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  4. 空き家率の将来展望

空き家率の将来展望 ―現状のままでは20年後に25%近くに―

2012年4月5日(木曜日)

全国で空き家の増加が目立つようになり、老朽化した空き家倒壊の危険を防ぐため、各地で空き家管理条例を制定する動きが活発化している。また、人口減少に悩む地域では、人口を少しでも呼び込むため、ウェブ上に「空き家バンク」を作り、空き家物件の情報を掲載している。こうした施策によって、危険な空き家が撤去されたり、空き家の新たな住み手が見つかったりする例は、わずかずつではあるが増えている。

しかし、今後人口減少が進んでいく中では、問題はより一層深刻化していくことが予想される。空き家率は将来的にどのように推移していくと考えられるだろうか。以下では、いくつかの仮定を置き、空き家率の試算を行ってみよう。

1.需要面の想定

「住宅・土地統計調査」の最新時点である2008年を出発点とし、その20年後までの予測を行うこととする。将来の空き家率を予測する場合、需要面では住宅需要(世帯数)、供給面では新たに住宅が建設される戸数(新設住宅着工戸数)や取り壊される戸数(滅失戸数)が重要な要素となる。

まずは需要面ではあるが、世帯数に影響を与えるのは、言うまでもなく将来の人口動態である。これについては、国立社会保障・人口問題研究所による2030年までの世帯数の予測を用いる(「日本の世帯数の将来予測(2008年3月予測)」)。これによれば、世帯数は2015年までは増加を続けるが、それ以降は減少に転ずる。人口はすでに2004年12月をピークとして減少しているにも関わらず、世帯数がしばらく増加するのは、単身世帯の増加など世帯の小規模化が進んでいることが、人口減少にも関わらず世帯数を増加させる要因となるためである。

2.住宅のストックとフローの関係

一方、供給面についてであるが、この点について説明する前に、試算のベースとなる住宅ストック数(住宅総数、国土交通省「住宅・土地統計調査」による)と新設住宅着工戸数(フロー、国土交通省「建築着工統計」による)の関係について説明しておこう(【図表1】)。住宅ストック数は、住宅・土地統計調査により5年に1回調査が行われているが、これにより5年間でストックがどれだけ増加したかを算出できる。一方、建築着工統計では新設住宅着工戸数が毎月発表されており、これを5年分合計すれば同じ期間の着工戸数がわかる。

5年間のストック増加数と新設住宅着工戸数にはズレが生ずるが、このズレは、その間に除却された分(滅失分)があることなどによる。5年の間には新たに住宅が作られる一方、取り壊されるなどして除却された分もあるので、ストック増加数は、新設住宅着工戸数よりも少なくなる。建て替えの場合は、取り壊した後に新たに建築するので、滅失と新設にともにカウントされることになる(1戸取り壊し、その後に1戸建築した場合は、純滅失戸数はゼロ)。取り壊して更地とされたり、他の用途に転換された場合は、滅失のみにカウントされることになる(純滅失戸数は1)。このように新設住宅着工戸数とストック増加数の差は、純滅失戸数(ネットの滅失戸数)を示す。2003~08年ではこの数値は217.5万戸となっている。

【図表1】住宅のストックとフローの関係

(単位:千戸、千世帯、%)
(出所)総務省「住宅・土地統計調査」、国土交通省「建築着工統計」により作成
  期初の住宅ストック数 5年間のストック増加数 新設住宅着工 純滅失戸数 年平均純滅失率 世帯数 空家数 空き家率
  A B C C-B ((C-B)/5)/A D E E/A
1973~78 31,059 4,392 7,254 2,862 1.8 29,651 1,720 5.5
1978~83 35,451 3,156 6,196 3,040 1.7 32,835 2,679 7.6
1983~88 38,607 3,400 7,147 3,747 1.9 35,197 3,302 8.6
1988~93 42,007 3,872 7,628 3,756 1.8 37,812 3,940 9.4
1993~98 45,879 4,367 7,269 2,902 1.3 41,459 4,476 9.8
1998~03 50,246 3,645 5,929 2,284 0.9 44,360 5,764 11.5
2003~08 53,891 3,695 5,870 2,175 0.8 47,165 6,593 12.2

【図表2】築後経過年数と住宅残存率
(出所)総務省「住宅・土地統計調査」により作成
(注)50年代建築住宅で築8~17年の残存戸数は不明の為、56~65年建築住宅の築8~17年の残存率で算出
【図表2】築後経過年数と住宅残存率

なお、この間の粗滅失戸数(グロスの滅失戸数)については、国土交通省「建築物滅失統計調査」により知ることができ、732.5万戸となっている。純滅失戸数の粗滅失戸数に対する比率は29.7%となり、約7割が取り壊された後に建て替えられて純滅失戸数にはカウ ントされなかった可能性を示している。

5年間の純減戸数を5で割り、1年あたりの純減戸数を求め、期初のストック数で割ると、年平均の純滅失率を算出することができる。この値を2003~08年では0.8%になっている。この値は趨勢的に低下しているが、この基本的な要因は、住宅ストック数が年々増加していることにある(分母の側の要因)。純滅失戸数が変わらず、住宅ストック数が年々増加していくとすれば、純滅失率は趨勢的に低下していくことになる。

低下要因として、それ以外に考えられるのは(分子の側の要因)、ストックの質が次第に向上して寿命が伸び、短期間で取り壊される住宅が減っている可能性である。この点に関して、各年代に建てられた住宅が、時間の経過ととともにどのように減少したか(築年数が3~12年のものを100とした場合の経過年数ごとの残存率)を見ると(【図表2】)、最近時点になるほど残存率が高くなる方向で変化し、滅失スピードが遅くなっていることがわかる。これは住宅寿命が伸び、住宅が長く使われるようになっている可能性を示している。

