No.187 : インターネットバブル崩壊後のネット企業
-企業とクラスターの現状に関する分析
主任研究員 湯川 抗
2004年2月
要旨
- 1990年代後半に、今後のIT産業の担い手として様々なメディアで華々しく取り上げられた我が国のインターネット関連企業(ネット企業)は、2000年の日米インターネットバブルの崩壊後、実態が理解されないまま悪いイメージだけが語られている。また、ネット企業の集積地として一時注目を浴びた東京の一部地域も、その後はネット企業と同様に実態のなかったものであるかのような捉えられ方をしている。
- 本稿では、ネット企業やネット企業の集積地に関するこうした一般論が事実なのかをデータを用いて検証した。そのためには、一般に認識されるネット企業をできる限り正確に把握する必要がある。そこで、ネット企業に関する一般的概念を整理し、ネット企業を再定義した上で、それらの企業が集積している東京都区部に限定して企業を抽出し、インターネットバブル崩壊後のネット企業と集積に関して分析を行った。
- バブル崩壊後のネット企業への一般的な見方とは大きく異なり、インターネットバブルを経て生き残ってきたネット企業には依然高い成長性がある。収益性も改善しつつあり、2000年から2002年にかけて2年連続で増収増益を達成した企業も多い。また、ネット企業の中でも特に、インターメディアリー、ECといった事業を行うピュアなインターネットのプレイヤーが収益を上げ始めている。
- 都区部の中でも最もネット企業の集積度が高いのは依然、港区、次いで渋谷区で、この2区に都区部全体の4割以上の企業が集中している。特に赤坂から渋谷の一帯には、都区部全体のネット企業の3割近くが集積し、都区部最大の集積地域を形成している。また、秋葉原のある神田周辺にも企業集積地が形成されている。そして、各集積地域には業種や設立年、業績の点から特徴はみられない。
- インターネットバブル崩壊後のネット企業の悪いイメージは多分に印象的なものであった可能性が高い。こうしたイメージに臆することなく、ネット企業の一層の振興を図ることは、我が国IT産業だけでなく、消費者や企業にとってIT活用による利便性の向上といった面からも重要な課題だと考えられる。
全文はPDFファイルをご参照ください。
インターネットバブル崩壊後のネット企業 -企業とクラスターの現状に関する分析 [4.63 MB]
インターネットバブル崩壊後のネット企業 -企業とクラスターの現状に関する分析 (English) [659 KB]