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Japan

2014年度 私の視点

私の視点:非伝統的金融緩和からの「出口」

経済研究所
エグゼクティブ・フェロー 早川 英男

私が今年最も注目しているのは、非伝統的金融緩和(金利がゼロになってしまった後、量的緩和などで金融緩和効果を目指す政策)からの「出口」の動きです。非伝統的金融緩和は、リーマン・ショックによって惹き起こされた世界的な経済危機からの回復に大きな役割を果たしたと評価されていますが、実は、一番難しいのはこの金融緩和をどう終わるか(これを「出口」と言います)であり、未だ「出口」を出た国はありません。

今、この出口に一番近づいているのは米国で、今年から毎月市場から購入する長期債の金額を減らし始めました(これをtaperingと呼んでいます)。本当は、taperingから証券購入の停止、一部売却、最後は短期金利の引上げまで行って「出口」ですから、現状はまだ「出口の入り口」に過ぎません。それでも、昨年5月にFRBのバーナンキ議長(当時)がtaperingを口にした時とか、今年初めにtaperingが実際に始まった頃は、世界的な株安や新興国通貨の急落など、金融市場には大きな動揺が走りました。そういう意味で、昨年の国際金融市場ではtaperingが最大のテーマの一つでしたが、来年にはいよいよ米国の金利引上げが予想されていますから、今年も「出口」が最大のテーマであり続けるでしょう。

なお、日本では日銀・黒田総裁の「異次元金融緩和」からの出口は暫く先と見られます。しかし、これまで(不幸にも)バブル崩壊、金融危機、公的資金投入、ゼロ金利、量的緩和など、全てを日本が最初に試みることとなり、米欧はその経験から多くを学んだと言われています。日本の出口にも多くの困難が待ち受けているでしょうが、唯一つ幸いと言えるのは、今回は米国の経験から我々が学ぶことができることだと思います。