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GDPR施行を機に、観光関連中小企業の個人情報管理支援を ―消費意欲旺盛なヨーロッパからの観光客に、安心できる旅行体験をアピールするために

中小企業の海外展開に関する新たな動向

―インバウンド観光客の共感を生かす―

インバウンド観光客が旅行中に得た共感を旅行体験としてSNSで拡散させることで、それを見て興味を掻き立てられた海外の消費者が、観光意欲や購買意欲を高めるケースもある。製造業の具体例を取り上げる。

2018年12月20日

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海外展開の新しい潮流:観光の活用

中小企業の海外展開といえば、これまでは取引先大企業の海外展開に伴って、部品などを輸出したり、自らも海外で生産を行ったりする場合などが多かった。自社製品を海外で展開することは、マーケティングなどのノウハウがない中小企業にとってはハードルの高いことであった。しかし、最近になって、中小企業の海外展開に新しい動きが見られるようになってきた。その一つが、インバウンド観光をきっかけとするものである。

インバウンド観光客との接触が増えることによって、中小企業は自社の商品を海外消費者に直接知ってもらうきっかけを得ることができるようになった。中小企業の商品製造やサービスの担い手が、日々商品やサービスの向上を目指して仕事に励む職人である場合は、店舗や工場見学における観光客との人間味あふれる触れ合いを通じて、深い共感を得られる場合もある。さらに、インバウンド観光客が旅行中に得た共感を旅行体験としてSNSで拡散させることで、それを見て興味を掻き立てられた海外の消費者が、観光意欲や購買意欲を高めるケースもある。

つまり、中小企業とインバウンド観光客との接触による共感の伝播は、高度に自動化された大量生産工程や、接客のマニュアル化が進んだ全国チェーンのサービスを提供する大企業が得意とするような大規模マーケティングとは異なる、中小企業ならではの新たな情報伝播の機会である。このように、インバウンド観光客の共感を生かして海外展開に成功した中小企業の事例は、製造業、サービス業ともに見出せるが、今回は製造業の具体例を取り上げる。

成功事例①:食品製造・輸出企業(ベアードブルーイング)

静岡県伊豆市の合資会社ベアードブルーイング(図表1)は、クラフトビールの工場見学を中心とした産業観光の取り組みに特徴がある。醸造職人の熱い語りとビールテイスティングを組み合わせた産業観光の取り組みでインバウンド観光客の共感を得つつ、率直なフィードバックを参考にして、輸出に適した商品を開発している小企業である。

【図表1】合資会社ベアードブルーイングの基本情報
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(出所)同社ウェブサイトなど

【図表2】ベアードブルーイングの創業者たち
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(出所)bairdbeer.com

【図表3】訪問するインバウンド観光客と商品ラベル
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(出所)筆者撮影(左)、bairdbeer.com(右)

同社の代表は、海外でビールの醸造技術を学んだ職人であったが、日本の自然の素晴らしさや、原料となり得る地元素材の素晴らしさに惚れ込んで他の外国人従業員とともに移住した経緯がある(図表2)。彼らは、海外に比べてビールのバラエティが少なく、ビールの産地としての海外評価が低い日本でも、もっと素晴らしいビールが作れると確信した上でビール作りに取り組んでいる。設立当初から何百ページにもわたる事業計画を持ち、そうした現実的なビジョンに共感した日本人従業員と一丸になって、より良いビール作りを行っている。

職人のこうした真摯な姿勢や現実的な将来展望が前提となって、同社商品であるベアードビールなどの日本のクラフトビール目当てで訪日するインバウンド観光客との対話はもちろんのこと、日本の良さを実感したいビール好きの観光客との対話が成立し、深い共感を呼んでいる(図表3)。さらに、地元素材の良さを引き出す新たなビールを常に開発し続けており、そのプロトタイプの意味もある多数の限定ビールを工場内のタップルームや国内直営店舗で試すことができる。そのため、インバウンド観光客のリピーターは常に新たな限定ビールの試行プロセスやその成果を実感でき、おのずと職人にフィードバックを伝えたくなるようなサイクルが出来上がっている。

しかし、社長や社員が、当初から計画通りにこうしたサイクルを作り上げてきた訳ではない。自分たちの想いを分かち合いながらビール造りの仲間を増やそうとする過程で、メンバーが見出した地域の素晴らしさ、地域にあるものを活かしてより良いビールとビール文化を作っていこうというビジョンなどに対して、異国で感動でき、共感できる対象を求めているインバウンド観光客が、共感するようになってきたのである。

