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SDGs定着に向けた日本企業の取り組みと課題

2018年3月16日(金曜日)

企業のSDGs貢献への要請と期待

2016年1月に国連の持続可能な開発目標(SDGs)がスタートしてから2年あまりが経過した。SDGsは、持続可能な開発のために国際社会が2030年までに達成すべき目標として、17目標169ターゲットから構成されている。法的拘束力はないが、日本を含む各国政府はSDGsの達成に努めることを約束している。SDGsは、対象範囲が極めて広範で、すべての国・地域に適用されることから、2030年までの今後10年以上、社会課題解決の取り組みに関するグローバルな「共通言語」としてみなされている。SDGs達成に向けて、人材・技術・資金を持つ企業の貢献に対する国際社会の期待も大きい。企業からすれば、SDGsへの対応が義務付けられていないとはいえ、今後の企業活動をグローバルなバリューチェーンを含めて考えれば、SDGsを無視することはできない。

環境・社会・ガバナンスの取り組みを重視・選別するESG投資への関心の高まりも、企業のSDGsの取り組みを後押ししている。日本では、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2015年9月にESG投資を推進するための国連責任投資原則(PRI)に署名し、2017年7月には日本株を対象としたESG指数を選定して運用を開始した。このため、投資家にESG情報を開示するために、財務情報と非財務情報を合わせた統合報告を実施する企業数が、2014年末の141社から17年末には341社にまで増加している。国際的に見れば、いわゆるESG情報開示のガイドラインにSDGsを反映させる動きが活発である。例えば、国際統合報告評議会(IIRC)は、2017年9月に、統合報告フレームワークの価値創造プロセスを活用したSDGs達成への貢献とコミュニケーションのあり方に関するレポートを公開した。グローバルレポーティングイニシアチブ(GRI)も、国連グローバルコンパクトとともに、2017年9月にSDGs各ターゲットの企業情報開示に関するレポートを発行したのに続いて、2018年中に、企業のSDGs報告のためのガイダンスの発行を予定している。ESG投資への対応と情報開示を考えるうえでも、SDGsとの関連付けが求められそうだ。

産業界や政府も企業のSDGsの取り組みを働きかけている。日本経団連では、2017年11月に「企業行動憲章」と「実行の手引き」を改定し、新たな経済成長モデル「Society5.0」を通じたSDGs達成への貢献を掲げている。政府のSDGs推進本部は、2016年12月に策定した「SDGs実施指針」において「民間セクターが公的課題の解決に貢献することが決定的に重要」との認識を示した。さらに2017年12月に公表した「SDGsアクションプラン2018」では、SDGsの推進を通じて企業・地方・社会を変革し、経済成長を実現するとともに世界に展開するための日本のSDGsモデルを構築するための3つの柱の一つとして、「SDGsと連動する官民を挙げたSociety5.0の推進」を掲げた。具体的には、ベンチャー企業支援を含むSDGs経営推進イニシアティブや投資促進の仕組み、SDGsに資する科学技術イノベーションのための国際ロードマップなど、企業の取り組みをさらに後押しする施策を、2018年央までに策定するとしている。

日本企業の取り組みの進展

【図1】日本企業のSDGsの参考状況
【図1】日本企業のSDGsの参考状況
(出所)東洋経済新報社「CSR企業総覧2018年版」(2017)を基に富士通総研作成

図1は、東洋経済新報社「CSR企業総覧2018【ESG編】」(2017)に掲載された日本企業1,413社におけるSDGsの参考状況について整理したものである。SDGsを参考にしている企業が326社(23%)、検討中の企業が141社(同10%)であり、合わせて全体の33%の企業がSDGsを参考あるいは検討中であった。前年の同調査(対象企業1,408社)では、SDGsを参考・検討中の企業数が317社(全体の23%)であったことから、1年でSDGsを参考・検討中の企業が100社以上(全体の比率で10ポイント)増加したことになる。また、製造業(農林水産業、鉱業、建設業を含む)のほうが非製造業よりもSDGsを参考・検討中の企業の比率が高い。

