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働き方改革とデジタルトランスフォーメーションがもたらすチャンス

2018年5月25日(金曜日)

働き方改革は、生産性と「仕事の未来」に対して世界中で大きな影響を及ぼしている。ICT革命のただ中で、働き方革命改革は、労働時間や賃金、労働の柔軟性といった伝統的なターゲットを超えた動きとなっている。これまでのところ、ICTによって仕事をする場所の柔軟性が高まることは、主に雇用主(企業側)にメリットをもたらしてきた。現在、労働市場が人手不足であるため、今度は労働者側が仕事の柔軟性の向上と自らのスキル開発に対するサポートを求めるようになってきている。労働者側と雇用主側(企業側)をより平等にサポートするためには、働き方改革は、企業の生産性を向上させると同時に労働者の能力とワークライフバランスを向上させるために、新しい技術の適用に力を入れている。富士通総研の調査では、企業のデジタル化の取り組みは、労働者の柔軟性やスキルの獲得、ワークライフバランスを考慮すると、より生産性を向上させる可能性をもつことが明らかになった。

働き方改革は企業の柔軟性を向上させてきた

世界中の「働き方改革」により、春の労使交渉におけるターゲットは賃金から他の事項に移行しつつある。日本では、一般的なスタッフの残業を制限する一方で、特別なスキルのある労働者に対して労働時間の柔軟性を持たせるという動きがあり、これについての議論が白熱していることからも、生産性と現代的なワークスタイルを両立させることがいかに難しくなっているかが分かる。そのため、本来であれば仕事の柔軟性を重視して生産性が上昇すれば所得増が期待できるのだが、そのような議論は少なく、多くの労働者と労働組合は、労働時間に関する生煮えの取り組みが仕事関連のストレスをさらに増やすだけであり、生産性の向上によって企業だけが利益を得るというような状況が生じることを懸念している。

ドイツでは、今春の労働争議では何件かの強力なストライキが起きている。ここでも、最も議論がなされた要求は、賃金の引き上げに関するものではなかった。労働者と組合は、むしろ、子供や病気の両親の介護をするため、あるいはさらに教育を受けてキャリアアップを図るための時間や柔軟性を要求していた。雇用主側は当初は反対したが、結局、労働者側は一時的に(2年間)労働時間を短縮し、その間は限定的な収入低減を受けるが、後にフルタイムの仕事に戻ることについての保障を得られるという権利を獲得した。そのフォローアップとして、さらに政府は、フルタイムとパートタイムの仕事を自由に選ぶことのできる権利を労働法に盛り込むことを計画している。

そのような改革の取り組みは、この15年間にみられた労働市場の発展と比較すると、とても大きな変化だといえる。米国を皮切りに、インターネットを使う働き方によって、企業がオペレーション費用を削減しつつ労働環境における柔軟性を向上させる可能性が大幅に広がった。労働市場の最上層部でも、とりわけアップル、アマゾン、そしてグーグルといった巨大インターネット企業が技術スキルをもつ人材をさらに必要とするようになったことを契機に、コア従業員のために柔軟ではあるが要求水準が極めて高いポジションが作られるようになった。その結果生じたのは、高いスキルをもつ労働者をめぐる「才能を求める戦争(war for talent)」であった。これにより、トップレベルの労働者の賃金は引き上げられ、他方で多くの中間層の労働者は消耗してしまった。労働市場において対極にある配達物発送センターやオンラインの顧客サービス分野では、労働のあり方はさらに柔軟に組織されており、有期契約や「ギグエコノミー」(注1)を通じた請負労働者が担っている。伝統的な業務における典型的なミドルクラスの仕事ですら、徐々にではあるが、ワークライフバランスを悪化させ、家族に負担をかけるような厳しい労働条件では人材を集めることが困難になりつつある。

どちらかというと保護されている日本やドイツの労働市場では、このような「働き方改革」の第一波は、もともと労働市場の柔軟性が高い米国よりも、大幅な変更をもたらすものであった。多くの労働者が一時的な契約やパートタイムでの雇用しかえられない一方で、多くの既存の仕事や職業は正規雇用として手厚い保護を受けるまま残っているという「二重」の労働市場が発展した。日本では、非正規の柔軟な契約はすぐに雇用の40%に達した。というのは、企業が経営のリストラを行った際に、「就職氷河期」に採用した終身雇用の従業員数を大幅に削減したためである。

