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  4. アイデアを育て事業を起こす―IoT時代の新規事業の要件(2)―

アイデアを育て事業を起こす
―IoT時代の新規事業の要件(2)―
デジタルビジネスの現実的な組織体制と収益構造のあり方を目指して

2017年10月25日(水曜日)

「アイデアを育て事業を起こす―IoT時代の新規事業の要件」連載の2回目は「デジタルビジネスの体制、運用後の組織体制と収益構造のあり方」をテーマに、企業の実態を述べる。

1.デジタルビジネスに奔走する大企業と実態

IoTやAIなどの先進ICT技術の活用により新たな収益を生み出すビジネスモデルを「デジタルビジネス」と本稿では呼ぶことにする。技術進展と消費者の価値観の変化により、このデジタルビジネスの取り組みが加速している。消費者にとっても飽和したモノより従来なかった新しい体験を重視するように価値観が変化しており、サービスとしての使用価値が求められる時代となっている。この変化にどう対応すべきか、企業の経営や現場で度々答えを求められる。

経営のニーズでは、現在から数年先のデータを活用した未来型ビジネスを共に検討してほしいというものが多い。我々のもとにも従来の製造業だけでなく流通業や様々な業種業態の企業・自治体などから要望が寄せられ、日々対応策の実践を重ねている。

直近で支援要請があった新規デジタルビジネス企画案件

  • 音楽AI技術を活用したサービスビジネスの企画
  • 楽器メーカーによる次世代音楽サービス企画
  • ファーストフードの2020年次世代店舗企画
  • 若者向け百貨店での2020年未来売場企画
  • 次世代鉄道ステーション(駅)サービス企画
  • 学生を中心とした地方創生イベント企画
  • インバウンドサービス企画(流通・自治体など)
  • 携帯電話製造企業の次世代見守りサービス企画
  • 部品メーカーのイノベーションサービス企画
  • BtoBtoC次世代スポーツビジネス企画など

デジタルビジネスは未来型のテーマが多く、未知への挑戦という意味で当事者には非常にやりがいがある。

しかし、ビジネスのアイデアは浮かぶが、それ以降の推進が続かないというケースが散見される。大企業における実際の新規事業企画の現場では、ビジネス面での企画推進に対して、組織として確立された方法論がないまま推進しているケースが多い。それは、製造業では長らくプロダクトアウト型の手法で事業を形成してきたことや、既存セグメントのマーケティング機能しか持たないことが原因であると考える。新規ビジネスを最初から構築した経験が無いため、PoC(Proof of Concept)構築後のビジネスモデルの検討や経営および他事業者を巻き込む術が考慮されていないことが多いのである。

昨今、デジタルビジネス案件において、我々コンサルタントには、暫定的に創られたアイデアを育てて事業を創出してほしいという要請が多く寄せられている。

ここで重要なポイントは、ビジネスの出口から見た逆算アプローチで持続可能なデジタルビジネスを創る視座を持ち、その方法論を実践することである。

2.既存組織・既存の顧客/ユーザーとの関係性からの脱却

大企業において、新設されたチームが、新しい技術・サービスを企画する際、社内からは拒否反応が起こりやすい。特に歴史の長い企業では、その傾向が顕著だ。価値を最大化するためには、ユーザーから取得した情報は収益、運用の責任を担う事業部にとどまらず、販売、マーケティング、研究開発、保守管理など、社内外でもあらゆる分野において活用する必要がある。1つの部門が創出した製品・サービスでも、全社的なインパクトを持つ可能性が出てくる。そのため、企画だけを行っていた従来型のコスト部門がサービス企画を担い、事業部門に引き継がれる体制は、現場から納得されにくい。

さらに、デジタルビジネスはこれまで特にサプライヤー側にいた企業にとって、「ユーザー」への提供価値、「顧客」との関係性をそれぞれ大きく変えることになる。「ユーザー」の実際の使い方を想定しないと、的確な商品提供ができないためである。【図1】に示すとおり、特に部品メーカーなど、完成品を作っていない製造業に関しては、作って納めるといったモデルでは通用しなくなってくるが、実態として【図1】の「(1)開発/製造」という既存領域にとどまってしまっているケースが多い。今後は、サプライヤー側からユーザーを想定したサービス提案を行うことが求められる。

【図1】部品メーカーA社で提示したビジネスモデル変革のパターン
【図1】部品メーカーA社で提示したビジネスモデル変革のパターン

製造業は従来のようにサプライチェーンの上流に居続けるだけでは、企業としての立ち位置がますます厳しくなる。ユーザーへの距離が遠く、提供価値が従来のままでは、ユーザーから見た企業のアイデンティティも埋没してしまう。しかし、組織の旧態派は、顧客や顧客のさらに先の顧客との関係性の変化、ユーザーとの距離感の変化などに対しても、責任を持つ事業主体へのリスクを考える傾向が強い。過去の成功体験を持った組織がこれらのビジネスモデルの変革に対して過敏に反応し、この変化の受容に躊躇する傾向にある。

3.実際面の複数社の業務運用と収益構造のあり方

デジタルビジネス時代におけるステークホルダーとの関係性は主従の関係ではなく、フラットかつネットワーク型となる。その中で「共創」というアプローチが主流となりつつある。「共創」とは、企画の初期から、業種の異なる企業同士など、立場が異なる者も交えて共にアイデアを出し合い、共働で新しい事業開発を行うアプローチである。確かに、2社以上でアイデアを出し合うと、実現可能なことが増える、今までになかった視点が生まれる、という点でメリットが大きい。しかし問題は、複数の会社で考えたアイデアをどのように運用するか、収入をどのように分配するか、という部分である。共創は「分配型」である。「イノベーション」、「プラットフォーム」を名乗って共創に取り組んでいる多くの企業の実態を聞くと、「共創」と謳いながらも、企業1社1社ができることを寄せ集めているだけで、循環型のエコシステムが確立していないケースが多い。