【図2】フォーブスグローバル2000日本企業のSDGsへの言及
【図2】フォーブスグローバル2000日本企業のSDGsへの言及
(出所)フォーブスグローバル2000(2016年版・2017年版)と各社公開情報を基に富士通総研作成
(注)16年12月末のデータは、フォーブスグローバル2000(2016年版)ランクイン日本企業219社、17年12月末のデータは、同(2017年版)ランクイン日本企業225社

さらに、国内大手企業の取り組み状況を精査するために、2017年版のフォーブスグローバル2000にランクインした日本企業225社 について2017年12月末時点の公開情報を調べたところ、55%(124社)がSDGsについて何らかの言及をしていた(図2)。2016年12月末時点の前回調査(16年版対象企業219社)の33%(72社)から大きく増加している。

【図3】フォーブスグローバル2000日本企業のSDGs言及内容
【図3】フォーブスグローバル2000日本企業のSDGs言及内容
(出所)フォーブスグローバル2000(2016年版・2017年版)と各社公開情報を基に富士通総研作成
(注)SDGs言及企業は2016年12月末現在72社(フォーブスグローバル2000ランクイン日本企業は219社)、2017年12月末現在124社(同225社)

今回(2017年末)と前回(2016年末)の調査結果の大きな違いは、SDGsへの言及内容である(図3)。前回調査では、企業トップのメッセージなどでSDGsの認識や自社の貢献について言及するレベルの企業の数が突出していた。今回調査でも、トップメッセージ等でSDGsに言及する企業は前回調査の40社から80社に倍増するというように最も多かったが、この1年で具体的な取り組みに着手する企業が急増している。CSR方針や考え方等にSDGsを反映する企業は前回調査の10社から69社に、SDGsを重要課題(マテリアリティ)分析に活用する企業も前回調査の18社から45社に大幅に増加している。

SDGsと自社事業との関連付けを行う企業も大きく増えている。前回調査では、一部事業との関連付けを行う企業(15社)の方が総合的に関連付けを行う企業(13社)より多かったが、今回調査では総合的な関連付け企業(50社)が一部事業との関連付け企業(30社)を大きく上回っており、さらに検討が進んでいることが示された。製造業の取り組みの例を挙げれば、自社のマテリアリティごとに、機会とリスクの認識、具体的取り組み、関連するSDGsを示したり、SDGsの17目標それぞれに自社の取り組み事例を関連付けたり、バリューチェーンに沿って社会課題と自社の取り組み、SDGsへの貢献を関連付けたり、製品カテゴリごとにSDGsとの関連付けを示したりするなど、バラエティに富んだ取り組みが行われている。一方、非製造業の多くは、自社のマテリアリティに事業活動や計画を関連付けながらSDGsの目標との関連づけを行うなど、程度の差はあるが比較的類似した傾向である。

SDGsを企業活動にいかに定着させるか

これまでの国内大手企業の取り組みを概観すれば、2016年はSDGsの重要性を認識してその貢献へのコミットメントの表明が始まった年、2017年はSDGsと自社の戦略や事業の関連付けが活発に行われた年と位置づけることができよう。いよいよ2018年は、継続的な取り組みとしてSDGsを企業活動に定着できるかどうかが問われることになる。すなわち、これまでは、既存の取り組みをSDGsと関連付ける「ラベリング」が主に行われてきたが、今後は、SDGsを参照したうえで新たな事業戦略を策定し、企業価値創造や新たなビジネス機会創出につなげられるかどうかが問われることになる。

SDGsの取り組みを企業活動に定着させるためには、本業への組み込みが不可欠である。17目標169ターゲットから構成されるSDGsは、企業が本業を通じた社会課題解決を検討するヒントの宝庫ともいえる。ビジネスと持続可能な開発委員会(BSDC)によれば、SDGsに関連する「エネルギーと材料」「都市」「食料」「健康と福祉」の4分野において、2030年時点で、世界全体で12兆ドル/年、アジア域内でも5兆ドル/年の市場機会が見込まれている。日本政府のSDGs実施指針やSDGsアクションプラン2018に示された8つの優先課題と具体的施策にも、国内外の市場機会のヒントが含まれている。このような機会を獲得するためにも、企業全体で戦略的アプローチを検討することが求められよう。