こうした取り組みを継続して、日本のクラフトビールが少ない海外のニッチ市場開拓に成功し、過去4年間、輸出先と売上を毎年増加させている。主な輸出先は、台湾、香港、中国本土、シンガポール、北米、EU(エストニア他)、オセアニアなどで、輸出量は売上の2割を超えるほどになった(注1) 。

このようなインバウンド観光客との間に得た共感をきっかけにして、モチベーションを向上させた社長・社員が一丸となり、多様なツテ・支援を獲得して、調達・製造・販促におけるオペレーション改善に成功した例である。そして、輸出の継続拡大に加えて、直営店舗やキャンプ場の経営拡大などにも成功して、静岡県内在住のビール好きな外国人、国内のクラフトビール醸造家・販売業者、海外のクラフトビールファンを中心に、余暇スタイルの地域ブランドとして認知されるに至っている(注2) 。

周辺地域への好影響もある。同社の「ベアードビール」目当てのインバウンド観光客が増えて、醸造工場周辺の観光施設や温泉の利用客が増えるようになった。また、社員や共感者が工場周辺に移住し、他のビール製造業者も増え、原料栽培にも取り組み始めたことから、地域産業化の兆しもある。同社のビールは冷蔵品であるが故に、一気に輸出先や出荷量を増やしづらいという課題があるが、取引先を少しずつ着実に増やしていくことで対処している。

成功事例②:日用品製造・輸出企業(オレンジトーキョー)

製造業のもう一つの事例、東京都墨田区のメリヤス草履メーカー、オレンジトーキョー株式会社(図表4)は、本業の業務用メリヤス製品の出荷量減少に危機感を覚えた同社代表が、新事業の別会社として同社を設立した。そして、事業承継・第二創業の取り組みとして、海外への輸出拡大に成功した例である。

【図表4】オレンジトーキョー株式会社の基本情報
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(出所)同社ウェブサイトなど

同社は、百貨店店頭などの国内小売店でのインバウンド観光客向け販促イベントや、海外展示会への出品で得たフィードバックをもとに、輸出に適した商品を開発した。その際、社長や製品デザインの担当者が自ら店頭に立って接客を行って対話することで、どのような観光客がどのような自社商品を好むかを確かめて、商品を少しずつ改良していった。

同社はSNSや越境ECなどネットツールを活用して共感を広げていく施策が巧みで、フランスや台湾など海外のコアな日用品ファッション市場の開拓だけでなく、現地デザイナーとの商品の共同開発も成功させ、コアなファンを飽きさせず、共感を維持・深化させる取り組みを続けてきた。まず、写真主体のSNSであるインスタグラムでは、社長自らが日本中や世界各地を飛び回り、取引先や出店先だけでなく、地域住民や地域産業の担い手、海外での職人育成の様子などを発信して、応援したくなるような人間味あふれる企業感を醸成することに成功している。また、社長が自社の製品を旅行中に使う様子を伝えることで、機内でのくつろぎなど、快適な旅行体験に最適な商品であることを伝えている。看板商品であるメリヤス草履は空港内アンテナショップなどでも取り扱われているので、観光客の体験から共感を得やすい投稿コンテンツづくりを行っている(図表5)。

さらに 、同社直営店舗を中心に開催しているメリヤス草履の編上げ製造体験ワークショップは、職人との対話を楽しみつつ、持ち帰って使える実用的な土産を作れる体験型の観光アクティビティであるため、SNSによって職人との対話の楽しい雰囲気が拡散しやすい(図表6)。そして、旅行後に自分で使う場合も、贈り物としてプレゼントする場合でも、新たな商品を購入したいと思う場合は越境ECを通して入手可能であるが、同社はカスタマーレビューやコメントにきめ細かに対応しているため、旅行中に得た共感が持続しやすく、広がりやすい仕組みができている。これにより、各地域や性別・年齢毎の細かなニーズを把握して、 商品改善・開発につなげやすくなっている(図表7)。

【図表5】オレンジトーキョーの空港内出展
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(出所)筆者撮影(2018年8月3日)

【図表6】オレンジトーキョーの編上げワークショップ案内、国際共同開発したアクセサリー
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(出所)筆者撮影(2018年8月3日)

