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社会課題の解決に取り組むコミュニティ人材を育成する
―コミュニティデザインとしての「ミナヨク」のチャレンジ―

2017年9月7日(木曜日)

東京都港区は、区域が芝地区、麻布地区、赤坂地区、高輪地区、芝浦港南地区の5地区ブロックで構成され、それぞれのブロックには総合支所が置かれています。富士通総研の実践知研究センターでは、コミュニティデザインの実験として、このうち「麻布地区総合支所」と協働しながら、2016年1月より地域コミュニティ活性化事業「ミナヨク」を実施しています。

1.港区麻布地区の地域課題

人口は堅調に推移、しかし…

現在の港区の人口は約25万人です。これは東京23区の中では比較的“人口の少ない区”に分類されていると言えます。港区は一時、人口15万人を下回った時期があったものの、この30年ほどの間、区民住宅の整備、民間の住宅供給の支援・誘導、麻布・六本木エリアの交通の要衝ともなる南北線の全線開通などが進み、人口が回復しました。人口減少が進む日本において、港区は人口推移が堅調であるエリアです。

しかし、そうした状況下においても、港区麻布地区総合支所の協働推進課担当者は、現在の麻布地区に1つの課題を感じていました。

新・旧住民のつながりが希薄に

麻布地区は日本有数のビジネスタウン・六本木を含んでいるエリアです。区全体の昼間人口はおよそ90万人ですが、このうち麻布地区は約10万人を占めます。まちに足を運べば、高層のオフィスビルがまちを見下ろしています。タワーマンションや、集合住宅も建ち並んでいます。

かつては戸建住宅や個人商店が軒を連ね、職住近接で暮らしている人の多かった麻布地区も、まちの歴史とともに様変わりしてきました。かつての地権者は区外へと流出していき、タワーマンションや集合住宅の賃借人として、新しい住民が移り住んできました。現在の夜間人口は約6万人です。

人の流動化の激しい麻布というまちのコミュニティにおいては、おのずと区域コミュニティのつながりが次第に希薄になっていき、かつ、若い人たち(新住民)が直接的にまちと交流を持つ機会が少なくなっているのです。

そしてこの解決策の1つとなるのが「あなたのまちを“みんな”で“よく”するコミュニティデザイン活動」である「ミナヨク」です。

2.“みんな”で“よく”する「ミナヨク」

コミュニティデザイン活動とは?

そもそも「コミュニティデザイン」とは、ワークショップやイベントを通じ、コミュニティをデザインする活動を指します。この言葉の生みの親であるstudio-Lの山崎亮さんは、「コミュニティデザイナー」として有名です。

コミュニティデザインは奥の深いもので、その定義を一言で言い表すのは難しいのですが、「コミュニティへの参加者が、ともに1つの課題解決に向けて活動すること」が最大の特徴であり、そのために、我々のようなデザイナーがそうしたコミュニティをデザインするコミュニティデザイナーとして介入していきます。

「ミナヨク」も、「港区の困りごとをみんなで解決する」というポリシーのもと、「次世代のまちの担い手」を発掘・育成するコミュニティデザインの活動であると言えます。

六本木HAB-YU platformを拠点に

「ミナヨク」は、2015年度から始まり、1期・2期とプロジェクトを実施しました。拠点となるのは、富士通が運営する共創の場「HAB-YU platform」(東京都港区六本木)です。ここではデザイン開発やICT利活用のノウハウを活用しながら、ビジョン策定から具体化までを体験・研究開発することを目的としています。

ミナヨク参加対象となるのは、20〜40代の「まちの活性化に取り組む意欲のある方」「麻布でのコミュニティデザインに興味・関心のある方(学生、子育て世代、働いている方など)」です。毎期20名程度を定員としています。参加者は大体1週間から10日前後に1回ほどのペースでHAB-YUに集まり、様々なワークを体験します。

【写真1】ビジョン策定から具体化までをHAB-YUで考える
【写真1】ビジョン策定から具体化までをHAB-YUで考える

3.「ミナヨク」の目指すゴール

地域を学び知る、愛着を醸成する

「ミナヨク」で掲げているゴールは、大きく分けて2つあります。それは「地域を学び知る」、そして「愛着を醸成する」です。

プログラムは、参加者同士の自己紹介に始まり、その後、ワークショップに招いた港区ゆかりの方々(まちづくり関係者、地元の商店街関係者、大使館観光文化担当官等)のゲストトークやゲームなどを通じて、港区(麻布地区)のことを学びます。また、フィールドワークを通して、自らの足でまちを歩き、地域の良いところ・悪いところも探していきます。この「知る」「感じる」のステップがほぼ前半までのプログラムです。

後半からは、自らの目・耳・足で見つけた「地域課題」の解決を目指し、参加者同士でチームを作ります。その後はチームでアイデアを考え、それをカタチにしながら試行錯誤を繰り返し、最終的には、パネル化したアイデアをヒルズマルシェ(六本木アークヒルズ内で広場定期開催される朝市)で一般の方々向けに展示・発表します。

【写真2】ヒルズマルシェでの展示・区民の方の声を聞く
【写真2】ヒルズマルシェでの展示・区民の方の声を聞く

実証実験まで発展したアイデアも

第1期プロジェクトでは、ヒルズマルシェでの展示・発表がきっかけとなって「子ども走るまち」(商店街に協力してもらい、子どものおつかい体験を通して、地域の新しいつながりを作っていく活動)というアイデアの実証実験が行われ、アイデアが体験イベントとしてお披露目されました。参加した親子からも好評で「このために初めてヒルズマルシェに来た」という人もいたほどです。

地域に愛着をもったミナヨク修了生が、こうして地域との交流を持つことで、麻布地区の課題解決につながっていくと筆者は考えます。こうして「アイデアを生む」「試す」「地域に根付く」という一連のサイクルを繰り返し生んでいくことが、「ミナヨク」のゴールでもあります。

第3期プロジェクトもスタート

地域に向き合い、真摯に関わることで、地域への愛着がわいていきます。これまで2期にわたって行ったプロジェクトでは、世代を超えた地域コミュニティが醸成されていると感じていますし、2017年8月からはいよいよ第3期プロジェクトも始動しました。

「ミナヨク」のプロジェクトを終えた後も参加者同士が交流を続け、また別のコミュニティ活動を行おうとする動きもあります。実践知研究センターと地域の取り組みを通じて、小さいながら重要な変化が生まれています。地域は1~2年で変わるものではありません。長期的な視野で地域に関わり、変化を定点観測していくことが必要になってきます。これからも「ミナヨク」を通じて地域の担い手が育ち、修了生が活躍してくれることを期待しています。

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高嶋 大介

高嶋 大介(たかしま だいすけ)
富士通株式会社 ブランド・デザイン戦略統括部 デザインシンカー
株式会社富士通総研 経済研究所 実践知研究センター 研究員
大学卒業後、大手ゼネコンにて現場管理や設計に従事。2005年富士通入社。ワークプレイスやショールームデザインを経て、現在では企業のワークスタイル変革や自治体の将来ビジョン、地方創生のデザインコンサルティング、デザイン思考をベースとした人材育成などに従事。「社会課題をデザインとビジネスの力で解決する」をモットーに活動中。共創の場であるHAB-YUを軸に人と地域とビジネスつなげる活動を実践する。