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防災における世界の潮流
―仙台防災枠組と世界防災フォーラム2017-

発行日 2017年12月11日
上級研究員 上田 遼

【要旨】

  • 国際的な防災のイニシアティブを執る「世界防災フォーラム」が仙台にて開催された。
    2015年に発効した仙台防災枠組に照らした各国の取組が注目された。
  • 災害リスクの理解を目的とした情報ハブや推進組織がアジアを中心に発達するとともに、国家主導ではない市民・民間の主体的ガバナンスによるマルチ・ステークホルダー型の防災が各国の地域やリスク特性に適応しながら着実に実践されている。防災投資におけるソフト面のプロセスや復興における人的・地域文化的側面が重視されるなど、「防災」の質は確実に変化している。
  • 今後の防災の意思決定や実践に資するためには、従前のマクロな災害リスクや土地・建造物等に関する情報はもちろん、それらによって捉えきれない市民の生活や民間の経済活動、地域固有の災害リスクに関する情報基盤が必要とされ、そしてまた社会投資の対象となると考えられる。

防災の国際枠組実現へ邁進する「世界防災フォーラム」

  • 国際的な防災の推進にとって、最も大規模かつ重要な会議の1つである「世界防災フォーラム/防災ダボス会議@仙台2017」が11月26日~11月28日の会期で開催された(図表1)。40以上の国から1,000人以上が参加し、およそ50の会議セッションが実施され、大災害経験国・日本の国際的なイニシアティブと国際協調の必要性が宣言された。

  • 図表1 世界防災フォーラム2017

    図表1 世界防災フォーラム2017

    (出所:筆者撮影)

  • 世界防災フォーラムの英標記は、”World Bosai Forum”である。これは、日本の「防災」が純粋な被害の防止ではなく、復興や意識の啓発、伝承等の包括的な意味を持ち、それを世界の普遍共通語として発信していきたい、との思いが込められている。
  • 各国における具体的なアクションは、持続可能な開発目標(SDGs)の下、仙台防災枠組(2015-2030)において国際合意された4つの「優先行動」に則って、策定・実行されている(図表2)。4つの優先行動は独立のものではなく、災害を理解した上で、適切なガバナンスのもとに投資・準備とより良い復興のループを回すという、相互関係・ロジックを形成している。

  • 図表2 仙台防災枠組

    図表2 仙台防災枠組

    (出所:UNISDR(2015), JICA(2017)を元に筆者作成・一部修正)

  • 優先行動1 「災害リスクの理解」では、ステークホルダーの知識や情報の不足が防災へのアクションを阻むとの観点から、地域が抱える災害リスクを分析、理解することが挙げられる。そのために、災害に関連するデータの分析・管理・活用のために、災害リスク評価や地理空間情報の活用などが具体的な取り組みとして挙げられる。
  • 優先行動2 「災害リスク管理のための災害リスクガバナンス」では、防災を付加業務ではなく、平時業務と同格かつ不可欠なものとして位置づける「防災の主流化」とガバナンスが求められる。社会全体の視点から、ステークホルダーの調整の場を設け、政府・自治体からステークホルダーへの責任と権限の付与を進める。
  • 優先行動3 「強靭化に向けた防災への投資」では、ハード・ソフト対策を通じた防災への官民投資を積極的に行っていく。貧困などの災害の根源に対処するための投資も含まれる。
  • 優先行動4 「効果的な応急対応に向けた準備の強化と”より良い復興” -Build Back Better」では、早期警報、事業継続計画、避難場所・食糧・資機材などのリソースの確保、避難訓練などによって準備を強化する。災害を繰り返さないため、復興期には、土地利用計画等の改善により従前以上の安全を実現し、教訓の伝承等により意識の向上を目指す。

