信し、啓発の一翼を担ってきました。

この7年の中で、災害時の福祉支援体制に取り組む都道府県は当初の1割弱から8割程度まで広がり、この実態が活動環境の整備につながってきた状況が見られます。平成30年1月23日に厚生労働省より発出された「社会福祉法人による『地域における公益的な取組』の推進について」では、社会福祉法人が行うべき公益的な取り組みの1つとして「災害時に備えた福祉支援体制づくり」が位置づけられており、今後の体制構築に好影響を与えると考えられています。また、平成30年度には、厚生労働省より弊社の平成29年度の調査研究報告書を参考資料とするガイドラインが出る予定です。こうしたことも、単に私どもの調査研究がメカニズムを明らかにするだけではなく、そこで得られた知見を体制構築に取り組む都道府県等に還元していくことによって構築への取り組みを支援してきたことの成果ではないかと考えています。

災害時の福祉支援体制以外にも、平時の体制である地域包括ケアシステムについても、富士通総研は同様の実践的研究(注3)を行い、知見を積み重ねてまいりました。その実績に基づく知見・ノウハウを生かし、持続性ある社会の構築を目指し、今後も実効性のある支援を行っていきます。

注釈

(注1):「被災時から復興期における高齢者への段階的支援とその体制のあり方の調査研究事業
(㈱富士通総研 平成23年度 厚生労働省老人保健健康増進等事業)

(注2):「熊本地震から考える災害福祉」

(注3):国の医療・福祉分野の調査

(行政経営グループ チーフシニアコンサルタント 名取 直美)

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