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【シリーズ】経営実態・目標達成度を映し出す「事務量」(5)

第5回 実態把握・余裕率の設定

2016年12月20日(火曜日)

「事務量」はIE(Industrial Engineering)手法を用いた経営管理のための道具であり、適正人員の配置や効率化の推進を行ううえで有効なものである。富士通総研では、これまで都市銀行・地方銀行・生命保険会社・クレジットカード会社など、主に金融機関における「事務量」導入や「事務量」の活用をご支援した経験から、他の業界でも同様の取り組みが行える場合が多々あると考えている。数回にわたり、「事務量」について、また金融機関における「事務量」の導入について紹介する。

標準時間の設定、件数取得を進めつつ、実態把握により定性観測と定量観測による余裕率の設定を行う。ここでは、実態把握の方法と余裕率の設定の考え方について述べる。

Ⅰ 実態把握の意義

1.「事務量」の意義の再確認

「事務量」で人員算定を行う際、よく聞かれるのが、「店舗によって状況が違うのに、机上で算出した人員で業務運営できるはずがない」という意見である。確かに店舗はマーケット特性や店舗規模に応じて一律ではないし、配置人員のスキルや体制によっても同様ではない。しかし「事務量」は多様な状況下にある店舗に一定の条件を設定することで、同じ物差しを適用することにより可視化するツールである。設定した条件を承知したうえで、ある観点での可視化を可能にするということである。

先にも述べたとおり、「事務量」は実態そのものを把握する道具ではない。あくまでも、理想あるいは、実態を基に全店あるいは店舗グループごとに設定した値(標準時間・余裕率)に基づいて求めるものである。全店における各店舗の比較、あるいは、同一店舗の経時の比較等を行うツールとして用いることができる。また、「事務量」を基にした「人員」算定結果と実態の配置人員の差の原因を追究し施策を打っていくためにも、「事務量」は有効なツールである。

2.「事務量」導入に向けての実態把握の意義

営業店の実態は、店舗特性(規模・業務・体制等)・マーケット特性等によって異なる。その相違への認識を示さないまま画一的な標準時間や余裕率の設定を行えば、現場からの反発を招くことになる。

「仮」であるからこそ、「仮」とは言っても、これだけの事実に基づいて、あるいは、目指すべき方向に基づいて設定・算出しているのだということを示すと示さないとでは、現場の納得感は全く異なる。このことは、経営層など「事務量」の情報を基に経営判断を行う人々にとっても同様である。どのように設定するとしても「事実に基づいて検討したこと」が非常に重要なのである。

3.クラスタ分析・臨店対象店舗抽出

現場をきちんと見て事実に基づくといっても、当然のことながらすべての店舗を詳細に見ることはできない。そこで、富士通総研の場合は、クラスタ分析によって店舗グループを分け、各グループから1~2店舗を臨店対象店舗として選んで実態把握を行う。銀行には営業戦略上の店舗グループがある場合が多いが、この場合は、観点が「営業」上でのグループ分けになっており、また、現在の戦略に基づくだけでなく、将来に向けての期待が込められたグループ分けになっていることもある。しかし、「事務量」導入により人員算定まで行う場合には、「事務」の観点で似通った店舗をグループとしてまとめることが重要である。臨店調査結果などを経て設定した値を用いて、事務人員算定と実際の事務要員の配置を行うことになるからである。営業戦略上は、マーケット特性に応じて手厚く営業人員を配置するということがあるが、事務人員は処理するための必要人員を求めるので、算定の際には営業と事務は分けて考えた方がよい。そのため、クラスタ分析を行うためのデータは、「事務量」に関わる値を中心に選ぶこととなる。結果としては、規模別に大中小、法人中心、個人中心、混在など、5~8グループに収めると良い。【図1】は、店舗数70店舗程度で4クラスタに分けた場合の実施例である。

【図1】クラスタ分析結果例
【図1】クラスタ分析結果例

4.ワークサンプリング調査

ワークサンプリング(WS)調査は実態把握手法で、一定時間ごとに何の行動をしているかを記録する手法である。富士通総研では1分ごとに記録している。記録するのは「稼働」の項目(図2参照)であるが、最近では稼働項目に加えて業務項目も記録している。その理由は後ほど説明する。稼働・業務とも大・中・小の分類から該当するものを記録するため、1分間に1回、全6項目のデータを記録することになる。

調査の際の記録は、3分や5分に1回でもよいのではないかという意見もあるが、現場の納得感(集まるサンプル数)からいっても、いずれにせよ1日通して観測することから考えても、1分ごとが適切と考えている。また、1人で観測対象を何人まで観測できるかという質問を受けることもあるが、先に述べたとおり、「稼働」と「業務」を同時に記録するのであれば、仮に1人の観測者が2人の被観測者を30秒ごとに観測・記録すると、かなりの負担となるので現実的ではないと思われる。また、たとえテラー(受付窓口)であっても思いのほか離席し移動するものであるので、距離が離れているところで30秒ごとの観測・記録を行うのは困難である。

