GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. 研究レポート >
  4. 2018年 >
  5. シビックテックに関する研究 ―ITで強化された市民と行政との関係性について―

シビックテックに関する研究
―ITで強化された市民と行政との関係性について―

主席研究員 榎並 利博
2018年1月

要旨

近年、市民がIT(情報技術)を活用して行政に協力したり、アプリを開発して地域課題の解決に乗り出すなど、新しい動きが出てきている。市民がITを活用して公共のために活動するこの動向はシビックテックという言葉で表現されている。

この活動の背景には、ITの技術的な進歩だけでなく市民の意識変化がある。この20年間におけるインターネットやIT機器の進歩は周知の通りだが、利用者側も当初の受動的な利用のしかたから、能動的な利用のしかたへと意識が変化しているからだ。

市民個人としてのシビックテックでは、「ちばレポ」のように市民と行政双方にメリットをもたらす使い方が実現されており、市民参加型予算編成は市民の納税者としての意識を高めるとともに、予算の有効な資源配分で市民満足度の向上にも寄与している。また、スマホへのアプリ搭載という市民のほんの少しの心遣いが地域の安全に役立っている。

市民団体としてのシビックテックでは法人型組織とコミュニティ型組織の2つの類型があり、そのほか発展途上の組織が多くある。具体的な開発アプリとしてCode for Kanazawaの5374(ゴミ無し)やCode for IKOMAの4919(食育)などがあるが、団体の活動方針としてはいずれもアプリの開発よりも市民による地域課題の解決に重点を置いている。

このようにシビックテックによって市民の公共に対する意識が高まりつつあるが、市民団体は出自がボランティア活動のため人材や資金の面で課題を抱えている。しかし、今後はプログラミング教育の団体や企業・大学などとの連携で課題を乗り越え、持続可能性を追求していくと考えられる。

市民と行政との関係性の今後について、市民個人を考えた場合、市民が身に付けたIoT機器で行政のセンサーとしての役割を果たすとともに、市民一人ひとりが行政の意思決定過程に参加する機会も生まれる。市民が力を持つことで行政から市民へ権力が移行するのではなく、地域課題についてツールやデータを介して市民と行政が対話を行う関係が生まれてくるだろう。

市民団体については、行政に対して市民の立場から技術やサービスのあり方についてアドバイスする役割を担うとともに、地域課題の解決のためにアプリ開発や政策提言で行政に協力するという関係も生じると想定され、今後IoTなど市民生活に密着した技術の進展に伴ってその存在価値は高まると考えられる。

また、シビックテックが介在することで、イノベーション促進に意欲的な行政とオープンイノベーションを指向する企業の連携が始まっている。成功事例の出現で新たな投資が生まれる連鎖が期待でき、シビックテックは地域が成長するためのイノベーションを起こす触媒としての役割も果たすだろう。動き自体はまだ小さいが、シビックテックは市民と行政との関係性を変容させる新たな潮流を作り出している。


全文はPDFファイルをご参照ください。
シビックテックに関する研究 ―ITで強化された市民と行政との関係性について― (3.63 MB )