富士通総研では、厚生労働省「平成24年度老人保健健康増進等事業」(国庫補助事業)として、「認知症対応型共同生活介護のあり方に関する調査研究事業」を実施いたしました。
担当:第一コンサルティング本部 公共事業部 東史人、林代至未、赤田啓伍
電話:03-5401-8396(直通) Fax:03-5401-8439
認知症対応型共同生活介護事業所(認知症グループホーム)は、介護保険制度開始当初は、言語等のコミュニケーション能力が維持されている軽度から中度までの認知症要介護者を対象に、本人の残存能力を積極的に引き出し日々の暮らしに活かす努力をすることにより、ある程度のADLを保つこと(低下防止)を目指したものでした。
しかし、介護保険制度の開始から十数年が経過し、当初からの入居者も歳月の経過等による心身の能力低下に伴い医療ニーズや看取りのニーズまで求められるようになってきていること、その他にも軽度要介護者や在宅サービスのニーズ等の大幅な増加への対応として、地域との関わりの中でデイサービスやショートステイのサービスも求められるようになってきていること等、認知症グループホームに期待される機能等が徐々に拡大してきています。これら様々なニーズ等に対応するため、認知症グループホームの機能が事業所によって多様化してきており、今後「認知症グループホーム」とはどういうサービスを指すものなのか、改めてその位置づけ・機能やあり方等を整理する時期に来ていると言えます。
本事業では、認知症施策の中核的役割を担うための認知症グループホームのあり方等を検討していくための出発点として、実態としてどのような事業所が多いのか等の基礎データを収集・整理することを目的としました。
本事業では、全国の認知症グループホーム10,984事業所に対する悉皆でのWebアンケート調査(ネットでの回答困難な事業所は別途、郵送・FAX等により回答)を実施しました。Webアンケート調査では、事業所毎に、利用者の要介護度、提供するケアの内容・時間等(看取り等への対応状況や可否等含む)や、職種別の従業員数、経営状況等の実態を把握し、今後の検討に資する基礎データの整理・分析を行いました。
また、アンケート調査で把握が難しい部分については、検討会委員の推薦により、7類型合計11の事業所、2評価機関に対し、ヒアリング調査により把握しました。
以上の調査の実施等にあたっては、有識者や事業者等の関係者(計5名)から成る検討会を設置し、5回にわたり、調査内容や結果を報告し、検討・精査いただきました。
本事業の結果、利用者のニーズの変化に応えてきた結果として、多様化・多機能化する事業所の様子、それに対する課題や期待等が浮き彫りになり、利用者の状態や認知症ケアの状況、医療ニーズへの対応、人材育成等に関し、「グループホームのあり方」を検討する上で、以下のような示唆に富む多くの内容が抽出されました。
本事業では、有識者や事業者等の関係者から成る検討会にて調査内容や結果を検討・精査および助言・指導等いただきましたが、以上のような実態を踏まえ、検討会では多様かつ重要な議論が為されました。中でも、ユニット化の進行等によりケアの内容等が似通ってきている特別養護老人ホームとの差別化は、来年度以降の具体的な「グループホームのあり方」を検討する上で重要な観点となりました。
前述のような本事業における多くの成果は、来年度以降の具体的な「グループホームのあり方」の検討に、広く活用されることが期待されることから、その際の基礎データとして活用されるよう、報告書として取りまとめましたので公表いたします。
検討会委員の先生方、アンケート調査やヒアリング調査等に御協力下さった事業所等の皆様をはじめとする、本事業に御支援・御協力下さった皆様に深く感謝いたします。