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中国が一人っ子政策をいよいよ見直しへ

2014年2月4日(火曜日)

中国では、1978年から人口計画生育(計画出産)政策が公布され、その後、1983年から現在まで一人っ子政策をメインとする計画生育政策が実施され続けた。一人っ子政策の全面実施から30年が経ち、ついに見直しの局面を迎えた。去る2013年11月12日に閉幕した共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が採択・発表した決定全文には、一人っ子政策の緩和に関する内容が盛り込まれており、「計画生育の基本国策を堅持しながら、夫婦のどちらかが一人っ子の場合、第2子の出産を認める政策を実施する。生育政策を調整し、人口の長期的な均衡発展を促す」と明言している。

1. 一人っ子政策の実施

中国では、1949年建国後の人口急増を背景に、食糧や資源を確保するために、人口総数のコントロールが必要だった。1978年に「晩(晩婚)、少(少ない子供の数)、稀(長い出産間隔)」をキーワードとした人口の増加を抑える計画生育政策が打ち出された。1980年9月に国務院がより強化された計画生育政策、すなわち、一人っ子政策の実施を決め、同月に中央政府が「我が国の人口増加のコントロール問題に関する党員、青年団団員への公開声明」を発表し、党員および青年団団員に一人っ子政策の実施に協力を呼びかけた。1982年の年初頃、国務院が共産党幹部、国有企業職員および都市住民に対して、特別な許可がない限り、夫婦が1人の子供しか持たないという規定を出した。同時に、農村部と少数民族においては、労働力や少数民族人口の確保を考慮し、やや緩めな基準で実行することになった。その時から、計画生育政策のキーワードが「晩婚、晩産、少産、優産」に変わり、優産が新たに加えられた。要するに、出生時の死亡率を下げ、より健康な赤ちゃんが生まれるために、妊婦健診や出産知識の普及などを強化することである。同年10月に国務院が「全国計画生育工作会議紀要」を公開し、計画生育政策が基本国策として位置づけられた。中国が一人っ子政策を全面実施した1983年以降、人口出生率が持続的に低下し、2012年には1.21%に辿りついた(【図1】)。

【図1】中国における人口出生率の変化 【図1】中国における人口出生率の変化

(出所) 中国統計年鑑をもとに作成

一人っ子政策の実施によって、人口出生率の低下と同時に、年少者負担率にも、高齢者負担率にも変化が起きた。年少者負担率は生産年齢人口(15~64歳)に占める年少者(0~14歳)人口の割合であり、1982年の54.6%から2012年の22.2%まで下がった(【図2】)。同様に、高齢者負担率は生産年齢人口に占める高齢者(65歳以上)人口の割合であり、1982年の8%から2012年の12.7%まで増加した(【図3】)。年少者負担率と高齢者負担率の両方を足し合わせて、全体的に見れば、中国の人口総負担率は1982年の62.6%から2010年の34.2%まで減少し続け、2011年から上昇に転じた(【図4】)。2010年までの人口総負担率の減少を言い換えれば、生産年齢人口の増加であり、2010年までの中国は、いわゆる「人口ボーナス」に恵まれた。

【図2】中国における年少者負担率(年少者人口/生産年齢人口)の変化 【図2】中国における年少者負担率(年少者人口/生産年齢人口)の変化

(出所) 中国統計年鑑をもとに作成

【図3】中国における高齢者負担率(高齢者人口/生産年齢人口)の変化 【図3】中国における高齢者負担率(高齢者人口/生産年齢人口)の変化

(出所) 中国統計年鑑をもとに作成

【図4】中国における人口総負担率の変化 【図4】中国における人口総負担率の変化

(出所) 中国統計年鑑をもとに作成

2. 一人っ子政策の光と影

一人っ子政策の実施について、中国国家衛生計画出産委員会の毛群安報道官が2013年11月11日に、「一人っ子政策の実施の結果、まず、人口4億人余りが抑制され、人口増による資源環境への負荷を緩和した。仮に計画生育を実施しなかった場合、中国の人口は現在17~18億人に達し、1人当たりの農地・食糧・森林・淡水資源・エネルギーなどはいずれも今より20%以上減少していたでしょう」と述べた。これは一人っ子政策に対するポジティブな評価に違いない。

一方、一人っ子政策の実施がもたらす人口構造のアンバランスが問題視されている。その中で、まず、中国における高齢化が急速に進んで、高齢社会に突入してしまうことが大きな懸念になるだろう。数字を見てみると、中国の総人口に占める65歳以上の人口の割合(高齢化率)は1982年の4.91%から2012年の9.39%にまで上昇し、とりわけ、2001年の7.1%(高齢化社会と呼ばれる基準値は7%である)になってから上昇スピードが加速している(【図5】)。また、国連の人口予測によっては、中国の高齢化率は2025年前後に14%(高齢社会と呼ばれる基準値)に達して、中国が高齢社会を迎える。

