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クラウドファンディングによる地域プロモーション

発行日 2017年10月6日
上級研究員 渡邉 優子

【要旨】

  • 富士通総研では、2017年9月11日(月)に、FRI経済研ワークショップ「新たな地域の資金調達手段を探る ―ふるさと納税・ふるさと投資等行政のクラウドファンディングの行方―」を開催した。その中では、地域基点のクラウドファンディングの可能性や課題について、実例に基づき、さまざまな立場からの議論が展開された。
  • 地域が資金を集める手段としては、ふるさと納税にも大きな期待が集まっている。しかし2017年9月26日に総務省が全国の自治体に向けて送付した大臣書簡の中で寄付金の使途を明確にするよう要望しているように、課題もある。
  • 本稿では、上記のワークショップで紹介された内容も踏まえ、また、ふるさと納税との関係も考慮しながら、クラウドファンディングによる地域プロモーションの可能性と課題について整理したい。

1. 地域基点のクラウドファンディングの進展

  • 近年、地域活性化の呼び水として、地域基点のクラウドファンディングの存在感が高まっている。2011年の東日本大震災からの復旧・復興事業に、民間の取り組みとしてクラウドファンディングが活用されたことで、一気に注目が集まった。今では、被災地以外の全国各地で、地域活性化を目途とした地域基点のクラウドファンディングが実施されている。
  • 通常のクラウドファンディングは、個人や企業、その他の機関が、インターネットを介し、寄附、購入、投資などの形態で、個人から少額の資金を調達する仕組みである。国内のクラウドファンディングにおける市場規模は年々拡大しており、2017年度の市場規模は1,090億400万円に達すると、矢野経済研究所は予測している。
  • クラウドファンディングが伸びている理由として、資金調達者の利点があげられる。既に多く存在するクラウドファンディング運営事業者が用意したサイトを活用し、簡便に準備が進められる。企画段階で資金を募り、資金調達が成功した場合のみ手数料を運営事業者に支払えばよいため、リスクは少ない(金融型は除く)。
  • 資金提供者にとっては、気軽に出資しやすい環境が整備されている。インターネット上で、容易に出資したい案件にアクセスでき、数千円から数万円と小口出資が基本である。また、自分の名前が刻まれた成果品等希少価値の高い返礼品や、出資することで、事業を成功に導く「応援団」になれるという心理的「返礼」に惹かれ、出資する人も多い。
  • 通常のクラウドファンディングの資金調達者は、広域的な資金調達を目的とした個人や中小・ベンチャー企業が多い。近年では、テストマーケティングとしての活用も目立っており、ソニーやデンソー、ユニバーサルミュージック等大手企業の活用事例も散見される。新奇性ある商品化に向けて、企画段階で市場の反応を見ることができるからである。
  • 地域基点のクラウドファンディングは、通常のクラウドファンディングの活用目的に加え、地域活性化という視点が入る。より地域に密着した事業化・商品化に向けて、クラウドファンディングを実施する。そのため、通常のクラウドファンディングより、自治体や地域金融機関との連携を重視していることが特徴である。
  • 地域基点のクラウドファンディングには2つのタイプがある。1つ目は、地域主体のクラウドファンディングである。資金調達者は地域の企業・団体や住民であり、自治体や地域金融機関と連携して、クラウドファンディングを実施する。2つ目は、行政主体のクラウドファンディングで、自治体自身が、資金調達者もしくはクラウドファンディング運営事業者である。
  • 東日本大震災後のクラウドファンディングの成功により、地域活性化ツールとしての気づきが得られたことで、以後、地域基点のクラウドファンディングは活況を呈している。2011年の地方自治法施行令改正により、第三者が寄附金等を自治体に代わり募ることが可能になったことで、行政主体のクラウドファンディングが開始されたことも、活況の理由の1つである。

  • 図表1:地域基点のクラウドファンディング

    図表1: 地域基点のクラウドファンディング

    (出所:富士通総研作成)

  • 地域基点のクラウドファンディングは信頼性が担保できる。玉石混交と言われるネット社会において、自治体や地域金融機関と連携している地域基点のクラウドファンディングは信頼性が高い。また、地域をより良くしたいという趣旨は、地方創生の波に乗り、理解が得られやすい。地域基点のクラウドファンディングがさらに発展していく可能性は十分にある。

