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Japan

第1回FRIインターネット・ユーザー調査

趣味目的・情報受信型ユーザー主流の時代へ

一部のマニアのメディアであったインターネットの普及が加速しはじめ、一般の人々にも急速に利用が広がっている。インターネットは、「個人が世界に向けて情報を発信できる」メディアとしてもてはやされる傾向にあるが、普及に従い、ユーザーの利用目的や態度はさまざまに分化しているようだ。富士通総研(FRI)では、インターネットにおける日本のコンシューマ・ビジネス市場の可能性を見極めることを目的とし、インターネット・ユーザー調査を実施した。(田中秀樹/倉持 真理 富士通総研)

調査方法

電子メールによるマーケティング・サービス「iMiネット(http://www.imi.ne.jp/imi/) 」*1を利用して行なった。約5万人の登録メンバーの中から、WWWにアクセスしている人を対象に回答者1500人を選び、9月1日に調査票を電子メールで送付。9月8日までに有効回答1323通(回答率88.2%)を回収した。

調査の焦点

インターネット・ユーザーの数が増えるに従い、それぞれの利用目的や、アクセス行動は多様化してきている。インターネットを初期の段階から利用していたユーザーと、最近開始したユーザーとでは、どのような違いがあるのだろうか。また、新たなビジネスチャンスとして企業の注目を集めるオンラインショッピングや、有料サービスは、どの程度利用されているのだろうか。

インターネット・ユーザー全般の各種サービスの利用状況と、最近アクセスを開始したユーザーの特徴、そして利用目的と情報発信行動によるユーザーのタイプ分類をベースに、インターネット・ビジネスに取り組む企業に対する提言をまとめてみた。

主要調査結果

女性、専業主婦の利用が増加
ユーザーの男女比率は、77.6対22.4。女性ユーザーを開始時期別に見ると、96年10月~97年3月の間に急激に増えており、97年4月以降に開始したユーザーの中では女性が4割以上となっている(グラフ1)。これは、主に専業主婦の増加によるもので、96年4~9月には全体の4%でしかなかった主婦の比率が、その後14%、18%と伸び、97年4月以降では学生の比率を抜くまでに成長している。

趣味・娯楽目的が主流に
最近利用を開始したユーザーほど、インターネットを趣味・娯楽目的で使う率が増えている。94年3月以前に開始したユーザーでは仕事・勉強目的が61.8%だったのに対し、97年4月以降のユーザーでは89.1%が趣味・娯楽目的と回答している。
利用目的によってアクセス先の内容は異なり、仕事・勉強目的のユーザーは、ニュース関連(66.7%)、ビジネス関連(65.1%)のWWWサイトによくアクセスしているが、趣味・娯楽目的のユーザーは、懸賞応募関連(66.6%)、エンターテインメント関連(57.1%)によくアクセスしている。どちらの目的のユーザーも、検索サービス(両方とも8割以上)と、パソコン/ソフト関連(仕事・勉強7割以上、趣味・娯楽6割以上)には、共通してよくアクセスしている。

アクセス行動:新規開拓か固定か?
日々新しいWWWサイトが誕生していく中、ユーザーのアクセス行動は新たな発見を求めてあちこち見て回るか、決まったサイトに腰を据えるかのどちらの傾向にあるのだろうか。
アクセス行動に関する質問項目によれば、常に新しいサイトを探す新規開拓派は5%と少数で、決まったサイトを中心に見る固定派は15%であった。固定派は最近利用を開始したユーザーで10.9%であるのに対し、ベテラン・ユーザーでは22.1%。最初は物珍しいため回遊するが、次第に好みのサイトを見つけて固定化する傾向があるようだ。
また、固定派に「たまに新しいサイトも探す」準固定派を加えた率と、新規開拓派に「常にではないが新しいサイトも積極的に探す」準新規開拓派を加えた率を比較すると、61対39となり、どちらかといえば固定化傾向のあるユーザーのほうが多くなる。
一方、見たいWWWサイトを探す方法としては、検索サービスのキーワード検索(51.5%)が最も多く、次いで電子メール・ニュースの紹介記事(19.1%)、WWWのリンク(12.0%)となっている。
これらを総合すると、WWWサイトがユーザーを集めるためには、検索サービスへの登録や電子メール・ニュースへの掲載などのプロモーション策も重要だが、それと合わせて、いかにユーザーを固定化し、リピートさせるかの面でも工夫をこらす必要があるといえるだろう。

