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結びつくことの予期せざる罠
-ネットは世論を分断するのか?-

慶應義塾大学 経済学部 田中 辰雄
富士通総研 経済研究所 浜屋 敏
2017年10月

要旨

インターネットの普及段階においては、インターネットによって空間や時間の制約を越えて人々は結びつき、自由に意見交換を行うことで、相互に理解が進み、素晴らしい世の中が実現すると言われた時期もあった。しかし、2000年以降、次第に懐疑論が強まってくる。ネット上で人々が結びつくことは混乱と対立を助長するだけであり、社会は相互理解が進むより分断されるのではないか、という意見が現実味を増してきた。実際、2016年のアメリカ大統領選挙では、人々がネット上で自分の好みのニュースだけを見聞きするようになり(選択的接触)、SNSなどで自分に似た人たちとばかり交流することで意見が増幅され(エコーチェンバー現象)、政治的な意見の分極化(polarization)が強くなったとも言われている。しかし、本当に分極化は進んでいるのか、進んでいるとすれば、ネットが原因になっているのか、ということについては、特に日本ではあまり研究が行われていない。

果たしてネットは社会を分断してしまうのであろうか。ネットに対して当初考えられていた相互理解を進めるという期待は幻想に過ぎなかったのであろうか。人々が広く結びつくことには罠があったのだろうか。本調査研究はこれらの問いに答えようとする。そのために10万人規模の調査を行い、人々の政治傾向とネット利用の関係を見た。

その結果、意外なことにネットが社会を分断するという証拠は乏しいという結果が得られた。確かに、ネットを利用する人は政治的に過激な意見を持つ傾向にあり、ネット利用と分極化には正の相関がある。しかし、因果の方向はわからない。ネットを利用したせいで過激化したのではなく、もともと政治的に過激な意見を持っている人ほどネットを利用しようとするだけだという可能性が捨てきれなかった。

今回の調査結果は、ネットのために意見が分極化して社会が分断されるという仮説に疑問を抱かせるものであった。今回の調査は1回限りのものなので因果関係の確定までは踏み込めない。しかし、状況証拠のレベルでは、ネットが人々を過激化させるという説には疑うだけの十分な材料がある。ネットが社会を分断するという議論は、今後、より詳細な分析で再検討されるべきであろう。


全文はPDFファイルをご参照ください。
結びつくことの予期せざる罠-ネットは世論を分断するのか?- (1.64 MB )