SDGsの取り組みの定着に向けた企業の当面の主な課題は、目的の明確化と、組織横断的な検討・体制づくりである。複数の部署が、意思疎通なく個別に取り組みを行ってしまうと、会社全体での持続的な取り組みにつながらず、企業価値への反映も難しい。特に、規模の大きな企業では、全社的なSDGsと企業姿勢に対する共通理解、すなわち、社内におけるSDGsの「共通言語」化を図ったうえで、取り組みに着手することが望まれる。その次は、パフォーマンス評価による取り組みの改善が課題となろう。企業がSDGsに取り組んでいることを示すためには、国連が想定している目標達成に本当に貢献しているかどうかを把握し、公開することが望まれる。そのためには、17目標レベルではなく、169のターゲットレベルで、SDGsへの具体的な貢献を評価する必要がある。もちろん、取り組みの継続を担保するためには、SDGs貢献とともに事業性の評価を行うことが重要である。

企業のSDGsの取り組みは緒に就いたばかりであり、ビジネス機会の獲得、さらには企業価値に反映させるには、評価方法の開発を含めて、まだしばらく時間を要するだろう。一方で、日本経団連や政府の働きかけ、投資家の関心、さらにはサプライチェーン上の先行取り組み企業からの要請などを考慮すれば、企業がSDGsの重要性を認識し、具体的な取り組みに着手する動きは、大手企業だけでなく、中堅・中小企業などに広がっていくことが予想される。SDGsの取り組みは2030年の目標年までの長期にわたって求められる。一過性の取り組みにすることなく、SDGsの視点から事業活動と市場の課題を見つめ直しながら、SDGsを本業に組み込むことで、持続的な企業競争力の向上を図ることが期待される。

注釈

https://www.gpif.go.jp/operation/pdf/esg_selection.pdf

企業価値レポーティング・ラボ 2018「日本の持続的成長を支える統合報告の動向2017」、http://cvrl-net.com/archive/pdf/list2017_201802.pdf?201802

IIRC 2017, “The Sustainable Development Goals, integrated thinking and the integrated report”,http://integratedreporting.org/wp-content/uploads/2017/09/SDGs_integratedthinking_and_integratedreport.pdf

https://www.globalreporting.org/information/SDGs/Pages/Reporting-on-the-SDGs.aspx

日本経済団体連合会 2017「企業行動憲章の改定にあたって~Society 5.0の実現を通じたSDGs(持続可能な開発目標)の達成~」、http://www.keidanren.or.jp/policy/cgcb/charter2017.html

持続可能な開発目標(SDGs)推進本部 2017「SDGsアクションプラン2018 ~2019年に日本の「SDGsモデル」の発信を目指して~」、https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/pdf/actionplan2018.pdf

https://www.forbes.com/global2000/

生田孝史 2017 「SDGs時代の企業戦略」富士通総研『研究レポート』No. 437

Business and Sustainable Development Commission 2017, “Better Business, Better World”,http://report.businesscommission.org/uploads/BetterBiz-BetterWorld_170215_012417.pdf

Business and Sustainable Development Commission 2017, “Better Business, Better World Asia”,http://s3.amazonaws.com/aws-bsdc/BSDC_asia_web.pdf

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【調査・研究】


生田 孝史(いくた たかふみ)
(株)富士通総研 経済研究所 上席主任研究員
1990年 東北大学大学院修士課程修了、(株)長銀総合研究所入社、
1998年 米国デラウェア大学大学院修士過程修了、(株)富士通総研入社
専門領域:環境・エネルギー政策、環境・CSR関連事業・経営戦略、社会イノベーション、自然資源活用型地域戦略など、企業や地域の持続可能性をテーマとした研究活動