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日本と米国の消費者動向調査から見たFintechサービスのこれから

2017年8月28日(月曜日)

Fintechが日本でも注目され、ベンチャー企業による最新テクノロジーを活用した新たな金融サービス(以下、Fintechサービス)の提供が増加しています。これらFintechサービスの利用が次第に拡大するにつれ、消費者のお金の管理や金融商品・サービスの利用方法はどのように変化していくのでしょうか?

富士通総研では、Fintechサービスの導入を目指す金融機関へのコンサルティングや富士通における次世代ICTソリューション企画へのインプットとして、消費者や事業者の金融サービスに対するニーズ調査を継続して実施しています。本年は、調査のフィールドを拡大し、Fintechサービスの利用で先行する米国における消費者向けFintech サービスの利用に関する調査を実施しました。

本調査結果から日本と米国の消費者向けFintechサービスの利用実態を比較し、今後の日本におけるFintech サービスの展開に向けた示唆をご紹介します。

1. 順調に増加するFintechサービスの提供数

日本では、Fintechが注目され始めた2015年以降、スマートフォンを活用した消費者向けのFintechサービスが次々と発表されています。

富士通総研が毎年実施しているスマートフォン活用に関する調査(注1)によると、2015年1月から2017年5月にかけて国内銀行のスマートフォンアプリ提供数は倍以上に増加しています(【図1】)。同じく富士通総研が毎年実施する地域金融機関の企画担当者向けのアンケート調査(注2)(【図2】)においても、8割以上が今後注力したいICTのテーマとしてスマートフォン活用を挙げています。

このように、国内金融機関(提供者側)は、Fintechサービスの提供に前向きであり、この盛り上がりは今後も継続すると見込まれます。

【図1】日本国内の銀行によるアプリ提供数
【図1】日本国内の銀行によるアプリ提供数
出典)富士通総研「金融機関によるアプリ提供数調査」

【図2】国内地域金融機関の今後推進したいICTテーマ
【図2】国内地域金融機関の今後推進したいICTテーマ
出典)富士通総研「地域金融機関向けアンケート調査」

2. 足踏み状態にあるFintechサービスの利用率

一方、消費者(利用側)の動向に注目すると、国内におけるFintechサービスの利用率は足踏み状態であることがわかります。富士通総研が実施した日本と米国のFintech サービス利用に関する調査(注3)では、両国のFintechサービスの利用率を比較すると大きな差があることが明らかになりました。

代表的な消費者向けFintechサービスである家計・資産管理(注4)、ロボアドバイザー(注5)、個人間送金(注6)に関する調査結果を日米で比較すると、いずれのサービスでも米国における利用率が日本よりも倍以上高い結果となっています(【図3】)。例えば、家計・資産管理は、日本国内でもマネーフォワードに代表される家計簿サービスと国内金融機関の提携事例が数多く発表され、Fintechサービスの提供が特に進んでいる分野であると思われます。しかし、その利用率は、米国が33%であるのに対し、日本は14%にとどまっています。

日本の金融機関が積極的にFintechサービスの提供に取り組む一方、消費者は未だFintechサービスの利用に消極的であると考えられます。Fintechサービスの利用において先行する米国と日本では、どのような違いがあるのでしょうか?

【図3】日米のFintechサービス普及率の比較
【図3】日米のFintechサービス普及率の比較
出典)富士通総研「Fintechに関するアンケート調査(米国)」
「Fintechに関するアンケート調査(日本)」

3. 米国で進む銀行利用のデジタル化

日本と米国では、消費者の銀行との関わり方に違いが見られます。【図4】では、日本と米国の消費者による銀行チャネルの1年以内の利用経験・利用頻度を示しています。窓口やATMの利用が多いことは両国の消費者で共通していますが、デジタルチャネルの利用経験については差があります。