このほか、建て替えの場合、建て替え前は1戸であったものを、建て替え後は敷地を分割して戸数を増やすと、ストック数は逆に増えることになるため、このような場合が増えればストックの純減率は低下していくことが考えられる。さらには、使われなくなった場合、空き家として放置されたままで、建て替えられたり更地にされたりするものが減っていけば、この値はやはり低下していくことになる。

これらの要因のうち、どれが最も強く働いているかはわからないが、趨勢的に低下しているベースの要因としては分母の要因があり、これに加え分子の要因も働いていると推察される。

3. 供給面の想定

将来のストック数を予測するに当たっては、将来の新設住宅着工戸数とストック数がどのように増加していくかを想定する必要がある。ストック増加数は、新設住宅着工戸数をベースとして、純滅失分がどの程度あるかを想定することで算出できる。新設住宅着工戸数は2009年78.8万戸、2010年81.3万戸、2011年83.4万戸と近年は80万戸前後で推移している。そこで、現状で推移した場合(年80万戸)と、2013年までは現状維持とし、それ以降毎年2.5万戸ずつ減少し、2028年には42.5万戸と半減する2つのケースを考えた。

着工戸数が減少する場合の要因としては、世帯数の減少と中古住宅の利用が考えられるが、前述のように予測期間中の世帯数の減少は緩やかであるため、中古住宅の利用が増えなければこの数値は実現することはないと考えられる。新設住宅着工戸数の半減分を補って中古住宅取引が増加するとすれば、現状で13.5%(2008年)の中古住宅取引比率(中古住宅取引戸数/(中古住宅取引件数+新設住宅着工戸数))が最終的には50%程度にまで上昇することを想定することになる。

純滅失戸数については、現状維持のケース(2003~08年の純滅失戸数217.5万戸)と、前の5年間の純滅失戸数に2008年時点の空き家数(756.8万戸)の1%分を加えた数を、その5年間の純滅失戸数とするケースを考えた。空き家の除却により純滅失戸数が増えていくという想定である。このケースでは、予測期間中(2008~28年)の純滅失戸数は、現状維持の場合に比べて75.7万戸増加する計算になる。また、この想定の下では、予測期間中の年平均の純滅失率がちょうど2003~08年平均の0.8%に維持される計算になる(住宅着工戸数が現状維持の場合)。

こうした想定の下、空き家数を(住宅ストック数-世帯数)によって算出するが、この値は実際の空き家数とは若干の乖離が生ずる。そこで、(住宅ストック数-世帯数)と空き家数の2008年における比率を求め、2013年以降の空き家率を算出するに当たっては、その比率を調整係数として用いた。

4. 20年後の空き家率

新設住宅着工戸数の想定と純滅失率の想定がそれぞれ2つあるので、その組み合わせによって4通りのケースが考えられる。<ケース1>は新設住宅戸数、純滅失戸数ともに現状維持のケースであるが、この場合、2028年の空き家率は23.7%となる。2008年の13.1%と比較すると、空き家率は10.6ポイント上昇する(【図表3】)。

<ケース2>は純滅失戸数を現状維持とし、新設住宅着工戸数を半減させるケースであるが、この場合、2028年の空き家率は17.1%と、<ケース1>に比べ、空き家率は6.6ポイント低下することになる。住宅着工戸数を半減させた場合の効果はかなりあることがわかる。

<ケース3>は新設住宅戸数を現状維持とするものの、空き家の除却により純滅失戸数を増加させるケースであるが、この場合、2028年の空き家率は22.5%となる。<ケース1>と比較すると、空き家率は1.2ポイント低下する。空き家の除却は、相当数除却しなければ空き家率を大きく低下させる要因にはならないことがわかる。

<ケース4>は新設住宅着工戸数を半減させ、かつ純滅失戸数を増加させるケースであるが、この場合、空き家率は15.7%となり、<ケース1>と比べ8.0ポイント低下する。<ケース2>と<ケース3>の条件を合わせた場合であるが、およそ、それぞれの<ケース1>からの低下幅を合わせた低下幅になっている。空き家率を2008年対比で比べると2.6ポイントの上昇にとどまる計算になり、空き家率の上昇を防ぐためには、新設住宅着工戸数の抑制(中古住宅の活用)と空き家の除却がともに必要なことがわかる。

【図表3】空き家率の予測 【図表3】空き家率の予測

5.中古住宅の取得支援が必要

現状の空き家対策は、危険なものが除却されるようにしたり、地方の空き家に都会からの移住者を呼び込むといった、特に問題のある空き家、あるいは、空き家率が特に高い地域におけるものが中心である。

しかし、これだけでは効果は限られ、空き家率の上昇に歯止めをかけることは難しい。より根本的には、中古住宅の活用をより一層促していくことが必要である。中古住宅を取得してリノベーションすることに税制上の優遇を与えたり、改修費を補助するなど、新築を取得することよりも中古を取得する方が有利になるような仕組みを構築していくことが求められる。

今後は、長期優良住宅の普及により、優良な住宅ストックが増加していくことが予想される。また、すでに述べたように、少子高齢化により世帯数は減少していく。このように住宅市場が変化していく中では、優良な住宅ストックが次の世代に引き継がれるような方向に住宅政策を転換していく必要がある。

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米山秀隆

米山 秀隆(よねやま ひでたか)
(株)富士通総研 経済研究所 上席主任研究員。
【略歴】
1989年 筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了、(株)富士総合研究所を経て、1996年 (株)富士通総研入社、2007年~2010年3月 慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員
【執筆活動】
デフレの終わりと経済再生(ダイヤモンド社 2004年)、少子高齢化時代の住宅市場(日本経済新聞出版社、2011年)ほか多数