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アイデアを育て事業を起こす

概要

日本のモノづくり企業は現在まで、その技術力を強みとして目覚ましい発展を遂げてきた。しかし現在、市場はグローバル化への転換を余儀なくされ、技術力だけで勝ち残ることは難しくなっている。そこで現代のモノづくり企業に求められているのが、グローバル市場でも勝ち残れるような新たな価値を加えたサービス開発、すなわち「コトづくり」である。昨今では、多くの企業がイノベーションをテーマに新製品・サービスの開発に取り組んでいる。

ところが、いざ事業開発をスタートしても、企画や実証実験の途中段階でお蔵入りしてしまうケースが多々見受けられる。その後の具体的な事業化やビジネスの出口が見えないまま、予算が尽きてしまうのだ。

こういった問題の解決の糸口はビジネスの出口から逆算して考えることで見えてくる。本稿では、これまで私たちが関与してきた推進現場の体験をもとに、企業が陥りがちな課題と解決のポイントを推進当事者の視点で論じたい。

課題

イノベーションにおけるマネジメントの重要性
新規事業開発のフェーズは大きく2つあると言える。ユーザーにとっての価値を仮説検証しアイデアをつくり上げていく「企画フェーズ」、アイデアを具体的な技術とビジネスに紐づけて実装していく「事業化フェーズ」である。

「企画フェーズ」では、社会課題やユーザーの課題洞察を通して対応するサービス像の仮説検証を繰り返し、アイデアを練り上げていく。この段階のアウトプットはアイデアレベルのイメージモデルやイメージモデルを具体化したプロトタイプである。

検討チームは主に、ビジネスやマーケットの視点でサービスとビジネスを検討するビジネスプロデューサー、ユーザー課題をフィールド視点で仮説検証していくUX(UserExperience)デザイナー、サービスの技術面を見るエンジニア、テストユーザーで構成される。そのほか、アイデアに多様性をもたらしてくれる第三者パートナーが参画する場合もある。推進のマネジメントに立つ者は目指すビジョンやゴールを多様な人材と共有しながら、共感を得られるサービスの推進を行うことが求められる。(図1)

図1 新規事業のあるべきプロセスとマネジメントの役割の変化
図1 新規事業のあるべきプロセスとマネジメントの役割の変化

「事業化フェーズ」では、実現可能なビジネスモデルを構築するために、自社内外で検討したアイデアに共感、参画してくれる新たなパートナーの巻き込みと深いエンゲージメントの構築が必要となる。ユーザーを含む関連外部パートナーとともに、これまでアイデアレベルであったサービスやビジネスを具現化し、実証実験や試行錯誤を通してパートナーとの関係性にサービスとマネタイズの循環(エコシステム)を描くことが求められる。

推進マネジメントに立つ者は、既存メンバーのマネジメントに加え、外部パートナーのソーシング、協働でビジネスを起こすためのアライアンス締結、ビジネスのスキーム構築など、役割の範囲拡大や変更に対して柔軟に対応していく必要がある。

解決策

アイデアの事業化を阻む2つの課題
市場のトレンドは単なるモノとカネとの交換価値での「モノづくり」ではなく、使用と体験から成る「コトづくり」に変化し、モノを作るだけだった従来の開発から、モノとサービスを連動したサービスモデルの開発への転換が必要となっている。そのため、モノづくり企業の多くは、サービス化ビジネスをもくろんでいる。トレンドの変化に伴い、開発手法も整いつつある。UX(UserExperience:ユーザー体験)を軸としたデザイン思考の書籍や手法を紹介するWebなど、サービス化ビジネスを検討推進するうえで参考となるコンテンツも充実している。

本来、企画の初期段階は、分析結果などを踏まえたテーマ設定やターゲットセグメント選定から始まる。しかし実際は、「人工知能」や「IoT」など、トレンドキーワードの適用を捉えただけの見切り発車型で始まる企画も多い。同様に、先に述べたデザイン思考など、手法ありきの推進パターンも見られる。以下に企画推進の際の主な課題2点について具体的に説明する。

