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No.131 : 日本におけるワークシェアリング導入に関する調査研究

研究員 相澤 洋次郎

2002年4月

要旨

  1. ワークシェアリング実施の根拠となる経済状況を整理してみると、戦後最悪の完全失業率や、不良債権処理に伴う失業者の大量発生の懸念、雇用不安による個人消費の低迷、さらには生産のグローバル化による構造的職不足などが挙げられる。デフレ経済下で企業は材料費や商品価格は下げられても、日本の下方硬直的な賃金は下げられない現実がある。人件費の圧縮ができないために企業は人員削減に踏み切り、失業者を増加させ、それが個人消費を冷やして、デフレスパイラルに拍車をかける構造になっている。一気に失業者が増えてしまう前に、妥協点としてワークシェアリングの可能性を検討する価値がある。
  2. 企業へのアンケート調査をした結果では、政労使が旗振り役でワークシェアリングを推進してもそれだけで従うという企業は1割しかなく、コンセンサスの形成の難しさが明らかになった。また、7割以上の企業が現在導入の予定はないと答え、導入時の障害となる多くの点が明示された。問題点を整理してみると、(1)社会的コンセンサスの形成、(2)日本経済の産業構造転換、新規事業創出が遅れる、(3)企業の生産性の低下(緊急避難・雇用維持型の場合)、(4)正社員とパート労働者の賃金格差、(5)社員のモラール(士気)の低下(政府主導の雇用創出型の場合)、(6)賃金低下の悪影響、などが挙げられる。根本的な問題は、緊急避難・雇用維持型のワークシェアリングの場合、本来、機械化やIT化をして生産性を上げられるところを、あえて人を多く雇用して効率化を放棄するものなので、競争力向上の機会を失うことにある。一時的には失業率上昇が止まり、安定雇用による消費拡大が考えられる。しかし日本全体でこのタイプのワークシェアリングを行えば、日本企業の産業競争力の低下や、産業構造の転換、起業の創出を遅らせることになる。
  3. 一方、ワークシェアリングに賛成する理由・メリットを聞いたところ、「雇用慣行や人事制度を変えられるチャンスである」という答えが1番多かった。これは多様就業型のワークシェアリングを想定した意見である。企業には、現在の日本型の雇用制度が時代に合わず、ワークシェアリング導入を機会に大きく変えられるのではないかという期待感がある。ワークシェアリングはその性質上、大企業も中小企業も問わず、日本の全企業を対象とする。これは、時代に合わなくなった日本の雇用システム全体を、今回のワークシェアリングを機に一度に変えられる千載一遇のチャンスと考えられる。
  4. 日本で実際にワークシェアリングを導入する際は、現在の失業率上昇を食い止める緊急避難・雇用維持型のワークシェアリングも重要だが、今後の産業構造の転換、労働市場の流動化、少子高齢化など、マクロ経済に有益な多様就業型のワークシェアリングという2段階で実施するのが効果的と思われる。
  5. 多様就業型のワークシェアリングを行うことは、すなわち日本型の終身雇用、年功賃金に基づく人事・雇用システムの見直しを行うことにつながる。先ず欧米型のジョブ・ディスクリプションを行い、時間給の概念の導入、短時間正社員制度、テレワーク制度、社員のスペシャリスト化、成果主義賃金、年金のポータブル化など、芋づる式に関連する多数の制度変更が必要である。しかしこれらの実施には企業側の負担が大きく、ノウハウも必要である。業績向上に直接影響しないと思われている人事制度改革は大手企業でも投資インセンティブが低く、中小企業では「ワークシェアリング・ガイドライン」という冊子をただ渡すだけではできるはずもない。政府による単なる補助金等による支援だけでなく、1つのアイデアとして、政府による"無償の人事制度改革のコンサルティング"の実施を提案する。労働者の8割が就業している中小企業を中心に、ワークシェアリング導入時に、政府が無償で最も先進的な人事改革コンサルティングを行い、日本全体で雇用システムを変革し、人的資本の質の底上げを狙う。その際ITを活用した遠隔教育システムで行い、低予算での実施と、経営のIT化を一緒に進めることが大切で、日本でのワークシェアリング導入の成功につながるものと思われる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

日本におけるワークシェアリング導入に関する調査研究 [280 KB]