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有事に強い医療機関を目指して

有事に強い医療機関を目指して!

―自助から共助に向け、事業継続の取り組み状況に応じた業務継続力強化ワンストップご支援サービス―

掲載日:2018年3月19日

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概要


厚生労働省から各都道府県に対する通達で、災害拠点病院の指定要件(注1)にBCP・BCM(注2)の取り組みが追加され、既存の災害拠点病院では、2019年3月までに対応が求められています。しかし、災害拠点病院をはじめ医療機関全体のBCP策定率は非常に低く、「自助」の事業継続への取り組みの遅れが課題となっています。また、大規模な災害が発生した場合、地域の安心安全を確保するためには医療機関を取り巻く関係者間で連携を行う「共助」も必要ですが、これらの取り組みに未着手の医療機関が大半です。

富士通総研では、医療機関に特化した危機対応能力を高めることを狙いとした課題解決型でのワンストップサービスを提供しています。ご支援を通じて明確になった、今後の医療機関における「自助」「共助」の取り組みの目指すべき姿について、事例を交えてご紹介します。

課題

医療機関のBCPへの取り組み状況

先般の熊本地震を踏まえ、厚生労働省から都道府県に対して災害拠点病院の指定要件として、「(1)BCPの策定」「(2)策定したBCPに基づく演習の実施」「(3)地域の医療機関や医療機関団体との定期的な演習の実施」等が追加されました。この追加要件の(1)と(2)は、医療機関の「自助」、(3)は医療機関を取り巻く関係者連携の「共助」の取り組みになります。既存の災害拠点病院では、2019年3月までにこれらの対応が求められています。しかし、災害拠点病院も含めた医療機関におけるBCP策定率は、現状、他の業種に比べてかなり低い状況です(【図1】参照)。また、BCP策定済の医療機関でも、定期的な演習の実施やBCPの見直し等のBCMの活動に至っておらず、多くの課題が現存しています。

【図1】業種別のBCP策定状況(n=1,020)
【図1】業種別のBCP策定状況(n=1,020)
出所:株式会社NTTデータ経営研究所「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第4回)」(2017年2月20日)

医療機関における現状課題

医療機関の課題は、BCP策定や策定したBCPに基づく演習実施等のBCM活動の「自助」への取り組みが遅れていることです。その理由として、「BCP策定のスキルやノウハウの不足」、「リソース(人、金)の不足」、「BCP・BCMに関する事例や参考情報の不足」が挙げられます。

また、もう1つの大きな課題として、医療機関を取り巻く行政や自治体、医師会などの医療団体、近隣病院、医療機器・医薬品メーカーや食材提供業者などの取引先(以降、関係者という)との連携強化に向けた「共助」の取り組みも遅れています。その理由として、「災害時支援協定の未締結」や「災害時の相互での情報交換方法のルールが未定義」、「被災時の相互支援に向けた合同演習の未実施」など、関係者間の関係性構築が未整備であることが挙げられます。

これらの課題を解決するために、富士通総研は医療機関向けに業務継続力強化コンサルティングサービスを提供しています。

解決策

医療機関向けサービスの提供事例

富士通総研では、これまでの1,000社を超える事業継続コンサルティングの実績や知見をベースに、各医療機関の事業継続への取り組み状況(成熟度)に応じ、ワンストップで業務継続力を強化するサービスのメニューを体系化しています(【図2】参照)。これらのサービスを提供した2つの事例について、こだわりや独自の考え方をご紹介します。

【図2】医療機関向け業務継続力強化コンサルティングサービスメニュー体系
【図2】医療機関向け業務継続力強化コンサルティングサービスメニュー体系

1. K病院様のBCP策定・BCP検証演習のご支援(個別単位)

K病院様は、災害時は災害拠点病院を支援する、病床数約400床の総合病院で、BCP策定およびBCP検証演習をご支援しました。その時にこだわった3点についてご紹介します。

(1)プロジェクト立ち上げ時のこだわり:現場関係者の巻き込み

BCP策定で重要なことは、現場主体で取り組むことですが、医療機関では平時の指示命令系統が部門単位であることや業務が多忙であることにより、現場関係者が一堂に会することが困難であり、それがBCPに実効性がない原因にもなっています。そこで、キックオフ時に、院長をはじめ医師・看護師、コメディカル、事務部門を対象に「EQエクササイズ」を実施し、セミナーを通じてBCPの必要性を理解し、模擬演習により自組織の課題に気づいていただきました。結果、現場関係者の検討会への積極的な参画につながりました。

