GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. オピニオン>
  4. 自治体における資金調達手段:
    ふるさと納税から派生した行政のクラウドファンディング

自治体における資金調達手段:
ふるさと納税から派生した行政のクラウドファンディング

2017年4月13日(木曜日)

1. 問題視される「ふるさと納税」

最近、ふるさと納税に対する批判が高まっている。根本的な問題として、行政サービスを受ける住民が税負担すべきという「受益者負担の原則」からの逸脱を指摘する声があるが、今一番批判を浴びているのが、返礼品競争の過熱化である。地方の自治体は豪華な返礼品を用意してふるさと納税を促し、その一方で、主に都市部からは税収が流出するという事態となっている。総務省によると、2015年度の寄附総額1,653億円のうち、4割超の約675億円が返礼品調達などに使われているとし、多いところでは、7割を超える自治体もあると言う。

2017年2月、葉上(2017)が発表した全国1,741市区町村「損得勘定」によると、2015年度のふるさと納税の収支(寄附受入額と税収流出額の差)で赤字となっている自治体は525を数える。1位の横浜市(約28億円)、2位の名古屋市(約17億円)、3位の東京都世田谷区(約16億円)と大半が大都市であるが、22の過疎市町村(北海道函館市・約3,000万円など)も含まれる。黒字の自治体は、1位の宮崎県都城市(約42億円)、2位の静岡県焼津市(約37億円)、3位の山形県天童市(約32億円)であり、赤字と黒字の自治体間「税収格差」は、年間最大70億円にも及ぶ。ただし、1位の都城市は寄附金額の7割程度が返礼品にかかっているということで、実際の黒字額は10億円程度ということになる。

そもそも、ふるさと納税(2008年の税制改正により導入)は寄附税制の一種であり、返礼品とセットではない「経済的利益の無償の供与」である。一般的に自治体に寄附をした場合には、確定申告を行うことで、その寄附金額の一部が所得税・住民税から控除される。ふるさと納税では、自己負担額2,000円を除いた全額が、所得税・住民税から控除対象(ただし、総所得金額の40%が上限)となる。通常の寄附金控除に加えて特例控除が適用される制度であり、寄附者に実質的にはキャッシュバックされる。つまり、納税額が多い高額所得者ほど恩恵を受けられる仕組みである。寄附金が「経済的利益の無償の供与」であることを踏まえ、返礼品の送付が対価の提供との誤解を招かないようにとの総務省通知(2015年4月1日)が出ており、返礼品を用意していない自治体もわずかながらあるが、多くの自治体は返礼品を用意している。そのため、返礼品競争の結果、現在は自己負担額2,000円を支払えば、後に所得税・住民税で引かれるはずだった金額で豪華な返礼品を入手できることになる。

行政会計上もふるさと納税による寄附金と返礼品分の費用は別枠として扱われている。ふるさと納税による寄附金は歳入として扱われ、別途予算を立てて、返礼品分を歳出している。そのため、想定を上回る「返礼品とセット」のふるさと納税があった場合、補正予算を立てて、超過しそうな返礼品分を大幅に増額するケースもある。返礼品そのものの調達コストに加え、返礼品を扱う民間インターネットサイトへの支払いや発送経費・コスト等も準備しなければならない。

ふるさと納税による寄附金は、地域活性化に役立てることが本分であるが、このような行き過ぎた返礼品競争に歯止めをかけるため、総務省は各都道府県に対し、返礼品は寄附額の3割以下に抑えるよう、2017年4月1日付けで通知を出した。総務省が返礼割合の上限を示すのは初めてのことで、強制力はないが、各都道府県から域内市町村への対応の徹底を求める内容となっている。また、2015年、2016年の総務省通知に重ねて、貴金属など高額、あるいは商品券など換金性が高い返礼品の廃止なども求めている。このことにより、ふるさと納税の取り組みは、減速する可能性もある。

2. 新たな自治体の資金調達手段:クラウドファンディング

自治体が寄附などを募る方法として、行政のクラウドファンディングという手段もある。1つのコンテンツとしてふるさと納税があり、寄附額が飛躍的に伸びた背景には、豪華な返礼品のみならず、クラウドファンディングの活用もある。