また、そのような条件下でも、従来のモノ売りの顧客と業者のパワーバランスの関係性から脱却できず、自社にとって旨味のない収益モデルに陥ることもよくある。収益構造、運用方法・フローまでを戦略的に描ききらないと、サービスの継続運用は困難となる。

4.共創デジタルビジネスにおける業務設計と収益分担

検討した新サービスの意思決定を推進するためには、ビジネス、技術の確からしさに加え、業務面での実現性を検討していく。サービスを実現する業務機能の分担を正確に捉えることは非常に重要だ。現場の隅々まで役割が見えていないと、事業としての成立性は見えないためである。

【図2】パートナーを含めた事業・業務の設計と実装に向けた検討イメージ
【図2】パートナーを含めた事業・業務の設計と実装に向けた検討イメージ

具体的な検討事項は、上記【図2】に示すとおり、以下3点である。

(1)必要な業務機能の洗い出し

(2)業務機能の役割分担

(3)既存部門で補えない業務機能の実現手段検討

具体的に説明していきたい。

(1)必要な業務機能の洗い出し

今回のサービスを開発するために求められる機能だけでなく、継続的に運用していく際に必要な機能を洗い出すことがポイントだ。そのためには、検討したサービスを実行するための運用フローを定義し、提供から運用までのフローがつながり、流れるようにした段階での機能を確認していく。

(2)業務機能の役割分担

(1)で洗い出した業務機能に対して実行する部門を決定する。2社以上での共創の場合は、まずどちらの会社がどの機能を担うかを分担する。その後にそれぞれの会社内で対象となる機能に実行可能な部門を当てはめていく。

(3)既存部門で補えない業務機能の実現手段検討

(2)で部門を割り振った結果、対象部門が存在しない機能に関しては、新組織の生成、もしくはパートナー企業への協力依頼を行う必要がある。新組織で対応できそうな場合は社内でどのような人を集めるか、パートナー企業へ協力依頼する場合はどのような企業にするかを決定する。

特に大切なのは(3)である。既存部門以外の組織を作る場合、自社以外のパートナーへ協力を求める際には、その部門、パートナーがどのような機能を担うのか、どのような目的でその機能が必要となるのかを明確にすることが求められる。

【図3】プライシング、損益構造イメージ
【図3】プライシング、損益構造イメージ

機能の明確化が行われることで、はじめてモノとサービスを担うステークホルダー間の役割が見え、収益構造とコスト分担が見えてくる。そのことで、【図3】に示すとおり、総額として採算性のあるプライシング仮説立案が可能となる。

5.ビジネスモデルの完成度を高めるパートナー開拓による組織開発

デジタルビジネスを実現するには1社単独での推進は難易度が高い。自社のビジネスモデル上の立ち位置を明確にして、モデルを確立するために必要なパートナーとのリレーションを構築することで、ビジネスが回るエコシステムを作り上げることが求められる。

【図4】デジタルビジネスの推進時の役割・範囲の変化
【図4】デジタルビジネスの推進時の役割・範囲の変化

そのためには、顧客のさらに先のパートナーの経営課題や技術や商流などのコアを捉え、彼らにもサービスとビジネスの両面で評価を得て、ビジネスモデルの1つのピースとして機能を実行してもらう必要がある。そのため、我々は商流やサービスを補完するためのチャネルとなる企業や、ユーザーニーズを把握して独自のサービスを展開しているNPO、サービサーとなる企業など、多くの企業をパートナーとして巻き込むアプローチを行っている。以下【図5】に示すとおり、1社1社課題仮説を検討して、パートナー向け提案資料を作成することで、単なるサービスの紹介資料ではなく、ほぼ事業計画に近い資料を作成することとなる。本サービスを組成するうえで、パートナーが不可欠であることを、他社との差別化要素やターゲットの補完性、パートナーとしてのビジネスの広がりなどのメリットを通じて訴求している。

【図5】パートナーを巻き込むための提案資料構成イメージ
【図5】パートナーを巻き込むための提案資料構成イメージ

新規事業において求められる成果は、新たな市場を形成し雇用を創出し、既存の業界や社会に新たな風穴と気づきを与えることだ。これらの成果を制約のある実践の中で生み出すことが求められる。

【図6】デジタルビジネス開発事例に基づいた継続的投資獲得モデルのイメージ
【図6】デジタルビジネス開発事例に基づいた継続的投資獲得モデルのイメージ

図に示すとおり、実践するためには、最短最小のリソースを用いて、最も必要な価値を訴求したうえでコンパクトに市場投入を果たし、段階的に受注を行うことで、大きな投資の意思決定を得やすく、先に進みやすいと言える。

シリーズ

アイデアを育て事業を起こす―IoT時代の新規事業の要件(1)―

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久本 浩太郎(ひさもと こうたろう) 久本 浩太郎(ひさもと こうたろう)
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佐藤 史織(さとう しおり) 佐藤 史織(さとう しおり)
株式会社富士通総研 コンサルティング本部 産業グループ アシスタントコンサルタント
若者視点を取り入れたユニークな新規事業のアイデア企画立案やデジタルマーケティング分野のコンサルティング業務に従事。