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エビデンスに基づくインフラ整備政策の実現に向けて ~教育用コンピュータの整備をモデルケースとした考察~

主席研究員 蛯子 准吏
2017年4月

要旨

次期学習指導要領の改訂に向け、教育の情報化に係る政策の検討が進んでいる。次期学習指導要領においてもICTを活用した学びを充実させる必要があるとの認識が示され、「各クラス最低1日に1回は(一人一台の教育用コンピュータを)使える環境」を実現するため、学校におけるICT環境の整備の在り方を検討する有識者会議が設置されるなど、具体的な議論が進んでいる。学校におけるICT環境の整備に係る検討事項は、「システム構成・機能」と「機器等の整備数」の2つに大別される。いずれも、「教育用コンピュータ」をどのように整備するかがその在り方を決定する上での鍵となっている。とりわけ、「教育用コンピュータ」の整備数をどのようにするのかは、ICT環境の在り方を決める上で最も重要な要素であるが、現行の国の整備方針は学校を基準に定められている。この基準で教育用コンピュータを整備しても、「各クラス最低1日に1回は使える環境」を満たす小学校は半数以下であり、児童数に換算すると1/4以下の児童しかこの環境で学ぶことができない。

本研究では、コストベネフィットを極大化しながら「各クラス最低1日に1回は使える環境」を実現するため、従来の学校の機器整備を中心とした基準に変わる基準である「可動率」を設定し、教育用コンピュータの必要な整備数とその整備方法を確率モデル(ポアソン分布)を用い学校規模別に試算した。試算結果によると、ポアソン分布に基づく機器整備を行えば、現行の整備目標の総台数から22万台増加(12.5%増加)すれば、20回に18回は確率的に「各クラス最低1日に1回は使える環境」を提供できる可能性があることが明らかとなった。

本試算結果の適合性を検証するため、ポアソン分布に基づき試算した「使いたいときに教育用コンピュータを活用した状況」が、実際の教育用コンピュータの利用実績と比較してどの程度適合しているのかをA市の小中学校32校の教育用コンピュータの利用実績のデータを用い検証した。検証の結果、半数弱の学校において、ポアソン分布に適合する(教育用コンピュータの利用傾向に規則性がない)ことが明らかとなった。教育用コンピュータを授業のどの場面で具体的に利用するのかが規定されていない現状においては、ポアソン分布に基づき教育用コンピュータの整備計画を策定することに一定の合理性があるものと思われる。

本研究結果に基づき、教育の情報化に係るインフラ整備にあたり、以下の3点を提言する。第1にインフラの整備基準を機器(モノ)から利用機会(サービス)へと転換することである。機器ではなく、教育機会の公平性を担保する観点からインフラ整備を行うよう発想を転換するべきである。第2に学校規模に応じた整備基準の設定である。学校を対象とした一律の基準を設定するのではなく、学校規模に応じたより詳細な基準を定めるべきである。第3に実測値に基づく政策評価の実現である。利用実績に応じたコストベネフィットを極大化するインフラ整備と活動の改善に向け、エビデンスに基づく政策形成を行う仕組みづくりが求められている。


全文はPDFファイルをご参照ください。
エビデンスに基づくインフラ整備政策の実現に向けて ~教育用コンピュータの整備をモデルケースとした考察~ (2.55 MB )