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待っていては乗り遅れるIoT活用

2017年5月16日(火曜日)

IoTの将来的な影響、取り組むことの必要性は感じるものの、現時点では多くの企業が社内検討にとどまっています。技術の進展を待っていれば恩恵を受けられるという考えもあります。では、このままIoTが普及すると、自社はどのような影響を受けるのでしょうか?今すぐ取り組むことは必要なのでしょうか?IoTが企業にもたらす影響と、現在取り組むべき対応策について考えてみましょう。

1.IoTが企業にもたらす影響

「IoTへ取り組む必要はあるが、まだ何をやって良いか具体的でない。」「IoTは将来的に大きな影響があり、自社ビジネスへの活用も期待されるが、現在は社内検討にとどまっている。」日本国内の調査レポートやアンケート調査は、概ねこのような傾向であり、インターネットで検索すると、多くのレポートがヒットします。また、経年変化では、「期待している」、「導入検討中」などの回答比率は向上傾向にあるものの、実際に導入済みの企業は微増といったところではないでしょうか。

では、すぐにIoTに取り組むべきでしょうか?または、取り組まないことで、後々悪影響があるのでしょうか?まず、IoTがある程度世の中に広がった世界を想像し、自社への影響を考えてみましょう。自社への外部環境の影響は、ファイブフォース分析に沿った、5つの要因で考えてみます。買い手(自社から見た顧客)、売り手(自社への供給企業)、現在の競合企業、新規参入者、代替品の5つです。

【図1】IoTが企業へもたらす影響
IoTが企業へもたらす影響

(1)買い手(自社から見た顧客)からの影響

IoTの導入、活用が比較的進んでいるのが製造現場です。製造設備の稼動状況を監視、分析し、生産性や品質向上へ役立てることは従来から行われていますが、最近は複数の工場間のデータを収集・蓄積し、企業グループ内で生産を最適化するようになってきています。このような企業では、自社工場のIoTデータを取引先へ無償で開示する動きも始まっています。取引先企業(自社)がデータを活用し改善へ役立てることによる、顧客にとっての調達品コスト削減や品質向上、調達リードタイム短縮を期待してのことです。このような動きが顧客企業で広がれば、自社もIoTへ対応せざるを得なくなってくるかもしれません。顧客業界によってIoTなどIT化の度合いは異なるため一概には言えませんが、自社が製品やサービスを顧客に提供した後の、顧客側から発生するデータを受け取る機会は、望むかどうかにかかわらず増えるでしょう。そうなると、顧客の期待に応えるためにも、自社のIoTやデータ活用が必要になってきます。

(2)売り手(自社への供給企業)からの影響

買い手の逆で見れば、自社へ供給する企業の製品やサービスもIoT化が進んでくることが考えられます。例えば、自社の生産や需要データを開示すれば、調達品の自動供給のサービスを提供してくれるかもしれません。オフィスにあるコピー機は多くがネットワークにつながり故障対応やサプライ品供給サービスが向上しているように、他の機器や設備も購入後のサービスが向上していくでしょう。また、供給企業が製品開発や生産にIoTデータを活用することで、品質・コスト・リードタイム・スペックなど自社が購入する条件も向上していくでしょう。一見、買い手の立場からすれば、供給企業がIoTにより高めた価値を選定、採用すれば恩恵を受けられるので、待っていれば問題ないと感じられます。しかし、供給企業のサービスを受けるために、自社製造現場のデータを人が集め、加工し提供することが必要になるかもしれません。自社内のIoT導入が進んでいない、業務プロセスが電子化されていないといったことで、他社が当たり前に活用している供給企業からのサービスを十分に利用できないことになれば、自社の競争力もいずれ競合他社より劣っていきます。

このように、自社の顧客と供給企業のIoT導入が進めば、自社も影響を受け、IoTへ対応せざるを得なくなってきます。また、企業間で相互に影響を及ぼし、EDI(Electronic Data Interchange)といった受発注プロセスの電子データ化率も向上し続け、受発注以外の企業間のやりとりも電子化やAPI(Application Programming Interface)対応など、デジタル化への要求が高まるでしょう。

(3)競合企業との競争要因への影響

競合企業からの影響を見る前に、IoTが進んだ世界での競争要因への影響を考えてみます。多くの日本の製造業は、QCD、つまり品質 (Quality)、コスト (Cost)、納期 (Delivery)の向上を強みとしてきました。もちろん、独自の製品やサービス、ブランド力も競争力の源泉にしてきていますが、QCDを重要なファクターとして追求してきているのではないでしょうか。また、流通業やサービス業でも、大手外食チェーンの「うまい、はやい、やすい」に代表されるように、QCDを追求してきています。では、このQCDに対してIoTはどのような影響を与えるのでしょうか?前述したとおり、製造現場にIoTを導入し、稼動監視やデータ分析をすることで、QCDを向上する取り組みが進められています。また、顧客や供給企業と連携し、サプライチェーン全体でQCDを向上することも、IoTを活用することでやりやすくなるでしょう。IoTが世の中で広がるほど、自社が社外のサービスやパートナーとの連携により、QCDを追求しやすくなりますが、これは他社にとっても同様です。特にコスト削減にはいつか限界がきますし、IoTが広がるにしたがって、QCDの差は縮小し、競争優位へのインパクトは相対的に低下していくことが考えられます。様々な工夫でコスト削減し、価格を下げ、消費者の支持を得てきた牛丼を代表とする外食チェーンも、最近は高付加価値路線へ脱却していることが示すとおり価格競争には限界があり、IoTはそれを加速します。IoTの影響により、様々な業界でQCDの競争優位性へのインパクトは低下すると考えられます。

