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いまだ社内に閉じがちな大企業の新規事業開発の実態 -大企業のハッカソン取り組み実態調査結果より-

2015年3月23日(月曜日)

1. 実際「ハッカソン」は企業の現場で盛り上がっているのか?

近年日本国内でも注目が高まっている「ハッカソン(Hackathon)」。ハック(hack)+マラソン(marathon)の造語で、元々はソフトウェアのプログラマーやデザイナー達が、個人もしくはチームで、限られた短時間のうちに既存製品の追加機能や新しいソフトウェアなどを開発し、そのスキルやアイデアを競うイベントのことを指す。アメリカのICT企業で盛んに行われていたが、近年、日本では自動車、電気、通信、メディア、自治体や教育機関など、幅広い業種の企業や公的機関で、またテーマも各社の新商品開発や地域活性化など多岐にわたり、様々な分野での取り組みが見られる。

ハッカソンの「多様な人材が一堂に会して、短時間でモノを作り上げる」側面が、複雑化する課題や要求に対して、多様な立場の人々を巻き込んで新しい知恵を出し対応していくこと=共創(Co-creation)を求められる企業や公的機関などに重視され、1つの手法として用いられているのであろう。

盛り上がりを見せているハッカソンであるが、果たして企業の取り組みの実態はどのようなものなのか? 富士通総研では、2014年12月に、webアンケートを用いて大企業(従業員規模1,000人以上)のオープンイノベーションによる新規事業開発・検討およびその1手法としてのハッカソンに対する意識と取り組みの実態について調査を行った。本オピニオンでは、調査の結果概要および、調査から見えた課題について述べる。

2. 調査概要

本調査では、ハッカソンだけでなく、オープンイノベーションによる新規事業開発・検討に対する取り組みの状況を調べた。調査は下記の要領で行った。なお、本調査は富士通総研が株式会社 日経BPコンサルティングに委託して実施したものである。

調査名称 「お勤め先での新規事業の開発・検討に関する調査」
調査目的 大企業における、オープンイノベーションへの取り組みおよびハッカソンへの取り組みの実態を把握すること
調査手法 webアンケート
※日経BPコンサルティング社の調査システム「AIDA」を利用
調査対象 従業員規模1,000人以上の企業の従業員(「契約社員・派遣社員 」「その他」を除く)
※日経BP社/日経BPコンサルティングの調査モニター
調査期間 2014年12月17日~12月25日
有効回答数 600件

3. 調査結果サマリー:
オープンイノベーションの必要性を認識しながらも取り組みは従来型にとどまり、ハッカソンの認知度も低い

大きく3点に分けて、調査結果の概要を記す。

まず、基本的な新規ビジネスに対する考えや課題認識を把握するため、勤務先の主要なビジネステーマ、新規ビジネス創出や新製品・サービスの研究・開発に関する取り組み状況と、そこで抱えている課題を尋ねた。結果の概要は下記の通りであった。

  • 企業において、現在、今後とも、「新規ビジネス創出」は重要なテーマである。しかしそれを「検討・推進する人材がいない」ことが大きな課題となっている。
  • 社内のリソースだけで「新技術の研究開発や、新事業創出」に十分に取り組めると「思わない」が回答者の66.5%を占めた。一方で、取り組みは社内だけにとどまるケースが多い。

次に、“オープンイノベーション”や“ハッカソン”について、その認知度や実施状況をつかむために、言葉の認知および内容の理解度、勤め先のハッカソン実施状況(頻度、目的、参加者の属性など)、回答者自身とハッカソンの関わりについて質問した。

  • ハッカソンという言葉の認知度は37.2%であった。また、回答者全体の86.2%がハッカソンに関わったことがないと回答。
  • 勤め先がハッカソンを開催していることの認知度は7.2%であった。業種では「製造業」、IT関連企業で開催されることが多い。
  • 「業務でハッカソンに関わった」人は5.7%であった。「研究・開発・設計」部門が多く、立場では「部長クラス」以上が3割である。

上記の結果からは、ハッカソンはまだ一般に浸透していないことが推測される。

最後に、今後ハッカソンを実施する意向の有無、実施する場合の問題点を聞いた。

  • ハッカソンの実施意向は、全体では「わからない」が大多数で、「実施意向派」は12%にとどまった。
  • ただし、「業務でハッカソンに関わった人」は「実施意向派」が「非実施意向派」を上回る。実施時に何らかの成果を感じていると考えられる。
  • 実施時の問題点については「ノウハウ、経験不足」が上位だが、経営層の理解が十分でないことなど、企業風土や組織の限界も感じている。

4. 調査結果からの考察:
ハッカソンの効果を実感できるような事例ベースの成果の提示や手法・ノウハウの整備が必要

頻繁に耳にするようになった日本国内でのハッカソンであるが、今回の結果を見る限りでは認知度はまだまだ高くなく、今後の実施意向が「わからない」理由になっているとみられる。ハッカソン経験者に限っても、ハッカソン実施のためのノウハウや経験不足に加え、目的の設定や実施後の成果の把握・取り扱い方法などに課題を抱えており、まだ試行錯誤の段階にあることがうかがえる。また、経営層から十分な理解を得ることや複数部門を横断した体制作りにも課題があることが分かった。オープンイノベーションの必要性を認識していながらも、その取り組みはいまだ従来の「社内部署横断のプロジェクト」立ち上げや「専門部署の設置」、「企業・団体との連携」にとどまっている大企業の姿が明らかになった。

「多様な人材が一堂に会して、短時間でモノを作り上げる」ことで、新しいサービスや取り組みのきっかけを作ることができるハッカソンは、これまでの富士通での実践も踏まえると、組織や職種の縦割りによって人材が固定化したり、組織横断のワーキンググループを作るにも組織間調整や制度作りに時間がかかりスピード感がなくなったりしがちな大企業だからこそ取り入れるメリットがあると感じる。

組織や制度の立ち上げでない、新しいアプローチとしてのハッカソンの可能性について、一部企業・公的機関の取り組みにとどまらず、多くの企業が取り組めるよう、今後、事例をベースとした成果・効果の提示や、さらなる手法・ノウハウなどの整備が望まれる。

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川口 紗弥香

川口 紗弥香(かわぐち さやか)
株式会社富士通総研 第一コンサルティング本部 産業・エネルギー事業部 コンサルタント
製造業を中心としたお客様と共同での新規事業の企画・具体化推進、国内外のICT中期計画・実行計画策定などのコンサルティングに従事。

本調査結果の詳細やハッカソンの実施事例・ノウハウについてご覧になりたい場合は、下記問合せ先までご相談ください。