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Fintech時代における新サービス創出に向けたコンサルティング

2017年8月24日(木曜日)

1.はじめに

Fintechへの関心の高まりを受け、大手金融機関では、自行のビジネスがFintechベンチャー企業に浸食されるのではとの危機感を覚えると同時に、これらベンチャー企業との共創を通じて新たなサービスを創出する好機と捉えています。大手金融機関とベンチャー企業との協業による実証実験や新サービスの提供に関する発表が毎月のように紙面をにぎわしており、地域金融機関においてもFintech企業との提携事例が増えつつあります。しかし、Fintechは、明確な定義がなく、金融機関の興味・関心により、適用領域・技術が変化するものであるため、金融機関単独ではどの分野のどの技術を適用するのかを見極めづらいのが実情です。また、Fintech企業が提供するサービスは新規性が高く、そのビジネス上の有効性を評価する指標は未だ定まっていません。そして金融機関が提携を検討するFintech企業の多くはスタートアップと呼ばれる創業間もない小規模企業であり、これまで金融機関と関わりが少なかった企業でもあり、その経験値が不足している状況といえます。

富士通総研では、Fintech企業との協業を検討する金融機関に対して、上記課題にアプローチし、Fintech企業との効果的な協業を推進するコンサルティングを提供しています。以下では、弊社がご支援させて頂いたA証券様の事例を通じて、Fintechスタートアップ協業による新規サービス立ち上げにかかる課題をいかに乗り越えるかご紹介したいと思います。

2.Fintech協業計画のプロジェクトアプローチ

一般的に、新規事業開発のアプローチとして、下記3ステップが必要と言われています。

  • リサーチ・機会の発掘:リサーチを通してビジネス機会を発掘し、ビジネスモデルを策定
  • アイデアの具現化:ビジネスモデル評価による絞り込みとプロトタイプの構築
  • プロトタイプの検証:プロトタイプのパイロット導入と評価・改善後に対象サービスの本格導入

【図1】新規事業開発の全体アプローチ
【図1】新規事業開発の全体アプローチ

上記は、新規事業開発における一般的なステップですが、Fintech企業との協業にあたっては、長年に亘るリサーチの実施により蓄積された独自の知見、これまでのPoC実施経験により得られたノウハウなど、換言すれば「経験の差」がその後の成否を大きく左右するものとなります。Fintechの領域においては、スタートアップ企業による新たなサービスが、毎年次々と登場しており、金融機関はこうした多くの有望なFintech企業から自社にとって最も協業効果の高いFintechサービスを短期間で見つけ出し、協業を進めていく必要があります。一方、金融機関によっては、プロジェクト推進における堅確性が求められるため、フェーズごとにプロジェクトを分割し、各フェーズ終了時に関係者への報告や協力要請を行いながら、少しずつ規模を拡大していくアプローチが好まれる場合もあります。富士通総研では、長年にわたり、Fintech分野に関して独自に調査を行ってきたことから、当該分野に関する豊富な知見を有しています。これらの知見を活用することにより短期間で上記アプローチを実行・完遂し、早期のパイロット導入を支援することが可能となっています。また、これまでのFintechサービス導入に向けたPoC支援実績から、金融機関とFintech企業を取り持ち、各金融機関にとって最適なアプローチ方法を選択してサポートすることを可能としています。

A証券様向けプロジェクトにおいては、フェーズごとに関係者の同意を得て、少しずつ規模を拡大していくアプローチを採用しており、当初はビジネスモデル立案を当面のゴールとして据え、「①リサーチ・機会の発掘」をクイックに実施しました。ただし、プロジェクト終了時にビジネスモデルのロングリストが提示されているだけでは、次のアクションに踏み切れないことから、「①リサーチ・機会の発掘」フェーズにおいても簡易的な評価を行い、A証券様にとって有望なビジネスモデルの特定もスコープ内としました。プロジェクトにおける具体的な実施内容は、(1)Fintech市場の定義と全体像の把握、(2)各領域の評価と詳細調査、(3)基本方針/アプローチプランの策定となりました。

3.Fintech市場の定義と全体像の把握

プロジェクトの開始時には、多岐にわたるFintechサービスの分類を通じて、市場の全体像を把握し、評価やビジネスモデル立案を行う基本となるフレームワークを構築しました。分類にあたって、提供されている金融機能に着目しましたが、この分類方法には、金融機関の既存事業と組み合わせてどのように価値を創出するかを検討できるという利点があります。加えて、金融機能と既存金融商品が対応することで、公的機関による統計データをベースに市場規模を推計できることから、より精度の高い推計を行うことができる、という調査上の利点もあります。

こうして金融機能を基にFintech市場を定義した結果、下記の分類が採用されました。なお、実際のプロジェクトにおいては、具体的なビジネス機会やモデルの評価・分析が求められたため、証券会社の事業に直結する分類は、下記よりも詳細な分類を行っています。