【図5】中国における高齢化率の変化 【図5】中国における高齢化率の変化

(出所) 中国統計年鑑をもとに作成

次に、生産年齢人口の減少に注目したい。前項で中国の人口総負担率が2011年から上昇に転じたことにはすでに触れたが、言い換えれば、2011年から生産年齢人口の割合が低下したということになる。とりわけ、2013年1月の国家統計局の公式発表で大きな注目を集めたのは、生産年齢人口のコアとなる15歳~60歳の労働人口数の減少であった。すなわち、中国の労働人口数が2011年の94,072万人から2012年の93,727万人に345万人も減っていたことである。中国にとっては、労働人口数の減少は初めてのことであり、「人口ボーナス」の終焉とともに、人口構造のアンバランスの問題が顕在化してきている。

また、よく指摘されている男女出生比率の不均衡が一向に改善されていない。国家衛生計画出産委員会の王培安副主任の言葉を借りれば、「中国の男女出生比率が長期にわたり偏って、2012年には117.7であった」と、明らかに正常の範囲(105前後)を超えている。中国の男女人口数を見ても、女性より男性が常に3,000~4,000万人多く、男女比の開きが常態化している。中国では、昔から男子重視の考えが根強く、一人っ子政策の実施がその状況に拍車をかけたと見られる。特に農村部では、妊娠中に胎児が女の子と判明したら、すぐに妊娠中絶させる話がしばしば耳に入ってくる。男女出生比率の偏りが嫁不足のような社会問題だけではなく、将来に出産適齢期の女性の不足にもつながり、人口構造のアンバランスはますます深刻化する一方である。

3. 一人っ子政策の緩和および効果

これまでは、中国政府が一人っ子政策の「堅持」と言いながら、2002年9月から実行した「人口および計画生育法」によって、夫婦両方ともに一人っ子の場合、かつ地方政府が定めた条件を満たせば、第2子の出産が認められるようになっており、実は一部規制を緩和していた。そして、一人っ子政策の全面実施から30年が経った2013年、第18期の三中全会の決定の公布によって、さらなる緩和が現実味を帯びてきた。その背景には、人口総数のコントロールが経済発展に有利という見解が時代に合わず、今の中国が、労働人口の減少や男女比率の偏りなど人口構造のアンバランスに伴う諸問題に直面しており、こうした問題の解決が急がれるという考えがあるためである。三中全会の決定に盛り込まれた一人っ子政策の緩和策に関しては、果たしてどれほどの効果が期待できるか? 中国にベビーブームが起こり、高齢化の進行に歯止めをかけられるか?

残念ながら、その答えはノーである。国家衛生計画出産委員会の王培安副主任が記者会見で、「条件を満たす夫婦の数がそれほどなく、短期的に中国の人口が大幅に増加することはない」と述べ、一人っ子政策の緩和がベビーブームにつながらないという見通しを示した。同様に、中国の多くの人口学者は一人っ子政策の緩和による人口増加への影響が限定的と見ている。

また、子供を持つことに対する人々の考え方に異変が起きている。一人っ子政策の実施と定着とともに、「多子多福(子供が多いほど、福も多くなる。ここでいう福は主に老後の保障を指す)」のような伝統的な考え方が変わりつつある。さらに、第2子の出産資格を持つ家庭は主に都市部にあり、都市部の女性の教育水準や就職率の向上、子育てコストの高騰などの要因で、多くの家庭では子供をたくさん作る意欲がとても弱まっている。結果的に、中国にはベビーブームが起こらないし、労働人口の減少のトレンドは変わらないと思われる。

今回の一人っ子政策の変更では効果が限定的と見られるが、政策方針が出産の自由と選択肢の増加という正しい方向に踏み出したことは評価される。今後の出産制限の全面的な撤廃を期待したい。

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【調査・研究】


趙 瑋琳(チョウ イーリン)
(株)富士通総研 経済研究所 上級研究員
【略歴】
2002年 中国大連海事大学卒業、2002年 株式会社プロシップ入社。2008年 東京工業大学大学院社会理工学研究科修士博士一貫コース修了。2008年より早稲田大学商学学術院総合研究所 助手、研究員。2012年 富士通総研入社。
専門領域:中国における産業クラスター発展の課題、中国等新興国を対象に社会経済体質、産業競争力と持続発展の関係分析、など。