【図表7】モール出展型越境ECページにおけるフィードバック返信状況(注3)
(2018年8月3日時点)
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(出所)jp.pinkoi.com

しかし、社長・社員も、当初から共感づくりに長けていたわけではない。本業のメリヤス製品の品質には当初から自信を持っており、繊維産業だけでなく、地元地域の産業活性化のために、ともにブランドを育てていける仲間づくりを目指して試行錯誤してきたのである。受けられる支援施策に何度も応募し、自社製品を手に取る人々と対話を繰り返して、より受け入れられやすい製品づくりとコミュニケーションを求め続けた結果、そうした前向きでオープンな姿勢や、目指している仲間づくりが、旅先で人間味あふれる結びつきを求めるインバウンド観光客に共感され、ネットツールの力によってその共感が拡散されるようになってきたのである。

こうした取り組みが実を結んだ結果、同社の輸出先は毎年増加中で、売上も過去4年間ほぼ毎年増加している。主な輸出先は、台湾、フランス、オーストラリアなどで、越境ECでの輸出も増えているという。

オレンジトーキョーは、国内小売店頭や製造体験ワークショップを通して、インバウンド観光客との間に得た共感をきっかけとして、共感を共有した様々なステークホルダーから多様なツテ・支援を獲得して、主に製造・販促におけるオペレーション改善に成功した。その結果、継続的な輸出拡大に成功しただけでなく、越境ECや多国籍ワークショップの継続によって得たフィードバックをもとに、台湾や香港、中国本土、フランスなど各地域のニーズを把握して、装飾品の国際共同開発にも成功し、国際的なデザイン事業や海外でのイベント事業も手がけるようになった。

周辺地域への好影響として、墨田区の直営実店舗にワークショップ目当ての外国人観光客が増えた結果、周辺店舗・施設の利用客が増えたという。また、同社所在地である墨田区内の業者や内職労働者を積極的に利用して生産量拡大に取り組んでいて、地域産業にも好影響を与えている。製品材料として、本業のメリヤス生地の調達量も増えたという。

成功事例に共通するキーワードは「共感の獲得」

現在海外展開を目指している中小企業の多くは、経験や人材不足からマーケティングなどの十分な海外展開ノウハウがなく、市場動向や顧客ニーズの把握に加えて、販売先の確保や採算性の維持・管理面でも苦労している。一方、そうした困難に直面しつつ、小企業であることの強みを活かした海外展開の手法を実践している企業は、製造業にもサービス業にも成功事例がある(図表8参照)。組織や事業の規模が小さく、地域密着型であるこうした中小企業は、日本の文化などに関心のあるインバウンド観光客にとって、社長・社員(職人・スタッフ)の人間味や商品群のイメージを一体的に把握しやすく、統一感・一体感あるペルソナを見出しやすい。

つまり、インバウンド観光客は、これらの中小企業の製品やサービス、店頭やワークショップでの体験、そこで働いている人たちの思いなどに共感しているのである。そして、観光客は、その場で購入するだけでなく、帰国後もECで継続的に購入を続けたり、知人に自分の体験を伝えたりしている。共感してくれた観光客が、さらに共感の輪を広げてくれているのである。そこにはSNSや越境ECが大きく関係している。さらに、インバウンド観光客の共感を得ることは、中小企業にとっては、売上拡大だけではなく、社員のモチベーション向上といった効果もある。

【図表8】成功事例の特徴<共感形成>

(食品)
クラフトビール(注4)
(日用品)
町工場(注5)
(小売)
京花(注6)
(飲食)
ラーメン(注7)
(サービス)
旅館(注8)
■顧客接点
  • ・リアルの接点(対面)
職人・社長
@店舗/工場
社長
@店舗
管理部門
@店舗
  • ・接点の継続(オンライン)

SNS・ブログ

SNS・越境EC対応

SNS
■共感の種
  • ・イメージ
地域感・小企業感 地域感
  • ・社員人柄
    表出手段

SNS・工場案内

SNS・店頭(職人/デザイナー)

SNS
(各店毎)

店頭
(館内見学)
  • ・外部評価

国際賞

海外ファッションメディア

海外格付

国際格付
  • ・統一感
  • ・一体感
社長の「目が届く」規模の組織・事業
(調達・製造、PR・販促〜採用・育成)
サービス・ブランド標準コントロール徹底
■地域への共感の拡大
コミュニティ感