クラウドファンディングとは、個人や企業、その他の機関が、インターネットを介して、寄附、購入、投資などの形態で、個人から少額の資金を調達する仕組みである。資金提供者が資金提供の見返りにどのような返礼(リワード)が受けられるかによって複数のタイプがある。行政のクラウドファンディングが一般のクラウドファンディングと異なるのは、自治体や地域金融機関などとの連携・調和を重視している点である。つまり、事業主の信頼性がある程度担保されていると言える。また、より地域に密着した事業に限定した投資ができることも特徴である。

行政のクラウドファンディングは、2011年の地方自治法施行令の改正により、第三者が寄附金などを自治体に代わって募ることが可能になったことによる。東日本大震災からの復旧・復興事業においては、民間の取り組みではあったが、クラウドファンディングの活用により地域活性化につながる成果が示された。このことから、被災地以外にも、地域活性化を目的とし、行政が主体となるクラウドファンディングの促進が政府主導で始まったのである。

2013年、鎌倉市が自治体初のクラウドファンディングに挑戦した。多くの来訪者が迷わず観光できるよう、観光ルート板の新設費用100万円の資金調達にクラウドファンディングを活用したのである。『「かまくら想い」プロジェクト始動!(限定100名!あなたの名前が鎌倉のワンシーンになる)』と銘打ち、100万円を1口1万円に分割し、100人の寄附者を22日間で集めたと言う。出資者への返礼は、出資者の名前を銘板に刻み、ルート板に取り付けるというものであった。中川内(2016)によると、自治体のクラウドファンディングの活用(2016年度以降の予定・方針を含む)は、都道府県で34(72.3%)、市区で133(16.4%)に達している。

クラウドファンディングの活用によって、近年促進が期待されるのが「ふるさと投資」である。ふるさと投資とは、地域資源の活用やブランド化など、地方創生などの地域活性化に資する取り組みを支える様々な事業に対し、クラウドファンディングなどの手法を用いた小口投資である。普及・促進のため、2014年10月31日に、政府主導で「ふるさと投資」連絡会議が設立されている。

ふるさと投資は、必ずしも自治体主体というわけではないが、地方自治体や地域と連携した活動が核となる。また、地域金融機関が主体となって実施している場合も多い。ふるさと投資は、ふるさと納税の投資版と呼ばれることもあるが、それぞれメリット・デメリットがあるので、寄附、投資をする際には留意が必要である。自治体から見たメリット・デメリットと併せて、【表1】に整理した。

【表1】「ふるさと納税」と「ふるさと投資」のメリット・デメリット

  寄附・投資者目線 自治体目線
ふるさと納税
【メリット】
  • 好きな自治体に寄附できる。
  • 使途を限定できる場合が多い。
  • 豪華な返礼品が貰えることが多い。
  • 寄附のため負うリスクは少ない。
【デメリット】
  • 税控除手続きのために、一定の手間がかかる。
  • 自己負担額(最低2,000円)がある。
  • 最適寄附額の計算方法が複雑かつ所得確定前であるため、想定を誤ると自己負担額が増える。
  • 支払方法によっては、手続きが面倒な場合あり。
  • 期待していない事業への寄附となる可能性あり。
【メリット】
  • 広範囲に財政収入の確保ができる。
  • 返礼品(地元の特産品)などにより自治体PRにつながる。
  • PRにより観光誘客などが期待できる。
  • 自治体の新規事業に着手できる可能性が拡がる。
【デメリット】
  • 住民が他自治体に寄附してしまうリスクがある。
  • 返礼品競争激化のため、予算確保が難しい。
  • 事務手続きのため、一定の手間がかかる。
ふるさと投資
【メリット】
  • ふるさと納税より具体的なプロジェクトに投資できる。
  • 出資額以上の利益が得られる可能性がある。
【デメリット】
  • 税控除がない。
  • 出資額以上の利益には源泉所得税がかかる。
  • 元本保証型投資ではないので、事業計画進捗や事業結果によっては元本割れのリスクあり。
  • 詐欺・反社会勢力の活動に利用されるリスクあり。
【メリット】
  • 具体的なプロジェクトのための資金調達ができる。
  • 地域金融機関等民間の力も活用しながら、官民協働でプロジェクト創生を図ることができる。
  • ふるさと納税のような他の自治体への寄附リスクはなく、納税額は確保できる。
【デメリット】
  • 自治体としてどこまで関わるのかという検討が必要。
  • 期待した活動や結果が出ない場合もある。
  • 積極的に自治体が関わる場合、プロジェクト選定や優良性の判断が難しい。
  • 資金調達できない場合、プロジェクトが頓挫する可能性がある。