例えば、米国の消費者にとって、インターネットバンキングは、窓口やATMと同じく、銀行利用者の多くが利用するチャネルとなっています。スマートフォンについても、その利用率は日本の倍以上となっており、消費者の半数以上がスマートフォンから銀行サービスを利用した経験があると回答しています。

今後の銀行チャネルの利用意向に関する考え方を尋ねる質問では、日本と米国の消費者の考え方の違いが明らかになりました。日本の消費者は、チャネルの利用を変化させることに消極的で、利用意向の増減率は数%にとどまっています。対照的に、米国の消費者は“窓口利用を減らす”、“スマートフォン利用を増やす”と回答している割合が高いことが特徴です(【図5】)。この調査結果から、米国では消費者の銀行利用におけるデジタル化が進んでおり、それがFintechサービス利用にも影響を与えていると考えられます。

【図4】日米消費者の銀行チャネル利用経験・利用頻度比較
【図4】日米消費者の銀行チャネル利用経験・利用頻度比較
出典)富士通総研「Fintechに関するアンケート調査(米国)」
「Fintechに関するアンケート調査(日本)」

【図5】日米消費者の銀行チャネルの利用意向
【図5】日米消費者の銀行チャネルの利用意向
出典)富士通総研「Fintechに関するアンケート調査(米国)」
「Fintechに関するアンケート調査(日本)」

4. 米国で銀行利用のデジタル化が進む背景

【図6】米国におけるFintechサービス普及の要因
【図6】米国におけるFintechサービス普及の要因

前述のように、米国では銀行利用のデジタル化が進んでおり、これがFintechサービスの利用率の高さにつながっていると考えられます。こうしたデジタルサービスの利用が進む背景には、米国特有の社会情勢や消費者の嗜好が影響していると考えられます。

日本と米国では、その人口構成が大きく異なります。米国では、デジタルチャネルと親和性の高いミレニアルズ(1980年代から2000年代生まれ)と呼ばれる若年世代が人口構成において約3割を占めています。米国の銀行にとってデジタルチャネルの充実を図ることは、より大きな潜在市場へのアクセスを得るために欠かせない取り組みと言えます。

また、先に紹介したFintechサービス3種の利用環境も日本と米国とでは大きく異なります。

日本と米国では、自身の家計や財務状況に関する管理ニーズの強さが異なると推測されます。富士通総研が米国の大手Fintech企業に対してインタビュー調査を実施したところ、米国の消費者は平均10以上の金融機関と取引があるとのことでした。多くの金融機関との取引がある米国の消費者は、複数の取引情報を統合管理する機能のニーズが強いと予想されます。また、米国では、毎年個人で税務申告が必要であり、自身の正確な財務情報の管理が必要です。

消費者の金融商品に対するニーズも異なります。日本銀行(注7)と連邦準備制度理事会(FRB)(注8)が公表している両国の金融資産(家計)のポートフォリオを比較すると(【図7】)、日本の消費者は、5割以上を現金・預金で保有していますが、米国の消費者は、株式や投資信託による運用の割合が高くなっています。このため、ロボアドバイザーのような資産運用ツールが投資に積極的な米国の消費者に対して訴求していると考えられます。一方、資産運用ニーズが乏しい日本の消費者にとっては訴求しづらいのかもしれません。

両国のキャッシュレス化の状況についても、日本と米国で違いが見られます。国際決済銀行(BIS)(注9)が公開するレポートによると、現金流通残高の対名目GDP比率は日本が19.4%と調査対象国の中で最も高い割合である一方、米国における同比率は7.9%となっています。キャッシュレス化が進んでいる米国では、個人間のお金のやり取りにおいてもデジタル化が進展していると考えられます。

