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【フォーカス】産学“共創”の新たなアプローチ

-立教大学と富士通によるアイデアソンから得たもの-

2015年6月11日(木曜日)

【フォーカス】シリーズでは、旬のテーマに取り組むコンサルタントを対談形式で紹介します。

企業と大学の“共創”のアプローチとは、従来の産学連携とどのように異なるのでしょうか? さらに、これからの“共創”に求められることは?

本対談では、「産学“共創”の新たなアプローチ―立教大学と富士通によるアイデアソンから得たもの―」をテーマに、立教大学経営学部教授の佐々木宏氏、富士通株式会社戦略企画室室長柴崎辰彦氏をゲストに迎え、富士通総研(以下、FRI)産業・エネルギー事業部の佐々木哲也(FRI佐々木)とともに、これからの共創のあり方について探って行きます。

1. 立教大学×富士通プロジェクトの当初の狙い

【FRI佐々木】
本日は、2014年度に立教大学と富士通で実施した1年間の共創プロジェクトを振り返りつつ、従来の産学連携との違いや、これからの共創のあり方についてお話しいただきたいと思います。産学が連携してアイデアソンを実施するというプロジェクトだったわけですが、まずは当初の狙いについて、それぞれの立場からお聞かせいただけますか?

【柴崎室長】
富士通では、コミュニケーション創発サイト「あしたのコミュニティーラボ」を運営しています。さらなる展開を考えたときに、生まれたときからインターネットがあり日常の生活で当たり前のようにスマートデバイスに触れている若者、いわゆる『デジタルネイティブ』世代とのコラボレーションが必要だ、と感じていました。彼らのアイデアは企業や社会に新しい気づきを与えるものになるでしょうし、これからの未来をつくる世代を大事にしていくことは、企業全体、日本全体にとっても重要なことだと思っています。そこで、「あしたのコミュニティーラボ」というプラットフォームを使って、企業が若い世代のアイデアを取り入れていく模様をメディアにして発信し、社会に伝播させていくようなことを実験したいと思ったのが始まりです。

【佐々木教授】
私の研究室は社会科学の分野に属しており、研究対象は本の中にあるのではなく、今、現実に起きている社会問題やトレンドそのものが教材である、という考えに基づいて運用しています。そんなことで産学連携の取り組みを過去10年以上も実施しており、その時々で最先端のテーマを学生にぶつけることに狙いを定めてきました。実は、数年前からアイデアソン・ハッカソンに注目していまして、柴崎さんと最初にお会いした時に千載一遇の機会だと思いました。

【対談風景】
【対談風景】

2. 「共創」を振り返って

【FRI佐々木】
富士通総研の立場からは、このプロジェクトのプログラム全体の設計およびファシリテーションを進めてきたわけですが、最初は佐々木ゼミの過去の実績を考えると、本当に僕らが肩を並べるような成果を出せるのか、という不安もありました。お二人の視点から、共創が起きた瞬間はどのタイミングでしたか?

【柴崎室長】
最初に感じたのは、比較的初期の段階です。富士通フォーラムに学生の皆さんに来てもらったときですね。富士通フォーラムは富士通の製品や技術の展示会ですが、文系の学生さんなので、IT企業の話にどこまでついていけるか不安でした。ところが、プログラムの中で旅のしおりを模した調査計画を制作したのですが、それを携えた学生の皆さんはとても積極的で、対応した富士通の説明員も純粋で新鮮な質問を投げかけられ、圧倒されるほどでした。そこでの学生さんの気づきやアイデアは意外なものが多く、これは何か面白いコラボレーションが起き始めている瞬間なのではないかと思ったものです。

【佐々木教授】
今回のプロジェクトは、前期と後期、それぞれ3か月ずつ長距離型のフルマラソンを実施したところに特徴があったと思います。富士通さんと富士通総研さんが毎週コミットしていただいたので、不安はありませんでした。共創を感じた瞬間は3回ありますね。1回目は柴崎さんのおっしゃる通り、富士通フォーラムで一緒に新しい技術を見て回ったとき。2回目はプロトタイピングです。発泡スチロールやブロック、工作道具を使いながらアイデアを形にするという行為は、学生や社会人の枠を超えて誰もが童心に帰り、子どものような夢をもって一緒に新しい世界を作り出す場のように見えました。3回目は最終報告会です。展示会のブースのようにして、各グループがアイデア企画を説明した際、富士通の社員の方々からいろいろな質問を受け、学生が必死に応対していました。それぞれ、一緒に大きな共同ワークをしたときに共創が起きていると感じました。