2. 地域基点のクラウドファンディングに潜む課題

  • 地域基点のクラウドファンディングには課題がある。多くの自治体でふるさと納税制度をクラウドファンディングに活用している点である。返礼品のみクローズアップされ、ふるさと納税による寄附金で何をするのか、何ができるのか、「使途」と「成果」が不明瞭となっている。また、返礼品が事業内容や成果と結びついていないケースが多く、そもそも別予算で調達している。
    (※ふるさと納税制度の詳細は、オピニオン「自治体における資金調達手段:ふるさと納税から派生した行政のクラウドファンディング」参照)。
  • 通常のクラウドファンディングは、公募時に「使途」と「成果」を明確に示し、資金提供者「予備軍」に資金協力を訴える。「予備軍」の心を動かすには、時に魅力的な返礼品が必要となるが、あくまで成果と結びついていることが前提である。「使途」と「成果」が不明確なまま、事業と関係のない返礼品で寄附金を募るふるさと納税では、クラウドファンディングにそぐわない。
  • 調達方式の選定にも課題がある。通常のクラウドファンディングの基本となるAll or Nothing方式は、目標額を達成しないと資金が得られない。一方のAll in方式は、目標額に届かなくても集まった額が得られるが、クラウドファンディング運営事業者の判断が必要となる。各調達方式はそれぞれ特徴があり、活用目的により使い分けが求められるが、そうはなっていない。
  • ふるさと納税等行政主体のクラウドファンディングは、All in方式の選択が大半である。クラウドファンディング以外の行政予算や補助金等により、目標額に達せずとも事業実行できるだろうという運営事業者の判断があるからである。しかし、特にふるさと納税を活用している場合、もとより「使途」と「成果」が不明確であり、何をもって事業実行とするのかが曖昧である。
  • All in方式は、目標額達成は必須でないが、事業実行とそれによる成果や返礼の義務がある。しかし、ふるさと納税によるクラウドファンディングは、曖昧な事業実行と別枠で用意している返礼品があるため、ある意味何の「義務」も発生しない。結果として、寄附金の使い道は、活用目的がないままに、さまざまな予算の不足分の補填に使われるケースが多い。
  • 通常のクラウドファンディングは、クラウドファンディングの成否が事業実行に直結する。All or Nothing方式が基本であるため、資金調達者は「使途」と「成果」の検討に自然と力が入る。ただし、十分企画を吟味するが故に、妥当な目標額となりがちであり、大きな金額の設定には向かないという側面もある。
  • 例えば、福井県鯖江市では、活用目的に合わせて、ふるさと納税の活用や調達方式を使い分けている。ふるさと納税によるクラウドファンディングは寄附控除があるため市事業に、通常のクラウドファンディングは市民の夢の応援に活用している。鯖江市は、自治体初のクラウドファンディング運営事業者になっているが、それぞれ別枠で実施している。
  • ふるさと納税によるクラウドファンディング(F×Gさばえ)は、予算だけでは実施が難しい、挑戦的な市の事業に活用している。若手職員による柔軟な発想を生かした事業提案を受け付けており、集まった寄附金で実施している。公募時に「使途」と「成果」を明示し、プロジェクト形式で事業実施に取り組んでいる。また、比較的大きな資金を得るためにAll inとしている。
  • 地域からの事業提案には、通常のクラウドファンディング(FAVVOさばえ)で、All or Nothingを基本としている。2017年8月末時点で募集を終了した、全27事業全てにおいて資金調達に成功し、総額約3,000万円の資金が地域内のさまざまな事業に活用されている。資金調達者である市民や地域団体等と鯖江市が一緒に取り組み、地域を盛り上げている。
  • 鯖江市によると、地域への補助金がクラウドファンディングの活用により減ったと言う。補助金より、クラウドファンディング(All or Nothing)は白黒がはっきり判断されるため、提案する側の市民や地域団体等に真剣味が増し、面白いアイディア出やすい傾向にある。面白いという評判で、地域の協力体制が自然発生的に生まれるという副次的な効果もある。
  • 資金の特色によるまちづくりも実施している。公費であるふるさと納税によるクラウドファンディングで歩道を改修し、使途の自由度が高い通常のクラウドファンディングで、遊び心ある「隠れメガネ」設置や関連イベントを行っている。この“メガネの聖地”鯖江を具現化する「メガネストリート整備計画」は、全国から視察が相次ぐ等、話題スポットとなっている。

  • 図表2:鯖江市「メガネストリート」

    図表2: 鯖江市「メガネストリート」

    (出所:筆者撮影)