このように、米国においてFintechサービスが利用されている背景には、社会の仕組みや金融商品・サービスに対する消費者ニーズが存在しています。

【図7】日米の家計の金融資産構成
【図7】日米の家計の金融資産構成
出典)日本銀行,FRB公開情報を基に富士通総研作成

5. 日本におけるFintechサービスの利用拡大に向けて

日本と米国では、消費者の金融機関との関わり方や金融商品・サービスの利用状況が異なります。Fintechサービスは、各国の消費者の金融に関するニーズや課題、社会動向を背景に誕生、発達してきたと言えます。現在、日本においてもFintechサービスの提供は盛り上がりを見せていますが、サービスの利用拡大は遅れています。

今後の日本におけるFintechサービスの発展、拡大のためには日本の消費者の特性や環境の洞察に基づく日本らしいサービス内容と提供方法が求められます。

このようなFintechサービスの実現に当たっては、従来にも増して利用者の動向や反応をサービス内容に反映するような企画プロセスの重要性が高まります。また、サービスの内容については、金融商品・サービスの利用において変化を好まない日本の消費者に対して、金融ニーズの背景にある生活や事業のサポートの一環として利便性の高い金融機能を提供するようなサービスの提供が有効であると考えられます。例えば、海外では、金融ニーズの発生をより上流で察知し、自社取引へ誘導する入口として不動産や自動車といった商品を検索する機能を持つアプリを提供している金融機関も存在します。今後の調査では、欧米などの先進国や成長著しい新興国における新たなFintechサービスについて、事例とともに背景となる利用者の動向や社会課題までスコープを拡大し、当該地域特有の仮説を構築することによってFintechサービスの企画に資する、より深い洞察を提供していきます。

富士通総研では、今後も利用者にとってより便利な金融サービスの実現を目指し、海外の先進事例ならびに背景となる利用者の動向をインプットとしたコンサルティング、研究活動を推進していきます。

注釈

(注1) : 金融機関によるアプリ提供数調査(2015年1月、2017年5月):富士通総研および富士通の担当者が定期的にアプリストア、各行プレスリリースによって提供が確認されたアプリ数を計測。アプリの提供機能ごとに1アプリとして計測。

(注2) : 地域金融機関向けアンケート調査(2017年1月):毎年、全国の地方銀行、第2地方銀行を対象に富士通総研が留置調査により実施。昨年度は32行から回答を得た。複数選択の上位5項目を表示。

(注3) : Fintechに関するアンケート調査(日本):富士通総研が2017年6月に実施したWebアンケート調査。日本国内の18歳以上、1,024人から回答を得る。回答者の構成は、年代、性別、居住地の割合が人口統計に準拠するよう調整。
Fintechに関するアンケート調査(米国):富士通総研が2017年3月に実施したWebアンケート調査。米国内の18歳以上、1,000人から回答を得る。回答者の構成は、年代、性別の割合が人口統計に準拠するよう調整。

(注4) : 口座やカードの利用情報を統合・分析し、分かりやすく表示するアプリやWebサービス。国内の代表例は、マネーフォワード、Zaim。

(注5) : 人工知能による予測やポートフォリオ診断により資産運用を支援するアプリやWebサービス。国内の代表例は、THEO、ウェルスナビ、SMART FOLIO。

(注6) : SNSアカウント等を活用し、個人間で簡単に送金ができるアプリやWebサービス。国内の代表例は、楽天銀行アプリFacebook送金、LINE Pay。

(注7) : 日本銀行「資金循環統計」(2016年12月19日公表分)

(注8) : FRB, Financial Accounts of the United States, Third Quarter 2016 (2016年12月8日公表分)

(注9) : BIS, Statistics on payment, clearing and settlement systems in the CPMI countries (2016年12月)

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石山 大晃(いしやま ひろあき) 石山 大晃(いしやま ひろあき)
株式会社富士通総研 クロスインダストリビジネス企画グループ コンサルタント
2013年富士通総研入社。入社以来、地域経済と金融をテーマに金融商品・サービスの顧客動向調査に基づくチャネル、セールス、IT戦略に関するコンサルティングに従事。