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急増するバイオマス発電における課題 ~FITのさらなる改定に向けて~

発行日 2017年10月24日
上級研究員 渡邉 優子

【要旨】

  • 2017年9月28日、再エネの固定価格買取制度(FIT)の価格を検討する調達価格等算定委員会が開催された。議論の中心は、急増するバイオマス発電、特に「一般木質・農作物残さ」発電であるが、燃料が輸入バイオマスであり、持続可能性に問題がある。
  • 「一般木質・農作物残さ」発電の半数程度がリスクの高いパーム油発電である。世界的には、パーム油の燃料利用を制限する方向であり、2017年4月にEU、同年7月にノルウェーが燃料禁止に向けて動いている。
  • バイオマス発電の持続的な運営を考えると、高効率の熱利用へのシフト促進や、パーム油燃料の除外等のFITのさらなる改定が求められる。

1. 拡がるバイオマス発電:燃料は輸入依存

  • 2017年4月から施行された改正FIT法は、バイオマス等リードタイムの長い電源について、複数年分を一括して価格決定する方式を取り入れた。事業予見性の向上等を目指し、事業者の参入を促すためである。これにより、2017~2019年度までの各電源の買取価格が決定されているが、その見直しや今後の価格設定等について議論が始まった。
  • 2017年9月28日、第30回調達価格等算定委員会(以下、算定委員会)が開催された。2017年度の第1回目として開催された今回は、今後のFITの運用等の総論に加え、各論としては特にバイオマス発電について議論された。FITによる認定量が急増しているためである。
  • 2017年3月末までのバイオマス発電の総認定量(8月10日更新)は1,242万kWで、半分強の645万kWは同年3月の1ヶ月間に認定された。認定量の約9割が、「一般木質・農作物残さ(以下、一般木質等)」を燃料としたものである。2017年10月から、2万kW以上の大規模な一般木質等の発電の買取価格が引き下げられることが背景にある。
  • 一般木質等の発電の認定量は、想定を遥かに超えている。資源エネルギー庁が2015年に出した2030年時点の望ましい電源構成(ベストミックス)では、導入見通しは274万~400万kWであった。しかし、2017年3月末時点で既に約1,147万kWの認定量があり、さらに2017年9月までの駆け込み申請を考えると、想定の3倍以上となる。

  • 図表:FITにおけるバイオマス発電の認定容量の推移(新規認定分)

    図表:FITにおけるバイオマス発電の認定容量の推移(新規認定分)

    (出所:資源エネルギー庁資料から富士通総研作成)

  • 認定された一般木質等の発電案件の約半数は、3万kWを超える大規模発電である。発生量が限られるバイオマス燃料は、大規模発電所の立地が相次げば、需要過多となる。実際、既存発電所や木質バイオマスを活用する製紙会社等との間で、燃料の取り合いが既に起こり、稼動の休止や縮小を余儀なくされている発電所が数年前からある。
  • 一般木質等の発電は、安定的かつ持続的な燃料供給が深刻な課題である。木質ペレット、パーム椰子殻、パーム油等、輸入バイオマスがメインの燃料であるからだ。為替リスクや輸出先の方針転換(輸出における増税等)、世界的なマーケットにおける資源の取り合い等不安定な要素が多い上、国内への経済波及効果は運輸部門等限定的である。

2. リスクが高いパーム油発電

  • 一般木質等の発電の燃料をより細かく見ると、半数程度の案件にパーム油が使われている。第30回算定委員会資料によると、燃料別内訳(総認定量の9割を占める専焼案件のうち)は、件数ベースで約5割、出力ベースで約4割がパーム油を含んでいるとある。
  • パーム油は、世界で最も多く生産される植物油脂と言われている。日本でもカップめん等加工食品の他、石鹸・洗剤等の原料にも使用されている。パーム油の需要は、多用途に利用できることや比較的安価であること、新興国の人口増加や生活レベル向上に伴う消費量拡大等から、世界的に増大している。このため、燃料活用することで競合の恐れがある。
  • 非食用を活用しているとする発電事業者もあるが、パーム油の生産自体にも問題がある。原料であるアブラヤシの農園開発地域は限られているため、世界的な需要が一極集中する。そのため、森林生態系の喪失や地域住民との土地紛争、強制労働等に加え、CO2の排出も化石燃料より多いと問題視される等、生産地の環境や社会に深刻な問題をもたらしている。
  • 世界では、パーム油の燃料利用は制限される方向である。例えば、欧州議会は、2017年4月、生態系破壊等の歯止めとして、パーム油の燃料利用を禁止した法案を賛成多数で可決した。また、同年6月にはノルウェー政府が、化石燃料よりも気候変動を悪化させるとして、政府調達によるパーム油の燃料利用を禁止した。
  • 2030年のSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、持続可能な森林回復に向けた世界的な動きに伴い、さらにパーム油の燃料利用も制限されていく可能性もある。発電所を運営する会社へのレピュテーションリスクも大きい。FITでは、パーム油を利用した発電所を認定しているが、先行きは不透明である。

3. FITの基本に立ち返る~FITさらなる改定も視野に入れて

  • そもそもFITの目的と、現在のバイオマス発電の状況は相容れない。地球温暖化対策や環境負荷低減、地産地消のエネルギーの創出や地域経済の活性化等に結びつかない。また、FITは未成熟な技術を取り入れるが故に、国民負担で産業を盛り上げるという側面もあるが、パーム油による発電であるディーゼル発電は既に成熟している。
  • バイオマス発電の持続的な運営を考えると、FITのさらなる改定が求められる。例えば、効率性の高い熱利用へのシフトを促すことや、リスクの高いパーム油燃料の除外、発電規模の上限設定等が考えられる。FITを創設した当初に立ち返り、FITを活用することで、環境対策の推進や地域経済の循環を目指したバイオマスエネルギーの普及をしていくことが望まれる。