地域産業の振興と健康増進を組み合わせたまちづくり
少子高齢化、地域産業の振興、コミュニティの再生など、地域が抱える各課題は関連性が高く、複合的に解決していかなければなりません。
安中市地域活性化協議会様では、地域産業(主に観光業)の振興と健康増進を組み合わせたまちづくりに取り組みました。
【図1】安中市・富岡市における地域観光まちづくりのイメージ
安中市・富岡市では、妙義山・磯部温泉などの奥深い自然や富岡製糸場・めがね橋などの歴史的文化財を有し、観光業が盛んで、観光客の誘客に取り組まれてきました。観光入込客数(注1)は平成20年度(前年比115%)、平成21年度(前年比105%)と推移し、着実に観光客増加に結び付けています。
しかし、安中市・富岡市に訪れる観光客の居住地域に目を向けると、地域住民の観光客は47.9%(平成21年度)と、群馬県の他地域よりも1割近く低い状態となっています。つまり、安中市・富岡市の観光消費は地域外に流出し、観光業が主軸である地域産業は他地域(地域外観光客の観光消費)に依存している状態であると言えます。
そこで、安中市・富岡市の住民が、地域内の豊富な観光資源の魅力を再認識し、地域内で観光活動や観光消費を行い、地域の資源が地域内で循環できる仕組みづくりを確立していく必要がありました。
【図2】安中市・富岡市における地域資源の循環イメージ
「観光地」と言われて、近所の施設やお住まいの地域を思い浮かべる方は、果たしてどれだけいるでしょうか?
多くの人は地域外に目を向けるでしょう。住民に対して「地域観光に取り組んでください」とアピールしても、効果は期待したほど見込めません。そのため、地域観光とは別のテーマで地域住民にアピールする必要がありました。
「2007年度中小企業白書」(中小企業庁)から住民の地域産業に対する期待を読み解くと、「清掃・美化活動(28.6%)」、「防犯・見守り活動(24.9%)」、「お祭りやイベント(24.6%)」が上位に挙がっており、安全・安心なまちづくりに対する期待が高いことがわかります。また、群馬県では全国に比べて健康な住民が多いという特徴があったことから、安中市・富岡市では、豊富な観光資源を活用し、住民が安全・安心に、かつ健康に暮らせる地域観光インフラを提供してイベントを企画することで、住民に地域観光を促すことを目指しました。
その実現手段として活用したのが、ICTです。住民の生活拠点にICTを設置し、住民が日常生活で安全・安心、健康増進に資する活動を実施していただくことで、地域での生活が地域観光に繋がる仕組みを構築しました。
住民にも地域内の観光資源に目を向けていただくために、デジタルサイネージを地域の憩いの場に増設し、そこを起点にタッチラリーを活用して地域の観光地へ住民を回遊させ、健康ウォーキングを実現しました。
また、ICTを活用して地域での活動を見える化することで、効果の継続かつ持続化を目指しました。
タッチラリーの移動距離など、住民が観光資源を活用した活動での消費カロリーを地域観光ポイントとして蓄積し、地域観光ポイントに応じて景品や地域の商店で利用できるクーポン券を提供することとしました。その結果、地域住民はゲーム感覚で地域観光に取り組むことができ、またインセンティブを創出することで、更なる地域観光意欲を掻き立てることに成功しました。
【図3】安中市・富岡市におけるICTを活用した地域観光促進イメージ
JR横川駅におけるデジタルサイネージのタッチ回数は、群馬県ディスティネーションキャンペーンとの相乗効果もあり、平成23年7月では12,571回と前年比201%と大幅に増加しました。平成23年3月11日に発生した東日本大震災の影響で全国的に観光が敬遠される傾向にありましたが、着実に観光へ目が向けられつつあります。
今後も安中市・富岡市では産・官・民が協働の地域観光まちづくりに取り組み、この成果が一過性のものではなく、継続的に享受できるよう目指していきます。
また、同地域では、東日本大震災を契機に電力の問題も顕在化しました。観光業の振興には、観光施設やデジタルサイネージなど、安定した電力供給が不可欠です。しかし、同地域はエネルギー供給を地域外に依存していたため、一時的に観光業が衰退する結果となりました。そこで現在は、再生可能エネルギーの創出可能性について、調査すべく準備を進めています。
今後も富士通総研では、安中市・富岡市が自立的なまちづくりを実現できるよう、安中市地域活性化協議会様と継続的に検討を進めて参ります。
(なお、本取り組みは、群馬県を中心にソリューションビジネスを展開する株式会社ナブアシストと協力して推進しております。)
ご参考:西上州観光サイト「絹物語」
(注1)観光入込客数 : 文章中のデータは、「平成21年度 観光客数・消費額調査(推計)結果」(群馬県)に基づきます。
掲載日:2011年8月24日
(金融・地域事業部 シニアコンサルタント 山尾 一人)
本事例中に記載の数値、社名・固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページ の閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
当社のコンサルティング・サービス内容について、ご不明な点はございましたか?
経営やビジネスに関するお悩みがございましたら、以下のお問い合わせ方法からお気軽にご相談ください。
富士通総研お客様総合窓口
03-5401-8391
ご利用時間:8時40分から17時30分まで
(月曜日から金曜日、祝日を除く)
(注)電話番号はよくお確かめのうえ、おかけください。
お問い合わせへの回答例
お客さまからのお問い合わせとコンサルタントからの回答例です。ご相談をされる際は、是非ご覧ください。