ドイツでは、労働市場の主要な改革は、成長と生産性の点で欧州の他国に遅れをとりつつあると感じられるようになった2000年以降に始まった。大成功した「アジェンダ2010」(注2)改革パッケージは、全体的な仕事場所の柔軟性を大幅に高めながらも社会的セーフティネットを制限することによって、慢性的に高い失業率を低下させることに重点を置くものであった。企業は、労働需要とビジネスサイクルにあわせて仕事量を変化させることのできる「労働時間アカウント」に基づいて、パートタイム労働だけでなくコア従業員の勤務時間も再編成することを始めた。その結果、失業率が大幅に低下し、輸出の多い国が強く打撃を受けたであろうはずの世界金融危機に直面しても、雇用水準は向上して労働市場がより安定したため、高い評価を受けている。しかし、「柔軟性」の負担は労働者の側にふりかかったため政府は重要な選挙で敗北し、この10年の間に労働者にとって負担になるとみられてきた多くの改革の要素は徐々に後退を見せている。

働き方改革における従業員のサポートの必要性

世界金融危機後、また別の働き方改革の波がみられた。今回は企業側の前向きなイニシアティブによるものであり、それゆえ技術やデジタル化による生産性向上から得られるメリットが重視された。この取り組みは、消費者向けのデジタルプラットフォームとモノのインターネット(IoT)によって可能になった。これらにより、消費者は、無料の情報アクセスやコミュニケーション、そして伝統的な商品の価格低下といった恩恵を受けることができている。他方、伝統的な産業分野やサービス分野は、進化するデジタル市場の「エコシステム」に取り残されてしまい、いまだに厳しいヒエラルキー下で「サイロ」の中で仕事をしており、柔軟性に欠け、変化に追いついていないとみなされている。機械がより賢くなり自動生産ラインがより柔軟になるにつれ、反復的な業務にあてられてきた労働者の時間は自由になり、スキルの向上、新たな業務の習得、そしてイノベーションによる価値の付加に向けることが可能になった。

ドイツでは、「インダストリー4.0」のイニシアティブが労使双方からの支持を受け、「ワーク4.0」と「教育4.0」のイニシアティブがこれに続いた。いずれも、スキルを獲得し、生涯教育を拡大し、キャリア開発を拡げることを通じて、労働者にデジタル化のメリットをもたらすことを約束するものであった。特に、子育てのためのキャリアの中断によって不利を受ける女性、そして企業のスキル開発プログラムから締め出されてしまう非正規スタッフは、デジタルな働き方のメリットを受けると考えられている。一方、日本には「ソサエティー5.0」のコンセプトがあり、AI(人工知能)を通じたスキルギャップの解決や、社会生活のあらゆるレベルにおける、よりスマートなサービスを通じた生活の質への貢献といった利益をもたらすと期待されている。

生涯教育を通じた働き方の改善

「インダストリー4.0」や「ワーク4.0」、「ソサエティー5.0」といったキャッチフレーズはさておき、現実的にいえば、このような働き方改革の新たな波は、米国(特にアップルや、アマゾン、グーグルのような先進的なテクノロジー企業)で大成功している「ミレニアル世代」(注3)のデジタルワークスタイルを広げつつ、他方ではそれに伴う職場崩壊のリスクを低減する方策を探ろうとするものである。ドイツでは、労働者のスキル開発および企業との協力に関する中核的な要素として大学改革が進められた。

学術的教育と職業教育を同時に進める「デュアル教育」(注4)のプログラムは、伝統的な高校(あるいはそれより下のレベルの学校)の卒業者むけの徒弟・訓練制度から、大学レベルにまで拡大してきた。デュアルシステムの大学では、現在、地元の企業で働く学生に対して教育をしている。

おそらく、さらに重要なのは、より多くの(上級の)従業員らが、スキルを向上させ、プロジェクトや開発プログラムで協力するために、大学に通うようになっているということである。企業・大学・自治体によるコ・イノベーションのためのイノベーションセンターは、大学やフラウンフォーファー・グループ(Fraunhofer Group)のようなリサーチネットワークによって運営されるパイロットプログラムとなった。たとえば、政府と共同で設立され地域的に運営されている11か所のセンターのひとつに、シュトゥットガルドの「SME4.0センターオブエクセレンス」がある。ここでは、標準化、業務イノベーション、エレクトロモビリティ、そして将来の働き方について、SME(中小企業)と共同でプロジェクトを実施しており、またデジタル化についてのアドバイスも行っている。