相互価値意識

地域益の意識

(出所)調査をもとに富士通総研が作成

「共感」づくりのポイント

これらの成功事例を分析すると、共感づくりのポイントは4つあることがわかる。

まず、観光客とのリアルな場での接点を充実させることである。具体的には、本論で取り上げた二事例で実践されたタップルームやワークショップなどのような、体験的な場づくりが重要である。製品だけでなく、その背後の思いやストーリー、作り手の人間味などを伝えることは、社員への教育にもなる。

第二に、顧客との接点を継続して、旅行中に獲得した共感を、インバウンド観光客の旅行後も持続させる努力が重要である。そのために、各種のネットツール(SNS・ブログ・越境ECでのレビュー対応)でのコミュニケーションも継続する必要がある。

第三に、コミュニケーションで伝え合う内容として、中小企業を応援したくなる性質、すなわち「共感の種」となるような二種類の情報を同時に共有することが重要である。1つ目は、小企業感、地域感といった中小企業とその商品に対する共感を得やすいイメージや、社員の「人間味」ある人柄などの主観的情報である。2つ目は、商品品質の外部評価などの客観的情報である。また、こうした情報を共有して共感を育んでいくなかで、企業・ブランド・商品に共通した統一感・一体感のある「人格」(ペルソナ)を共有できるよう、自社・販売サイトから什器の細部までこだわることも重要である。

そして最後に、共感を自社内だけでなく、地域全体へ広げていくことが重要である。社長と社員に加えて、地元の地域住民や自治体、支援機関などの地域のステークホルダーの間でも、インバウンド観光客との間に得た共感や率直な評価を共有する必要がある。

共感の獲得・維持のために必要な中小企業支援

中小企業の海外展開を支援している公的機関は、すでに様々な支援施策を実施しており、主に資金提供や海外展開に必要な手続きに関する支援は、筆者の事例調査でも評価が高かった。地域でのコミュニケーションは、地域とつながりの深い支援機関が得意とするところであるので、人的リソースが限られながらも業務や海外展開に追われている中小企業に対するサポートを今後も充実していく必要がある。

すでに述べたように、共感の拡大、継続のためにはネットツールを利用したコミュニケーションのデジタル化が効果的だが、そのための支援は不足している。海外展開のための公的支援を利用した経験のある中小企業の事例集では、支援期間が短すぎるために、ツールの導入後の具体的な運用に関する支援が不足しているという指摘が多い(注9)。また、筆者の調査によれば、例えば、サイト改善やコメントへの返信方法、出稿広告の改善方法など、ツールを通して得たフィードバック情報の活かし方について、支援機関のフォローアップが不足している。

展示会や見本市への出展手続きの支援や、資金提供などのサポートは、短期的な販売先確保や市場ニーズを得るためには有効である、しかし、海外顧客との間に得た共感のレベルを維持・向上させ、市場ニーズを作り上げていくためには、日常業務を行いながらそうした取り組みが可能になるようなネットツールの導入・運用支援を充実させていく必要がある。具体的には、既存のSNSや越境ECモール上のレビュー機能をはじめ、自社サイトや出稿広告を経由したネット上の顧客行動が把握できるマーケティングツールなどの導入・運用支援が必要である。

また、中小企業庁『中小企業白書(2014年版)』(注10)で指摘されていた公的機関同士の連携に関する低評価も払拭されておらず、重複する支援事業が多数ある。各機関同士で重複を調整して、その結果生じた余剰リソースをコミュニケーションのデジタル化対応の運用面に充てる必要がある。中小企業とインバウンド観光客との接触機会が増え、インバウンド観光客の共感を生かして海外展開に成功できるチャンスも増えている中、共感の獲得・維持のために必要な中小企業支援を実施するためには、支援機関同士の調整・連携を強化していくことが重要である。

