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「事務の標準化」と「事務設計」

2017年3月16日(木曜日)

これまで本オピニオンにおいて、りそな銀行様の営業店改革の取り組みや事務量の導入等について発信してきた。事務領域を中心に、そのあり方を経営課題として捉えてきたが、ここで改めて事務そのものについて、もう少し掘り下げて考えたいと思う。

1. 「事務」、「事務の標準化」の意味するもの

事務はお客様に提供する商品・サービスの提供方法(機能プロセスの連続)であると私は考えている。それが標準化されているということは、商品・サービス提供の品質安定・維持、ミスの防止の上で非常に重要である。標準を決めるにあたっては、処理を確実に行うことと、できるだけ手間をかけずにコストを抑えることとのバランスが重要である。分かりやすい例として銀行の窓口処理を考えれば、プロセスの連続の結果そのものが提供サービスとなるので、ここで、事務の堅確化と手間の抑制によるコスト削減のバランスは、経営上の大きな課題とも言える。

金融機関に向けた営業店改革、事務改革、コスト削減施策検討などのテーマでのコンサルティングにおいて、実態把握として複数の臨店調査を行う際の事前打ち合わせで、「どの店でも同様に事務はされていますか?」との問いに対して、通常は「各店舗でいろいろなやり方をしてしまっていて事務の標準化ができていません」という発言が聞かれる。この場合の「標準化ができていない」というのは、つまり、「標準事務として定めたものはあるが、拠点によってまちまちの処理(の流れ)で事務を行っており、同様に行われていない」という意味で使われているように思う。この場合は、なぜ標準どおりに行わないのかを見極め、標準を徹底して実施させるか、そもそも定められた「標準」が適切でないのであれば、「標準」を改める必要がある。

しかし、コンサルタントの立場でもう少し踏み込んで考えると、本部で定めている「標準」と言っている事務そのものが「標準化」されていないことが気になる。この場合の「標準化」とは、例えば、同種の業務には同様の事務が設定されているか、同じリスクを含むものであれば同じ対応方法が設定されているか、といった意味での標準化である。

2. 事務標準化の意義と事務設計に関する意識

2.1. 事務標準化の意義と実態

銀行の事務であれば、標準化されていて当然と思われるかもしれないが、実際に標準化されているのは、営業店端末を用いて繰り返し行われるような定型的な業務が中心であり、それ以外の業務については、現場の判断に任せることがお客様に柔軟に対応できて良いとし、標準化されていないものも多い。銀行のお客様も、融通が利く対応をしてもらった方がありがたいということである。しかし、こうした個別対応は事務を煩雑にし、また、ミスも誘発しているのが実態である。例えば、台帳などで個別対応の管理などを行うが、台帳に記載してある内容を見逃して標準対応を行ってしまい、クレームにつながるミスの原因となるといったことである。

2.2. 事務設計の実態

また、銀行のように多くの事務によってサービスが提供されている業界であっても、事務設計がきちんと行われているところは少ないように思う。「多くの事務」が「多くの部署」で決められていることにその一因があるとは思うが、そもそも、事務ガイドラインを設け、それに沿って新たな商品サービスを提供するための事務を決めるという発想がないように思う。多くは、現行の事務を基に考え決定していくので、商品・サービスとその関連部門が増えると、各部門で事務を決定することになり、どの事務を基に検討したかは適切に把握されず、また、不安を排除するように「念のため」の確認など手続きが慎重になり、次々と事務の多様性が増しているように思われる。

事務の設計という意味においては、本来は「同じ意味を持つものについては同様に作られている」という意味での標準化が求められるが、そのようになっていないように思う。例えばリスクが同じであるのに、ある業務では2回のチェックが行われ、ある業務では3回のチェックが行われているというような状況である。これは、本来、何回が適切かを検討し、同程度のリスクには同程度の確認方法で対応するという決めが必要である。

