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企業のSDGsの取り組みの進展と課題

発行日 2017年8月28日
上席主任研究員 生田 孝史

【要旨】

  • 国連の持続可能な開発目標(SDGs)は企業の義務ではないが、その効果的な実施のために、人材・技術・資金を持つ企業の役割に対する国際社会の期待は大きい。企業向けのガイドラインやツールの開発も活発で、非財務情報開示への反映も検討されている。
  • 日本政府もSDGs実施指針にて企業の貢献の重要性の認識を示しており、日本経団連の企業行動憲章の改定もSDGsに対応する見込みである。大手企業を中心に国内企業の取り組みも具体化し、SDGsの認識などに言及するレベルから、CSR方針・考え方への反映や重要課題分析への活用、自社事業との関連付けをする企業が増えている。
  • 企業のSDGsの取り組みを一過性のブームに終わらせないためには、事業機会との関連付けが不可欠であり、既存の取り組みへの「後付け」ではなく、SDGsを参照したうえで、新たなビジネス開発や企業価値創造を検討することが重要となる。

SDGs達成に向けた企業への期待と要請の高まり

  • SDGsが2016年1月にスタートしてから1年半あまりが経過した。日本政府も、昨年12月にSDGs実施指針を策定し、今年7月のニューヨークでの国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)では、岸田外相(当時)がピコ太郎と共にパフォーマンスを披露するなど、SDGsへの積極的な姿勢をアピールしている。
  • SDGsとは、持続可能な開発のために2030年までに国際社会が達成すべき目標として、193の国連加盟国が全会一致で採択したものである。法的拘束力はないが、日本を含む各国政府はSDGsの達成に努めることを約束し、進捗を報告することになっている。
  • SDGsの効果的な実施のために、人材・技術・資金を持つ企業の役割に対する国際社会の期待は大きい。HLPFのサイドイベント「SDGビジネスフォーラム」でも、国際機関等からSDGs実現に向けた産業界の関与・リーダーシップへの期待が寄せられた。
  • 先進的な企業グループはSDGsへの積極的な姿勢を示している。同フォーラムにて発表されたビジネスコミュニケでは、企業の積極的な関与を表明するとともに、政策インセンティブとSDGsにフォーカスした投資やイノベーションを促進するための官民の枠組みを求めている。
  • 企業にとってSDGsは義務ではないが、社会課題解決の取り組みを示す際など、SDGsの認識や関連づけが欠かせなくなる。ESG(環境・社会・ガバナンス)投資などで、企業の非財務情報開示が要請され、企業評価に反映される傾向が強まるなか、SDGsに関する情報開示が重視されよう。サプライチェーン管理にもSDGsが反映されかねない。
  • SDGsを考慮した企業経営のニーズを反映して、企業向けのガイドラインやツールの開発が活発である。海外で開発されたグローバル企業向けの行動指針「SDGコンパス」や、業種別取り組みガイド「SDGインダストリーマトリクス」、CEO向け解説書「SDG CEOガイド」は日本語版も公開されている。
  • 非財務情報開示の国際的なガイドラインを策定するグローバルレポーティングイニシアチブ(GRI)は、国連グローバルコンパクトと共同で、企業のSDGs情報開示のあり方を検討している。今年12月にはハンドブックを公開予定で、最終的には来年7月から新たに適用される「GRIスタンダード」へのSDGs情報の反映が目指されている。

