GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. オピニオン>
  4. 【シリーズ】経営実態・目標達成度を映し出す「事務量」(6)

【シリーズ】経営実態・目標達成度を映し出す「事務量」(6)

第6回 人員算定・モデルの検証・「事務量」の活用

2016年12月27日(火曜日)

「事務量」はIE(Industrial Engineering)手法を用いた経営管理のための道具であり、適正人員の配置や効率化の推進を行ううえで有効なものである。富士通総研では、これまで都市銀行・地方銀行・生命保険会社・クレジットカード会社など、主に金融機関における「事務量」導入や「事務量」の活用をご支援した経験から、他の業界でも同様の取り組みが行える場合が多々あると考えている。数回にわたり、「事務量」について、また金融機関における「事務量」の導入について紹介する。

標準時間の設定、件数取得、余裕率の設定が終わると、いよいよ人員算定が行える。人員算定の結果を受け、実際に配置されている人員数等を基に、事務量モデルの検証を行う。こうして確定・導入された「事務量」は、様々な部門での活用ができる。ここでは、営業店改革で成果を導いた活用例を紹介する。

Ⅰ 人員算定・「人員」の定義

余裕率が設定されたところで「事務量人員」を算定する。富士通総研では店舗特性による余裕率の違いがあっても、基本的にはクラスタごとに余裕率を設定することは行わず、後段に記載する各種調整で各店に対する調整を行い、「事務量人員」は全店共通の前提(余裕率)で算定することをお勧めすることが多い。

「人員」と一言で言うが、「事務量」から算出した「事務量人員」から実際に現場に配置する「実配置人員」まで、何段階かの運用上の「人員」があることが一般的である。この何段階かの運用上の「人員」を正しく認識していないために、結果を用いる際に理解不足・誤解が生じることもあるので、ここで説明しておく(【図1】)。この用語は各銀行で異なるので、ここでは富士通総研で用いている用語で説明する。

【図1】マネジメント目的に応じた人員算定と関連部署の関係
【図1】マネジメント目的に応じた人員算定と関連部署の関係

「事務量人員」とは、「事務量」から算出したままの人員で、小数点を伴う人員である。「事務量基準人員」とは、小数点が出た人員を、一定のルールで整数化した結果の人員である。小数点以下の切り上げか切り捨てか、それを店舗規模(クラスタ)によって変えるか一律にするかなどルールを決めて整数化する。

「配置基準人員」とは、例えば2層店舗か否か、店舗外ATM管理の有無、体制(融資業務対応の有無、ローンプラザ等併設)等の条件やパートの換算比率などによる調整基準を設定し求められる人員である。

「実配置人員」は、営業店に実際に配置されている人員で、これは営業店の現状を見ながら個別に調整を行う。主に人員のスキルや健康状態等による。例えば、新人の配置人数や、産休・育休・介護休職等の取得者数、健康に問題を有する人員数などによる。

以上のように、「事務量人員」から「実配置人員」までには様々な調整が行われている。この調整は事務・営業・人事の関連部門が連携して決定することが多い。「事務量」で算出された「事務量人員」と調整を経た「実配置人員」では、様々な理由で乖離があるが、乖離幅を縮めていくための施策を検討し実施していくことが適正人員配置につながる。

Ⅱ モデルの検証

こうして「事務量人員」や「事務量基準人員」が算定され、具体的な店舗の具体的な人数が示されると、「こんな少ない人数で回るはずがない」とか、「事務量人員に比較して実配置人員が多すぎる」という認識が生じることがある。個別の店舗でそうした状況が発生する場合もあり、また、クラスタ単位で違和感のある結果となることもある。実際に、過剰に人員を配置している場合もあれば、役席まで含めた体制で多能化を推進し、「事務量人員」よりも少ない人数体制で運営している場合もある。いずれにしても、こうした違和感の原因が、先に述べた様々な調整の結果なのか、あるいは、そもそも「事務量人員」算定モデルに問題があるのかを確認する必要がある。そこで、事務量モデルの検証は主に(1)業務 (2)時間 (3)件数 (4)余裕率 の観点で行う。

