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拡大する中国ユニコーン企業の特徴と将来性

発行日 2017年6月7日
主席研究員 金 堅敏

【要旨】

  • 中国では、新規産業育成の成果としてユニコーン企業が注目されている。調査会社CB Insightsによると、2017年5月30日現在、中国ユニコーンは47社にも達し、米国に次ぐユニコーン大国になりつつある。
  • 米国と比べ、中国ユニコーンは、電子商取引(EC)、Fintechやシェアリングエコノミー等のB2C分野に集中しており、ビッグデータ、サイバーセキュリティー、インターネットソフトなどの分野では存在感が薄い。ただ、中国自身の評価では、クラウドサービス、AI、ビッグデータという新たなネット技術分野と、HealthTech 、EdTech、Real Estate Techという応用分野においてもユニコーンが生まれ、深堀りと広がりを見せている。
  • 中国ユニコーンが増えた背景には、規制分野への民間資本が進出可能になったこと、創業ブームでスタートアップ企業の層が厚いこと、VC等のリスクマネー供給が潤沢になったことがある。さらなる規制緩和や効率的なインキュベーションシステムの整備が求められる。

拡大する中国ユニコーン企業

  • 近年、成功したベンチャー企業の象徴としてユニコーン企業(Unicorn:創業期間はおよそ10年以内、企業評価額が10億ドルに達した非上場新規創業企業を指す)が新規事業の創出を図る政府機関や業界団体、起業家、投資家に注目されている。特に、産業の高度化を急ぐ中国では、新規産業育成の成果としてユニコーンへのこだわりが強い。筆者も、現地訪問で地方産業振興担当者が「わが地でもユニコーンが生まれるよう政策を練っている」という話を聞いた。
  • 世界的にTechCrunch、CB Insights、Digi-Capital等の調査会社がそれぞれ世界のユニコーン状況を評価・公表している。例えば、CB Insightsの調査によると、2017年5月30日現在、世界全体では197社のユニコーンが存在している。うち米国ユニコーンは104社で、全体の53%を占めている。次に、中国ユニコーンは47社(全体の24%)で、2015年9月20日時点の21社から倍増した(注1) (図表1を参照)。伝統的なイノベーションに優位性のある日本(1社)やドイツ(4社)、イギリス(9社)等の先進諸国や韓国(4社)、インド(9社)などの新興諸国と比べて中国ユニコーンの急増ぶりが突出している。

  • 図表1 国別ユニコーンの分布と変化

    図表1 国別ユニコーンの分布と変化

    出所:CB Insights

中国ユニコーンの産業分野には強弱がある

  • CB Insightsが調査した世界のユニコーンは34の産業分野にわたっているが、米国ユニコーンは24分野に及んでいる一方、中国ユニコーンは17分野に集中している。
  • 電子商取引(EC)、Fintech、シェアリングエコノミー、ハードウェア、ソーシャルの5つの分野について、米国のユニコーンは11社、12社、3社、3社、3社あり、中国には14社、5社、4社、5社、3社が存在し、両国に大きな差はない。しかし、ビッグデータ、サイバーセキュリティー、インターネットソフトウェア/サービス、ヘルスケアの4分野においては、米国には9社、7社、24社、10社も存在するが、中国では0社、0社、2社、2社と存在感が非常に薄い。つまり、中国ユニコーンは、B2Cの分野やハードウェアの分野では米国と互角と言えるまで成長してきているが、ビッグデータやサイバーセキュリティー等のB2B分野では存在感がなく、また、インターネット技術・ソフト分野と医療サービス分野も非常に弱いと見て取れる。
  • また、2015年以前、2015年、2016年、2017年5月30日までのユニコーンになった会社数では、米国では37社、36社、19社、12社であり、中国では8社、20社、13社、6社であった。つまり、中国ユニコーンは、2015年ごろからその価値が認められ、VCが大量投資しを始めて中国政府が創業奨励を強化した時期と重なっている。

中国もユニコーンを独自に評価開始

  • 産業の新陳代謝を物語っているユニコーンの影響力上昇に伴って、中国政府の新規産業育成部門も民間シンクタンクと共同で中国ユニコーンを評価・分析している(注2) 。ユニコーンの条件として、1)中国国内で登録している企業、2)2006年以降設立、3)VCの投資を受けたことがある、かつ未上場、4)市場評価額が10億ドルを超えている、という基準(この基準は前述した世界的な調査会社による定義とあまり変わらない)で評価したところ、中国には131社のユニコーンが存在するという。
  • 中国独自調査のユニコーン社数が、CB Insights等の国際調査会社の社数より大幅に増えたのは、中国独自の調査では一部上場企業の独立採算の新規関連会社を数え入れたことや、VCからの資金調達がより細かく把握できた等の背景があると考えられる。例えば、上場企業アリババでは、業務の分離独立や新規事業育成で7社(Ants financial(金融関係)、Alibaba pictures(映画関係)、DingTalk(ソーシャル交流関係)、AlibabaCloud(クラウドサービス)、Koubei(飲食評価)、Alibaba Music(音楽関係)、Cainiao(物流関係))が中国独自調査のユニコーンリストに載せられた。このようなユニコーンは31社にも上る。台頭してきたITプラットフォーム企業(例:BAT=Baidu, Alibaba, Tencent)は、新規成長企業の育成に大きな役割を果たしていると考えられる。
  • また、自転車シェアの「Mobike」も、CB Insightsのリストにはまだ載せられていないが、「2016中国ユニコーン発展報告」には20億ドルの評価額でリストアップされている。このようなユニコーンは数十社にも上っていると推測される。
  • 図表2が示すように、中国が評価した131社ユニコーンの「体格」(評価額)は、まだ大きくない(平均評価額37.2億ドル以下のユニコーンが全体の86%を占める)が、100億ドル(時価総額11,200億円に相当)を超えるスーパー・ユニコーンも7社存在する。