(1)ターゲットの見極め

CB Insightsの調査によると、スタートアップ企業の失敗理由は「マーケットのニーズを捉えられていない」が42%と最も高い。新規事業の企画において特に必要とされる将来動向や社会課題、経営課題、製品、ユーザー、新技術などのマーケット分析を踏まえたテーマ設定やターゲット像とサービス像の仮説設定を怠ったことが原因と考えられる。そのような社会やマーケットの動向を見据えていない推進は、市場とニーズの間に生じるギャップに対する感度を弱めることにつながり、事業そのものの継続性リスクを高める可能性がある。

スタートアップ企業の失敗理由トップ10
(101社のスタートアップ企業からのヒアリングをもとに作成)

  • 1位:マーケットニーズを捉えられていない:42%
  • 2位:資金の枯渇:29%
  • 3位:チーミングの課題:23%
  • 4位:競合との競争力への課題:19%
  • 5位:価格、運転資金への課題:18%
  • 6位:プロダクトの欠陥:18%
  • 7位:ビジネスモデルの欠陥:17%
  • 8位:マーケティング施策の欠陥:14%
  • 9位:顧客の声の反映不足:14%
  • 10位:製品の機会損失:13%
出典:CB InsightsよりFRI作成

また、仮にマーケット分析を行い、適切なターゲットを設定できたとしても、業界によっては、設定したユーザーセグメントや製品セグメントへのアプローチそのものが自社と業界のパワーバランスを破壊し得る可能性もあり、推進側の意思決定を鈍らせる。長らくイノベーションが起きていない業界では、旧態依然型の製品・サービスに対する依存が高い場合が多く、業界から新興勢力に対する圧力が強くのしかかるために、企画推進が難しい局面も多く見られる。

そこで企画推進者は破壊的なイノベーションのアプローチに対するハードルをいかに下げて推進してくかが問われることになる。(図2)

図2 破壊的イノベーション推進における適切なターゲットと展開シナリオ
図2 破壊的イノベーション推進における適切なターゲットと展開シナリオ

新規事業の企画フェーズにおいて目指すべきゴールは「市場にとって新規性の高い製品・サービスを構築すること」にある。しかし、最初から「新規性の高い製品・サービス」の企画をダイレクトに推し進めることは実際難易度が高い。まずはゴールを見据え、既存市場の延長線での製品改良や代替、拡張など、最小限の価値あるモデルを構築し、市場から適宜フィードバックを得ることで、このモデルが良いものであるというエビデンスを得ながら支持者を増やし、進化させていくことが必要である。

(2)目標とする事業規模との連動

企画フェーズでは、社会課題の洞察やマーケティングに基づいた分析からターゲティングを定め、UXに基づいてサービスアイデアを創り上げていく。しかし実際は、構築されたUXのアイデアとビジネスの実現に向けて必要なアクションとの連動が取れていない場合が多い。

ターゲティングの母数とそのシェア、競合やユーザーとの検証から算出されたプライシングの仮説に基づいて新規事業の事業規模は見えてくるが、その規模感が経営層の狙いと整合性を図られているかについては検証が必要である。ユーザーインサイトだけでなく、経営側と合意されたKGIとKPIに対するUXのフィット感があるか、サービスを認知から購買につなげるためのプロモーション施策や、購買後の使用の定着化のためのシナリオが描けているかなどを検証する。局所的なUXだけを捉えるのではなく、UXとビジネスゴールの整合性を俯瞰して描く必要がある。

さらには、算出されたプライシングから事業を維持し得る収入が得られるか、性能と運用を維持し得る技術の実現性とコストのバランスが取れるか等、収益構造の視点からの検証も必要である。