3. 行政のクラウドファンディングの特徴とプラットフォーム

一般のクラウドファンディング同様、行政のクラウドファンディングも仲介事業者(プラットフォーム)を活用した資金調達が基本となる。仲介事業者は、システム利用料や資金調達額に応じた成功報酬を受け取るのが通例である。

クラウドファンディングの返礼種別は、大きく3つの形態がある。寄附型、購入型、投資型(ファンド形態)である。それぞれの特徴については、【表2】にまとめた。基本的には、行政のクラウドファンディングは資金調達者が行政、あるいは行政と連携した取り組みを実施する事業者や団体、個人などであること以外、一般のクラウドファンディングとほぼ同様である。

【表2】クラウドファンディングの返礼種別から見た特徴

返礼
種別
特徴 返礼内容 プロジェクト
規模
寄附型
  • 寄附のため、資金提供者が負うリスクは少ない。
  • 資金提供者は、活用内容そのものへの共感が多く、返礼目的でない場合が多い。
  • 寄附対象が自治体の場合、税控除あり(ふるさと納税)。
  • 資金調達者は、NPOなど非営利団体(被災地支援など)が多いため、活用内容を記したニュースレターやお礼メールが一般的。
  • その他、寄附者の記名(銘板クレジット)など物品でないケースが多い。
  • ふるさと納税となっている場合は、返礼があるケースが多い。
数十万から数百万円程度
購入型
  • 多くの仲介事業者が、募集期間内に予め設定された目標額に届かない場合、資金提供者に返金される「All or Nothing方式」を採用。
  • 資金提供者は、プロジェクトの失敗により、期待した返礼が届かないというリスクあり。
  • 資金は商品開発や事業の立ち上げ、各種イベント実行など活用用途は、極めて多様である。
  • そのため、寄附型と同様のモノ・サービスから、プロジェクトの成果に関連するもの(成果品やプロジェクトのプロセスへの参画など)、プロジェクトとは直接関連しないもの(地元特産品、非公開イベントへの招待、限定版・非売品の提供など)まで幅広い。
数十万から数百万円程度
投資型
(ファンド形態)
  • 投資額が比較的大きく、事業の運転資金や設備購入などの資金に活用されることが多い。
  • 事業計画進捗や事業結果によっては元本割れのリスクがある。
  • 金融商品取引法(金商法)の適用を受けるが、少額(募集総額1億円未満、1人当たり投資額50万円以下)の投資型クラウドファンディングは、利用促進のため、2014年5月に金商法が改正され、参入要件の緩和等や投資者保護のためのルール整備といった規制緩和が図られている。
  • 投資額や資金調達者の収益に応じた見返りを受け取れるが、受け取れないリスクもある。
  • ふるさと投資は、事業者の自社製品や地元産品、現地への招待などの特典が付いているケースがほとんどで、これら特典を楽しみにする投資家も多い。
数百万~数千万円程度

次に、行政や地域活性化の取り組みに実績があるクラウドファンディングの主なプラットフォームを3つ挙げる。

(1)ジャパンギビング(JapanGiving)[http://japangiving.jp/](寄附型/ふるさと納税など)

ジャパンギビングは、英JustGivingが運営する世界最大級の寄附プラットフォームの日本版として、2010年に運営を開始した。寄附型で国内最大のプラットフォームと言われており、現在は独立し、株式会社JGマーケティングが運営している。NPO等非営利団体の資金調達支援を基本としており、ふるさと納税による自治体の寄附集めも支援している。また、全国の地域おこし協力隊(総務省が実施する取り組み。地方自治体の委嘱を受け、過疎地域等に住民票を移して地域で生活し、各種の地域協力活動に従事する人々)が提案する様々な活動を応援するプラットフォームもある。

(2)ファーボ(FAAVO)[https://faavo.jp/](主に購入型/ふるさと納税もあり)

ファーボは、株式会社サーチフィールドが設立した購入型がメインのプラットフォームである。地域活性化に特化し、地域ごとにオーナー(運営者)がおり、サーチフィールドと委託契約により運営している。例えば、「FAAVO奈良」の場合は、奈良信用金庫が地域オーナーである。2015年7月、全国の信用金庫で初のクラウドファンディングによる資金調達、かつ「FAAVO奈良」として第1号案件として、障害者の就労自立を支援している社会福祉法人ぷろぼの(奈良市)を選定し、クラウドファンディングによる資金調達に成功している。なお、ふるさと納税も募っている。