国際社会の4つのアクション

  • 全ての端緒は、災害を「知る」ことである。優先行動1「災害リスクの理解」に関連し、UN-ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)主催により、「情報及び知識の格差の架け橋」と題したセッションが開催された。
  • イラン外務省からUN-GGIM(国連-国際地理情報マネジメントシステム)の紹介があった。この取組では、災害データベース管理等を目的としたInformation Hubと、知識の蓄積や訓練の実施を目的としたCapacity Hubを併設している。
  • 地域、とりわけ市民の対災害能力の向上のためには、情報を提供し、知識を向上させ、能力を向上させるという一連の流れを「歯車」のように連携させることが重要と指摘する。また、知識を有する訓練者の養成(Taining of Trainer (ToT))などを通じて、地域で防災に活躍できる人材の育成に貢献している。
  • 比較的情報・知識の普及した日本国であっても、複雑な社会システム下において、マルチ・ステークホルダーの連携とガバナンスは不可欠である。優先行動2「災害リスク管理のための災害リスクガバナンス」に関連し、日本政策投資銀行主催により、「災害レジリエンス高度化のための多セクター連携と金融イニシアティブ」のセッションが開催された。
  • 経済産業省では、東日本大震災及び熊本地震を教訓に、自治体、運輸会社、卸売(デパート)さらには市民を巻き込んだロジスティクス訓練を実施している。それを通じ、現在までに、市民による避難所のロジスティクスの自治にまで挑戦が至っている。佐川急便株式会社は、グループ内企業のみならず、医療、食品、機械をはじめとする多業種と連携したロジスティクスBCPを策定している。
  • 石巻市の株式会社白謙蒲鉾店は徹底した訓練に基づき、東日本大震災を人的に無被害で乗り切るとともに、震災後も日本政策投資銀行のBCM格付に基づく融資を受けて事業を復興し、津波避難対策に対する従業員や家族の信頼を得て、移転せずに現地での事業を継続している。
  • 適切なガバナンスに基づく投資が社会のレジリエンスの向上に効果的である。日本政策投資銀行は、事業継続の戦略思考を含む100項目に基づくBCM格付を行い277のステークホルダーに3000億円の融資を行い、持続可能な発展に貢献している。
  • 優先行動3 「強靭化に向けた防災への投資」に関して、JICA主催により、「持続可能な開発に向けた防災への事前投資」のセッションが開催された。
  • エルサルバドルは、日本と同様にマルチ-リスクの国家である。2010年の豪雨の教訓からJICAと協調し、2012-2015年に気候変動対策、2015年以降は地震対策をソフト、ハード両面において進めている。2017年には中米の気候変動枠組締結の中心国としてイニシアティブをとり、国際協調に貢献している。
  • 世界銀行の総括によれば、国際的な防災投資のトレンドは、資産(アセット)からプロセス、すなわちリーダーシップや貧困の解消等へと確実に移りつつある。
  • 優先行動4 「効果的な応急対応に向けた準備の強化と”より良い復興” -Build Back Better」では、開催地である東北の震災復興の動向が注目された。国土交通省主催のセッションでは、主要市町の市街の復興報告とともに、復興期の市民の合意形成や自治や、災害の記憶の継承の重要性が提言された。
  • 地域の自然・文化に根差した復興も近年のトレンドである。東北マリンサイエンス拠点事業(湾岸の生態系・産業の復興を目的とした産官学連携)が中心となり、Eco-DRR(生態系を活用した防災)をテーマとしたセッションが開催され、大槌町・女川町における地域漁業再生の取組が紹介された。
  • 湿原・湾岸地域の保護と再生を目的とした国際組織Wetland Internationalは、インドネシアでの取組を交え、貧困の解消と環境保全、地域振興を同時に成立させるための厚生概念であるBio-Rightsを提唱した。
  • 具体的には、マイクロクレジット(連帯責任を担保とした少額融資)を用いて地域の環境と産業の整備を行い、”Green Belt”を広げていくものである。地域市民自らが簡易な植物を編み防水柵を形成する事例であり、生業と啓発、環境リスク低減を兼ねる。

世界と地域をつなぐこれからの社会基盤

  • 富士通株式会社のセッションでは、持続可能な地域社会の創造に向けた具体的な取組として、防災を目的としたグローバルデータベースの構築と、川崎市におけるICT活用による津波被害軽減に向けた共同プロジェクトが紹介された。
  • 本防災フォーラム全体を通じて浮き彫りとなった点は、第一には、防災における投資や意思決定、ガバナンスの力点が、社会のソフトに移行する世界の潮流に鑑み、それを支援するための新たな社会基盤が、地域の特色や自律性に適応して求められることである。
  • 第二に、マルチ・ステークホルダー型の防災によって、情報源や意思決定主体は国家から地域へ、中央から分散へ広がるものと考えられる。
  • 世界各国のさまざまな実践的な取組が、基礎的な情報基盤としてリスクの理解やガバナンスに寄与するのみならず、災害マネジメントサイクルと連携して実効性の高い防災に発展すべく、さまざまなマルチ・ステークホルダーを巻き込み、連携していくことが展望される。

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