【FRI佐々木】
ファシリテーションをする中で、できる限り学生と社会人が一緒に知恵を出して創発を起こしていくという方針で進めましたが、一方で、そうするとプログラムの進行はコントロールしづらくなります。そういった中で、実際には手探り状態、試行錯誤を繰り返して推進してきました。全体の流れは決めていたものの、実は毎回、参加する皆さんの反応やアウトプットを見ながら、次はどうするかということをゼロベースで考え、常により刺激的なものを、より学べるものをと、プログラムを設計し直してきました。そういう意味では、プログラムそのものも共に創ってきたと言えます。

【佐々木教授】
そこが良かったと思います。通常のプロジェクトでは手順が決まっていて、アウトプットばかりにフォーカスしがちですが、長距離型アイデアソンのやり方に標準化されたものはありません。富士通総研さんの持つ方法論やツール、様々な知見を組み合わせて試行錯誤し、学生側のアイデア発散と収束の様子を見ながら、一緒にプロセスを共創していきました。そのところがとてもエキサイティングだったと思います。

【立教大学経営学部 佐々木教授】
【立教大学経営学部 佐々木教授】

3. 今の社会は、効率性がクリエイティビティを阻害している

【FRI佐々木】
個別のアクティビティについても少し振り返りたいと思います。プロトタイピングを例に挙げると、実はそれまではお客様と実施する際、2~3時間はかけていました。ところが、ゼミには90分という制約があります。アイディエーションからプロタイプ制作をして、ビデオで記録するというところまでを実質60分で実施するというチャレンジングな試みでしたが、アウトプットは素晴らしいものが出てきました。時間の制約があったからこそのエネルギー、創造性を感じましたが、創発を促すには制約を設けた方が良いものなのでしょうか?

【柴崎室長】
今でこそアイデアソンやハッカソンという言葉は市民権を得てきましたが、当初はいわゆるワークショップと何が違うのかということを問われることが多かったですね。特に感じているのは、限られた時間で成果を出すということです。ハッカソンでは一般的に2日間でサービスを開発し、3分間でピッチ、発表を行います。その制約の中で何とか新しいものを創り出そうというところに、人間の創造性が発揮され、とてつもないエネルギーが場に生まれます。プロトタイピングも90分しかないゼミの中で行ったからこそ、進化したのでしょう。

【佐々木教授】
いつプロトタイピングをやるかというタイミングが重要だと思います。今回のタイミングは、そこに至るまで参加者が色々なアイデアを出して色々な手法で練って絞り込んできたタイミングでした。何か形にしたい、アウトプットしたいというところまで来ていて、タメのようなエネルギーがありました。そんな状況でしたので、爆発的な速さですぐに創ってしまいました。学生は時間の長さにとらわれず、まず行動します。社会人よりそこには抵抗がないかもしれません。

【FRI佐々木】
創りたくてしかたがない、形にしたくてしかたがない、という状態をいかにつくるかということですね。社会人は制限時間を設けると、3分で発表するならこういうアイデアにしようとか、80分で作れるのはこれくらいなのでこの程度にしよう、など自分の経験でアウトプットに制限をかけてしまいがちです。今回のように、創りたい衝動に駆られた人たちが参加すれば、もしかしたらどんな時間でもできてしまうのかもしれません。逆に、そういう気持ちが低いレベルで実施すると、制約に合わせたものを作ってしまいます。

【佐々木教授】
効率性とクリエイティビティのトレードオフですね。社会人はどうしても時間で動いていて、効率性重視の思考にはまってしまいがちです。3分でどう効率的に終わらせるかばかり考えると、クリエイティビティがそれだけ減じてしまうかもしれません。

4. イノベーションを起こすための創発のプロセスを創る

【FRI佐々木】
クリエイティビティについて少しお二人と話したいことがあります。日本の企業ではクリエイティビティの必要性について議論されることが少なく感じます。軽視されていると言っても良いケースもあるように思えます。お二人から見ていかがでしょうか?

