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成熟社会における次なるビジネスのありか -ゲームチェンジの潮流-

2016年11月16日(水曜日)

いくつかの企業ではICTを活用し、新しいサービスの実証を行っているが、その結果がビジネスにつながるケースはまだ少ない。その理由を一言で言うと、「現状のビジネスをITで置き換えているだけ」になっているからである。結果として、顧客に対する価値が高まらない、コスト構造も現状と大きく変わらず投資に見合わないという判断に帰結している。

本稿では、新サービスを実装するうえで、単なる既存サービスへのICT適用ではなく、ゲームチェンジを仕掛けることが必要であることに触れつつ、コンサルタントとしての活動の中から見えてきたゲームチェンジの潮流について述べる。

1. 成熟社会における各社のもくろみ

先進国を中心に少子高齢化が進み、経済成長も頭打ちという状況下で、これまでの「モノを作って、売る」というビジネスが飽和しつつある。各社ともモノからサービスへシフトし、既存ビジネスの枠組みを壊して、新たな仕組みでビジネスを奪うことにより、あるいは、自社の核となる強い事業からその隣接領域にサービスビジネス展開することにより、事業成長を試みている。これまで業種ごとに繰り広げていた競争が、業種の枠組みを超えたものになっている。

このようなビジネス環境ではICTの役割も大きく変化している。顧客企業の業務要件に基づき、システムを構築・運用するこれまでのやり方ではなく、ビジネス価値そのものを高められるという直接的な訴求力、つまりICTを使って新しいビジネスを実現することが求められている。

我々コンサルタントがお客様企業とお話をさせていただくビジネスの現場でも、新サービス領域や変革テーマを見つけ、共同実証を行いながらビジネス化を目指すというケースが増えてきており、ICT企業の役割・価値が大きく変わりつつあることを実感している。

2. ゲームチェンジの潮流

GE(General Electric Company)の故障予兆サービスPredixの場合は、タービンなど製品に付与する付加価値サービスとして、製品・サポート料に加算して回収している。また故障予兆サービスにより顧客企業がコストダウンに成功した場合は、その成功報酬を受け取っている。Amazonはロングテールに対応する圧倒的な品揃えと、欲しいときに手に入れたいという顧客欲求に応えられる物流オペレーションの高度化を武器にECビジネスで小売市場を席巻している。UberやAirbnb 、そしてFintechベンチャーなどは、タクシーやホテル、金融といった既存の業界を破壊し、ビジネスを収奪しつつある。

これら実際に新しいビジネスを実現している企業にはどのような共通点があるのか、以下に整理した。

  • (1)利用者が得られる価値を向上させる/これまで得られなかった価値を提供する(デザイン思考的アプローチ)
  • (2)無駄や既得権を排除、情報の非対称性を解消し、そのメリットを関連プレーヤーでシェアする(エコシステム化/プラットフォーム化)
  • (3)既存のビジネスの枠組みを変え、新しいビジネスゲームを仕掛ける(ゲームチェンジ)

これらを実現するためには、新たなビジネスゲームの仕組みを体現した「プラットフォーム」を用意し、発生データを活用することによって、顧客価値の創出とトータルコスト低減を両立する。これにより、利用顧客が増え、マネタイズが可能となり、関連プレーヤーに収益を分配できるという考え方をとっている。

富士通総研はこれらのことを念頭に、様々な業種の企業の新サービス構築に関わっているが、ICTを駆使したデジタル革新型のゲームチェンジには、大きく3つの潮流があるのではないかと感じている。

【1つ目の潮流:「所有から利用へ」を実現する結果コミット型包括サービス契約】

製造設備メーカーやプラントエンジニアリング会社は、世界的にプラントが供給過多な状況もあり、新規建設需要のみではビジネス成長が頭打ちになるという問題意識を持っている。また、新設プラントにおいても、建設だけでなく、運用・保守まで包括的に契約を求められる案件が増えており、彼らが持つ設計ノウハウ、オペレーション技術を活かして、隣接領域である設備・プラントのO&M(オペレーション&メンテナンス)サービスへの業域拡大をもくろんでいる。

しかしながら、プラントの運用・保守を一定期間、最適なコストで運用するためには、属人性を排除し、客観データに基づいた運用を行う必要がある。プラント運用データを集め、操業アドバイスや故障原因分析、消耗品・部品の調達支援など自社が請け負うことにより、プラントのライフサイクルにわたる運転・保守コスト最適化、計画外停止の撲滅を行い、顧客であるプラントオーナーや市町村にメリットを提供することが求められる。