仮に標準が適切に設定されていても、臨店の際に見られるこうしたバラツキがある。実際には事務で何かのミスをしてしまい、今後の対応を本部から求められる際に、「今後は、さらに別担当者による確認を実施し、こうしたミスを起こさないようにする」といった対応策とともに報告することになり、店舗ごとのバラツキが生じる結果となる。ある意味、本部も認めた状況でこうしたバラツキが発生していることになる。

本来、事務は常に一定の規則に従って行われるため、その事務の意味を理解している担い手は混乱することなく事務を行うことができ、安定した提供ができるはずである。しかし、こうした「改善施策」が行われた結果、実施する側の混乱や迷いが生じ、不必要に慎重になって「念のため」の事務が行われ、事務は不安定になる。また、効果のほどの検証はされないまま、「確認」のプロセスが増え、事務量が増えてコストが増すことになる。

3. 事務設計について

それでは、具体的には、どのように事務設計を行い、現場において維持していけばよいのであろうか?

【図1】 事務標準化の考え方
【図1】 事務標準化の考え方

3.1. プロセスの設計

まず、先にも述べたとおり、事務は「お客様にサービスを提供するにあたっての機能としてのプロセスの連続」と捉えることができる。例えば、「受付」「内容確認」「本人確認」「オペレーション」・・・等である。

プロセス設計においては、【図1】に示すとおり、事務を「提供方法」と「手順」から構成されるものと捉え、それぞれの中身を定義することによって標準化を行う。「提供方法」とは、商品・サービスの提供のために必要な機能(プロセス)群であり、「手順」とは機能を果たすための具体的な手続(工程)群と考える。 まず最初に、プロセスの種類とその順番を確定することから始める。作業の進め方としては、やはり現行の事務を基本に考えることが分かりやすいと思う。基本となる流れを決めたら、あとは、それに対してプロセスを追加したり削除したりを行う。業務体系で分岐していく業務であれば、分岐の条件によって必要に応じてプロセスを追加・削除することになる。このプロセスの種類や順番は、特に理由がない限り同種の業務であれば同じでなくてはならない。

先のオピニオン記事「事務量」(シリーズ) で説明したが、ここでも、業務体系の作成から始める。業務体系で洗い出した各業務について、今、どのようなプロセスが生じているかを明確にする。プロセスの順番の妥当性も検討し適正なものにする。実際には、ある2つのプロセスでどちらが後先になっても問題ないものもあると思うが、その場合も、ひとたび順番を決めたら、以降は必ずその順番で行うようにする。それが、いつでも、どこでも、誰でもが、迷いなく事務を行うために重要なこととなる。

業務体系で各プロセスの確認をする意味はもう1つある。同様の商品・サービスを提供する事務であるにもかかわらず、異なる事務(プロセスの有無・順番)をしていないかの確認を行うことができる。プロセスの明確化の段階ですでにバラツキがあるようであれば、これを機に改めることができる。

3.2. 手順の設計

こうして、事務に対応してプロセスの流れをパターン化した次は、各プロセスの中身についての検討である。各プロセスはさらに手順として詳細化することができる。詳細化の結果を仮に工程と名付けると、例えば、「本人確認」というプロセスの中には、「書類徴求」、「受領書類確認」、「書類内容確認」、「確認実施記録作成」・・・といった工程が含まれる。

同じ「本人確認」というプロセスにおいても、その中身である工程の構成も内容も、必ずしも一律ではない。手順を構成する工程の種類が異なることもあれば、工程は同じでも対象物が異なるようなケースもある。その場合は、さらに「本人確認」をいくつかの型に定義することになる。例えば、ある業務の「本人確認」の「書類徴求」では1種類の書類で良いが、ある業務では2種類の提出を求めることもある。この2種を仮に「書類徴求1」、「書類徴求2」としておき、どの場合には「書類徴求1」、「書類徴求2」にするかを定義する。そして、「書類徴求1」を含む本人確認は「本人確認1」、「書類徴求2」を含む。本人確認は「本人確認2」とし、同様にいくつかの型を定義する。