事務量モデルの検証を行う際には、各営業店とそこに配置されている人員の状況が具体的にわかる方に加わっていただくことが望ましい。以前の例で、店舗規模の割に「事務量人員」と「実配置人員」の乖離が大きい(実配置が多い)店舗があったが、実は担当者間の仲が悪いために一体となった運営ができず、業務を分けて担当させざるを得ないためであるということが判明した。現場がよく分かる担当者から提供される情報が有効であった。

(1) 業務

業務の観点では、事務量で対象としている業務範囲と、比較する「実配置人員」が担っている業務範囲が一致しているかを確認する必要がある。例えば、融資に関連する業務は事務量算定の対象外であるにもかかわらず、融資事務も担う人員が実際に配置されていれば、「実配置人員」が多くなるのは当然である。また、あまりに対象業務が少ない、あるいは全体の業務の何割程度を占める業務に対応しているかが示せないと、算出した人員の意味を示せなくなる。カバー範囲をできるだけ広げるために、工程表に記載されるような直接的な業務でなくても、業務として実施しているものは極力洗い出して事務量として算定することが必要である(例えば、機器のメンテナンスや、日々の朝礼や清掃等も)。あるいは、「算定された人員と対応している業務はこれである」と示せるようにしておくことが重要である。

(2) 時間

設定した標準時間が現場のレベルに対して短く設定されすぎていないか、あるいは、スキルが不十分な人の割合が高すぎないかを確認する。スキルが著しく低い場合の標準時間の設定をどうするかは、議論のうえ決定することになる。お勧めとしては、スキルを求められるレベルに近づけていく努力をするということで、標準時間は変更しないことである。

(3) 件数データ

重複して取っているものはないか、大きく抜けているものはないか、人数や端末台数に応じて設定しているものが抜けていないかなど確認する。(1)の業務とも関係するが、件数未把握事務の設定方法の確認も行う必要がある。

(4) 余裕率

営業店での観測結果と、「事務量人員」算定上で使っている余裕率の乖離の確認を行う。「事務量人員」算定上で、実態ではなく目指すべき余裕率を設定している場合は、実際よりも低い余裕率設定であれば、「事務量人員」は少なく算出される。予想以上に大きな乖離が出てしまった場合、該当する店舗の状況を確認し、臨店調査で対象店舗となった店舗とどのような差異があるのかを明らかにしておく必要がある。乖離の原因は余裕率だけではないので、余裕率の調整は、むしろ全体的に行うことが多い。

以上のような検証を行い、それぞれの値を適正にするか、各店の事情がどのように結果に影響を与えているかが認識できればよい。乖離が大きくても理由が明確で、「事務量」を利用する際の意図が正しく反映されているのであれば構わない。

Ⅲ 事務量の活用

1.事務量の部門ごとの利用例

シリーズ第1回で紹介したとおり、事務量導入の具体的な目的は以下のとおりである。

  • (1) 「事務量」による人員算定(適正人員算定)
  • (2) 営業店実態の把握・事務効率化効果の把握
  • (3) 原価計算のための基礎データ提供

主な利用部門は事務統括部・人事部・営業統括部が想定されるが、ほかにも、事務量分析はその結果をもとに、あるいは、他システムとの連携により、関連(多)部門と協働で活用を行うことができる。部門毎に以下のような観点が挙げられる

  • 事務部門…事務効率化・ 標準化、事務改善・事務改革、事務指導・評価 等.
  • 経営企画…原価計算・収益管理、事務子会社化のインフラ整備 等
  • 人事部門…人員配置、生産性把握、教育企画 等
  • 営業企画部門…営業店戦略、店舗統廃合・出店計画 等
  • 商品企画部門…原価計算・収益管理、商品企画・手数料設定 等
  • 管財部門…ファシリティマネジメント、店舗統廃合・出店計画 等
  • システム部門…店舗統廃合・端末台数算定 等
  • 営業店…営業店経営(人員配置・スキル管理・待ち時間管理…) 等

2.経営戦略ツールとしての導入

事務量導入の目的として上記3点を挙げたが、特に(2)については、単なる実態把握・効果把握にとどめず、これを経営プロセスに組み込み、事務量を経営戦略ツールとして導入することが諸施策の成果を上げるうえで効果的である。シリーズ名を「経営実態・目標達成度を映し出す」としたのは、そのように利用することができるということである。