(2)BCP策定におけるこだわり:重要業務の選定とミッション定義

医療機関では一般企業に比べて、発災直後の需要が供給を大きく上回るため、迅速な行動や判断が必要です。しかし、多くの医療機関では、平時と同じようにすべての業務を復旧・継続しようとするため、枯渇するリソースを的確に配分することができず、病院全体の対応の遅れを引き起こしています。その解決策として、発災後、最優先で復旧・継続すべき業務(重要業務)を「人命に関わる優先度の高い医療業務」と「医療サービスを継続するために必要な優先度の高い医療以外の業務」に分けて検討することにしました。K病院様では、医療業務に「産科」と「透析」、医療業務以外では「設備」と「情報システム」を選定しました。

そして、選定した重要業務を迅速に復旧・再開するために、いつまでに誰が何をどのような状態にすることを目指すのか(ミッション)を定義しました。K病院様のミッションは、「発災から1時間後までに自組織の医療サービス継続可否を判断する」、「発災から3時間までに(自組織が医療サービスを継続すると判断した場合には)外来患者の受け入れに向けたトリアージ体制の構築および搬入患者の医療対応を行う」と定義しました。

重要業務を選定し、ミッションを定義することで、誰がいつまでに何をしなければならないのかが明確になり、「非常時対応体制」の構築および機能(役割)ごとの「行動手順」の洗い出しが容易になりました。(【図3】参照)

【図3】BCPの主な構成要素と関係性
【図3】BCPの主な構成要素と関係性

(3)策定したBCP検証演習におけるこだわり:地域連携

K病院様のBCPの策定を行う中で、自組織の関係者との連携が課題として抽出されたため、自治体の担当窓口や近隣の病院、食材提供事業者を演習へ招待し、関係性構築のきっかけ作りの場としました。結果、K病院様の近隣の病院もBCP・BCM活動の取り組みを開始し、食材提供事業者とは災害時協定について話し合いを持つことになりました。

さらに、K病院様は、近隣の病院との差別化に向け、CSRの観点で対外的にレジリエンス認証(注3)の取得を目指すことになりました。

2. 複数の医療機関向けに事業継続への取り組みのきっかけ作りをご支援(エリア単位)

富士通総研は、医療機関の課題である「スキルやノウハウ不足」「リソース(人、金)不足」「BCP・BCMに関する事例や参考情報が不足」などを解決するために、複数の医療機関を集めて集合型での研修会の開催をご支援しています。以下に2つの取り組みをご紹介します。

(1)全日本病院協会様主催の「災害時のBCP研修」開催のご支援

公益社団法人全日本病院協会様(以下、全日病という)と富士通総研との間で、事業継続に関するサービス企画および研修会の開催に関するアライアンスを締結し、2017年6月に双方からプレスリリースを発信しました。そして、全日病様の会員2,500病院向けに、「危機対応意識の醸成」を目的としたBCP研修会を2016年からこれまで計4回開催し、約220名様(のべ約180病院)に参加いただきました。

研修会は、3部構成で第1部はBCPセミナー、第2部に大規模地震対応模擬演習、第3部でBCP策定ミニ講座を実施しました。研修会を通じて参加者全員が「自組織における危機対応の取り組み強化の必要性」を感じ、模擬演習の体験を通じて参加者の7割以上が「役割分担の明確化」「災害時対応体制の構築」「収集すべき情報の整理・明確化」、5割以上が「演習実施の必要性」「情報整理・ステータス管理方法の習得」などの課題を認識されました(【図4】参照)。

研修会の開催により、自組織の現状課題や対応レベルの気づきを得ていただき、次ステップであるBCP策定および見直しに向けた演習の実施への取り組みにつなげることができたと考えます。

【図4】「演習を通じて気づいた課題やポイント」について(アンケート結果より)
【図4】「演習を通じて気づいた課題やポイント」について(アンケート結果より)

