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ISO50001の活用で情報システム部門の環境貢献を目指した流通業A社様

概要

ITリソースに起因するエネルギーを改善するマネジメントシステム確立

企業に対するCO2の排出規制が見込まれる中、情報システム部門としてITリソースに起因するCO2排出にも注目する企業が増えつつあります。日本全体を考えた時、インターネットのトラフィック量が劇的に増加することに伴うCO2排出量の増加は将来的には看過できないことが予測されています。

そのような中で流通業A社様の情報システム部門では、先進的な取り組みとしてITリソースに起因するCO2/エネルギー(電気)を計画的かつ継続的に改善するためのマネジメントシステムを確立されました。また、今夏に向けた節電対策の検討に際しても、今回の取り組みを活用できると考えられています。

課題

情報システム部門が負う責務とは

A社様では既に全社的にISO14001の認証を取得され、その一環で情報システム部門としても紙・ゴミ・電気への取り組みをされてきました。しかしながら、A社様の情報システム部門のトップは、全社を俯瞰できる立場として情報システム部門が負う「環境への取り組みに対する責務」を強く意識されていました。それは、取引先に影響を与える立場まで考慮したサプライチェーン全体に対する責務でした。このような責務を果たす上で、必要と考えられていたのは以下の3つの取り組みです。

  1. 全体を俯瞰した中長期方針
  2. 継続的な改善プロセス
  3. IT計画との整合性の確保

また、情報システム部門が管掌(所有・管理)するITに関して、最優先の対応が求められるのがCO2/エネルギー(電気)でした。そこでA社様では、ITリソースに起因するCO2/エネルギー(電気)を計画的かつ継続的に改善するプロセスの確立を喫緊の課題と認識され、取り組まれました。

解決策

ISO/DIS50001活用によって効率的に施策実行

ITリソースに起因するCO2/エネルギー(電気)を計画的、継続的に改善するプロセスの確立に向けて以下の施策を実行しました。

  1. ITのエネルギー消費量の把握・分析
  2. ITのエネルギーを管理するための仕組みづくり
  3. ITエネルギーマネジメント委員会の創設

これら施策の実行に際しては、現在発行されているISO/DIS50001を活用することで効率的に取り組むことが出来ました。(【図1】参照)

【図1】エネルギーマネジメントシステム
【図1】エネルギーマネジメントシステム

a. ITリソースのエネルギー消費量の把握・分析(エネルギーレビュー)

ITリソースの全体を俯瞰しながら、IT計画とも整合した中長期方針を策定するべく、まずは現状把握を行いました。すべてのITリソースについて電力使用量を実測することは現場負担が大きくなるため、機器のカタログ値や使用状況等の属性情報などの既存情報を利用することで簡易的に電力使用量を推計する方法を採用し、エネルギーパフォーマンス(電力使用量・効率)の試算、分析を実施しました。(【図2】参照)また、刷新を予定していたIT資産管理システムにもエネルギー属性情報を付加し、エネルギーパフォーマンスを継続的にモニタリングできる環境整備を併せて実施しました。

【図2】分析の流れとアウトプット
【図2】分析の流れとアウトプット

b. ITのエネルギーを管理するための仕組みづくり

前項のエネルギーレビューを起点としたパフォーマンス改善を継続的に実施するために、ITエネルギーを管理するプロセスと体制を定義しました。また、情報システム部員全員が主体的にプロセスを実行できるように、方針-規程-手順書の3階層の規程づくりを行いました。(【図3】参照)。プロセスの定義と規程化の作業では、ISO/DSI50001が定める要求事項から、まずはPDCAサイクルを回すのに実務的に必要な最小限の項目を抽出し、実装するアプローチを採用しています。

【図3】IT・エネルギーマネジメントシステムの文書体系
【図3】IT・エネルギーマネジメントシステムの文書体系

c. ITエネルギーマネジメント委員会の創設

前2項の施策をより有効なものとするために、情報システム部門のトップを委員長としたITエネルギーマネジメント委員会を設置し、経営層のコミットメントを社内に周知するとともに、ISO14001活動と連携する機能を担わせることとしました。

成果

エネルギー視点でのITパフォーマンスの評価に関心集まる

ITエネルギーマネジメントの構築による成果は今後の運用の中で検証していく予定ですが、現行データ分析(エネルギーレビュー)の結果として、既に以下の成果があがっています。

  • ITのエネルギーコストの実態把握(機器別/拠点別の特性把握)
  • エネルギー視点でのITパフォーマンスの評価の可能性
  • エネルギーレビューの手順とツール(ワークシート類)の整備

特に「エネルギー視点でのITパフォーマンスの評価」では、60拠点以上の配送センターにおける業務量(物量、供給高)とITエネルギーコストの相関分析を行うことで、各配送センターに整備されているIT環境の特性や適性が見えてきており、従来なかった視点でのITパフォーマンス評価の可能性について関心が高まっています。(【図4】参照)

【図4】物量とITエネルギー消費量の相関関係
【図4】物量とITエネルギー消費量の相関関係

また、従来はCO2排出量/エネルギーコスト削減の観点からもITリソースの集約化が言われてきましたが、今夏からの「電力総量規制」への対応としては、集中と分散をいかに最適に組み合わせるかの検討が急務となってきています。このように電力規制が経営リスクとして顕在化しつつある現在、今回A社様が確立されたようなITエネルギーマネジメントシステムはリスク対応力強化の1施策として、情報システム部門にとって喫緊かつ恒常的な取り組みテーマになってくると予測されます。

掲載日:2011年5月10日
(環境事業部 シニアコンサルタント 藤本 健)


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