  • 図表2 中国が評価したユニコーンの評価額分布状況

    図表2 中国が評価したユニコーンの評価額分布状況

    出所:『2016中国ユニコーン発展報告』

  • また、CB Insights評価の分野特徴と同じように、中国自身の評価においても電子商取引(31社)とFintech(18社)、モビリティー・シェアリング(13社)への集中が見られるが、CB Insightsリストにはあまり載せられなかったクラウドサービス(5社)、AI(4社)、ビッグデータ(2社)という新たなネット技術分野と、Fintechに続いてHealthTech (9社)、EdTechあるいはMoocs(4社)、Real Estate Tech(4社)というアプリケーション分野においてもユニコーンが現れ、中国ユニコーン群に深堀りや広がりがみられる。

ユニコーンが生まれる土壌:市場競争政策、創業活動、VC等リスクマネー

  • 中国ユニコーンのほとんどは、B2C分野が多く、民間資本主導で競争環境の中で生まれ、国有企業とは無縁で消費者の自由で合理的な選択で成長してきた。中国では、金融、医療、教育、エネルギー等の分野において民間資本の参入や民間企業によるイノベーション活動を奨励か黙認しており、もし規制緩和がさらに進められれば、数多くのガゼル企業(注3) が生まれ、新たなユニコーンが出現すると期待できるかもしれない。
  • 他方、中国でユニコーンが増加したのは、活発なベンチャー創業活動があったからこそである。ネットの普及、アリババ等成功企業のモデル効果、政策の奨励等で、近年中国では創業ブームが生じている。中国の国家工商行政管理総局の統計によると、2013~2017年第一四半期までの月平均新規企業登録数はそれぞれ、20.86万社、30.4万社、36.16万社、40.1万社、41.83社と年を追って増加している(注4) 。これら創業企業の80%以上は、ネット・ICT、文化・娯楽・スポーツ、教育・社会サービスなどが占めているという。ごく一部のスタートアップ企業が、大競争の洗礼を受けて成長し、ユニコーンになったのである。将来、これら年間550万社にも達する新規企業を、インキュベーション活動などを通じてより多くの有力企業へと育成できるか注目される。
  • VC等リスクマネーの潤沢な供給がユニコーン育成に欠かせない血液を提供している。図表3が示すように、2013年まで中国のベンチャー投資額は30億ドル前後でインドと変わらない状況であったが、2014年ごろから急増し、2016年は310億ドルまで拡大してきた。
  • ただし、これらのVC等の投資ファンドには数多くの政府系ファンドも含まれている(注5) 。効率的な運用ができなければ、非効率なユニコーンしか生まれない可能性も残る。シリコンバレーのVCの経験を学ぶ必要がある。

  • 図表3 主要国家/地域のVC投資額の変化

    図表3 主要国家/地域のVC投資額の変化

    出所:KPMG”Venture Pulse Q4 2016”

  • 以上で見てきたように、中国ユニコーン企業が急拡大しており、規制緩和や効率的なインキュベーション活動および市場メカニズムに基づくVC等のリスクマネーの提供が実現できれば、中国はネットサービスなどの先進的な分野でも米国並みのベンチャービジネス大国になる可能性を潜め、「次のアリババ」や「次の華為技術」が生まれる可能性がある。中国のベンチャービジネス動向から目を離せない。

注釈

  1. 世界のユニコーンの最新状況は、https://www.cbinsights.com/research-unicorn-companiesを参照。
  2. 科学技術部火炬中心(Torch High Technology Industry Development Center)/長城戦略諮問(2017.03)『2016中国独角獣企業発展報告』(中国ユニコーン発展報告)。
  3. ガゼル企業(Gazelle Company)とは、非常に雇用を創出して成長著しい企業のことを言う。
  4. 厚生省「雇用保険事業年報」によると、日本の年間創業者数は約10万社、また米国商務省のU.S.Census“Business Dynamics Statistics”によると、年間新規開業企業は約67万社となっている。日米中の新規創業企業数を比較すれば、中国の創業ブームが分かる。
  5. 中国の統計によると、ベンチャー投資ファンドのうち、財政予算や国有機構が出資した資金の割合(2015年)は約56%にも達している。国家発展改革委員会(2016)“China Venture Capital Industry Repout 2016”