フランスでは、特に、労働市場におけるインサイダー・アウトサイダー規制が広範な派遣労働者に対する制限となっているため、政府は、「個人の訓練アカウント」を新たに導入し、ライフサイクルを通じた個人レベルでの労働者のスキル開発を支援するという取り組みを始めた。これは、雇用主や雇用形態の種類にかかわらず利用できる教育クレジットを提供することによって、非中核従業員の独立した仕事とライフスタイルを支援しようとするものである。労働者は、高校や大学といった当初の教育から長い期間を経た後であっても、キャリア開発の一環として、多様な訓練プログラムに使用できる訓練補助金を受け取っている。

フランスは働き方改革のパイオニアであり成功者でもある。保育園を提供し、3歳児向けの公的な教育(幼稚園)を始めたことによって、子育て期における女性に対して企業での柔軟な働き方を実現したのである。しかし、母親のキャリアがしばしば潜在能力を下回ったままになっていることも認識されている。多くの母親は、家族への責任とより複雑な人生計画のために労働時間を制限しており、企業のキャリアパスから外れたり、長期的なスキル開発プログラムに参加できずにいたりしているのである。したがって、労働時間の柔軟性は、スキルとキャリアの面で改善が必要である。今日の高齢化社会では、働き方改革を効果的なものにするためには、家族のための時間について十分に考慮するだけでなく、長期的なスキル開発プログラムも導入する必要があるといえる

働き方改革による成長と仕事の未来

世界中で見られる働き方改革を検討すると、改革を効果的にするために必要な基本的な要素は以下の2つだということがわかる。

  • 将来の成長の基盤となる生産性とイノベーションを実現するために、既に広く利用可能なデジタル技術とプラットフォームの利便性と潜在性を可能な限り広げる。
  • 生涯を通じて労働者のスキルを開発し、柔軟性や生産性から得られるメリットを企業と労働者の両者が享受することを確実にする。

このような広範な働き方改革はもちろん困難なものである。すでに、多くの国の政府が基本的な「デジタル化」戦略に乗り出している。これは、インフラ、規格、データセキュリティー等を改善するといったものである。今や、時代遅れのスキルしか持たない企業とデジタル技術を活用して既存の企業や業界を破壊する「ディスラプター」の間の「デジタルデバイド」(注5)を克服する方法を見つける必要がある。また、ICTスキルが不足している従業員と若い「デジタル・ネイティブ」の間のギャップを埋める必要もある。これらの課題を達成するためには、(大学のように)規制が多く中央集権型の組織で若年者に対して教育するだけでなく、企業と協力して個別的で分散散型の生涯教育を行うというように、教育のあり方を拡大せねばならない。また、労働市場の規制も大幅に改革しなければならないだろう。より階層が少ないフラットなプロジェクトで仕事をするワークスタイルのプロフェッショナル化やパートナー企業や個人事業主とのより緊密な協力を実現するためには、より多くの権利、スキル、および個人情報を個別に保護することが必要となる。

このような改革の課題は、伝統的なやり方を考えると難しいようにも見えるが、デジタル経済では急速に必須のものになりつつある。たとえば、政府の介入がなくても、「デジタルデバイド」を解消することは可能だ。デジタル革命は消費者市場にも及んでいるため、デジタル技術は急速に参入障壁の低い「汎用技術(general technologies)」になっている。たとえば、小売店やレストランのバックオフィスやフロントオフィス業務全体を、iPadのような簡単なデバイスとクラウドサービスを使ってほぼ無料で運営することが簡単になっている。意欲的な従業員がいる企業では、規模、資本状況、年齢などにかかわらず、デジタル化がもたらすチャンスはスキルに関する課題よりも大幅に大きくなっている。