(2)地域での研修会開催のご支援

大規模な災害が発生した場合、1病院だけでは地域住民への医療サービスの提供は困難であり、また自組織が被災した場合には患者受け入れを近隣の病院に協力し合うことが必要になってきます。そこで、東京、大阪、名古屋、神戸、埼玉、沖縄で、近隣の医療機関を集めてBCP研修会の開催を実施し、約250名(のべ100病院)の方に参加いただきました。

内容については、セミナーと模擬演習を実施する「EQエクササイズ&アセスメント(半日コース)」、またはBCP策定の解説と実際に策定を体験いただく「BCP策定講座(1日コース)」のいずれかを実施し、加えて研修後に取り組むべきことについて説明しました。その結果、ほとんどの参加者から自組織で今後実施すべきことは「自組織のBCP策定」「災害時を想定した実働演習」「自院の関係者への危機対応意識の醸成」であるとコメントをいただき、「自助」の取り組みの意識醸成ができたと考えます。さらに、地域の医療機関を集めて開催するため、病院間の関係性構築に向けた「場の提供」の実現にもつながりました。

また、前述の(1)と(2)の研修会に参加した医療機関に対し、「アセスメントシート」を配布しています。これは、厚生労働省から提供されている事業継続への取り組み有無のチェック項目(60設問)に準拠し、各項目の成熟度をレベル(5段階)でBCP要件を評価する富士通総研独自の「アセスメントシート」です。各医療機関が、設問ごとに現状の取り組みレベルと理想の取り組みレベルを回答することで、15の評価軸で自組織の現状と理想、他の医療機関(現在、約60病院のデータを蓄積)と比較したベンチマーク結果をフィードバックし、今後の取り組みの方向性や課題の対策案についてのアドバイスを実施できるものです。

成果

医療機関における今後の取り組みについて

これらのご支援を通じ、改めて「自助」と「共助」への取り組みの目指すべき姿が明確になりました。 「自助」への取り組みについては、有事に自組織の職員および入院患者を守り、医療サービス継続に向けた迅速な対応を行うために、現場関係者を集めてBCPを策定(主に役割ごとの行動手順の策定)し、実際に動くことができるかを演習で試し、不具合があればBCPの改訂、また演習でBCPの実効性検証を行うBCM活動が大変重要です。

また、「共助」への取り組みにおいては、有事において地域住民をはじめ、地域の経済や産業を守るために、医療機関を取り巻く関係者が連携・協力し合って対応する(【図5】参照)ために、関係者間の連携に向けた体制・ルールを定義し、迅速に連携することができるかを演習で確認し、問題点や課題を抽出して解決していくプロセスを繰り返すことが重要です。「共助」が機能するためには、個々の医療機関の「自助」への取り組みが充分に実施されていることが前提です。

【図5】官民連携を踏まえたBCP策定
【図5】官民連携を踏まえたBCP策定

富士通総研は、今後も個々の医療機関の「自助」の取り組みのご支援、エリア単位での研修会開催や演習の実施により関係者間のコミュニケーションの場作り、顔の見える関係性構築のお手伝いをしていきたいと考えます。その結果、有事における地域全体の安心安全の確保、平時の地域全体の活性化につながれば幸いです。

注釈

  • (注1)
    指定要件:厚生労働省(医政発0331第33号)「災害拠点病院指定要件の一部改正について」 (平成29年3月31日)
  • (注2)
    BCP:(Business Continuity Plan)災害など緊急事態が発生したときに、企業が損害を 最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画。
    BCM:(Business Continuity Management)事業継続を達成するための組織内の管理プロセス。
  • (注3)
    レジリエンス認証:内閣官房国土強靭化推進室が制定したガイドラインに規定する認証組織である一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会が行う国土強靭化貢献団体認証の制度。


  • 本事例中に記載の数値、社名・固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
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本記事の執筆者

ビジネスレジリエンスグループ
チーフシニアコンサルタント

玉置 千愛

 

社会インフラ業界向けのシステム企画・設計・開発に従事し、2003年 富士通株式会社に転社。2008年4月に株式会社富士通総研へ出向、製造業や流通業を中心に事業継続コンサルティングに従事。2015年頃より医療機関向けの事業継続コンサルティングを開始。

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