奈良信用金庫に筆者がヒアリングしたところ、地域の魅力発信あるいは地域活性化につながる奈良県内の取り組みであれば、応募可能とのことである。実績としては、PR目的のプロジェクトが多く、100万円未満の小さなプロジェクトが主で、単発のイベント等の取り組みが基本ということであった。返礼は物品などである必要性はなく、ネーミングライツやお礼状・写真などでもよいということである。また、担当者が資金調達者とともに企画を検討することも可能であるとのことだ。

(3)セキュリテ[https://www.securite.jp/](投資型/ふるさと投資など)

セキュリテは、2000年に国内初のクラウドファンディングを開始したと言われる、ミュージックセキュリティーズ株式会社が運営する投資型(少額投資)のプラットフォームである。同社は元々アーティスト発掘のために資金を募るファンドを運用していたが、東日本大震災後の支援(岩手県陸前高田市・株式会社八木澤商店など)で成果をあげたことをきっかけに、地域活性化に資する事業への支援を拡大した。震災以降、セキュリテ被災地応援ファンドを立ち上げ、現在では多くの自治体や地域企業等がセキュリテ内でふるさと投資などを募っている。

4. 地方自治体における資金調達の今後

地方自治体と資金提供者双方にとって、クラウドファンディングは新たな資金調達手段として有効である。少子高齢化などにより地方財政が厳しい地方自治体や衰退している地方企業にとっては、広範囲に資金調達できることは好都合である。そのうえ、すでにプラットフォームが多く存在し、企画を一緒に検討してくれる場合もあるなど、準備の必要性が低いため、取り組みやすいと言えよう。また、資金提供者にとっても、自らが決定できる権利を持って、インターネットにより容易に資金提供(寄附・投資など)できることは好ましい。

一方で、ふるさと納税の返礼金競争への批判など、資金調達方法については、まだ検討が必要だと考える。ふるさと納税は自治体への寄附と限られているが、ふるさと投資は自治体に限らず、広い意味での地方応援への資金提供となる。資金提供者にとって、元本割れや詐欺・反社会勢力活動への利用などのリスクはあるが、地域住民あるいは事業に興味を持つ他の地方の人々など多様な主体が、地方のプロジェクトを応援していくふるさと投資は、ふるさと納税より具体的かつ効果的だと思われる。

ふるさと投資の認知度はまだ低く、新しい仕組みであるために、実務上の問題点や地域活性化にどのように役立っているかといった成果指標やその評価方法など課題があるが、風で織るタオルファンド(愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC 株式会社)など有名な事例もあり、活用は増えてきている。また、2016年度税制改正により、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)が創設され、活用が始まっている。クラウドファンディングの活用などと相まって、今後、幅広く地域に経済的な支援を促す仕組みに期待したい。

参考文献

  • 総務省(2017)「ふるさと納税にかかる返礼品の送付等について」(平成29年4月1日)
  • 葉上太郎ほか(2017)「特集-ふるさと納税の本末転倒」中央公論3月号,pp29-89
  • 保田隆明/保井俊之著、事業構想大学院大学ふるさと納税・地方創生研究会編(2017)「ふるさと納税と地域経営」事業構想大学院大学出版部
  • 髙松俊和著、事業構想大学院大学ふるさと納税・地方創生研究会編(2016)「ふるさと納税と地域経営」事業構想大学院大学出版部
  • 中川内克行(2016)「自治体のクラウドファンディング」日経グローカル,pp10-25
  • 山辺紘太郎(2016)「投資型クラウドファンディングの実務上の問題点を検討する」金融財政事情,pp36-39
  • 「ふるさと投資」連絡会議(2015)「ふるさと投資の手引き」内閣府
  • 板越ジョージ(2015)「日本人のためのクラウドファンディング入門」フォレスト出版
  • 板越ジョージ(2014)「クラウドファンディングで夢をかなえる本」ダイヤモンド社

関連サービス

【調査・研究】

渡邉 優子(わたなべ ゆうこ)
株式会社富士通総研 経済研究所 上級研究員
自治体や中央省庁における計画策定支援および行政経営改革や地域経済活性化に関わる調査・研究に従事。

研究員紹介ページ