【表1】Fintechサービス分類
【表1】Fintechサービス分類

4.各領域の評価、総裁調査による有望領域の見極め、アプローチプランの策定

次に、先の分類をともに、各領域の有望度を評価し、取り組みの優先順位を明確にしました。本プロジェクトにおいては、「資源を投下して事業を立ち上げるコストに見合う魅力度を有しているか(魅力度)」、「大手金融機関の既存事業と親和性があり、強みを発揮できる領域か(親和性)」を、有望度を測る観点として据え、各観点を構成する要素に分解することで下記の評価軸を導出しました。

  • 魅力度:ノックアウトファクター(例:法規制により当該事業が禁止)の不在、市場規模、競争優位性の3軸
  • 親和性:収益拡大の貢献度、中長期的な企業価値拡大への貢献度の2軸

魅力度の評価については文献調査及びデータ分析を用いて定量評価を行い、親和性は顧客とのディスカッションを通じて定性評価を行います。こうした評価を通じ、「預金/資産運用」、「その他の周辺機能」、「金融機関向けインフラ/プラットフォーム」が顧客にとって有望なFintechの領域と選定されました。

有望度が高いと判定された領域に関して、該当するサービスの個別スタートアップについて詳細に調査を行い、具体的なスタートアップ企業・サービスを列挙するとともに、各サービスの特徴や提供価値、想定顧客、収益構造等のビジネスモデルを明確にしています。本調査にあたり、当社のFintechスタートアップとのネットワークを活用し、個社と直接ディスカッションをする機会を設けました。これにより、当社提案のビジネスモデルに妥当性があるのか、スタートアップ各社が参加したいと思えるビジネスモデルとなっているか等、スタートアップの温度感を反映し、より実現性の高い提案につながったと考えます。

本プロジェクトでは、短期間で現実的なFintechサービスのビジネスモデルを提案することができ、A証券会社様では、引き続きFintechサービスの導入に向けた検討を継続しています。

5.おわりに

Fintechサービスを用いた新規ビジネスの企画においては、新たな方法論が必要と考える方も多いかもしれませんが、重要となるのは従来の新規ビジネス企画と同じく、自社の事業戦略を明らかにし、消費者に対してどのような価値を提供したいかという視点です。しかし、Fintechサービスはベンチャー企業が中心となって提供することもあり、サービス自体が目まぐるしく変化する市場でもあります。このため、金融機関においては、自社の事業にとって有望な領域を従来よりも素早く特定し、早期にビジネスモデル仮説立案・検証につなげることが重要となります。このため、前述のようにFintech市場に対し、独自の知見を有する企業との提携が有効になると考えます。また、金融機関の意思決定プロセスにおいては、ビジネスモデルの検証まで一気通貫で行うことが難しい場合もしばしば存在します。フェーズごとにプロジェクトを分割し、関係者を説得しながらプロトタイプにつなげることも考えられます。金融機関ごとに存在する企画プロセスに合わせて柔軟な推進体制を構築することも新規ビジネス企画においては避けて通れないものです。このため、金融機関におけるPoC実施にあたっては、これら金融機関の業務に精通するICTベンダーとの提携もまた重要な意味を持ちます。いずれにせよ、Fintechサービス導入に向けては、関係者の合意を得ながら、失敗を恐れずに粘り強く試行を続けることが重要となります。富士通総研では、今回ご紹介したような新規事業プロセスにおいて、Fintechに関する調査から得られた独自の知見やPoC実績から得られたノウハウを還元することで、金融機関における導入までをトータルでサポートすることが可能です。

最後に金融機関におけるFintechサービスの導入にあたっては、スピード感を持ちつつ、粘り強くサービス開発を継続する姿勢に加えて、より利用者(エンドユーザー)へ訴求するサービスを提供することを目指し、利用者の声を反映することも忘れてはなりません。富士通総研では、金融機関におけるFintechサービスの企画に役立てることを目的に利用者の金融サービスに対するニーズ調査を継続的に実施しています。これら調査を組み合わせることで、Fintechサービス導入に向けた協業プロセスをより効果的に推進することが可能となります。Fintechを活用したサービス開発の目的は、利用者が喜んで利用できる新たなサービスを創出することであり、富士通総研では、金融機関における新たなFintechサービスの導入に向けて今後とも効果的なコンサルティングサービスを提供していく所存です。

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湯本 洋美(ゆもと ひろみ)
株式会社富士通総研 クロスインダストリビジネス企画グループ シニアコンサルタント
2008年、富士通総研入社。入社以来、金融機関様を対象に、新規事業立ち上げや営業戦略の立案をご支援するプロジェクトを担当。近年では、海外におけるマーケティング調査や、海外の金融機関様向けの業務改革のコンサルティングを実施。