  • 地域基点のクラウドファンディングにおける、ふるさと納税制度の活用や調達方式の選定は、各特徴を鑑みた上で決定していくことが望ましい。クラウドファンディングは、税収等と異なり、恒久的な資金調達にはなり得ないため、「使途」と「成果」を明示したプロジェクト型として企画すべきと考える。また、調達方式は、活用目的に応じて使い分けを図ることが良い。
  • 総務省は、2017年9月26日、全国の自治体に向けて、ふるさと納税による寄付金の使途を明確にするよう要望する大臣書簡を送付した。また、子育て支援に特化することで人口増加に繋げた北海道上士幌町が注目を浴びており、このようなふるさと納税の使途の優良事例を総務省は、近くとりまとめるとしている。
  • ふるさと納税制度を活用したとしても、地域活性化に繋がる成果を出すことに注力していくべきである。総務省通知等により、自治体は、ふるさと納税の趣旨に立ち返り、返礼品に頼らない独自の取組みに挑戦する等、内容勝負に変わってきている。この動きは、地域基点のクラウドファンディングのあり方も見直すことになるだろう。

3. 地域基点のクラウドファンディングの今後

  • 地域基点のクラウドファンディングは、中小企業支援や地域産業の振興として有効である。クラウドファンディングは「小さく生んで大きく育てる」ことができる。地域の夢物語が、実際に資金が集まり事業実行に漕ぎ着けるとなると、徐々に地域内のステークホルダーの連携の輪は拡がっていく。
  • キープレイヤーは、地域金融機関である。クラウドファンディングは、誰でも、元手無しに事業開始できるが、企画力が勝負となる。資金調達者は、地域金融機関から企画ノウハウを提供して貰い、企画力を向上させることで、クラウドファンディングを成功に繋げる。その後は、地域金融機関から融資を受け、事業拡大を目指していく。
  • つまり、地域経済の好循環手段として、クラウドファンディングは期待できる。地域で新しい事業に挑戦しようとしても、厳しい行財政の中、補助金に頼れない。地域金融機関の融資に即座に結びつかない企画も多い。まずは、クラウドファンディングの活用により地域事業を立ち上げ、その後、地域金融機関の融資に繋げていくことで、地域経済循環を起こすのである。
  • 実際、地域金融機関は、地域案件の掘り起こしに、クラウドファンディングを活用し始めている。池田泉州銀行は、2017年3月にクラウドファンディング運営事業者と業務提携し、地域の事業者にクラウドファンディングを紹介する仲介役を果たしている。第一弾として、2017年4月より、南海電鉄が運営する遊園地の運営費のクラウドファンディングが実施されている。
  • 地域基点のクラウドファンディングは、地域外との連携も促進する。資金提供をきっかけに、資金調達者と資金提供者の間で、ある種、プロジェクトに対するファンコミュニティが創生される。さらに、単なるプロジェクトへの応援の気持ちが、そこに関わる人々や活動に対する愛着に深化していくのである。
  • 例えば、気仙沼市の製麺工場の事例がある。東日本大震災からの工場再建のために、ある製麺工場がクラウドファンディングを活用した。資金提供者は、地域外の会社員達だったが、資金提供だけに留まらず、工場再建後の新しい麺メニューの開発に、ボランティアとして自ら加わったと言う。
  • 地域内外の繋がりを深くするクラウドファンディングは、地域に活力と刺激を与える。地域の財源としてクラウドファンディングを機能させることにより、多くの新しいプロジェクトが次々と展開できる。その様子は、大きなアピールとなり、資金提供者のみならず、多くの人々の眼を地域に惹きつけることができる。
  • 共感型の資金調達と言われるクラウドファンディングは、地域に特別な思い入れのない人々にもプロジェクトを通じて、地域の魅力を訴えることができる。「共感を得る」ために企画・アイディアで勝負し、地域の魅力や特色を、クラウドファンディングを通じて強く打ち出していく動きは今後増えていくだろう。返礼品合戦から「共感」合戦へ、新たな地域間の競争が今始まる。

関連ページ

富士通総研では、2017年9月11日(月)に、FRI経済研ワークショップ「新たな地域の資金調達手段を探る ―ふるさと納税・ふるさと投資等行政のクラウドファンディングの行方―」を開催いたしました。以下に、各登壇者の講演資料を掲載しておりますので、併せてご覧下さい。また後日、ワークショップの要約を掲載致しますので、ご参考にして頂ければ幸いです(2017年10月末予定)。

FRI経済研ワークショップご案内ページ
「新たな地域の資金調達手段を探る ―ふるさと納税・ふるさと投資等行政のクラウドファンディングの行方―」
http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/resources/events/er-workshop/er-workshop20170911.html