プラント・設備のO&Mサービス以外でも、外部サービスを活用し、結果をコミットした形で企業に対してインテリジェンスサービスを提供するビジネス形態が増えており、ICTの活用が必須となっている。例えばマーケティングサービスを提供し、顧客の拡販費に対するコンバージョン率の向上をコミットした価格設定をしている。成果報酬型サービスとも呼ばれる。

【図1】隣接領域へのビジネス拡大イメージ
【図1】隣接領域へのビジネス拡大イメージ

【2つ目の潮流:「営業レス化とパーソナライゼーション」を実現するカスタマーフロント進化】

B2CのEC領域ではAmazonや楽天など、物販を中心に様々な分野で既存のビジネスの枠組みを壊している。B2B領域でも、オフィスサプライ品の物販を筆頭に、少しずつマーケットプレイス化が進んでいる。EC化が進んでいるのは、需要側の購入目的が明確で、提供される商品・価値が分かりやすいビジネスが中心である。需要側に漠然とした需要しかない場合、あるいは、役務など提供サービスが複雑な場合は、販売員など人が需要と供給のマッチング機能を果たしている。

この分野でもAIなど先進ICT技術を使ったゲームチェンジが起こっている。顧客との対話の中から適切なサービスをアドバイスするサービスコンシェルジェにより、複雑なサービス、商品を営業レスで販売し、ターゲット市場を拡大するなど、カスタマーフロントの主導権争いが起こっている。今後、カスタマーフロントサービスは、音声応答の定着、VR(Virtual Reality)の活用、Fintech技術適用などパーソナライゼーションとユーザー体験(UX:User Experience)のリッチ化が進むと考えられており、これらICT技術をビジネスに取り込むスピードが求められる。

【図2】顧客購買行動を支援するカスタマーサービス
【図2】顧客購買行動を支援するカスタマーサービス

【3つ目の潮流:「つながる仕掛けとオープン化」による真の競争環境構築】

これまで、企業では、社内業務単位でシステムを作り、必要に応じて業務間連携、あるいはEDI(Electronic Data Interchange)のように企業間連携の仕組みを作ってきた。サプライチェーンなどの企業活動が企業内にとどまっている段階では、逆にこのシステムや業務が競争の源泉となっていた。しかしながら、社内業務・システムもERP(Enterprise Resources Planning)等システム化が一巡し、競争領域ではなくなりつつある。また、モノが売れない時代となり、デマンドに即応した少ロットでの生産・デリバリーが求められ、製品のライフサイクルの短期化も進む中、1社ですべてを完結することが難しくなっている。

サービスや小売の世界でも、各店舗単位での収益管理や顧客管理、販促の仕組みはあるものの、複数の店舗やサービスをつないで面で販促を行ったり、顧客のトレーサビリティを高めたりすることは難しい。ポイント流通やデジタルマーケティングを駆使して、切れ目のない顧客トレースが求められている。

物流会社は深刻な人員不足に加えて、宅配増加による小口化が進み、1社単体では収益性を維持することが難しくなっている。

【図3】物流全体最適化を実現する物流オープンプラットフォームイメージ
【図3】物流全体最適化を実現する物流オープンプラットフォームイメージ

いずれも企業を超えて関連トランザクションデータを共有し、各社がそのデータを基に最適な動きを行うことが求められている。生産やサプライチェーンの世界では、Industrie4.0等の名前がつき、コンソーシアム形でデータ標準化の動きが進んでいる。サービスや小売の世界では、ブロックチェーン技術を使った分散型情報プラットフォームを構築する動きが始まっている。この動きは、各社別々にするよりも、共通の仕組みをシェアした方が全体コストを抑えられ、業界全体を活性化する。一方で、競争力を持たない企業にとっては、淘汰される真の競争環境とも言える。

ここで紹介した3つの潮流は、富士通総研が関わっている活動を整理したものであり、実際には、検討されている個々のサービスごとに個別要素も多い。また捉え切れていない他の潮流があるかもしれないが、このような大きな潮流を頭に入れ、世の中の流れをうまく利用して新しいサービスを考えることにより、ビジネス化をスピーディーに進められると考えている。

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中谷 仁久

中谷 仁久(なかたに ひろひさ)
株式会社富士通総研 クロスインダストリー事業部 プリンシパルコンサルタント
1995年富士通入社。製造業向けのコンサルタントとして活動。システム化構想策定、業務改革、ICTを活用した事業企画、M&A・事業再編に伴う組織・IT再編、アジア進出日系企業様向けのIT中期計画策定などを実施。