注釈

  • (注1)
    岩間晴美「地域産業を興す/伊豆半島/注目集める産業観光施設/クラフトビールの大型工場」『月刊金融ジャーナル』57(3)=717:2016.3、2016年、p.58-61.
  • (注2)
    余暇スタイルとしてのブランドイメージは、口コミでの流布が中心であるが、海外のクラフトビールファンが目にするようなメディア、例えば英語・日本語併記のクラフト・ビア専門誌であるThe Japan Beer Times(#19 [Summer 2014])や、CNN travel (“Beyond Tokyo: 8 of Japan's Best Foodie Destinations,” Apr. 9, 2018)、Manila Bulletin (“The Art of Making Beer: A Special Japanese Craft Beer Positions Itself in the Philippine Market,” Jan. 4, 2018)などにおいても、他の日本のクラフトビールメーカーとは一線を画す例や、日本語で訪れるべき食文化ツアーの目的地の代表例として、取り上げられている。
  • (注3)
    EC出店モールのpinkoiには自動翻訳システムがあり、細かいやりとりに対応したカスタマーサポートサービスも提供しているので、出店者側からの日本語の投稿でも、中国語や英語話者とのコミュニケーションが可能である。
  • (注4)
    本文中の(合資)ベアードブルーイング
  • (注5)
    本文中のオレンジトーキョー(株)
  • (注6)
    (有)フラワーハウスおむろ:【所在地】京都市、【業種】花及び関連商品の販売、【主な輸出先】シンガポール、【設立年】1993年、【資本金】500万円、【従業員数】3名、【店舗数】1、【上場状況】非上場、【海外展開プロセス】京都仁和寺近くで盆栽を販売中、インバウンド観光客から輸出の要望を受けて輸出の検討を開始した。ラッピングや形状など、観光客との交流や、海外でのスポット出店、越境ECにも取り組んで、輸出に適した商品を作り上げていった事例。(出所)同社ウェブサイト(http://kyoto-omuro.jp/)(2018年12月3日閲覧)、JETRO、中小企業庁など。
  • (注7)
    重光産業(株):【所在地】菊陽町(熊本県)、【業種】食品製造、ラーメン店フランチャイズ本部、【主な輸出・出店先】中国・シンガポール・アメリカ・オーストラリア、【設立年】1972年、【資本金】6,450万円、【従業員数】90名、【店舗数】国内78(海外745)、【上場状況】非上場、【海外展開プロセス】九州の店舗で味に感動したインバウンド観光客から海外出店の要望を受けて、アジア圏での海外出店を数カ所で試行した。試行錯誤の末、サイドメニューやラーメンのトッピングについては、インバウンド観光客に受ける要素を取り入れる改善を繰り返しつつも、味の基本となる麺とスープは、日本製のものか日本製のサンプルを元にした現地製造のものを使用して味のコントロールを徹底する手法で、海外での多店舗展開に耐える品質管理体制を編み出した事例。(出所)同社ウェブサイト(http://www.aji1000.co.jp/)(2018年12月3日閲覧)、JETRO、中小企業庁など。
  • (注8)
    (株)加賀屋:【所在地】七尾市、【業種】旅館、【主な出店先】台湾、【設立年】1958年、【資本金】5,000万円、【従業員数】300名、【店舗数】国内3(海外1)、【上場状況】非上場、【海外展開プロセス】接客係以外の従業員も定期的にインバウンド観光客の接客・館内案内を担当することで、海外消費者が求めているサービスの要素を全社単位で把握し、店舗運営にフィードバックしてサービスの質を高めた。国内店舗を利用したインバウンド観光客からの高評価を買われて、海外の不動産開発企業から海外出店を請われ、合弁会社設立・フランチャイズ形式で出店。国内で得た海外消費者向けサービスの知見を海外店舗運営に活かすだけでなく、一部の現地スタッフに日本店舗での接客経験も積ませることで、同社での接客係を現地人材の「憧れの仕事」にして、国内外両方の店舗で通用するような「誇りを持てる」レベルの人材育成に努めているという事例。(出所)同社ウェブサイト(https://www.kagaya.co.jp/)(2018年12月3日閲覧)、JETRO、中小企業庁など。
  • (注9)
    例えば以下の事例集を参照:独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)「事例集」『中小企業のためのEC活用支援ポータルサイト【ebiz】』2018年11月15日閲覧、(https://ec.smrj.go.jp/case/
  • (注10)
    第3-4-50図、第3-4-51図、第3-4-54図参照
大平 剛史

本記事の執筆者

経済研究所
上級研究員

大平 剛史(おおだいら たけし)

株式会社富士通総研 経済研究所 上級研究員
2015年 早稲田大学 大学院アジア太平洋研究科国際関係学専攻 博士後期課程 修了後、2016年 富士通総研入社。
専門領域は、個人の社会適応支援、観光と地域産業活性化、国際関係論・安全保障研究、アジア地域研究(ASEAN・東アジア・南アジア)

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