これまでの事務量の利用は、多くの場合、半期あるいは年に1度の人員算定や原価計算、効果の検証(例えばシステム導入時)を目的とした用い方が一般的であった。これを、人員コントロール・コスト削減を目的に、事務量全体を俯瞰的に捉え、全体量および推移を把握する機能に着目して利用すると、経営戦略ツールとして有効である。つまり、事前・事後だけでなく、施策遂行中の実態も事務量の推移により把握することにより、施策と事務量の関係等から進捗管理を行い、時機を逃さず施策の強化・修正・変更を行うといったPDCAサイクルを取り込むことができるようになる。言い換えると、こうした進捗管理・成果把握の仕組みがないまま、施策を次々導入しても、確実な成果を上げていくことは困難である。

3.事務量活用の具体例(「経営実態・目標達成度を映し出す」ツールとしての活用)

具体的な例では、りそな銀行様が営業店のマネジメントツールとして活用されていることが挙げられる。りそな銀行様では、事務運営コスト削減を経営目標に定め、その実現に向け、営業店事務量の半減を目標に定め、様々な具体的な施策を実施されてきた。その際、各施策の評価は、事務量を主な指標に用いている。さらに、自律する組織の実現を目指し、情報の共有化をインフラとして整備され、その1つの取り組みとして、事務量実態をオペレーションマンスリーレポート(【図2】)として毎月各店舗に配布している。

【図2】事務量をマネジメントツールとして利用した例
【図2】事務量をマネジメントツールとして利用した例

従来、事務量は営業店への配置人員数を決める際、本部と支店長との間で用いる情報であったが、現在では、自店の事務削減の状況を認識するとともに、自店を挙げて事務削減への施策徹底を推進していく意識と行動を促すため、各店に公開・配布される仕組みとした。これまで本部と営業店店長との間の非公開情報であったものを、経営・本部・現場で共有し、同じ情報をもとに、各層のPDCAを実施する取り組みとしたことに大きな意義がある。先に述べた事務量の戦略的ツールとしての活用事例である。

「事務量」や「事務量人員」は、実態把握に基づき仮に設定した標準時間や余裕率を基に算定するものであるが、その条件において日々情報が収集され、毎月の推移、あるいは前年同月との比較等で状況を把握することができる。そうして出される具体的に見える数字は、漠然と感じていることを明確に示すことができ、次の打ち手を考えるきっかけになり得る。環境や状況が変化し、あらかじめ設定した条件に問題が生じてきたら、見直しを行って再設定するか、補正を加えるかすればよい。

「事務量」の考え方、仕組みは、金融機関に限らず、他の業種でも適用できる領域があると思われる。最初からあまりに完璧なレベルを求めることはせず、目的に応じて必要なレベルを明らかにし、まず何らかの物差しとしての導入の参考にしていただければ幸いである。

【シリーズ】経営実態・目標達成度を映し出す「事務量」

関連オピニオン

シリーズ「りそな銀行オペレーション改革10年の歩み」
  1. 再生に向けた改革成功の鍵
  2. ご支援の経緯と「事務量」
  3. 公的資金注入(コスト削減プロジェクトの活動・原価構成の明確化)
  4. 新生りそなへ(営業店改革コンセプト・事務戦略)
  5. 新生りそなへ(「思い」を「形」へ 試行店開設)
  6. 新生りそなへ(次世代営業店と営業店改革を支える仕組み)
  7. システム開発について
  8. 「今」を知り、「未来」を描くことから始めませんか? ~営業店改革を成功に導くために~

関連サービス

【「銀行次世代店舗」のアプローチ】
富士通総研では次世代の銀行店舗のあり方の検討から店舗企画、店舗運営支援まで、実績に基づいた幅広いご支援をしております。

【金融】
富士通総研の金融コンサルティングは、「経営・リスクマネジメント」、「顧客チャネル改革」、「IT戦略策定」という重要経営課題に対して、豊富な実績に基づき、金融機関の競争力強化を支援します。


平岩淳子

平岩 淳子(ひらいわ あつこ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタント
1984年 富士通株式会社入社、97年 株式会社富士通総研へ出向。
金融機関向け事務量・営業店構想策定・営業店改革・事務集中センター効率化・事務処理方式開発などに従事。