企業のスキル開発とデジタル化

多くの伝統的な企業にとって、これから必要になるスキルセットは日常業務に必要なスキルとは異なっている。またICTシステムが作り出す「デジタルツイン 」は維持・統合が難しい高価なものであったために、デジタルトランスフォーメーションは常に難しいように考えられていた。これが変化したのは、主に、企業の業務がメンテナンスフリーのクラウドベースのシステムへと移行したこと、さらに、社員も日常生活でデジタルコンシューマプラットフォームを活用する「デジタルネイティブ」へと変わりつつあることが背景にある。伝統的な企業のうち、小売業やサービス業などの消費者向けの企業が自然とデジタルトランスフォーメーションに向かった一方で、それ以外の企業では、デジタル化によって得られるチャンスやベストプラクティスを検討している段階であり、まだ十分に追いつけていない。そのような状況の中で、政府は、特に中小企業に対して情報と支援を提供することによって重要な役割を果たすことができる。

従業員にとって、デジタル化のメリットは、プライベートな生活の中ですでに顕著である。しかし、職場では、新技術による生産性の向上についていえば、そこから得られる利益が企業側だけに向かう訳ではないこと、そして職場を脅かすものではないことを示す必要がある。彼らを安心させモチベーションを高めるためには、労働者が自らの生活で行っているように、ICTシステムの「オーナーシップ」を得られなければならない。

アップル、グーグル、アマゾンのコンシューマ向けプラットフォームでは、企業と消費者が共に、比較的容易にデジタル化の恩恵を受けている。新しいユーザーが情報発信やコンテンツ制作、商品の販売などに貢献し、ほとんど追加的な費用をかけずに新しい価値が創造されるというネットワーク効果の恩恵を、企業もユーザー(消費者)も同時に受けることができる。規模の経済性が働き、サービスがグローバル化し、企業にとっては莫大な投資チャンスとなり、消費者にとっては大幅なコスト削減となった。結果として、企業は喜んで自社のシステムと多くのサービスを無料で提供し、消費者も積極的に情報やコンテンツを提供し、情報をチェックしたり、編集したり、口コミを書き込んだりすることによって無料の労働を提供している。

伝統的な企業は、社員を業務に積極的に関与させるために、このようなデジタルプラットフォームから学ぶところが多いはずである。

デジタルトランスフォーメーションと働き方改革に関する富士通総研の調査

伝統的な企業にとって、デジタルトランスフォーメーションおよび働き方改革について、どのような戦略が「人間本位」であり最適なのかを明らかにするため、富士通総研は日本およびドイツで1200人の労働者を対象にアンケート調査を行った。その結果を分析すると、高度なICTシステムそれ自体は、先進的な企業のデジタル化の成功において最も重要な要素ではないこと、とりわけ日本ではそうであることが明らかになった。むしろ、労働者の職場での生産性や機動性をサポートするようなユーザーフレンドリーなICTシステムを有する企業こそが、最もデジタル化の利益を享受している。調査において、使いやすいユーザーフレンドリーなICTシステムを持つ企業は、そうでないシステムを使う企業に比べて、デジタル技術を効果的に活用している「デジタルリーダー」のグループ(調査対象企業のおよそ4分の1)に入る可能性が8倍もあることが明らかになった。

成功している企業について言えば、ICTによる柔軟性は、従業員のワークライフバランス向上に寄与しており、また新スキルを習得する機会をより多くもたらすようである。加えて、専門的な能力開発、一時的な休業後の復帰、外部ソースやパートナーによる学習等を支援している企業では、従業員が個人的に業務にコミットしようというモチベーションの度合が2倍も高かった。ICTベースの経営をより有効におこなうためには、経営に関するコミュニケーションとフィードバックの改善、そして外部パートナーとの協力が強く相関することも明らかになった。

ドイツでも、職場におけるICTの潜在力の改善がおこなわれている。だが、企業においてより進んでいるのは、コ・クリエーション(共創)およびイノベーションについての外部パートナーとのコラボレーションである。ドイツでは、成功している企業は、社員に対して、自らの仕事という狭い範囲を超えた専門的な関心を刺激することを通じて、職場だけではなく、プライベートな生活においても労働者にモチベーションを与えることができているようである。ドイツの伝統である、職場でのスキルに関する「プロフェッショナリズム」は、デジタル化した世界でも同様に機能しているようである。