最近、業務項目も記録している理由は、以前と比べ、稼働だけでは「主体」の項目に算入してよいかどうかの判断が難しくなっているためである。富士通総研がWS調査を始めた初期の頃は、例えば、機械操作と言えば、「主体」とすることができたが、最近では、例えば、マニュアル類の閲覧やe-learningの受講など、お客様から依頼された直接的な業務以外を端末の画面を見ながら実施することも多く、これらは、「余裕」の項目あるいは、「研修」時間として稼働時間から差し引かれるべき時間なので、その区別がつくように記録することにした。また、これにより、稼働と業務の関係を踏まえて行動が把握できるため、事務改革における課題の抽出や解決の方向性の検討を行う際、有効なデータとなる。

【図2】行員稼働分析概要
【図2】行員稼働分析概要

5.定性観測

店舗特性の理解、または、観測当日の状況(たまたまあの日はそうだったとよく言われることへの配慮と実際に標準を設定する際の考慮事項)の把握、余裕率の設定や「人員算定」のため、定性情報も収集する。例えば、お客様との会話時間が他のテラーと比較して極めて高い数字が出た場合に、観測者のメモにより、高齢のお客様への対応に手間取ったといったことがわかれば、余裕率の設定の際に考慮することとなる。また、本来のその時間に実施すべきことが行われていないとき、トラブル対応を指示されていた等の情報で、通常の作業と当日が異なった状況であったことを確認することができる。観測の最後には、被観測者にインタビューも行い、観測日に通常と異なることがあったか否か等、数項目を確認している。

また、被観測者に直接的に関わる情報のほかに、業務のあり方に影響を与える、レイアウト・体制・他の担当者との連携・機器の状況・お客様の状況・文書管理の状況等、定性観測の観点ごとに観測者の気づきをまとめ、情報共有することにしている。こうした実態把握を経て、人員算定のための基礎データを収集するのである。

Ⅱ 実態把握-余裕率の設定

1 余裕率とは

こうして臨店調査を終え、いよいよ余裕率の設定になる。「余裕」というのは、業務以外のことをしている時間の割合ではなく、お客様から依頼された直接的な業務以外、あるいは工程表にない作業を行っている時間の割合と言えばわかりやすいだろうか。例えば、業務中に移動している時間や、相談をしたり、調べ物をしたり、整理整頓をしているような時間がそれに当たる。富士通総研では、以下の分類を基にして相談しながら決めている。また、付随作業については余裕率として設定している。

【図3】作業分類(例)
【図3】作業分類(例)

2.項目ごとの設定

余裕率の設定は、富士通総研の場合はWSの項目に対応して「主体・余裕・余剰」の設定を行っている。観測結果をシートに入力し、自動的に結果を求めるようなツールを用意している。そこで「余裕」に当たる項目を定義する。

例えば、大分類で「移動」や「整理・整頓」の場合は「余裕」、「架電」については、事務担当者の場合は「余裕」、セールス担当者の場合は、架電の相手がお客様の場合は「主体」、行内の場合は「余裕」と設定している。また、大分類だけでは判断せず、中分類、小分類の項目により、「主体」か「余裕」かの判断をしている場合もある。「主体」・「余裕」は、係によって変える場合もあるし、銀行によって異なる設定をすることもある。

実際に「余裕率」を設定する際には、稼働だけでなく業務実態も配慮して設定することもある。例えば、端末で入金オペレーションをする(業務は預金・入金)のは「主体」、端末で業務マニュアルを見る(業務は、マニュアルで確認する)のは「余裕」であるが、ツールだけでは「主体」と判断されるので、後ほど説明するモデルの検証などで調整することになる。

3. 余裕率の設定

実際に観測結果をみると、かなりのばらつきがある。同じ係でも店舗・体制・日によってかなり違うこともある。余裕率は店舗ごとに設定せず、クラスタごと、あるいは全店一律で設定するところが多い。これだけの店舗と係の調査を行ったのだから、個別に設定すればよいと思われるかもしれないが、標準時間設定の時と同様、現場の実態に必ずしも合わせるのではなく、銀行としてはこのくらいの余裕率でありたいという「目指す数値」で決めていくということになる。多くの店舗と係を観測するのは、「現場では様々な状況によって、これだけのばらつきがあることは承知している」というところを示す意味もある。

余談であるが、最近は余裕率が高くなる傾向にある。理由として、反社会的勢力に対する取り組みやコンプライアンス系の業務が増えているため、まとめや報告のための作業が増加し、これらが余裕率を高くする稼働項目と関連することによる。また、さらに余談であるが、こうしたことを踏まえると、効率化のためには、余裕率と密接に結び付く、むしろ非定型業務をいかに効率化できるかということで全体の効率化の成果を上げていくことができる。

【シリーズ】経営実態・目標達成度を映し出す「事務量」

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平岩淳子

平岩 淳子(ひらいわ あつこ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタント
1984年 富士通株式会社入社、97年 株式会社富士通総研へ出向。
金融機関向け事務量・営業店構想策定・営業店改革・事務集中センター効率化・事務処理方式開発などに従事。