オンラインショッピング:関心高く、購入品に男女差
インターネットのオンラインショッピングを利用したことのあるユーザーは、全体の40.2%であった。また、利用したことはないが、今後利用してみたい人も42.2%にのぼっている。オンラインショッピングに対する関心は、かなり高いようだ。
オンラインショッピング利用者が購入した商品の中では、ソフトウェアが最も多く(34.4%)、図書・雑誌(29.3%)、食料品(19.2%)、衣料品(16.2%)などがそれに続くが、意外にもその他という回答が33.1%もあり、ユーザーの関心の多様性を物語っている。また、男女別に見ると、男性がソフトウェアや図書・雑誌を購入しているのに対し、女性は食料品、衣料品を購入と、差があることも判明した(グラフ2)。

情報発信行動
「個人が世界に情報発信できるメディア」というのが、インターネットの最大の特徴のようにいわれている。しかし、情報発信はすべてのユーザーが好む行動とはいえない。情報発信を好むユーザーには、何らかの特徴があると考えられる。
インターネット・ユーザー全体で、個人のホームページを所有している率は20.9%。職業別の所有率で見ると、学生(37.6%)が最も多く、次いで自営業(35.8%)、教職(34.6%)となっている。ホームページ所有者には、趣味・娯楽目的でのアクセス時間が長く、メーリングリストなどを通じての情報発信も、さかんに行なっている。

図1
図2

利用目的軸と情報発信軸によるユーザーのタイプ分

上記のような調査結果をもとに、インターネット・ユーザーを利用目的(仕事・勉強か趣味・娯楽か)と、情報発信行動(発信型か受信型)を軸として、4つのタイプに分類してみた。4つのタイプそれぞれは、次のような特性を持っている。なお、ここで定義する情報発信とは、ホームページ所有だけでなく、メーリングリストやニュースグループ、掲示板、会議室などの発言も含むものとした。

情報エリート(仕事・勉強目的/情報発信型)13.8%
早い時期からインターネットを始めた会社員。検索サービスやニュースのWWWサイトにアクセスし、有料電子メール・サービスなども積極的に活用。企業が作った商業WWWサイトだけでなく、個人ホームページも見る。《情報エリート》特徴的な調査項目
男性比率 89.0%(全体平均77.6%)
週5日以上アクセス 87.4%(69.8%)
利用開始が94年3月以前 14.3%(5.1%)
ニュース関連にアクセス 69.8%(53.5%)
オンラインショッピング利用 53.3%(40.2%)
有料電子メール・ニュース購読 29.0%(19.6%)
ブックマーク登録50個以上 52.2%(34.5%)
WWWは必要と思う 75.3%(64.3%)

カルトカルチャラー(趣味・娯楽目的/情報発信型)26.0%
学生、専業主婦を多く含み、年齢が若い。趣味・娯楽のアクセス時間が長く、個人ホームページを好む。米国のように、市内電話料金とインターネット接続料が毎月一定額になれば、アクセス時間を増やす。《カルトカルチャラー》特徴的な調査項目
独身比率 58.4%(全体平均47.1%)
学生比率 26.7%(12.8%)
最も多いアクセス場所は家庭 75.9%(56.8%)
趣味娯楽でアクセスが週20時間以上 21.5%(11.2%)
エンターテイメント関連にアクセス 63.1%(49.4%)
個人ホームページを好む 68.6%(51.5%)
WWWは意見交換に便利 50.0%(37.3%)

