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中国各地で新最低賃金基準が施行

発行日 2013年1月18日

上級研究員 趙 瑋琳

 

中国における最低賃金基準とは

  • 最低賃金基準は1994年に導入された制度であり、労働契約で定められる労働時間内に労働者が正常な労働を提供したという前提のもとで、事業主が労働者に最低限に支払わないといけない労働報酬のことである。ただし、残業手当、特殊な労働環境における手当や法律、法規及び国が定める福利厚生等が含まれていない。2004年には中国労働・社会保障部(現中国人力資源・社会保障部)から「最低賃金規定」が公布され、各地方に対して、2年毎に最低賃金基準を調整することが義務付けられた。現在は全国31の省市が最低賃金基準を設けている。
  • 2004年から経済発展の加速と共に、最低賃金の増加幅も拡大した。2008年のリーマン・ショック直後は一時的に増加が鈍化したが、既に回復している。2012年にも23の省市で最低賃金基準の調整が行われた。2013年に入り、河南、陜西、浙江、北京が相次ぎ新最低賃金基準を施行すると発表し、最低賃金を調整する動きが活発になっている。
  • 以下の表は現時点で中国各省市の最低賃金基準をまとめたものである。データで示すように、経済発展が比較的遅れている中西部より、東部のほうが高い。また、全国で最高金額を設定した深センと最下位の江西の間に1.7倍の開きがあり、地域経済発展の格差も読み取れる。

表 中国各省市の最低賃金ランキング(月単位)

省市最低賃金省市最低賃金省市最低賃金
月1200元以上月1100~1200元月1100元以下
深セン1500黒竜江1160青海1070
浙江1470湖南1160四川1050
上海1450吉林1150海南1050
北京1400陜西1150重慶1050
新疆ウイグル1340山西1125安徽1010
河北1320遼寧1100広西チワン1000
江蘇1320湖北1100甘粛980
天津1310寧夏1100貴州930
山東1240雲南1100江西870
河南1240
内モンゴル1200
チベット1200
福建1200

資料: 中国人力資源・社会保障部の発表データをもとに作成
(2013年1月時点、各省市の最低賃金基準の最高ランク金額、1元=約14円)

所得倍増計画の実現の手段になるか?

  • 2001年から2011年の都市部一人当たり可処分所得及び農村部一人当たり純収入の年平均増加はそれぞれ9.5%と7.4%になっている。2008年以来全国年平均12.6%で引き上げられつつある最低賃金がそれとマッチしている。また、2012年6月に国務院が打ち出した「国家人権行動綱要(2012-2015年)」には、「給与制度と賃金を正常に増加させるメカニズムを構築し、最低賃金基準を安定的に年平均13%以上引き上げる」と明記されている。このペースで考えると、最低賃金の引き上げは去年11月に閉会した中国共産党第18回党大会で発表された2020年までに所得倍増計画の実現につながる。
  • しかし、事業主側にとって、最低賃金基準の引き上げは労働コストの上昇となるので、雇用維持或いは新規雇用に影響を与えかねない。労働者の基本的な就業権利を保障する最低賃金基準はその意味で両刃の剣でもある。雇用を損なわないため、特に労働集約型産業を中心に、最低賃金が比較的安い内陸部にシフトするのが有効な一策だと考えられる。実際、最近の都市部の求人倍率を見ると、2012年9月時点で、東部は1.05、中部は1.08となり、東部より中部のほうが高いことからその兆候が見えてくる。さらに、このシフトを通じ、賃金が比較的高い地域での産業構造転換を促進し、賃金が比較的低い地域で新規雇用が生まれ、地域経済発展の格差が解消されていく。
  • 最低賃金基準は、雇用を維持しながら、所得倍増計画の実現及び産業構造の転換につながる一挙両得の政策として存続すると思われる。同時に、労働に関する各種規定が整備されつつある中国では、企業の立地選択において最低賃金基準も考慮することが必要になりつつある。