パートナーとのエンゲージメントを深めイノベーションの完成度を高める
市場は新たに生み出した先端技術やサービスの物珍しさには飛びつくが、実際にユーザーの購買につながり、事業として成立するかは別問題である。どのようにすれば世の中に価値が受け入れられ、ターゲットとするユーザーへ届けることができるのか、どうすればユーザーを満足させ、継続的に利用してもらうことができるのかという問題は、新規事業の開発に挑む企業であれば一度はぶち当たる壁ではないだろうか。これらの課題を1社単独で解決することは決して容易ではない。

解決のカギとなるのは、外部パートナーを巻き込むことである。販売チャネルの1つとしてだけでなく、サービスをデリバリーしてくれるサービサーとして外部パートナーとの協調を行うことで、エコシステムを構築することが可能となる。フラットな関係性を維持することで、より強固なエンゲージメントを構築できる。もちろん、中抜きを意図しただけのパートナーは不要で、実効性あるパートナーを見極める判断が求められる。実効性あるパートナーを巻き込むことで、アイデアとビジネスモデルがより具現化し、独自性を持ったものとなるため、市場での競争優位性を発揮していくことにもつながる。

「事業化フェーズ」における成功の要は、外部パートナーをいかにうまく巻き込みながら推進するかという点にあるが、実際にはこの「巻き込み」が最もハードルが高い。ただし、真の意味でのイノベーションの妙味はここから始まると言える。アイデアを支援するレベルで外部パートナーが参画するのではなく、ビジネス実現のためのパートナーとして巻き込むことで、初めて真のイノベーションとしての完成が見えてくる。実際には、収益配分の交渉等も行われるため、よりリアルにアイデアやビジネスモデルに対する共感が必要とされる。

外部パートナーを巻き込むには、検討したビジネスモデルから、自社の立ち位置と外部パートナーとの協働範囲を明確にして、実現性を検証していくことによって、より実現性の精緻化が図られていくと言える。

図3に示した事例は、2015年に我々が参画した某モノづくり企業の新規市場参入に向けた取り組みである。医療機器業界に参入をもくろむ顧客とともに、世界最大の医療機器展MEDICA(独)や日本の展示会に参画することで、顧客の事業運営に必要な医療メーカーやディストリビューターなどのパートナーの開拓を行った。その結果、ビジネスモデルの構築と事業の運営に必要なリアルな事業パートナーの開拓に成功し、事業化へつなげることができた。

図3 某モノづくり企業の医療機器業界参入事例
図3 某モノづくり企業の医療機器業界参入事例

成果

変化を恐れない挑戦
新たに生み出したアイデアを受け入れてもらうことは、市場はもちろんのこと、自社内でさえも決して容易ではない。新規事業開発の推進当事者は、前例がない厳しい状況の中で関係者を調整し、継続的に投資やリターンを得るための価値を発揮しなくてはならない。

UXやビジネス、技術、外部プレーヤーなど、あらゆる検討事項で協働や調整を図りながら推進する必要があるが、実際にそれらを網羅的に捉え、バランスばかりを求めると、平均的かつ平凡なサービスに終始してしまうことになりかねない。したがって、初期段階で設定した譲れないポイント、自社のコア(技術、商流)など、新しい製品・サービスの尖りとなる前提はそのままに、必要な外部リソースにとって魅力的に映るサービス・ビジネスを描き、他社を巻き込むことで、さらに競合他社に参入・追随されないモデルの構築を行っていくことが重要ではないだろうか。

市場では日々技術進展が加速し、競合も数多く台頭してきている。市場の変化に迅速に対応するためには、迅速に市場からのフィードバックを得て修正し、地に足のついた推進を行うことが求められる。

そのためには、部分最適に陥る大企業病的アプローチではなく、全体を俯瞰しながらも、ユーザーとビジネスに求められるポイントにのみフォーカスし、従来のモデルに固執せず、ピボット(方向転換)を躊躇しない姿勢と柔軟な機能変革が求められると考える。我々コンサルタントも、そのような市場へ挑戦する当事者を現場から後押ししたい。

掲載日:2016年12月26日
産業・エネルギー事業部
シニアコンサルタント 久本 浩太郎、アシスタントコンサルタント 佐藤 史織


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