日本型優等生(仕事・勉強目的/情報受信型)17.7%
仕事のために必要なので、インターネットを始めたので、趣味・娯楽目的の利用には消極的。企業が作ったWWWサイトを好み、「面白い」というより「役に立つ」からアクセスしている。《日本型優等生》特徴的な調査項目
既婚比率 68.8%(全体平均52.9%)
会社員比率 87.2%(64.9%)
最も多いアクセス場所は職場 75.2%(37.6%)
趣味娯楽でアクセスが週20時間以上 2.6%(11.2%)
仕事に必要なので利用を始めた 54.3%(23.7%)
ビジネス関連にアクセス 71.4%(36.8%)
企業が作った商業サイトを好む 63.7%(48.5%)

フューチャーマス(趣味・娯楽目的/情報受信型)42.6%
はやっているからインターネットを始めた層。人数的に一番多く、現在のインターネット・ユーザーの主流をなす。最近始めた人が多く、女性比率も高い。トラベルや懸賞応募関連によくアクセス。《フューチャーマス》特徴的な調査項目
女性比率 28.2%(全体平均22.4%)
会社員比率 87.2%(64.9%)
週5日以上アクセス 57.9%(69.8%)
最近利用時間が減った 20.4%(17.5%)
97年4月以降に利用開始 15.3%(9.7%)
はやっているから始めた 33.0%(25.9%)
有料メールは購読していない 86.7%(80.3%)
インターネットは必要 57.7%(64.3%)


タイプによる傾向と差
「情報エリート」は早い時期からインターネットを利用していたユーザーに多く、最近利用を開始したユーザーには「フューチャーマス」が圧倒的である。対照的なこの2つのタイプでは、アクセス行動もかなり異なる。例えば、情報エリートの53.3%がオンラインショッピングを利用したことがあるのに対し、フューチャーマスは38.2%と少ない。アクセスするWWWサイトの内容についても、情報エリートのニュースやパソコン関連に対し、フューチャーマスは懸賞応募やエンターテインメント、トラベルを選んでいる。

図3



インターネット・ビジネスに取り組む企業への提言

この調査結果から結論づけられるのは、インターネット・ユーザーはプロフィールやアクセス行動などの面において、さまざまに分化しつつあり、もはや一括りにまとめた単純な市場と見なせる時代ではなくなってきたということだ。消費者を対象としたインターネット・ビジネスに取り組む企業は、ユーザータイプによる違いを踏まえた上で、ターゲット設定とそれぞれの攻略方法を考える必要がある。

特に「フューチャーマス」のユーザーについては、はやっているから始めてはみたものの、アクセス時間を減らした率が平均以上、WWWを必要と思う率も4タイプ中最低であるなど、インターネットに対する評価や今後の態度が揺らいでいる様子も伺える。こうしたユーザーを、この先インターネットとその関連ビジネスにとっての「顧客」として育成できるかどうかは、いかに内容の面白さや機能、利便性の面で、納得できる価値を提供するかにかかっている。

インターネットの今後の主役が「フューチャーマス」であることは確かだが、このタイプのユーザーに魅力あるサービスを提供することが、ビジネス成功の鍵であり、一番大きな課題となろう。

図4

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FRIでは、この調査結果の詳細をWWW(http://www. fujitsu.co.jp/hypertext/fri/cyber/)で公開しております。どうぞご覧ください。また、インターネット・ビジネスに関する調査、企画立案、コンサルティングのご相談も承ります。[問合先:03-5401-8389 田中、倉持]

*1 iMiネット:富士通の提供する電子メールによるマーケティング・サービス。インターネット(http://www.imi.ne.jp/imi/)とニフティサーブを通じ、プロフィールや関心事を登録した生活者メンバーに、アンケートやダイレクトメールを送り、レスポンスに応じてインセンティブを提供する仕組み。現在、生活者メンバーは約6万6000人。利用する企業側は、関心のある生活者にアプローチする機会が持てる。


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