こうした事務のあり方に影響を与える要因としては、法令やリスク、システムでの対応範囲、販売対象者、事務の担い手、事務の難易度、ミスの発生頻度など外部要因と、これまでの経験による内部要因とが挙げられる。要因が同じであるにもかかわらず、工程やその中身が異なる場合は、プロセスの場合と同様に適正なものを定め、統一することによる標準化が求められる。

3.3. 事務の決定

以上のように、プロセスを定義し、プロセスを構成する工程を定義すれば、すべての事務はプロセスの型とそれを構成する手順の型を選べば自動的に決まることになる。

新たな商品やサービスの提供では、その提供が業務体系のどこに位置づけられ、どの業務グループに入るか、これまでの事務と同様に処理をすれば良いのか、事務に影響を与える新たな要因があり、新規のプロセス、または工程を追加するのか、という検討を行い決定することになる。

こうして事務設計を行い、新たな業務が発生する際の事務を決定する際のガイドラインを設けておけば、複数の部門において事務開発をしても、標準から外れることはない。しかし、実際には、新規の事務を決定する際には、専門部門など統括する部門を決め、その承認を受けるなど運営上のルールを決めることが標準化を維持するためには望ましい。

【図2】 標準事務の設計手順とガイドライン作成手順(イメージ)
【図2】 標準事務の設計手順とガイドライン作成手順(イメージ)

4. 事務設計のメリット

4.1. マニュアルに関連して

適正な事務設計の利点は、事務の安定だけでなく、マニュアル整備の負荷を削減できることも挙げられる。一般的にマニュアルは業務ごとに手順が記載されていることが多い。しかし、業務ごとに記載する場合も、プロセス、手順の型を明記し、それぞれのプロセス、手順の説明は別途記載する。【図2】で示すとおり、プロセスの型とは、例えば#100、#200で示すようなプロセスの有無や順番を型として定義したものである。また、手順の型とは、例えば内容確認というプロセスを構成する21、22、23のような工程の有無と順番である。こうしてプロセスと手順の型をそれぞれ定義しておけば、法令の変更やミスへの対応などで事務を改める際も、対応するプロセスか手順の記載を改めれば、それぞれの業務の記載として各業務を修正する必要はなくなる。つまり、これまで業務ごとに記載していたため、修正漏れや、修正結果が現場に浸透しにくいということが起きていたが、この方法で行えば、修正箇所は少なくて済み、また、事務の構成を理解していれば、変更の意義も理解しやすく、現場での浸透も早くなると考えられる。

4.2. 「事務量」の整備

事務量の工程表を作成する際、現行の事務を基にパターン化して効率的に作成することができるわけだが、それがすなわち標準化につながることになる。逆から考えると、プロセスと手順の標準化が行えれば、それに当てはまる時間を設定し、すべての業務の標準化が行えることになり(実際には、手順の細かい組み合わせになるので、それほど簡単ではないが)、その手順に時間を設定すると、「事務量」を簡易に設定することができる。簡易というのは、こうして決めた標準的な事務の適用範囲が全体に対してどの程度なのかということにもよるが、現状の事務量の仕組み、あるいは標準時間の設定のメンテナンスが追い付かないなどの理由で、現行の事務量の信頼性に疑問が生じている場合は、まず、こうしたアプローチで全体量の概算を行い、現行との差異を確認し調整するという方法があることを紹介したい。

最後になるが、事務の効率化・堅確化の実現には安易な道はなく、こうした基礎的な取り組みが行われて初めて、成果が上がる施策の検討と効果の予測を行うことができると考えている。

【シリーズ】経営実態・目標達成度を映し出す「事務量」

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平岩淳子

平岩 淳子(ひらいわ あつこ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタント
1984年 富士通株式会社入社、97年 株式会社富士通総研へ出向。
金融機関向け事務量・営業店構想策定・営業店改革・事務集中センター効率化・事務処理方式開発などに従事。