【柴崎室長】
従来のビジネスシーンでは、ロジカルシンキングや統計的な、いわゆる左脳的な思考が重視されてきました。ビジネスを考える際に、直感や発想、ひらめきのような感性を重視した右脳的な思考を持ち込むこと、それ自体が否定されてきたようにさえ感じます。富士通では、テクノロジーを駆使してもっと人間中心の、人々の新たな体験を生むようなことをビジネスの柱としていきたい。それには、右脳的な思考を用いることも重要です。それを誘発するためにブロックや粘土を使うこともあれば、ゲームを行ったり、映像を撮って編集して表現したり、身体を使って演じたりするなどの富士通総研のプログラムはとても良いことだと思います。あるコンサルティングファームでは右脳と左脳をブリッジした活動を進めると言っていますが、今私達がやろうとしていることに近いと思います。

【FRI佐々木】
確かに、あまり知られていないことかもしれませんが、コンサルティングファームでも右脳的な要素を取り入れている会社が増えてきています。従来のMBA的なアプローチだけでなく、デザインシンキングやサービスデザインの手法を駆使して、クライアントの価値向上を図っていますね。

【佐々木教授】
発散と収束でいうところの、発散部分がビジネスパーソンは弱くなっているかもしれません。機能分化された組織の制約や、日常のルーチンに縛られてしまっています。学生は縛られません。ある意味いつも発散していて、逆に収束ができなかったりします。日常業務に埋没して、決まった答えにどう持って行くかという収束思考ばかりが強くなり過ぎてはいけません。もしそうであるなら、発散の部分をもっと強化する必要があると考えます。柴崎さんのおっしゃるとおり、右脳をもっと活用しないといけませんね。

【柴崎室長】
我々の志向していることは現場のビジネスの活性化です。ただ、従来の取り組みとは明らかに異質なところもあり「ハッカソンをやって本当に事業が生まれるのか、収益につながるのか」という批判も出てくると思っています。

【佐々木教授】
アイデアソン・ハッカソンは、まだ始まったばかり。多くの人を巻き込んで、このトレンドを前進させていくことが重要ではないでしょうか。そうした中で、ビジネスに直接結びつくものが出てくるに違いありません。すぐにそういった成果は生まれなくとも、参加者の意識に大きな変化が生まれ、組織が変わり、最終的に事業へ波及していくことでしょう。事業価値を生み出すプロセスにインパクトを与える、プロセスイノベーションと言えるかもしれません。

【FRI佐々木】
富士通総研としてはプロセスイノベーションを行うコンサルテーションをしていきたいと考えています。確実に成功するビジネスが分かっていて、それを作れるのであれば、自分達ですれば良いでしょう。そうではなく、企業の持つポテンシャルが全く新しい価値を生み出すような、プロセスイノベーションができることがゴールと思っています。そのために僕らも、一度たりとも同じプログラムを設計することはなく、毎回毎回新しい要素を盛り込んでいます。

【柴崎室長】
サービスの世界で言う永遠のベータ版ですね。ある意味、不時着も含めて、プロジェクトがきちんと終わることができるように設計しながらも、その過程においては「こういうやり方があるからやってみましょう」と、一緒に形作って行く。それは、新しいチャレンジを共に行う、共創の醍醐味だと思います。

【富士通株式会社 戦略企画室 柴崎室長】
【富士通株式会社 戦略企画室 柴崎室長】

5. 大学と企業の新しい関係で社会に新しい価値を生み出す

【FRI佐々木】
アイデアソン・ハッカソンに限らず、これからの学生、大学と企業の共創について考えていきたいと思いますが、企業側が今、最も重視していることは何でしょう?

