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加速する中国のキャッシュレス社会 ―フィンテックがもたらす可能性―

発行日 2017年6月29日
上級研究員 趙 瑋琳

【要旨】

  • 7億人超の巨大なインターネット人口と「インターネットプラス」戦略が追い風となり、中国のフィンテック産業が急成長を遂げている。
  • 2016年にスマホでの支払いユーザーは約4.7億人となり、同年のモバイル決済規模は約608兆円に達し、米国の約50倍になっている。
  • 第三者決済サービスの発展がフィンテックの発展をけん引し、アリペイや「微信支払」など代表的なサービスを提供する中国の大手インターネット企業が先頭に立っているが、伝統的金融機関や外資系企業なども参入し、競争が激化している。
  • フィンテックのさらなる発展で、信用評価の手法がさらに普及すれば、中国のキャッスレス社会は次のステップへと進化するだろう。

進展している中国のフィンテック

  • フィンテック(FinTech)とはファイナンスとテクノロジーを組み合わせた略語で、情報通信技術(ICT)を活用した革新的な金融商品とサービスを指す。中国では、フィンテックを「互聯網金融」(インターネット金融)と呼ぶことが多い。
  • 一方、近年、中国は「インターネットプラス」戦略を大いに推し進めており、「インターネットプラス」がホットワードとなっている。インターネットをあらゆる産業と融合させ、従来の産業やビジネスに新たな価値を生み出すことで、イノベーションの一環となる新たなビジネスの立ち上げと雇用の創出につなげようとしている。
  • 2016年の中国のインターネット人口は7.31億人となり、総人口に占めるインターネット人口の割合が53.2%となっている。2015年に50%に突入してから、順調に増えている。その中で、スマートフォン(以下スマホ)を始めとしたモバイルインターネット利用者数は6.95億人に達して、インターネット人口の約95%がモバイル端末からインターネットにアクセスしている(図1)。

  • 図1:中国のインターネットとモバイルインターネット利用者数(2007年-2016年)

    図1:中国のインターネットとモバイルインターネット利用者数(2007年-2016年)

    (出所)中国インターネット発展状況報告書(2016)を基に作成

  • 中国の7億人超のインターネット人口というスケールメリットを考えれば、インターネットを武器に新たなサービスを展開する「インターネットプラス」は、無限の可能性を秘めていると思われ、フィンテック産業の発展はその好例になる。
  • 中国ではキャッシュレス化が急速に進展している(図2)。第三者決済サービスがけん引しているフィンテックの発展は中国の人々の生活に劇的な変化をもたらしている。

  • 図2:中国における非現金決済の市場規模(2009年-2016年)

    図2:中国における非現金決済の市場規模(2009年-2016年)

    (出所)中国人民銀行の各年の支払い状況報告書を基に作成

  • 割合はまだ低いものの、モバイルインターネットの利用者数の増加とともに、第三者決済サービスにおけるモバイル決済の規模が拡大している。2016年のモバイル決済規模は2015年より倍増し、38兆元(約608兆円、1元=16円で換算)に達しており、同年の米国の規模(1,120億ドル、約12.8兆円)の約50倍になる。
  • 中国人にとっては、「衣、食、住、行(交通)」は暮らしの基本であるが、現在、スマホが欠かせない新たな「基本」となっている。スマホ一台で、オンラインショッピングや、料理のネット注文、車・ライドシェア、各種料金の支払い、実店舗での支払いなど、日常生活に必要なあらゆるものを効率的に済ませることができる。

フィンテックのさらなる発展を目指す

  • 2016年の中国ユニコーン企業(未上場で、評価額が10億ドル以上のベンチャー企業)ランキングの1位に輝いたのが、フィンテックベンチャーの「螞蟻金服」(Ant Financial、2014年設立、電子商取引大手アリババグループの一員)で、企業価値は750億ドルに達している。
  • 「螞蟻金服」が運営している「支付宝」(Alipay、以下アリペイ)は、2004年に電子商取引における第三者保証機能を持つ決済方法としてリリースされた。現在ではインターネット決済からモバイル決済、オフライン決済まで幅広く普及している。
  • 2005年にインターネット大手のテンセントがアリペイと同様な機能を持つ「財付通」を始めたが、近年同社が開発した、8億人以上のユーザーを有する人気メッセージアプリの「微信」(Wechat、ウィーチャット)での支払い(「微信支付」)が急増している。
  • アリペイ、「財付通」及び「微信支付」は第三者決済サービスのマーケットの80%以上のシェアを握っており、インターネット大手が運営している大型のプラットフォームを後ろ盾とし、膨大なユーザーを抱えていることが特徴である。
  • 中国フィンテック企業の海外展開も進んでいる。アリペイや「微信支付」は海外の決済機構や実店舗などと提携して、増えつつある中国人観光客にモバイル決済などのサービス提供を行っている。
  • 日本では、訪日中国人観光客の利便性向上のため、アリペイや「微信支付」を導入する動きが浮き彫りになっている。2017年1月にコンビニ大手のローソンが日本国内店舗での支払いにアリペイを導入し、「微信支付」が可能という看板を出す店舗も増えている。
  • 第三者決済サービスにおいては、アリペイや「微信支付」は先頭に立っているが、業者間の競争が激化している。世界で50億枚以上も発行されている銀聯カード(中国銀行カード聨合)はデビットカードとしてスタートしたが、インターネット決済やモバイル決済サービスを提供するようになっている。2016年からアップルペイやサムソンペイなど外資系企業も参入している。
  • 一方、先進国と比べると、中国でのクレジットカードの使用率が低く、約14%にとどまっている。それは、クレジットカードは個人の信用を基礎にしており、加入の際には審査が必要だが、中国では個人の信用を評価することが必ずしも容易ではないからだ。現状では信用評価は先進国ほど進んでいない。
  • しかし、フィンテックで信用評価を進化させることもできる。中国では、アリペイの付随機能として生み出された「ゴマ信用」の普及が広がっている。「ゴマ信用」は個人情報や、支払い履歴、人脈関係、行為・消費嗜好などを信用のポイントにしている。「ゴマ信用」のポイントが高くなればなるほど、信頼できる人間として認められる。
  • 「ゴマ信用」を他の企業のサービスと連結させる場面が増えているため、様々なサービスの利用におけるメリットが出てくる。例えば、信用ポイントの高い顧客の場合、ホテルの宿泊料金の優遇を受けられる。現在人気を集めている自転車シェアの「ofo」の登録用デポジットも免除される。
  • 中国では、従来、銀行のような伝統的金融機関しかできない個人の信用評価だが、2015年1月から民間企業も参入できるように緩和された。この分野でも、第三者決済サービスを提供する民間企業がリードし、中国が信用社会となることで、キャッシュレス化もさらに進み、新しいステップに入っていくだろう。