(4)IoTの新規参入、代替品への影響

IoTは様々な業界、企業で新規参入や代替品の登場を容易にする場合があります。機器メーカーがIoTを活用して保守サービスビジネスへ参入、IoTにより生産性・品質を向上して他業界から農業へ参入、センサーやモバイル端末を活用した車をはじめとするシェアリングビジネスへの参入といった例があります。また、スマートウォッチなど体調を計測できるセンサーとモバイル端末の組み合わせによって、トレーニングジムの代替サービスが提供されています。インターネットの普及により、小売業の新規参入や代替サービスが増えていったのと同様に、IoTの活用で思いもよらぬ企業が自社の競合や代替品になることがあり得ます。IoTの導入機能を含むクラウドサービスや、専門家でなくても開発できるツールが普及し始めており、IoTを活用した新規のサービスへの参入は容易になってきています。

一方で、建機へIoTを搭載して新サービスを提供している例もあるように、IoTをうまく活用すれば既存顧客を囲い込み、新規参入のハードルを上げることもできます。建機メーカーのコマツ様では、施工現場をドローンで計測、3Dデータ化し、施工全体をサポート、自動化するこまで発展させおり、IoTの活用によりビジネスモデルの変革やエコシステムの形成まで進めている例と言えます。

2.IoTに取り組む、はじめの一歩

身の回りのIoT活用成功例はまだ多くはなく、必要性は感じるものの、すぐに何かを始めるほどではないかもしれません。ただ、これまで述べたような自社が受ける様々な影響を想像すると、待っていて受身で対応するのでは恩恵も限られます。では、どのようなことから始めればよいのかというと、成功パターンが参考になります。前述の例では、建機にIoTを搭載してサービス提供することから始め、収集・蓄積されたデータを分析し、故障予防や部品供給の最適化といった新たなサービスに発展させ、さらに、施工全体へのサポートへ広げています。自動販売機の例では、購入者を画像認識し、その人のその時に合った商品をお勧めし、販売機から収集・蓄積された購買データと他のマーケティングデータと組み合わせて分析し、新商品開発へつなげるといった発展をたどっています。また、製造現場のスマートウォッチ活用では、現場の異常共有や指示などの生産性向上から始め、蓄積データと他データを組み合わせた分析を生産最適化や原価低減へ活用し、さらに他工場との連携を含む全体最適への発展という取り組みを進めています。

【図2】IoT活用の成功パターン例
IoT活用の成功パターン例

このように多くの成功例では、まず、既存の製品や業務プロセスで必要性の高いところからIoTを適用し、収集・蓄積されたデータを分析して活用し、さらに新たな価値の創出へと発展させています。IoTは新たなビジネスモデルの創出や、複数のパートナー企業とエコシステムを築く機会を生み出しますが、最初から大きな投資や多くの関係パートナーとの調整が必要な局面から始めてもうまくいかないことが多いとも言えます。現在、IoTへ取り組む必要性は感じているものの、何から手をつけるべきか悩んでいる場合には、STEP1に示す既存製品や業務へのIoT適用から取り組んではいかがでしょうか。はじめの一歩は以下のとおりです。

(1)自社を取り巻く外部環境(企業)の自社への影響の想像
(2)影響が高く、身近な課題へのIoTの適用と試行錯誤
(3)IoTの普及期に備え、自社内の業務プロセスのデジタル化(IT化)向上と、データ活用のための準備

IoTのビジネスへの活用は、想定どおりにいかないことも多く、試行錯誤やユーザーニーズの検証といった、デザイン思考・アジャイル開発などの考え方が役に立ちます。また、IoTで収集・蓄積したデータを有効活用するには、既存の社内データをうまく使えるように整備しておくことも必要です。

これからはIoTの普及を待っているだけでは、十分な恩恵が受けられないばかりか、今は競合と意識していない企業に負けてしまう時代になります。近い未来を想像し、大きな絵とそこへ至るストーリーを描いたうえで、小さなことからでもIoT活用を始めてみましょう。

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池田 義幸(いけだ よしゆき)池田 義幸(いけだ よしゆき)
株式会社富士通総研 デジタルマーケティンググループ グループリーダー
富士通株式会社、株式会社富士通総研にて、製造業を中心に、経営管理、業務改革、新規事業開発などのコンサルティングに従事。IoTなど新たなデータと企業内トランザクションデータの融合、情報利活用を目指すソリューションを富士通と企画・開発し、市場へ展開中。