【図表1】ユーザーフレンドリーなシステムのインパクト
【図表1】ユーザーフレンドリーなシステムのインパクト
(注)日本とドイツにおけるICT利用度の高い産業の従業員1200名を対象とする富士通総研の調査(2017年)。有効な肯定的回答(「とてもそう思う」「そう思う」)の割合。「日本(使いやすいICT)」というグループは、日本のすべての回答者の中から、「私の勤務先のICTシステムは使いやすい」という質問に対して肯定的な回答をした人たちだけを選んだもの。


図表1は、働き方やICTに関する6つの質問に対する肯定的な回答(「とてもそう思う」または「そう思う」)の比率を示している。日独を全体として比較してみると、デジタルトランスフォーメーションと職場での生産性に関するほとんどの点において、ドイツは日本に先行しているようである。しかし、ICTシステムがユーザーフレンドリーで使いやすい日本の企業については、状況は異なる。そのような企業では、89%の従業員がデジタル化によって良いインパクトを得たと考えており、81%は自社が「自社の分野のデジタルリーダー」であると考えている。また、注目されるのは、そのような企業の社員の多くが、会社が社員の生涯学習を支援しており、外部パートナーとのコラボレーションのためにICTを利用することが有用であると考えている点である。

働き方改革への教訓

世界の働き方改革および我々の調査結果から得られる教訓は以下のように要約できる。

  • 働き方改革は労働者を支援するものでなければならない。企業にとっての生産性向上はもちろん重要であるが、そのメリットは、職業上のスキルおよびワークライフバランスの向上を通じて労働者と共有される必要がある。
  • 企業は、ユーザーフレンドリーなICTプラットフォームを採用することによって、働き方改革のメリットを大きくすることができる。現在のICTプラットフォームの「消費者化」の波は、この傾向を支援するものである。なぜなら、労働者はすでにスマートフォン上の消費者プラットフォームに移っているからである。
  • クラウド上のシステムは、価値のコ・クリエーション(共創)やイノベーションなどにおいて、より効果的な外部のパートナーとの協力に対して、企業がオープンになるために用いられる必要がある。

最後に、政府は企業の変革をサポートできるにすぎないが、とても重要な役割を果たす。政府は、デジタルなワークスタイルのためのインフラを提供する必要があり、また、インダストリー4.0やソサエティ5.0が示す安全なICTに基づく外部パートナーとの協力のための規格を策定する必要がある。おそらく長期的にみてもっとも重要であるのは、政府が、年配の従業員のための生涯学習スキームおよび伝統的なキャリアからあまりにも長い間排除されてきた労働者のためのキャリアパスを開発するために、企業・大学間の協力を改善する役割を担う必要があるということである。

注釈

(注1): インターネットを介して単発の仕事を請け負う働き方によって成り立つ経済社会。

(注2): ドイツのシュレーダー政権(1998~2005)が2003年に打ち出した構造改革プログラム。2010年をターゲットに失業率回復などを掲げ、解雇規制の緩和など雇用制度と社会保障を中心に改革を実施した。痛みを伴う改革だったが、強いドイツ企業の復活につながったという評価もある。

(注3): ミレニアル(millennial)とは千年紀という意味で、米国で2000年以降に成人あるいは社会人になる世代を表す。デジタル機器やインターネットが普及した環境で育った最初の世代でもある。

(注4): 学術教育と職業訓練を同時に行うドイツの教育システム。

(注5): パソコンやインターネット等の情報通信技術(ICT)を利用する能力、あるいはアクセスする機会を持つ者と持たざる者が分断(デバイド)され、格差が生じる問題。個人だけでなく企業など組織の間のデジタルデバイドもある。

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【調査・研究】


Martin Schulz(マルティン・シュルツ)
株式会社富士通総研 経済研究所 上席主任研究員
1989年 ベルリン自由大で政治学修士、1990年 経済学修士を取得、1996年 同大学で博士号(経済学)を取得。1998年まで同大の政治経済研究所助教授。1996年以降、英国バース大学、イタリアのバリ大学、ポーランドのシュテティン大学、ベルリン社会科学学術センターにて勤務。1991年~1993年 東京大学社会科学研究所研究員。1997年 立教大学経済学部奨励研究員。1998年~2000年 東京大学社会科学研究所研究員および同大学経済学部研究員。一方、1998年~1999年には日本銀行金融研究所に滞在。2000年7月 富士通総研経済研究所入社。
専門:国際経済、企業戦略、対外投資など。
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