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中国企業のイノベーションと競争力

発行日 2012年2月17日

主席研究員 柯 隆

 

企業の競争力とは技術力、価格とブランド力などの総合的な競争力を意味するものである。中国企業はこれまでの30年間の「改革・開放」のキャッチアップにおいて価格面では強い競争力を誇示してきたが、技術力とブランド力は必ずしも十分に強化されていない。

振り返れば、中国の産業基盤は戦前のものはともかく、戦後は主に旧ソ連から習得したものであり、その基幹産業は重厚長大産業だった。1979年、「改革・開放」政策が行われたとき、グローバルに競争力のある産業は皆無だった。そこで、最初から研究・開発を進めても、先進国に追いつくことができない。鄧小平が推し進めた「改革・開放」は比較優位戦略といって、中国の廉価な労働力を十分に生かし、労働集約型製品を大量生産し輸出することで外貨を稼ぎ、海外から技術や設備を買うことだった。同時に、外資を誘致し、中国の国内市場の一部を外資に譲る代わりに、外資から技術移転を受ける戦略も進められた。これは中国語で「以市場換技術」といって、すなわち、市場を以て外国企業の優れた技術と交換するということである。

1.技術キャッチアップの三段階論

  • 一般的に後進国から工業国へのキャッチアップは三つの段階を経て実現されるといわれている。中国の産業のキャッチアップを例に考えれば、第一段階はcopied in Chinaの段階であり、すなわち、外国の製品と技術を習得するプロセスである(図参照)。第二段階はmade in Chinaの段階である。現在の中国はまさに第一段階から第二段階へ移行する途中にあると思われる。そして、将来的に起こりうる第三段階はcreated in Chinaの段階である。現在の中国の産業発展の問題点はまさに創造力が不十分という点である。
  • 技術力の弱い国の産業はブランド力が強いはずがない。中国はその典型例といえる。自動車産業を例にとっていえば、2011年中国で販売された車の台数のうち、60%は輸入車か中国で作られた外国ブランドの車だった。金額ベースでは、売上高の80%は輸入車か外国ブランドの車だった。中国の自国メーカーは金額ベースでいえば、わずか20%のマーケットシェアしか取れていない。無論、こういう現象は自動車産業に限らず、技術レベルの高い産業であればあるほど、中国メーカーのマーケットシェアが小さい。
  • なぜ中国企業がイノベーションに積極的に取り組まないのだろうか。その背景には中国の独特な事情がある。
  • まず、知的財産権が十分に保護されていないため、イノベーションに取り組んでも、その成果が無断に侵害される可能性が高い。このように考える企業自身は他社の知的財産権を恣意的に侵害する傾向が強い。
  • そして、基礎的な研究・開発は巨額の資金を投入する必要があり、ちゃんとした成果が得られるかどうかも分からず、企業経営にとって重荷になる。とくに、その技術を商品化することができなければ、企業経営が脅かされることになる。中国の企業経営者の間にこのような言い伝えがある。「イノベーションに取り組まないことは死ぬ(倒産)のを待つようなもの。しかし、イノベーションに取り組むことは自殺行為である」とのことである。
  • さらに、中国企業では、イノベーションを効率よくマネジメントするノウハウがないことである。企業にとりイノベーションは短期的に必ずしもその経営改善に寄与するとは限らない。どのような研究・開発を行うかについて、その決断は決して簡単なことではない。

図 中国におけるイノベーションの発展経路

図  中国におけるイノベーションの発展経路

資料:筆者作成

2.開発よりも外国企業の買収に積極的な中国企業

  • こうした事情を背景に、中国企業は積極的にイノベーションに取り組もうとしない。その代わりに、技術力とブランド力を強化するために、中国企業はその豊富な資金力を背景に海外で技術力のある企業の買収に乗り出している。たとえば、浙江省の民営企業吉利はフォードからボルボを買収した。最近は、三一重工はドイツの生コンポンプ車大手のプッマイスターを買収することでドイツ側と合意したことを発表した。
  • 新興国企業にとり、技術力のある先進国の企業を買収することは自らの技術力とブランド力を強化する近道といえる。ただ、先進国の企業を買収するだけで、新興国企業の技術力が強化されるとは限らない。ここで重要なのは新興国企業が買収した技術を消化し自分のものにすることである。もう一つは、買収した技術をもとにそれをさらに研究・開発していくことが必要である。技術力のない新興国の企業はいくら優れた技術を持つ企業を買収できたとしても、それを消化することができなければ、必ずしもその競争力強化に寄与しない。
  • 最近、中国企業をめぐる対外進出の動きから中国企業がイノベーションに取り組む姿勢は十分ではないが、買収という近道によって技術力とブランド力を強化する意図を垣間見ることができる。要するに、人件費が上昇し、人民元が切りあがるなかで、made in Chinaだけでは、その競争力を誇示することはできなくなる。これからはイノベーションに取り組み、人材とノウハウを蓄積していくことが求められている。