【柴崎室長】
富士通では2015年5月に、ナレッジをキーにした新たなコンセプト「FUJITSU Knowledge Integration」を発表しました。これまで、情報システム部門のお客様中心の受託型のサービスが中心でした。ところがこれからは事業部門の方々が自分達の製品・サービスを強化するためにICTを取り入れていく時代になると言われています。そういったお客様やさらにその先、つまり生活者の方々にとって必要なサービスを生み出していく必要があると感じています。

【佐々木教授】
社会科学系の学生と企業が一緒にプロジェクトをやるメリットは、まさにそこです。彼らは生活者そのものであり、若者のトレンドを掴んでいる。学生=生活者と一体になってコラボレーションできるという、産学連携の意義がそこに生まれてきます。

【FRI佐々木】
なるほど。産学連携は色々な形で行われていますが、学生=生活者というメリットを見出している例は意外と少ないのではないでしょうか。

【佐々木教授】
従来型の産学連携は理系のシーズのある研究室と企業が組んで一緒にR&Dをやることが多いと思います。言い換えれば、技術革新を共創しているわけです。ところが今回のプロジェクトでは、シーズは富士通のものを使い、マーケティングや市場ニーズの部分は学生側が担っています。ニーズとシーズの新結合=イノベーションを模索し、共創するという産学連携の新しい形だと思います。

6. 共創に必要なこと、それは共により良い社会を創るパートナー

【FRI佐々木】
オープン・イノベーションというと、企業の持つ研究成果を他者に開放し、利用や開発を促進し需要を高める、というイメージを持っている方が、特にメーカーの企業の方には多いです。オウンドメディアやリアルイベントを駆使して様々なセクターの方とコネクトし、対話を繰り返しながらアイデアを創発して、社会にフィードバックできる具体的なプロダクトやサービスを共創する、ということはこれからの潮流になってくると感じます。さらに発展させるにはどのような仕掛け、要素が必要でしょうか?

【富士通総研 佐々木チーフシニアコンサルタント】
【富士通総研 佐々木チーフシニアコンサルタント】

【佐々木教授】
100個中99個失敗するかもしれない。盛り上がって出来たアイデアが全く使いものにならないということも起き得ます。それでも失敗を恐れずに異質な人達、例えば学生と社会人、メーカーと小売、アーティストと自治体、主婦とビジネスマンなど、多種多様な組み合わせで実践を積み重ねていくことが大切だと思います。モノにならなかったとしても、一人ひとりに残るものがある。意識変革の種を撒き続けることが重要だと思います。

【FRI佐々木】
最後に、これから共創に取り組みたいという方にメッセージをお願いします。

【柴崎室長】
この人とはできないと思う相手とは共創は生まれないと思います。志を同じくして考えるパートナーがいること。社会を善くしたいという共通の思い、共通のミッションが何かということを、共に考え、共に尊重し合える相手を見つけることでしょう。

【佐々木教授】
同感です。未来志向で何か創る、クリエイティブな何かを生み出そうという強い意志を持っている人同士が集まること。同じ理念・理想を持っている人たちが世の中には沢山いるわけで、それをお互い発見して一緒にやっていくことが重要かもしれません。

【FRI佐々木】
ありがとうございます。プロジェクトの後半では、学生と社会人が共創して、社会を善くするためのIoTのプロダクトを考えました。こういったところから生まれたアイデアが実際に形になり、色々なサービスにつながっていくことが、良い社会を創ることになればと思います。今後もよろしくお願いします。

【対談者】

対談者(写真右から)

  • 柴崎 辰彦 :富士通(株) 戦略企画室 室長
  • 佐々木 宏 :立教大学 経営学部 教授
  • 佐々木 哲也 :(株)富士通総研 チーフシニアコンサルタント
  • (※)所属・役職は対談時点のもの。(対談日:2015年5月20日)

対談場所

「HAB-YU platform(ハブ・ユー・プラットフォーム)」。
富士通がこれまでに培ったデザイン開発やICT利活用のサービスデザインのノウハウを活用して、ビジョン策定からその具体化までを一貫して体験・研究開発することを目的とした「HAB-YU」活動を推進するために開設された、アークヒルズサウスタワー(住所:東京都港区六本木一丁目4-5)の新たな場。
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