GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. オピニオン >
  4. >
  5. 不要な土地を放棄できるルールが必要

不要な土地を放棄できるルールが必要

2018年5月29日(火曜日)

増える所有者不明土地と当面の対策

登記簿などの台帳を見ても、所有者が直ちに判明しないか、判明しても連絡がつかない土地が増えている。人口減少が進む中、資産価値が低いなどの理由で、相続時に登記されない土地が増えていることによる。近年は相続放棄されるケースも増えている。

所有者不明土地問題研究会(座長:増田寛也・元総務相)の推計によれば、全国の土地の所有者不明率は20.3%、410万haに達し、九州の面積を上回る。地目別では、宅地14.0%、農地18.5%、林地25.7%となっている。さらにこの面積は、2040年には北海道本島の面積に匹敵する720万haに達すると推計している。

所有者不明土地対策について、国土交通省は、2016年3月に出した報告書「所有者の把握が難しい土地への対応方策」において、所有者探索の円滑化の必要性を指摘し、関連制度を活用するためのガイドラインを策定している(2017年3月に第2版を公表)。

また、所有者不明土地の利用を促す仕組みとして、所有者がわからなくとも利用できるよう、利用権設定を可能にする仕組みが新たに導入される予定である(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法)。都道府県知事の裁定により所有者不明土地の利用権を設定し、補償金を供託したうえで、公共性を持つ事業に使えるというものである。遊休農地の場合は、都道府県知事の裁定によって利用権を設定し、農地中間管理機構が補償金を供託したうえで利用権を取得できる仕組みがあったが、同じような仕組みが所有者不明土地についても導入されることになる。所有者不明土地の存在で公共事業が滞っているようなケースにおいて、利用が期待されている。

一方、相続時の登記を促すため、登記義務化の必要性がしばしば指摘されるが、これについては、2018年度中に法相の諮問機関である法制審議会に諮問されることになっている。ただし、義務化しても罰則強化は難しく、実効性を持たせることができないとの難点も指摘されている。登録免許税等の登記費用の総額が土地の価値を上回る場合は、義務化されても登記を促進する効果はあまりないと考えられる。義務化よりは、登録免許税の減免措置を導入し、さらに将来的には安価な手数料とすることによって、コスト面で登記を促していく方が現実的とも考えられる。

相続放棄が増える可能性

今後については、所有者不明の物件がさらに増えていく可能性を考えると、事後的に所有者探索に多大なコストをかけたり、利用するにしても利用権設定の手続きに煩わされたりするよりは、いっそ最初から所有権放棄を認め、積極的に公的管理に移しておいた方が、その後、管理するにしても利用するにしても好都合だと考えることもできる。

所有権の放棄については、現状では所有権の放棄はしたくとも手段がなくできないが、相続放棄すれば国に引き取ってもらうこともできる。相続放棄は不要な不動産のみを選択的に行うことはできず、遺産すべてを放棄しなければならないが、相続人全員が相続放棄して相続人不存在となった場合、自治体などの申し立てによって選任された相続財産管理人が換価して残余があれば、国庫に納付される。

しかし、相続財産管理人の選任には費用がかかるため、相続放棄後、こうした手続きが行われることは稀である。最後に相続放棄した人は、相続財産管理人が選任されるまでの間、管理責任は残るが、その責任も現状では徹底されているわけではない。相続放棄された不動産が危険な状態となり、そのまま放置されていることも少なくない。

相続放棄は選択的にできず、それが相続放棄に踏み切るハードルになっている。しかし今後、ほかにめぼしい遺産はないといったケースが増えれば、相続放棄され管理責任も果たされない土地が増加していく可能性がある。あるいは、相続放棄は選択的にはできないが、必要な財産を遺言書で遺贈したり、生前贈与したりしておけば、必要な財産を確保したうえ、最後に不要な不動産のみを相続放棄して手放すといったこともできないわけではない。

こうしたことが実際に行われれば、国は使い道のない土地ばかりを押し付けられてしまうことになる。今後、こうしてなし崩し的に放棄され、国が引き取らざるを得ない不動産が増加していく可能性を考慮すれば、最初から所有権の放棄ルールを明確にしておく方が望ましいと考えられる。

所有権放棄ルールの必要性

土地所有権放棄の可否について学説は定まっていないが、民法239条には、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」という規定があり、所有権放棄が認められれば、国の所有に移る。しかし、現状では登記には所有権放棄の手続きはないため、不動産登記法に所有権抹消登記の規定を設ける必要がある。国の所有に移ると、国の管理負担が増すが、これについては放棄時に一定の費用負担(放棄料)を求めることが考えられる。求める費用負担額としては、例えば、管理費相当分、固定資産税などの何年か分という設定が考えられる。

この仕組みのデメリットとしては、放棄料が安すぎると簡単に放棄できるため、放棄が爆発的に増えてしまう可能性があるという点であろう。一方、現在の相続放棄の仕組みは、相続財産すべてを放棄しなければならないことが一定のハードルになっている。しかし前述のように、必要な財産を確保したうえ、最後に不要な土地のみを相続放棄して手放すといったことも不可能ではない。こうした形で、なし崩し的に相続放棄が増えていく可能性を考慮すれば、放棄の一般ルールを定めた方が、まだましだとも考えられる。

なし崩し的に放棄された状態になり、管理責任も果たされなくなっていくのは、国土の管理という意味でも望ましい状態ではない。費用負担を求めたうえで放棄を認める仕組みを設けるのは、国土の管理を適正に行っていくという意味でも正当化できると考えられる。

また、前述のように、利用するため事後的に所有者探索に多大なコストを投入するよりは、最初から放棄を認め、国の所有に移しておいた方が、はるかにその後の利用がしやすくなるというメリットもある。実際の管理は自治体が担うことが考えられる。

所有権放棄ルールは、そこまで踏み込むことはまだ難しいにしても、国や自治体が不要となった土地の寄付を積極的に受けるべきとの考え方もある。この問題は、人口減少時代に使われなくなった土地の処理や管理について、最終的に国や自治体がどの程度関与していくのかという問題となる。国土の荒廃を防ぐため、積極的に関与していくべき時代に入りつつある。

関連コンテンツ

関連サービス

【調査・研究】


米山 秀隆(よねやま ひでたか)
株式会社富士通総研 経済研究所 主席研究員
1989年 筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了、(株)富士総合研究所を経て、1996年 (株)富士通総研入社、2007年~2010年3月 慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員

【執筆活動】
空き家対策の実務(有斐閣、2016年)
限界マンション(日本経済新聞出版社、2015年)
空き家急増の真実(日本経済新聞出版社、2012年)
ほか多数。
研究員紹介ページ