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電子帳簿保存法の最新動向

2010年8月12日(木曜日)

1.1998年から2005年:普及と電子化対象の拡大

「電子帳簿保存法」は、1998年7月から施行されている法律であり、ご存知の方も多いのではないかと思います。この法律によって、従来「紙」での保存が義務付けられていた帳簿書類を、一定の要件を満たすことによって「電子データ」として保存することが認められました。

施行当時、電子保存が認められていたのは、一貫してITを使用して作成した「帳簿」と「決算書類」等であり、その電子保存の実現手段として普及したのが「電子帳票ソフトウェア」でした。電子帳票ソフトウェアは、コンピュータがプリンタに印刷しようとするデータを受け取って、それを電子的に閲覧できるようにするものです。これを利用すると、財務会計システムで印刷していた帳簿をそのまま電子化することができたため、この方式は、電子帳簿保存法対応の一般的な手段として、多くの企業に普及しました。

図1

また、日本経団連による『税務書類の電子保存範囲の拡大を改めて要望する(2004年)』に代表される規制緩和活動もあって、2005年には「e-文書法」の施行とともに電子帳簿保存法も改定され、一定要件を満たせば、取引の相手方と授受する証憑書類等についても、紙の書類をスキャニングした画像データを保存することが認められるようになりました(国税関係書類のスキャナ保存)。

図2

2.2006年から2009年:課題の発生とその解決

しかし2006年、2007年頃から、突然「電子帳簿の承認要件が厳しくなった」「税務調査の際に電子帳票ソフトウェアによる方式を否定された」といった噂が聞こえ始め、国税局から指摘を受けた企業や電子帳票ソフトウェアベンダーに混乱が生じました。これらの状況や、先の改定で電子化対象範囲が拡大したにもかかわらず、その実際の適用が普及しないことを受け、日本経団連から、改めて電子帳簿保存法に関する規制緩和の声があがりました。

日本経団連による、電子帳簿保存法に関する近年の規制緩和要望
2008年度日本経団連規制改革要望 2008年6月17日
7.7 国税関係帳簿・書類に関する電子帳簿保存の承認要件の周知
「重点計画-2008」に関する意見 2008年7月10日
1.6 IT経営の確立による企業の競争力強化 (P.36~) に係る意見
e文書法や電子帳簿保存法により、(中略) 承認取得にあたり、審査の基準が非常に高いため、紙での保存コスト以上の情報化投資が必要となり、ほとんど普及していない。 (中略) 普及阻害要因の分析を行い、企業の情報システムの実態を踏まえ、より多くの企業に普及するよう、制度の改善や運用の見直しを早急に行うべきである。(以下略)
2009年度日本経団連規制改革要望 2009年6月16日
7.5 電子帳簿保存の承認要件

その結果、2009年6月には、日本経団連参加企業に向けて、「国税関連帳簿書類における電子帳簿保存法に関する説明会」が開催され、来賓である国税庁および東京国税局サイドから、これまで誤解が生じていた電子帳簿保存の承認要件について、従来になく踏み込んだ具体的な説明が実施されました。電子帳票ソフトウェアを用いて印刷データを電子帳票化し保存しているだけのシステムでは電子帳簿とは認められないことも、この場で明確に示されました。さらに同年11月からは、国税庁ホームページの中に、申請事例やQ&Aといった解説も掲載されるようになりました。

3.「電子帳簿保存」要件の本質とは

電子帳簿保存にあたっては、所轄の税務署長の承認を得る必要がありますが、これがいわゆる「みなし承認」(申請後一定期間内に却下通知がなければ承認されたとみなしてよい)であるため、その後の税務調査の中で初めて電子帳簿保存法対応の仕組みまで調査を受け、その際何らかの指摘を受けた企業もあったと考えられます。上述の説明会等で明確になった電子帳簿保存の要件を改めて振り返ってみると、紙の帳簿と同じ「見た目」となる電子データを保存しておけばよいのではなく、会計データの「完全性(integrity)」(情報の管理・処理方法が正確であり、情報が消失したり改ざんされないこと)を保証することが求められていると言えます。これは、金融商品取引法で義務付けられている、適正な財務報告のための内部統制に通じるものがあります。また、電子帳簿保存法の位置付けが税法の「特例」であることに立ち返り、当該帳簿自体が法人税法等に記された要件を満たしているかを改めて問われるケースもあります。

富士通総研では、内部統制対応で培ったノウハウに規制緩和の最前線での豊富な経験も踏まえ、「電子帳簿」対応や証憑書類のスキャナ保存など、システムの法的要件への適合性評価やシステム構築上の要件定義のご支援を行っています。さらに、従来「紙」を使って行っていた業務を電子化していく際の構想立案から諸規程の整備まで、広くご支援しています。

4.IT/電子データの一層の活用のために -電子帳簿保存法が示すこと

ITを活用し電子データをベースとして業務を行うことが、様々な面での効率化効果を生むことは周知の事実です。しかし、そのメリットを最大限に享受するためには、「改ざん、修正、すり替え等が容易で痕跡も残らない」といった電子データの弱点を克服する必要もあります。また、「紙」に対する安心感、「紙」を廃止することへの心理的抵抗感、電子データの証拠価値に対する不信感が、電子化を阻害することも少なくありません。

改ざん対策等、適切な電子データの取り扱いを実現する仕組みは、本来、個々のシステム構築案件の要件としてではなく、教育、標準化、IT基盤といった企業の情報活用の基礎として整備されるべきものです。これらを充実させることは、より一層の業務の効率化につながるだけでなく、ひいては、日本経団連の規制改革要望にもある「先進的な電子社会の実現」をもたらすものと考えます。

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小林 潔(こばやし きよし)
(株)富士通総研 内部統制事業部 シニアマネジングコンサルタント
1987年富士通(株)入社後、フィールドSE、コンサルティング事業本部を経て、2008年より富士通総研へ出向。ECM(Enterprise Content Management)や文書管理に関するコンサルティングに従事するとともに、社内外においてECMの普及活動を推進。