日本企業の取り組みの具体化

  • 日本政府も、SDGs実施指針において「民間セクターが公的課題の解決に貢献することが決定的に重要」との認識を示している。経産省が5月に発表した企業と投資家の間の情報開示指針「価値共創ガイダンス」には、SDGs等の戦略への組み込みが明記されている。環境省でも今年度中に中小企業向けのSDGs導入手引きを策定予定である。
  • SDGsに対する国内産業界の関心も高まっている。日本経団連では、新たな経済成長モデルとして提唱した「Society5.0」を通じてSDGs達成に貢献するとして、今年11月にSDGsに対応した「企業行動憲章」と「実行の手引き」の改定を予定している。
  • 今年2月に実施された公益社団法人市民社会協議会(CBCC)のCSR実態調査によれば、回答企業167社中、すでにSDGsに対応している企業が29%、近いうちに対応予定の企業が10%であった。また、SDGs対応の意義について、事業を通じた社会課題の解決への貢献が最優先と回答する企業が、全体の約45%と最も多かった。
  • 2017年のフォーブスグローバル2000にランクインした日本企業225社について今年7月末時点の公開情報を富士通総研で調べたところ40%(90社)がSDGsについて何らかの言及をしていた。昨年12月末時点の前回調査(16年フォーブスグローバル2000ランクイン219社が対象)の33%(72社)から増加している。
  • 今回と前回の調査結果の大きな違いは、SDGsへの言及内容である。前回調査では、企業トップのメッセージなどでSDGsの認識や自社の貢献について言及するレベルの企業の数が突出していたが、今回調査では、CSR方針や考え方等にSDGsを反映する企業が急増しており、SDGsを重要課題(マテリアリティ)分析に活用する企業も多い。
  • SDGsと自社事業との関連付けを行う企業も増えている。例えば、SDGsの17目標それぞれに自社の取り組み事例を関連付けた新日鉄住金や、バリューチェーンに沿って社会課題と自社の取り組み、SDGsへの貢献を関連付けた大和ハウス工業、製品カテゴリごとにSDGsとの関連付けを示した信越化学工業などの取り組みは特徴的である。

「SDGsブーム」に終わらないために

  • 企業のSDGsへの関心が急速に拡大し、具体的な取り組みも始まっているが、一過性のブームに終わってはいけない。SDGsは2030年まで社会課題解決を考える際のグローバルな「共通言語」であり続けるため、継続的な取り組みが必要である。
  • 企業がSDGsの取り組みを定着させるためには、「社会貢献」だけではなく、事業機会との関連付けが不可欠である。現状は、既存の取り組みをSDGsと関連づけて理解・説明する、いわゆる「後付け」が主であるが、今後は、SDGsを参照したうえで、新たなビジネス開発や企業価値創造を検討することが重要となる。
  • 17目標169ターゲットから構成されるSDGsは、国際的に重視される社会課題のほとんどが網羅されていると考えてよい。SDGsは、企業が本業を通じた社会課題解決を検討するヒントの宝庫ともいえ、国内外でビジネス機会が期待できる。
  • ビジネスと持続可能な開発委員会によれば、SDGsに関連する「エネルギーと材料」「都市」「食料」「健康と福祉」の4分野において、2030年時点で、世界全体で12兆ドル/年、アジア域内でも5兆ドル/年の市場機会が見込まれている。日本政府のSDGs実施指針に示された優先課題と具体的施策にも、国内の市場機会のヒントが含まれている。
  • SDGsの達成は企業にとって義務ではないが、2030年までの長期にわたって考慮すべき社会課題の共通言語として、対応次第でリスクにも機会にもなりうる。SDGsというレンズを通してバリューチェーンを含む自社と市場の課題を見つめ直すことで、事業改善と提案力の強化による持続的な企業競争力の向上が求められる。

  • 図表:フォーブスグローバル2000ランクイン日本企業のSDGs言及内容

    図表:フォーブスグローバル2000ランクイン日本企業のSDGs言及内容

    (出所:“Forbes Global 2000”と各社公開情報を基に富士通総研作成)

    注1:16.12末調査の対象企業数(2016年版ランクイン日本企業219社のうちSDGsに言及した企業数)72社、17.7末調査の対象企業数(2017年版ランクイン日本企業225社のうちSDGsに言及した企業数)90社

    注2:複数の内容に言及している企業があるため、企業数(棒グラフ右の数値)の合計は対象企業数を超える